てんかん研究
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11 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 真谷 幸介, 工藤 達也, 松田 一己, 八木 和一, 清野 昌一
    1993 年 11 巻 3 号 p. 195-204
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    臨床発作・脳波相関から前頭葉起原の部分てんかんとみなされた2症例について発作時SPECTを行い, 前頭葉内側矢状面に高集積像が観察された。症例1は, 発語停止, 強直姿勢, 複i雑な身振り自動症と, 発作間けつ時の両側・同期ほぼ対称性の2~3Hz棘・徐波複合, ならびに発作時には背景脳波活動の平坦化が記録された。発作時SPECTは補足運動野を含む領域に高集積像を示し, 補足運動野を含む部位にてんかん原性帯域が推定された。症例2は, 頭の緩やかな前屈, 四肢・躯幹の自動症, 顔面の紅潮, 呼吸速迫, 尿失禁と, 発作間けつ時に前頭極に限局するほぼ両側・同期性の発作発射ならびに発作時には徐波律動波が観察された。発作時SPECTは帯状回前方帯域に高集積像を示した。
    以上の所見から, てんかん原性帯域は帯状回前方部を含む帯域にあると推定された。また2症例ともに, 前頭葉に起因すると見なされる持続性精神症状を認めた。
  • 鳴戸 敏幸, 山野 恒一, 島田 司巳
    1993 年 11 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    図形反転刺激により全般性棘徐波複合が誘発される症例につき, 一定範囲の周波数で図形反転刺激を行った場合に棘徐波が誘発される周波数の割合を求めた。さらに, 内服前のこの値に対する内服後の値の比率 (%PSR) を指標として, バルプロ酸 (VPA) による棘徐波抑制作用について検討した。
    大半の症例において, %PSRは, PPAの血中濃度が上昇するにつれ急速に低下した。血中濃度が低下すると%PSRは一時的に上昇し, その後再び低下した。%PSRは多くの例で共通の変化を示したが, このことは, %PSRが薬剤による視覚過敏性の変化を鋭敏に反映することを示す。また, %PSRが持続的に低値を示したことから, VPAの血中濃度の変動が必ずしも治療上の問題にはならないと予想される。一部の例に非徐放性VPAの1日1回投与を試みたところ, これによっても発作は抑制された。
  • 川崎 淳, 兼本 浩祐, 中川 嘉洋, 河合 逸雄
    1993 年 11 巻 3 号 p. 236-240
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    難治てんかんの要因の1つに全身の発疹のため抗てんかん薬投与ができないことがあげられる。このような症例に対する治療法として今回われわれは抗てんかん薬の減感作療法を試みた。試みた薬剤はCBZ3例, PHT, VPA各1例であった。この結果, 減感作療法を行った難治てんかん5例中4例で全身の発疹をみることなく有効血中濃度まで抗てんかん薬を増量することができ, 4例中3例で発作が抑制された。また幻覚妄想状態を呈していた2例では, PHTからCBZへ変更することにより幻覚妄想状態の改善をみた。
    抗てんかん薬による発疹の既往を持つ難治てんかん症例に対する減感作療法は, 多くの症例に有効であり, 発疹の出現した抗てんかん薬の投与が不可欠な症例においては, 試みる価値が高いと思われた。
  • 金井 裕彦
    1993 年 11 巻 3 号 p. 241-250
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    特異的グルタミソ酸受容体作動薬の投与によるけいれんに対する, ジョロウグモ毒素誘導体 (1-NA-Spm) の抗けいれん効果を海馬深部脳波記録と行動観察にて検討した。1-NA-Spmをラットの側脳室内に前投与し, その後グルタミソ酸受容体作動薬を同じ経路で投与した。non-NMDA型作動薬による辺縁系けいれんに対しては, カイニン酸型のドーモイ酸では海馬発作性放電は抑制されなかったが, キスカル酸 (QUIS) 型のQUISおよびAMPAでは海馬発作性放電の出現量 (%) は順に80~11%, 55~9%と強力に抑制され, 全般化けいれんの出現率は順に100~0%, 67~0%に減少した。また, NMDA型のキノリン酸に対しては行動上, 脳波上抑制効果は見られず, 1-NA-SpmはQUIS型受容体作動薬に選択的で強力な抗けいれん作用を示した。
  • 言語症状発生機序に関する1考察
    鳴戸 敏幸, 相坂 明, 山野 恒一, 島田 司巳
    1993 年 11 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    Landau-Kleffner症候群例の経過を報告した。本例においては全症状がてんかん放電に起因し, 言語症状の本態は言語性聴覚失認であると考えられた。本例における発語の問題は聴覚失認による二次的なものであり, 行動上の問題もまた二次的なものと考えられた。発作後に一過性の聴覚失認と思われる症状が見られ, これがてんかん放電によるニューロンの機能的疲弊に起因することが示唆された。持続的な言語症状に関しても, 発作間歓期のてんかん放電が反復持続することでニューロンの機能的疲弊が惹起されると考えれば, 脳波所見との時間的ずれも矛盾なく説明できる。聴覚失認の指標として語音聴力を検査したところ, ジアゼパム静注により改善した語音聴力は, 脳波所見が悪化してもすぐには悪化せず, この考えを支持する結果であった。
  • 岩橋 和彦, 洲脇 寛, 大西 純一, 細川 清
    1993 年 11 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    骨萎縮性病変発生機序解明の一助としてカルシウム代謝に重要な役割を果たすビタミンD3活性化酵素シトクロムP-450D25の酵素活性における抗てんかん薬の影響について調べた。in vitroの実験においてフェニトインはラット肝臓のミクロソーム系およびミトコンドリア系のP-450D25の酵素活性を阻害することが判明し, しかもミクロソーム系のP-450D25については競合阻害であった。一方バルプロ酸はどちらの系においても阻害作用はほとんど見られなかった。また両薬物をWistarラットに2ヵ月間大量に皮下注射したところ, フェニトインによるミクロソーム系P-450D25の著明な誘導がみられた。以上よりフェニトインはシトクロムP-450D25を介してビタミンD3, さらにはカルシウム代謝に影響を与える可能性があることが判明した。
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