てんかん研究
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38 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 池本 智, 浜野 晋一郎, 小一原 玲子, 代田 惇朗, 野々山 葉月, 樋渡 えりか, 平田 佑子, 松浦 隆樹, 神部 友香
    2020 年 38 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    ビガバトリン(Vigabatrin;VGB)は、本邦では2016年に点頭てんかんに対する治療薬として承認され、高い有効性が示されている薬剤だが、副作用に不可逆性視野狭窄を認めることがある。2016年10月から2019年7月まで当センターで点頭てんかんに対してVGBを処方した33例に関して、VGBの利便性や副作用などを検討した。全症例のVGB有効率は30.3%(10/33例)で、そのうちACTH療法を先行した11例の有効性は18.2%(2/11例)だった。副作用の発生率は27.3%(9/33例)で、そのうちACTH療法を先行した11例の副作用発生率は54.5%(6/11例)だった。傾眠・分泌物増多が最も多く、全例でVGBの減量、もしくは中止により改善した。網膜電図における一過性異常を6.5%(2/31例)で認めた。点頭てんかんに対するVGBは比較的安全で利便性の高い内服投与の抗てんかん薬だが、ACTH療法が無効だった症例にVGB投与を行う場合は併存症や合併症の存在を勘案し、副作用に注意する必要があると考えられた。

  • 榎 日出夫, 藤本 礼尚
    2020 年 38 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    オンライン診療では医師が遠隔地の患者とリアルタイムでビデオチャットを交わす。てんかんでは「オンライン診療料」の保険算定が可能であるが、算定条件の制約により実際には運用が難しい。そこで我々は自由診療によるセカンドオピニオン外来を開設した。2019年7月から2020年2月に同外来を受診した2~25歳の遠隔地のてんかん患者6名(海外1例を含む)に対し、延べ9回のオンラインセッションを実施した。診療形態は医師対患者(D to P)を基本とし、かかりつけ医が患者と同席する形態(D to P with D)も併用した。相談内容は診断確定2例、てんかん外科適応判断3例、内科的治療選択判断3例であった(重複あり)。外科適応ありと判断した2例に対し、てんかん外科医がオンラインで説明を追加した。内科的治療では1例で当院担当医が先方かかりつけ医と連携をとり(医師対医師、D to D、非同期)、先方病院で治療を継続した。

  • 小野 博也, 石山 昭彦, 須貝 研司, 竹下 絵里, 本橋 裕子, 斎藤 貴志, 中川 栄二, 佐々木 征行
    2020 年 38 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    環状20番染色体症候群[r(20)]の発作ではnon-convulsive seizures(NCS)を認める。当院小児神経科の難治てんかん例で、NCSを示し、r(20)を疑った10例を対象として(うち5例がr(20)と確定診断)、発作時脳波の①徐波成分の周波数変化、②棘波、徐波の振幅高についての比較検討を行った。r(20)群5例のうち周波数変動は全例で認め、その変動幅は2.5~7 Hzのδ~θ帯域であった。徐波成分の振幅高が棘波成分と比して高い徐波振幅成分優位型は5例中の4例であった。一方、非r(20)群(non-r(20))の5例のうち周波数変動を認めたのは2例であり、徐波振幅成分優位型の例は認めなかった。周波数変動を示し、振幅高の比較で棘波よりも徐波の振幅が高振幅を示す脳波所見を示すことが、r(20)を疑う際、有用な所見であると考えられた。各種機能画像の検査を行ったところ、r(20)例で視床や基底核の異常所見が示され、視床皮質ネットワークの視床フィードバックの障害が徐波の周波数変動に関与している可能性も示唆された。

症例報告
  • 親里 嘉展, 中尻 智史, 金川 温子, 沖田 空
    2020 年 38 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    Angelman症候群は難治性てんかんを合併することが多い疾患である。さらに約半数が非けいれん性てんかん重積を経験するとされ、Angelman症候群のてんかん治療管理上、重要な課題である。非けいれん性てんかん重積については、他疾患と同様にベンゾジアゼピン系抗てんかん薬の静注により治療できることが多いが、無効な場合の治療法は確立していない。今回我々は、他の治療が無効であった非けいれん性てんかん重積に対しTopiramateが奏効したAngleman症候群の2症例を経験した。2症例とも従来の発作とは異なる発作型の出現、意識や意欲の変容、睡眠周期の変化を呈しており、脳波で持続性広汎性のてんかん性異常を認めたことより診断した。Topiramate開始約3週間で臨床的にも脳波的にも非けいれん性てんかん重積より離脱できていることが確認できた。Topiramateは外来での治療が可能であり、Angleman症候群の非けいれん性てんかん重積の治療選択肢の一つとなりうることが示唆された。

  • 間浦 奈央子, 遠藤 文香, 秋山 麻里, 花岡 義行, 秋山 倫之, 小林 勝弘
    2020 年 38 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    ペランパネル(PER)は選択的AMPA受容体拮抗作用を有する新規抗てんかん薬であるが、Lennox-Gastaut症候群(LGS)に対する効果は未確定で、易刺激性の副作用もあり精神・行動に対する影響が危惧される。本症例は22歳男性で、生後5カ月にWest症候群を発症した。ACTH療法や各種抗てんかん薬の治療に抵抗した。2歳頃から強直発作が出現し、脳波で緩徐性棘徐波複合、全般性突発性速律動を認めLGSへの変容を示した。5歳より易興奮性、攻撃的行動異常が出現し、9歳より焦点意識減損発作、ミオクロニー発作も認めた。18歳時にPERを副作用に注意しつつ慎重に開始した所、発作は著減し脳波も改善し、同時に易興奮性、攻撃的行動異常も著明に軽減した。易刺激性が懸念されるPERであるが、本症例では激しいてんかん発作に伴い増悪していた易興奮性や行動異常が本剤による発作改善を通して改善したと思われる。

Hans Berger褒賞研究報告書
  • 美根 潤, 大谷 英之, 西田 拓司, 西村 亮一, 山﨑 美鈴, 高橋 輝, 原 稔枝, 松田 春美, 杉山 理彩, 鈴木 健之, 井上 ...
    2020 年 38 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    【序論】

    famosesはトレーナーを交えた小グループで行う双方向的なてんかん学習プログラムである。本研究の目的は、日本版famosesを開発・実施し、その有用性を検討することである。

    【対象・方法】

    対象:てんかん治療のため当院入院中の小児、およびその親や家族で、本研究の参加に同意した者。

    方法:①親と家族のコース、②子どものコース(7~13歳)にわかれ実施した。コースの効果を、質問紙、心理検査等を用い参加前後、6カ月後に評価した。

    【結果】

    親と家族のコースに児17名の親18名、子どものコースに9名が受講した。いずれも発作頻度が多く難治例であった。親の評価では、てんかんの知識、子どもの自律への促し、児のてんかんへの親のコーピングが向上した。社会性やコミュニケーション能力の高い児でQOL等が改善し、特にこのような例での有用性が期待された。

    日本版famosesは有用な心理教育ツールであると考えられた。

  • 曽根 大地
    2020 年 38 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    てんかん合併症としての精神症状は、しばしば患者の生活に決定的な影響を及ぼす重要な側面であり、精神症状とてんかんの関係は双方向的とされているが、その神経学的基盤は依然として明らかになっていない。てんかんにおける不安症状は、その有病率の高さに比して神経基盤の報告が少なく、特に知見の蓄積が望まれる。本研究課題では、側頭葉てんかん(TLE)患者を対象に、機能的MRIの記憶課題中の言語・表情刺激に対する神経活動と不安症状との関係性を検討した。結果として、TLEにおける不安症状は、言語刺激課題において、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)後方部分への神経反応を抑制し、その領域は恐怖刺激への反応低下領域ともオーバーラップしていた。DMN後方の機能からは、TLEにおける不安症状は、不安による過覚醒および記憶・海馬形成に関連している可能性が示された。

  • 豊田 知子
    2020 年 38 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)は発症年齢によって病型が異なり、若年発症型では進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の病態を呈する。進行性で予後不良の疾患であるが現在のところ根治療法はない。近年PMEに対してはペランパネル(PER)の有効性が報告されている。我々はPMEの病態を呈するDRPLAトランスジェニックマウス(Q113、Q129)に3種類の濃度のPERを発症早期より連日経口投与してその効果を評価した。その結果Q113、Q129ともにPER投与群にてミオクローヌス及びてんかん発作の減少を認めた。Q113では運動機能の改善及び生存期間の延長も認めた。脳組織のウエスタンブロット及び免疫染色ではリン酸化グルタミン酸受容体(GluA1)の発現増加を認めた。PERはGluA1のリン酸化を介してミオクローヌス及びてんかん発作減少に関与しているかもしれない。

  • 音成 秀一郎
    2020 年 38 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    難治部分てんかんの唯一の根治療法はてんかん焦点切除術であり、「てんかん焦点完全切除と術後脳機能障害の回避」がその術後転帰を大きく左右する。術後機能障害の出現の術前予測には侵襲的な皮質電気刺激検査が主流だが、近年その非侵襲的代替手法として広帯域皮質脳波を用いた運動関連皮質の脳機能マッピングが応用されてきた。てんかん患者では個々の病態による脳機能の可塑性を鑑みる必要があり、患者単位で複合的なアプローチを用いた「システム」としての包括的な脳機能マッピングとして、内因性脳活動に基づく本手法は合理的である。本研究では硬膜化電極が慢性留置された難治部分てんかん患者を対象に広帯域皮質脳波を用いて運動関連生態信号を周波数帯域毎で解析し、留置電極単位で脳機能局在の同定のための予測スコアを作成した。その精度検証では皮質電気刺激で同定した一次運動野との一致性において有効脳波活動のカットオフ値を算出し、高いマッピング精度(特異度90%、感度97%)を示し、術後機能障害の出現を回避するための生態信号の『限界値』解明の可能性が示唆された。本手法の普及で累計発症率135人/10万人の薬剤難治てんかん患者の転帰改善も期待され、本手法の臨床応用における現状と今後の展望も含めて報告する。

  • 松原 鉄平, 廣永 成人, 上原 平, 茶谷 裕, 飛松 省三, 岸田 邦治
    2020 年 38 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    多センサー脳磁図における発作間欠期てんかん性放電(IED)の視察的探索は時間がかかり、評価者による診断の不一致も生じる。従来の独立成分分析(ICA)はアーチファクト除去に用いられることが多い。時系列データを計算の考慮に入れたT/k型のブラインド信号源分離解析法(BSST/k)を用いて、IEDを抽出した。7名の焦点てんかん患者において、センサーの視察的探索とBSS成分の結果を比較した。BSST/kは信号/ノイズ比が高く、IED成分は一つの成分で抽出された。その成分でIEDを自動検出すると、感度/特異度は平均74.9%/99.7%であった。BSST/kは同一のパラメータ設定で、様々な形態のIEDを、一つの成分として抽出することが可能であった。本法はIEDの視察的探索の補助としての自動検出として役立つ可能性がある。本研究成果を踏まえ、将来的には解析支援ツールを構築することを目指す。

  • 宮島 美穂, 山川 俊貴, 藤原 幸一, 前原 健寿
    2020 年 38 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル 認証あり

    てんかん患者の突然死(Sudden unexpected death in epilepsy、SUDEP)は全身性強直間代発作後の呼吸機能・心機能障害に続いて生じ、背景要因として発作間欠期の心拍変動(heart rate variability)の異常などの自律神経機能不全が示唆されている。我々はSUDEPのリスク評価と予防の観点から、シャツ型電極を用いたウェアラブル心拍計による心拍、呼吸計測の実用性を検討中である。今後は体型や体動に応じて心電図誘導を最適化できる多電極シャツとノイズ低減機能を有したトランスミッタの採用も検討している。発作後の呼吸障害の検出にはリング形状のパルスオキシメーターが有用である可能性がある。

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