てんかん研究
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18 巻, 2 号
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  • 岡 鋲次
    2000 年 18 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    てんかんの診療や臨床研究における脳波の問題点を小児てんかん学の経験から述べた。
    1) 小児てんかんでは脳波を3回実施した場合のてんかん発射累積出現率は92.3%であるが, 成人では70-80%である。
    2) てんかん症候群に特異的な脳波所見は全体としては稀で, 大多数のてんかんは非特異的脳波所見を呈している。そこで, 非特異的所見を分析的に検討して, 臨床および研究に役立たせることが重要である。
    3) Electrically silent seizureは稀であるが, 非てんかん性発作現象との鑑別診断が難しい。
    4) 痙攣素因を示唆する脳波型はてんかんの病因分類に応用しうる。
    5) てんかんの治療は脳波所見を参照しながら行うことがのぞましいが, 病状の程度が脳波に反映されにくい病型がある。前頭葉てんかん, 内側側頭葉てんかん, 乳児重症ミオクロニーてんかんの辺縁型などである。
  • 器質性疾患周囲における等価電流双極子分布の検討
    知禿 史郎, 星田 徹, 合田 和生, 榊 寿右
    2000 年 18 巻 2 号 p. 114-123
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    てんかんで発症した5例の器質性病変を対象に、発作間欠期棘波から等価電流双極子 (ECD) を推定し、器質性病変がてんかんの原因と推定しえるか、を検討した。
    頭部CT水平断像を重ね合わせ、実形状頭部3層モデル (頭皮・頭蓋骨・脳) を作成し、各層の導電率を考慮し1双極子法で発作間欠期の棘波のECDを算出した。これらECDを三次元脳モデル上に投射した結果、全例病巣周囲にECDが集中した。ECDは周囲20mmまでは5mm毎に全体の10%を越える増加率を示すが、20mmを越えるとその増加率は低下がみられた。その分布は、病巣周囲20mm以下の領域に全例70%以上の高い集積がみられた。術前の検査結果を総合的に検討し、全例、病巣部摘出のみを行い、術後、全例けいれんは消失、または著明に減少した。今回の検討では、症例数も少なく統計学的な検討が行えなかったが、発作間欠期棘波から双極子追跡法により推定したECDが、器質性病変周囲20mm以内に70%以上集積し、かつ、他の術前検査結果と一致した場合は、病変部がてんかんの原因である可能性が高いといえる。
  • 症候性部分てんかんの棘波と比較した電流モーメントの特徴
    平岩 里佳, 渡辺 裕貴, Susumu Sato, 八木 和一
    2000 年 18 巻 2 号 p. 124-132
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    中心・側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん (BECT) 5例の脳磁図を記録し、ローランド発射 (RD) の等価電流双極子 (ECD) 解析を行った。ECDの電流モーメント (Q) の分布について、RDと年齢分布の一致した症候性部分てんかん (SPE) 9例の棘波との結果を比較検討した。結果、BECT、SPE両群ともにQの分布は正規分布ではなかったが、対数に変換すると正規分布を示した。対数正規分布から導いたQの平均値は、BECT群では272nAm (mean±SD144-514nAm) 、SPE群では、177nAm (mean±SD109-286nAm) であった。RDのQはSPEの棘波のQに比べ、有意に大きく、より幅広く分布した。さらに、RDは、発作の消失とともに比較的短期間に小棘波に変化し、そのQも著明に減少した。Qの検討から、RDは、SPEの棘波に比べ、より多くの、より可変性のある数の神経細胞集団が同期的に興奮することにより生じていると考えられた。
  • 村上 暢子, 浅野 孝, 荻野 竜也, 小林 勝弘, 大塚 頌子, 岡 暎次
    2000 年 18 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    小児期発症の難治てんかん患者41例にロフラゼプ酸エチル (LOF) を追加使用して、その効果を検討した。1) 使用開始1ヵ月の時点の有効率は60.9%であったが、3ヵ月以上継続後には34.1%に低下した。2) てんかん類型では症候性全般てんかん、発作型では強直発作に有効な傾向がみとめられた。3) 脳波上、広汎性てんかん発射に対して有効な傾向をみとめた。4) 各症例における最大使用量とその時の血中濃度にはR=0.691で有意な相関をみとめた。5) 副作用は20例 (48.8%) にみとめられたが、軽度であった。
  • 高次大脳機能障害の評価
    笹川 睦男, 中島 悦子, 吉野 美穂子
    2000 年 18 巻 2 号 p. 140-147
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    環状20番染色体46、XY、r (20) (p13、q13) をもち、非けいれん性発作重延を呈した18歳男性に高次大脳機能検査を施行した。発作症状は表情に生彩を欠き、うつむき加減で瞬目が多く自発語は少ないが、単純な呼名には応答できる。発作の持続は10-50分間であり、1日に3-4回出現した。発作時脳波は、びまん性の高振幅徐波で両側前頭葉に棘波が時に重畳する。EEG-VTR同時記録を用いて発作出現時の意識障害プロフィールを検討した。検討項目は自発語 (情報の内容、流暢性) 、聴理解 (返答、動作) 、復唱、物品呼称、読みなどWAB失語症検査 (Western Aphasia Battery) の下位検査と統語的問題解決能力測定のため計数/計算 (田中ビネー) と数唱 (WAIS-R数順唱) を加えた。発作間歓時のプロフィールと比較すると復唱は健常を保ったが、自発語、聴理解、計数/計算が不良で、ことに計数/計算の高度障害は前頭葉内側面の巻き込みを推測させた。
  • 寺田 知新, 高橋 幸利, 近藤 直実
    2000 年 18 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    てんかん発作により機能性に内分泌異常をきたし、乳房腫大を引き起こしたと考えられる症候性全般てんかんの1例を経験した。来院時、乳房腫大 (Tanner stage2) を認め、1日1-2回、1分程度続くglobal tonic seizureと頻回のaxial tonic seizureが認められた。脳波所見では両側広汎性に不規則なslow spike and waveとhigh voltage slow waveが1-2秒連続しているのが認められた。てんかん発作後のホルモン動態ではFSHの増加は確認できなかったが、LH、PRL、E2の上昇が認められた。
    VPAの投与開始後に発作回数は減少し、乳房腫大もしだいに改善傾向となった。本症例では、発作原性に乳房腫大を来したと推定された。
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