[目的]これまで,わが国の電気けいれん療法(electroconvulsive therapy,ECT)の実施状況の調査は不十分であり,わが国のECT実施の実態を示すものとはいえない。今回われわれはアンケートにより全国規模でECTの実施状況を調査した。[方法]日本精神神経学会精神科専門医制度研修施設1,463施設を対象にアンケート調査を実施した(調査期間は2009年1月15〜31日)。[結果]875施設から有効回答を得た(回収率59.8%)。このうち平成20年1月1日〜12月31日の間にECTを実施している施設は356施設,うち静脈麻酔薬と筋弛緩薬を用いた修正型ECT(modified ECT,以下m-ECT)のみ135施設,静脈麻酔のみを用いる従来型ECT(unmodified ECT,以下u-ECT)のみ160施設,m-ECTまたはu-ECT 47施設,無麻酔ECT(straight ECT,以下s-ECT)13施設,無回答1 施設であった。地域別でECT 施行施設のうちのm-ECT のみ施行施設の割合は,北海道28.9%,東北40%,関東44.2%,中部37.5%,近畿76.5%,中国62.5%,四国50%,九州31.7%であった。ECTの件数は全国で年間42,358件,うちm-ECTは29,040件,u-ECTは13,186 件,s-ECTは132件であった。医療機関形態別のm-ECTの施行率は,大学病院97.2%,総合病院では91.4%,精神科病院では48.8%であった。地域別のm-ECT数を人口10万人あたりの施行数とm-ECTの施行施設率は,北海道38.2%,東北23.2%,関東36.8%,中部13.3%,近畿7.8%,中国21.4%,四国6.7%,九州13.2%であった。m-ECT施行時の麻酔担当医については常に配置する86.8%,配置しない4.9%であった。大学および総合病院では常に配置するが90%以上,精神科病院では70%であった。[結語]わが国でのECT実施率およびm-ECT実施率は地域,施設ごとに異なっており検討されなければならない課題がある。m-ECTを普及させていくには麻酔科医の配置が可能な総合病院との医療連携が必要と考えられる。
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