総合病院精神医学
Online ISSN : 2186-4810
Print ISSN : 0915-5872
ISSN-L : 0915-5872
22 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集:ECT における地域連携
原著
  • ―全国実態調査の結果から総合病院精神科に求められること―
    奥村 正紀, 鮫島 達夫, 粟田 主一, 鹿島 晴雄, 本橋 伸高, 澤 温, 和田 健, 分島 徹, 川嵜 弘詔, 中村 満, 山口 成良 ...
    2010 年 22 巻 2 号 p. 105-118
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2014/06/10
    ジャーナル フリー
    [目的]これまで,わが国の電気けいれん療法(electroconvulsive therapy,ECT)の実施状況の調査は不十分であり,わが国のECT実施の実態を示すものとはいえない。今回われわれはアンケートにより全国規模でECTの実施状況を調査した。[方法]日本精神神経学会精神科専門医制度研修施設1,463施設を対象にアンケート調査を実施した(調査期間は2009年1月15〜31日)。[結果]875施設から有効回答を得た(回収率59.8%)。このうち平成20年1月1日〜12月31日の間にECTを実施している施設は356施設,うち静脈麻酔薬と筋弛緩薬を用いた修正型ECT(modified ECT,以下m-ECT)のみ135施設,静脈麻酔のみを用いる従来型ECT(unmodified ECT,以下u-ECT)のみ160施設,m-ECTまたはu-ECT 47施設,無麻酔ECT(straight ECT,以下s-ECT)13施設,無回答1 施設であった。地域別でECT 施行施設のうちのm-ECT のみ施行施設の割合は,北海道28.9%,東北40%,関東44.2%,中部37.5%,近畿76.5%,中国62.5%,四国50%,九州31.7%であった。ECTの件数は全国で年間42,358件,うちm-ECTは29,040件,u-ECTは13,186 件,s-ECTは132件であった。医療機関形態別のm-ECTの施行率は,大学病院97.2%,総合病院では91.4%,精神科病院では48.8%であった。地域別のm-ECT数を人口10万人あたりの施行数とm-ECTの施行施設率は,北海道38.2%,東北23.2%,関東36.8%,中部13.3%,近畿7.8%,中国21.4%,四国6.7%,九州13.2%であった。m-ECT施行時の麻酔担当医については常に配置する86.8%,配置しない4.9%であった。大学および総合病院では常に配置するが90%以上,精神科病院では70%であった。[結語]わが国でのECT実施率およびm-ECT実施率は地域,施設ごとに異なっており検討されなければならない課題がある。m-ECTを普及させていくには麻酔科医の配置が可能な総合病院との医療連携が必要と考えられる。
資料
  • —首都圏でのネットワークの立ち上げと現況—
    鮫島 達夫, 一瀬 邦弘, 奥村 正紀, 中村 満, 木村 真人, 大久保 善朗
    2010 年 22 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2014/06/10
    ジャーナル フリー
    日本精神神経学会ECT 検討委員会からの報告では,わが国における修正型電気けいれん療法(modified electroconvulsive therapy:m-ECT)の施行施設は全国平均で40.7%であり,欧米など諸外国に比べ, その普及は立ち遅れている。普及が遅れている要因として,施行件数や適応疾患など施設間での違いや麻酔科医の不足など様々な問題がある。これらの改善とECT のより安全性を高めるための首都圏でのECT の連携組織として首都圏ECT ネットワークを設立した。今後はECT の安全性や麻酔科との連携を深めるなどの活動を充実させていくことが必要である。
総説
  • 須賀 英道
    2010 年 22 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2014/06/10
    ジャーナル フリー
    近畿圏ではこれまでのECT実施状況の不明瞭さを背景に,平成18年12月近畿ECT連絡会が発足し,近畿圏でのECTに関する諸問題の議論を行う基盤がつくられた。ECT使用状況のアンケート調査によってECTへの高い関心と有効性,安全性,倫理性について確認されるとともに,ECTの悪印象を改善し,継続ECTや外来ECTの必要性を啓発することが勧められた。こうした近畿ECT連絡会の活動によって,連絡会参加が3年間で21施設と増え,m-ECTへの移行や,クリニカルパスの作成,ECT適応カンファレンス,ECT前・後の諸検査と評価,継続ECTへの移行など各施設においてかなりの躍進がみられた。さらに診療所や単科精神科病院,総合病院からECT基幹病院へ患者を円滑・敏速に紹介できるようなECTネットワークが検討された。ここではECT紹介センターを介して,詳細な患者情報をもった共通フォーマットを用いて紹介する形式となっている。
原著
  • 和田 健
    2010 年 22 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2014/06/10
    ジャーナル フリー
    中国地方5県におけるECTの現状と,広島市内でm-ECTが施行可能な総合病院精神科3施設での地域連携について紹介した。3施設で2008年にm-ECTを施行した患者数は延べ39名,総施行回数は335回,一人あたり平均施行回数は8.6回で,実患者数は36名であった。うつ病および双極性障害が24名66.7%であり,11名31%が精神科クリニックから,6名16.7%が単科精神科病院からの紹介であった。紹介患者21名中13名は退院後紹介元の医療機関へ通院または転院していた。 紹介を受けてm-ECTを行い,再び紹介元で治療を継続する地域連携がある程度以上機能していると考えられた。今後は精神科救急を担っている精神科病院においても,速やかにm-ECTを行える体制の構築が必要と考え,広島県ECTネットワークを立ち上げ,活動を継続している。
総説
一般投稿
原著
  • 松下 年子, 野口 海, 小林 未果, 松田 彩子, 松島 英介
    2010 年 22 巻 2 号 p. 142-152
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2014/06/10
    ジャーナル フリー
    がん患者が受けた医療者による情報提供と,心のケアの実態を把握するために,インターネットを媒体とした質問調査を実施した。患者がとらえる心のケアは形式的なものではないこと,病名および再発告知(情報提供)の際の心のケアの質・量には幅があること,ケア提供者の89.7%と91.4%は主治医であることが示された。一方,病名告知に伴う自らの相談行為は55.8%に認められ,その相手はプライベートな関係者が圧倒的に多かった。治療中の相談行為は47.2%に認められ,そのうちの75.4%が相談相手を家族としていた。治療中に心のケアを受けた者は32.2%にすぎなかったが,ケア提供者は告知時と比較して主治医以外の医療職が多かった。情報提供の際のより積極的な心のケアの提供と,患者から相談を受ける体制の構築,治療中のがん患者への相談サービスの提供とアピール,主治医以外の医療職による心のケアの展開などの必要性が示唆された。
原著
  • 上田 諭, 石坂 公介, 坂寄 健, 下田 健吾, 大久保 善朗
    2010 年 22 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2014/06/10
    ジャーナル フリー
    電気けいれん療法(ECT)で臨床効果を十分得るためには,発作の有効性を主に脳波によって評価し,それを基に「治療閾値」を超える刺激用量設定をすることが重要である。しかし,けいれん閾値の上昇によって刺激用量を最大に設定しても有効な発作が誘発できなくなった場合,発作増強augmentationが考慮される。今回,有効な発作が生じなくなったため,augmentationとして,より発作時間を短くしないと考えられる麻酔薬への変更,ベンゾジアゼピン系薬剤(BZ)使用例に対するBZ拮抗薬flumazenilの麻酔前投与,発作時間延長を促すためのtheophylline徐放剤の前日夕投与をそれぞれ行った3例(大うつ病性障害2例,双極性障害1例)を,発作モニター記録とともに呈示した。いずれも有効な発作が誘発されるようになり,有害事象も生じなかった。APAのECT Task Force Reportでは,これらのaugmentationの有効性について見解は定まっていないが,本例では有効で安全な方法であることが示唆された。主に米国ではaugmentationについて多くの研究があるが,本邦では少なく,theophyllineの報告は初めてと思われる。さらに,ECTのaugmentationの目的は単なる運動発作誘発や発作時間の確保ではなく,脳波所見を中心に判定される有効な発作の誘発であることを強調した。
feedback
Top