総合病院精神医学
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25 巻, 2 号
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特集:無床総合病院精神科の現在
総説
  • 中嶋 義文
    2013 年25 巻2 号 p. 114-121
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2016/11/18
    ジャーナル フリー

    無床精神科の常勤医ありの施設数は2013年5月の調査では260施設であり,2008〜2009年に底を打ったあと微増している。これは緩和ケアやサイコオンコロジーなどの活動への参加によるものと考えられている。施設の60%が常勤医1名である。50%で臨床心理士が雇用されていた。 66%で緩和ケアチーム活動があった。無床精神科医がいきいきと仕事をするためには業務を整理し,限られた時間を割り振ることで主体的に働き方を決める必要がある。多様性と持続可能性を重視した働き方が無床精神科を魅力的で働きやすい職場とし,無床精神科医の増加につながるだろう。

経験
  • 平 俊浩
    2013 年25 巻2 号 p. 122-129
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2016/11/18
    ジャーナル フリー

    一般病院における無床総合病院精神科を発展させていくためには,コンサルテーション・リエゾン活動を通して精神科の存在意義を高めていくと同時に,プライマリケアチームの能力を高めるための教育と,連携システムを重視することが大切である。年々増加する業務を限られたマンパワーでこなすためには,外来診療をマネジメントするなどの工夫を行って,心身の健康を損ねないようにする必要がある。このような工夫を行いながら,地域医療における中核としての役割を果たしていくことで,魅力的で持続可能なあり方を構築していくことが期待できる。

経験
  • 見野 耕一, 新田 和子, 岩蕗 かをり, 竹村 幸洋, 三宅 啓子
    2013 年25 巻2 号 p. 130-143
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2016/11/18
    ジャーナル フリー

    リエゾンチームの目的は,チーム医療のなかで患者の精神症状の改善や治療環境の精神医学的評価・検討を行うこと(患者対象),治療に関わるスタッフの心身の健康をサポートし,勤務意欲の向上,燃え尽きの防止を目指すこと(職員対象)である。本稿では,患者・家族,医療スタッフ,地域連携に分けて,当院のリエゾンチーム活動のプロセスを紹介し,無床総合病院精神科としてのリエゾンチームの機能と今後の展望について考えてみたい。 活動内容は,患者がこころ穏やかに入院生活をおくられるように,リエゾンチーム回診,リエゾンチームカンファレンスなどを行っている。患者と家族が自分自身のこころの状態に目を向けることができるようにパンフレットを作成している。職員向けには,せん妄などによる転倒・転落の防止,自殺防止や自殺事故後のメンタルサポート,暴言・暴力などによるワークプレイス・トラウマを受けた職員への対応マニュアルを作成している。また,マニュアルをコンパクトにまとめた5つのポケットガイドを運用している。院外に対しては,身体合併症治療病床を活用し,神戸市内の12カ所の精神科病院と連携し,精神科病院入院中の急性期身体疾患患者の治療を行っている。さらに,認知症治療連携として長田区医師会と連携し,認知症連携パスの運用を平成24年6月から開始している。 当院では,リエゾンチーム回診とカンファレンスで,早期の治療的介入とケアを計画し,必要な職種と連携するシステムができている。その過程で,対応マニュアルやガイドラインのポケットガイドを作成したことにより,精神科以外の医療スタッフが連携して早期から治療的な初期介入ができている。その結果,スタッフ自身の「こころのケア」に対する感受性やケアの向上が図られ,メンタルサポートは連携して全員が担っている。院外では,地域の医療スタッフに知識や情報を提供し,精神的ケアの普及と啓蒙を図ることで連携が少しずつ広がっている。開院当初から連携している身体合併症医療システムは,地域の精神科病院で生じた身体合併症治療にある程度の機能分担を果たしている。

原著
  • ─がん専門病院における症状管理について─
    山田 健志, 林田 由美子, 佐伯 吉規
    2013 年25 巻2 号 p. 144-150
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2016/11/18
    ジャーナル フリー

    がん研有明病院で2つめに立ち上げたリエゾン緩和ケアチームに,2012年6月1日から 2013年2月28日までに依頼された228名(男97,女131,平均年齢60.1歳,標準偏差13.7)の精神科診断は,適応障害59(26%),せん妄52(23%),アルコール依存29(13%),気分障害28(12%),急性ストレス反応20(9%),パニック障害・心気症10(4%),認知症8(3%),統合失調症5(2%),その他(睡眠障害含む)17(7%)であった。不眠,食思不振,倦怠,痛みなどはがん自体だけでなく,化学治療や放射線治療の副作用,うつやせん妄の症状と重なり評価が難しい。このような多臓器にまたがる問題は,症状緩和を共通目標とした多職種チームによる対応が望ましく,これが行えるのが総合病院の強みである。高齢化が進むほど心身両面の理解が必要となり,うつやせん妄の診療に長けた緩和ケアチームの役割は大きい。

総説
  • 清水 研, 中原 理佳, 大島 淑夫, 高橋 知実, 和田 佐保, 岩崎 華子, 堂谷 知香子, 小島 聡美, 猪口 浩伸, 加藤 雅志, ...
    2013 年25 巻2 号 p. 151-155
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2016/11/18
    ジャーナル フリー

    本稿においては,「ナショナルセンターのなかの精神科部門の在り方について紹介する」という趣旨に沿うように,われわれの部門の位置づけや,役割を紹介することとする。ナショナルセンターのミッションには1.「最高レベルの臨床技術の提供」,2.「技術革新に資する研究の推進」,3.「エキスパート育成を主眼とした教育」,4.「政策提言」があり,われわれの部門は病院のなかの1 診療単位であるが,精神腫瘍学に関して,臨床に加えて,研究,教育,政策提言の4つの役割を達成することが求められている。多様な役割があることを魅力的と考えるか,負担ととらえるかは人それぞれであろうが,さまざまな領域のエキスパートが集まる環境が得難く,そのなかで高度な臨床や,研究・政策提言などの波及性がある仕事に従事できること,さらには意欲的な若い医師や臨床心理士などの教育に携わることは働き甲斐があることだと感じている。

経験
一般投稿
原著
  • 渡邉 明
    2013 年25 巻2 号 p. 165-170
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2016/11/18
    ジャーナル フリー

    The Confusion Assessment Method(CAM)は簡便なせん妄スクリーニングツールで,世界的に広く使用されている。今回われわれはCAM日本語版を作成し,2012年1月1日から7月31日までに大腿頸部骨折で整形外科入院となった53症例を対象に有用性を検討した。せん妄患者は12例で認め,有病率は22.6%だった。CAM陽性は11例(せん妄10例,非せん妄1例)で,CAM陰性は42例(せん妄2例,非せん妄40例)だった。CAM日本語版は感度83.3%で特異度97.6%,コーエンのκ係数0.83,φ値0.78と十分に高く,せん妄のスクリーニングツールとして優れていると考えられた。日本語版を含むCAMには著作権があり,原著者のサイト(http://www.hospitalelderlifeprogram.org/private/cam-disclaimer.php?pageid=01.08.00)から入手できる。

  • 近藤 大三, 小田原 俊成, 粟田 主一, 池尻 義隆, 下田 健吾, 高橋 晶, 竹内 文一, 長谷川 朝穂, 藤原 修一郎, 吉田 常孝 ...
    2013 年25 巻2 号 p. 171-177
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2016/11/18
    ジャーナル フリー

    Japanese Society of General Hospital Psychiatry(以下,JSGHP)会員の認知症診療の実態と課題を明らかにするため,2012年3月にアンケート調査を実施した。その結果,87施設(総合病院42施設,大学病院24施設,精神科病院8施設,精神科診療所13施設)から回答を得た。認知症診療の主たる診療科は,精神科(86.2%),神経内科(44.8%),脳神経外科(5.7%),内科(5.7%)が担っていた。2011年度の年間外来新患数全体に占める65歳以上の高齢者の割合は,各施設順に45.2%,37.3%,32.9%,15.5%で,診療機関の形態や専門性を問わず認知症診療が日常的に行われていることが明らかとなった。また,大学病院・総合病院の高齢者のコンサルテーションにおいては,いずれも40%以上が認知症であった。今後の問題点と課題として,地域連携促進,専門医療機関(総合病院)の偏在,身体合併症対応,Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(以下,BPSD)治療,教育といった多岐にわたる項目が指摘された。

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