総合病院精神医学
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29 巻, 4 号
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特集:改めて精神科リエゾンチームの意義を考える
経験
  • 福嶋 好重, 片桐 建志, 岡田 七津子, 土屋 真弓, 小出 ひろ美, 荒井 宏
    原稿種別: 経験
    2017 年 29 巻 4 号 p. 336-344
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    精神科リエゾンチーム活動を開始してから4年目に,せん妄の入院日数の比較,看護師へのアンケート調査を行い,チーム活動の成果に関する検討を行った。病棟看護師36名を対象に行ったアンケート調査の結果,チーム介入による変化として,せん妄・不安などの精神症状の改善,ケアやコミュニケーションの改善に関して,80%以上の肯定的な評価を得た。看護師からチームに直接薬の相談ができる,定期的なラウンドがあることなどで,問題解決的な行動をとれるようになったことは大きな成果である。一方,整形外科患者の術後せん妄について,従来の往診のみの患者とリエゾンチームが関与した患者とを比較したところ,リエゾンチームが関与した患者のほうが入院日数,罹病期間ともに短縮化していたが,有意差はなかった。これは,せん妄を発症してからの介入では,従来との差が出にくい可能性が考えられる。今後は,せん妄の予防的な介入の取り組みを検討し,可視化していく必要がある。

経験
  • ─無床精神科の立場から─
    柴田 明日香, 宮川 真一
    原稿種別: 経験
    2017 年 29 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    当院は無床総合病院精神科で,入院患者に対するリエゾン・コンサルテーションに特化した診療を行っている。リエゾン診療件数は年間約600件で,そのうち,せん妄発症事例が65%を占め,院内の重要な課題であった。これらに対応するために,「せん妄予防ケアシステム」を構築し,病棟看護師が主治医を介さず直接リエゾンチームと連携し,せん妄予防対策を始められるように支援を開始した。現在(2017年)は,せん妄や認知症だけでなく,身体疾患に伴う様々な心理的問題や精神疾患を含めて,病棟看護師が“直観として感じ取った異変”や“関わり方の困難さ”を気軽に相談できる場として発展し,年間約1,600件の支援を行っている。

    無床総合病院精神科は,“精神科医師の少人数体制”“無床”という弱みはあるが,精神科医師と専門看護師との“チーム内連携の強化”が図れ,組織全体の育成に協働できたこと,また無床であるからこそ特定の病棟に縛られず,組織全体に対し“機動性の高いチーム”として活動できたことが,瞬時の対応や判断に苦慮する看護師の実践力の向上に貢献できたと考える。

原著
  • ─能動的同定による在院日数の短縮の可能性─
    山崎 真平, 川島 啓嗣, 安原 沙織, 森本 良武, 杉原 玄一, 吉岡 隆一
    原稿種別: 原著
    2017 年 29 巻 4 号 p. 351-360
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    序言:せん妄は予後の悪化,在院日数の延長などの問題を起こすが,その多くが見逃されている。早期発見や早期介入は重要であるが,在院日数を短縮したという報告は乏しい。

    方法:一般病棟の入院患者を対象に,精神科リエゾンチームがせん妄患者の早期発見を目的に病棟ラウンドを毎週行った。病棟看護師の報告,不穏時頓服の使用歴や入院時持参薬からせん妄を疑う患者を選んだ。その情報を基にラウンドを行い,せん妄患者を同定し,その場で看護師へ薬理学的・非薬理学的介入を助言した。ラウンドの実施前後で,精神科へ紹介されたせん妄患者の数,および在院日数を比較した。

    結果:実施2年目では実施前に比べて,紹介されたせん妄患者の全入院患者に対する割合は増加し(1.60% vs. 0.64%,p<0.001),在院日数は短縮した(中央値28.5日vs. 42.0日,p<0.01)。

    結論:病棟ラウンドはせん妄患者の在院日数を短縮する有効かつ実行可能性の高い方法であることが示唆された。

総説
  • 小石川 比良来
    原稿種別: 総説
    2017 年 29 巻 4 号 p. 361-372
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    平成24年度から5疾病5事業時代に入り,一般医療と精神医療の連携の重視が鮮明になった。そのなかで精神科リエゾンチーム加算が登場し大きな波紋を広げた。当初は報酬額の少なさや施設基準の厳しさから算定施設数の伸びはゆっくりしていたが,平成28年度診療報酬改定で精神科急性期医師配置加算の施設基準の要の要件となり,さらに総合入院体制加算2&3の施設基準に組み込まれることで,飛躍的に加算施設数が増加し存在感を増した。精神科リエゾンチームを一般医療と精神医療の連携を推進するためのfunctional unitとすると,これは総合病院精神科の評価を診療報酬上,直接的評価と間接的評価,2つの面から進めることを意味している。診療報酬の側から総合病院精神科医療の新たな位置づけと可能性を示唆していると考える。

一般投稿
原著
  • 津村 麻紀
    原稿種別: 原著
    2017 年 29 巻 4 号 p. 373-382
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】がん医療では心理職に対してニーズが高まる一方,心理的支援の標準的な質の確保に課題がある。本研究では,がん医療に携わる心理職の活動実態を明らかにしたうえで,属性と活動内容との関係を検討した。【方法】15名の心理職への半構造化面接から抽出された37 の概念と15のカテゴリーを基に質問紙を作成し,全国のがん診療連携拠点病院の心理職143名の回答を分析した。【結果】がん医療に携わる心理職の最頻値の属性は,中堅の常勤で精神科系所属であり,「連携」を主軸とする兼務型の活動体制をとっていた。知識や経験の充足に関する自覚が高い者が,低い者よりも有意にコンサルテーションや心理教育を行っていた。【結論】心理職はコンサルテーション・リエゾン活動でがん医療に携わるため,多職種との連携と関係支援が求められる。知識や経験によって活動内容に違いが出ており,活動のモデル化や研修制度の充実の必要性があると考えられる。

症例
  • 富岡 健, 武井 明, 土井 準, 廣田 亜佳音, 泉 将吾, 目良 和彦, 佐藤 譲, 原岡 陽一
    原稿種別: 症例
    2017 年 29 巻 4 号 p. 383-389
    発行日: 2017/10/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    永久型下大静脈フィルター(以下,IVCフィルター)が挿入された統合失調感情障害の患者(女性,48歳)に対して修正型電気けいれん療法(以下,mECT)を施行した。本症例は,34歳時から躁病相を繰り返したため薬物療法を受けていたが,35歳時から躁症状とともに被害的な内容の幻聴と妄想が出現し,薬物療法で改善されないため,当科に入院しmECTを繰り返し施行されていた。 45歳時に左下肢の深部静脈血栓症に対してIVCフィルターが挿入された。IVCフィルター挿入後の 48歳時に,躁症状や被害的な内容の幻聴と妄想を認め,薬物療法の効果が十分でないためmECTを施行する方針となった。mECTに際しては,胸部外科と相談してタニケットの装着する位置に留意した。その結果,IVCフィルターは破損することなく,mECTを安全に施行し十分な治療効果が得られた。したがって,薬物療法によって治療が困難な精神症状を呈しIVCフィルターが挿入された患者に対して,mECTは安全で有効な治療手段の一つであると考えられた。

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