総合病院精神医学
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24 巻, 4 号
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特集:総合病院における児童・思春期診療の現状と課題(2)
経験
  • ─児童領域を専門としない精神科医が外来で子どもを診るために─
    荒井 宏
    2012 年 24 巻 4 号 p. 334-341
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    市中の総合病院では,児童精神科領域の治療だけに専念できる精神科医を確保できることは稀で,普段は大人の診療を行っている精神科医が子どもも診ていかなければならない。多忙ななかで子ども診療を行うためには,子どもの診療の特徴を理解し,それに応じた“工夫”をする必要がある。 受診経路の特徴としては,精神科治療の対象となる子どもの多くが小児科外来を受診しており,小児科医と上手に連携を取りながら診療にあたることが不可欠である。本稿では,始めに当院での児童精神科医療の現状について述べ,次に子どもの診療を行ううえで課題となるポイントをあげた。そして,それらの問題点を克服するための工夫として,当院で行っている①小児科外来スペースでの診療,②臨床心理士との業務連携,③質問紙や資料の有効な活用など,④外部施設の利用,について紹介した。
総説
  • ─横浜市立大学附属市民総合医療センターにおける児童精神科専門診療について─
    高橋 雄一, 中川 牧子, 大塚 達以, 小田原 俊成, 竹内 直樹, 平安 良雄
    2012 年 24 巻 4 号 p. 342-348
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    児童精神科を訪れる小児は,発達障害や,身体愁訴や行動上の問題を主症状とする精神疾患が多い。総合病院では身体疾患の鑑別や治療が可能であり,受診への抵抗感が少ないことから児童精神科診療の需要は多い。しかし現状では,総合病院精神科において児童精神科診療を行う施設は数少ない。横浜市立大学附属市民総合医療センターでは,専門外来として児童精神科外来を設置し,成人と共用の閉鎖病棟で小児の急性期の精神科入院治療に対応している。外来患者のICD-10による主診断はF4やF9が多い。一方入院患者については,外来患者と比較して年長でF4,F5,F2が多く,主症状は行動化や栄養障害,精神病症状などで,成人の入院適応との差異は少ない。児童思春期病棟のない総合病院においても,児童精神科診療に対応できることは多い。医療者の児童精神科診療の経験と多職種連携により,総合病院精神科における児童精神科診療の拡充が図られると考えられる。
原著
  • 高橋 秀俊, 豊永 公司, 高橋 雄一, 荒井 宏, 船曳 康子, 宮川 真一, 廣常 秀人, 本田 教一, 齊藤 卓弥, 築島 健, 吉田 ...
    2012 年 24 巻 4 号 p. 349-360
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    日本総合病院精神医学会では,平成24年に児童青年期精神科診療に関するアンケート調査を実施した。回答者の所属施設の8割で児童青年期精神科診療を実施しており,うち児童青年期の外来診療は8割以上の施設が精神科で実施し,入院診療については成人と共用の精神科病棟ならびに実施していない施設が各4割以上あった。児童青年期精神科診療を積極的に実施しているのは,大学病院(ほかに小児医療センター,ナショナルセンター),あるいは精神科医師数の多い施設に多かった。 児童青年期精神科診療に関する研修は,4割が受けたことがなかった。児童青年期精神科診療を発展させるためには,専門医を含めたマンパワーの確保,円滑な他施設との連携体制,診療報酬の適正化などが必要であるという意見が多かった。本調査は,学会会員を対象とした予備的調査で,会員の代表性の問題など限界もあり,さらにしっかりしたデザインの調査研究の実施が今後期待される。
一般投稿
経験
  • 京野 穂集, 竹内 崇, 武田 充弘, 池井 大輔, 高木 俊輔, 治徳 大介, 西川 徹
    2012 年 24 巻 4 号 p. 361-366
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    自殺手段として飛び降りを選択した患者と,刃物による自傷を選択した患者との間では,どのような共通する特徴や差異があるかについて調査した。対象は2006年7月より2011年6月までの5年間に,自殺関連行動により救急搬送されERセンター救急科に入院となった患者718名のうち,自殺手段として高所から飛び降りた群(以下「飛び降り群」とする)(n=23名)と,浅いリストカットを除いた刃物による重篤な自傷(頸部,胸腹部,大腿部,腱断裂など)を用いた群(以下「刺傷群」とする)(n=21名)とを比較した。飛び降り群では,男性8名,女性15名と女性の割合が高かったが,刺傷群では男性14名,女性7名と男性の割合が高かった。今回の調査では,飛び降り群より,刃物による重篤な自傷群において,男性の比率がより高い傾向にあることが明らかとなった。また,両群ともに全体統計と比べ内因性精神障害(ICD-10診断のF2+F3)の割合が高い傾向にあった。 自殺企図の要因についてF2圏に注目してみると,飛び降り群(n=7)では自殺企図の要因として,心理社会的要因が半数を占めるのに対して,刺傷群(n=5)では全例とも幻覚妄想状態による自殺企図であることがわかった。刺傷という手段は飛び降りと比べ,より幻覚妄想に親和性の高い企図手段である可能性がある。
  • 五十嵐 徹, 緒方 麻裕, 澤村 岳人
    2012 年 24 巻 4 号 p. 367-374
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    自衛隊横須賀病院は,自衛隊員や家族,部外患者にも広く利用されている。当院におけるカウンセリング・精神科外来の,平成22年10月1日から1年間の診療状況を集計・解析した。カウンセリング初診利用者数は92名,再診延べ利用者数は729名であり,初診相談内容は「精神的不調についての相談」が48.9%で最も多く,次いで「仕事の内容についての相談」が37.0%だった。精神科外来受診者数は初診患者204名,再診患者延べ数2,489名であり,初診患者の疾患内訳はF4:神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害が59.3%で最も多く, F3:気分(感情)障害が23.5%と続いた。当院外来患者の多くが特殊な勤務環境を含めた職場ストレスに起因する適応障害患者であり,職域総合病院の特徴であると考えられた。今後の課題として,職場不適応への対応の充実や,治療と復職を支援する体制の強化,職域における医療と人事の分担と連携などがあげられる。
症例
  • 岩本 崇志, 三舩 義博, 森田 幸孝, 和田 健, 野嶌 真士
    2012 年 24 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    産褥期精神病とは,産後1 ~2週間で発症し,気分症状と精神病症状を引き起こす比較的まれな疾患である。その病因の一つとしてエストロゲンがドパミン受容体に影響を与え,妊娠中に増加したエストロゲンが出産後減少することにより,ドパミン受容体の感受性を上昇させる可能性が考えられている。薬物療法を含む標準的な治療法は確立されておらず,ECTによる治療例の報告も少数である。今回われわれは,出産後に急激に幻覚妄想や緊張病症状,躁症状,抑うつ症状,意識障害が出現した産褥期精神病の1例に対して,当初olanzapineやaripiprazoleなどの非定型抗精神病薬を使用した。しかし,不耐性で著明な薬剤性錐体外路症状を呈したため,非定型精神病薬を中止しECTを施行することにて著効が得られたので報告する。
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