総合病院精神医学
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28 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集:ニューロイメージング:精神科臨床への最新の応用
総説
  • 松田 博史
    原稿種別: 総説
    2016 年 28 巻 3 号 p. 210-218
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer’s disease(VSRAD®)は,3次元の全脳の構造MRIを用いてvoxel-based morphometryを行うWindows OSで動く単独のソフトウェアである。日本全国の約3,000施設で用いられており,認知症を来す精神神経疾患の早期および鑑別診断ならびに進行度評価と日常臨床における補助診断法として幅広く用いられている。解析の手順は,まず,MRIを灰白質,白質,脳脊髄液に分割し,次に灰白質と白質画像,それぞれを線形変換と非線形変換により標準脳に形態変換する。その後,平滑化を行った後,正常データベース画像と統計学的に比較する。統計学的な比較においては,正常データベース個々の患者のデータが各ボクセルにおいて平均から何標準偏差離れているかというZスコアマップを算出する。

総説
  • 入江 隆介, 鎌形 康司, 堀 正明, 國松 聡, 青木 茂樹
    原稿種別: 総説
    2016 年 28 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    従来,精神疾患に対する画像診断の役割は器質的疾患の除外が主体であり,多くは「異常なし」と判断されてきた。近年ではMRIの進歩がめざましく,形態的にも機能的にも非常に多くの情報を得られるようになってきている。精神疾患を対象とするMRIの研究としては,voxel-based morphometryによる灰白質および白質の容積評価,拡散MRI による白質線維の構造異常の評価などが盛んに行われている。本稿では拡散MRI,特にdiffusion tensor imaging(DTI)を中心に解析の基礎的事項について述べるとともに,近年注目されているDTIを用いた脳内の構造的ネットワーク解析についても一端を紹介する。また,各論として統合失調症,双極性障害,大うつ病性障害,不安障害について最近の知見について述べる。

経験
  • ─DATscan を中心に─
    野田 和幸
    原稿種別: 経験
    2016 年 28 巻 3 号 p. 226-232
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    DATscanは,神経変性疾患によるシナプス前ドパミン作動性神経機能障害を検出するための感度の高い方法である。薬剤誘発性パーキンソニズム(DIP)は,パーキンソン病(PD)に次いで2番目に頻度の高いパーキンソニズムであり,その鑑別は治療および予後を考えるうえで重要である。DATscanは,PDをはじめとする黒質変性によるドパミン神経細胞の減少の有無を評価し,薬剤性,心因性および血管性パーキンソニズムの診断をサポートするうえで有用と考えられる。 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)は,認知症および認知機能の著しい変動,幻視,薬剤によらないパーキンソニズムといった他の臨床的特徴の存在に基づいて診断される。 DATscanは,アルツハイマー病(AD)および他の認知症からDLBを区別し,正確な予後推定および治療のために重要と考えられる。今回われわれは,自験例を提示し,これらの疾患の診断におけるDATscanの有用性を解説する。

総説
  • 桐野 衛二
    原稿種別: 総説
    2016 年 28 巻 3 号 p. 233-242
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    うつ病とアルツハイマー病(AD)初期にみられるうつ症状の鑑別は重要であるが,実際の臨場面では困難であることが多い。本稿では,鑑別のためのニューロイメージング手法の一つとして,single photon emission computed tomography(SPECT)の画像統計解析法,three-dimensional stereotactic surface projection(3D-SSP)を自験データとともに概説した。3D-SSPを用いたSPECT検査は,うつ病とADを両端に置いたスペクトラムのなかに,仮性認知症や潜在ADの存在,またはその間の移行を考慮する一助となり得る。もう一つの手法として,ドーパミントランスポーターシンチグラフィ(DAT-SPECT)のうつ病の病態評価への援用の可能性について,簡単に紹介した。未だ知見の集積に乏しいが,DAT-SPECTがセロトニントランスポーターの活性も評価できることを利用して,将来うつ病診断に利用できる可能性が考えられる。

一般投稿
原著
  • 五郡 直也, 前田 千織, 横田 悠季, 服部 功太郎, 木村 円
    原稿種別: 原著
    2016 年 28 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    腰椎穿刺後の頭痛の発生は,患者に与える影響が大きい。関連因子として若年,女性,低BMI,慢性頭痛などがあげられているが,発生メカニズムも含めて十分に解明されていない。われわれは,日常臨床経験から,腰椎穿刺後の頭痛の発生に精神状態が関連していると仮説を立て,探索的な検討を行った。結果,腰椎穿刺後の頭痛の発生の低下に精神疾患が影響していることが示唆された。今後,向精神薬の内服状況や腰椎穿刺後の活動量調査など新たな関連因子を,サンプル数を増やして検討していく。

  • 倉田 明子, 和田 健, 岩本 崇志, 井上 俊一, 竹之下 慎太郎
    原稿種別: 原著
    2016 年 28 巻 3 号 p. 249-256
    発行日: 2016/01/01
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    せん妄はがん患者に多い精神疾患であり,治療や介護の困難さとともに,患者や家族に大きな苦痛をもたらす。近年,早期からのせん妄リスクの評価や介入が,せん妄の出現や重症化を予防するとされている。

    当院では,入院患者に入院時からせん妄リスクの評価や予防的ケアなどを行うせん妄ケアプログラムを行っており,入院がん患者におけるせん妄プログラムの施行状況を調査したところ,約1/4にせん妄リスクが存在し,早期に予防的介入を開始されていた。また,ケアプログラムにより,せん妄リスクを早期に察知する意識の広まりが示唆された。一方,精神科コンサルテーション診断がせん妄だった症例の約半数で,せん妄ケアプログラムでの看護師による評価ではせん妄が見落とされ,特に低活動型や混合型の見落としが多かった。今後はスタッフ教育の充実や評価精度の向上,アセスメント間隔の見直しが必要と考えた。

症例
  • 近江 翼, 金井 講治, 陸 馨仙, 高田 宏宗, 松永 秀典
    原稿種別: 症例
    2016 年 28 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    遷延した抑うつ症状のため悪性腫瘍に対する治療を拒否していたが,mECTにより抑うつ症状が改善し,悪性腫瘍の治療が可能となった2 例を報告する。 症例1:66歳女性。X−3年にうつ病を発症し,他院で治療が開始された。X年1月,早期胃癌と診断されたが抑うつ症状のため手術を拒否し,X年4月,mECT導入目的で当科に入院した。 mECTで症状は改善し,本人希望で手術が行われた。症例2:62歳女性。X−12年にうつ病を発症し,他院にて1年で軽快した。X−3年,他院で乳癌と診断され,うつ病が再発。手術後,治療を継続せずに自宅で寝たきりの状態が続き,X年2月に当科に入院した。入院後,乳癌再発を認めたが精神科治療を優先し,mECTを行った。mECT で症状は消失し,本人希望で手術が行われた。この2 症例から早期治療介入が必要な身体合併症を有するうつ病患者に対しては,mECTが推奨されることが示された。

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