日本菌学会会報
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最新号
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総説
  • 瀬戸 健介
    2023 年 64 巻 2 号 p. 25-40
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    真菌類の分類,系統の全体像は,分子系統解析の台頭,進展によりここ20年ほどで大きく塗り替えられた.特に,基部系統群として扱われてきたツボカビ門および接合菌門については,複数の門に分割されるなど大きな影響を受けてきた.また,近年ツボカビ門より原始的な系統に位置するオピストスポリディア系統群が認識され,その系統学的研究が急速に進展した.これらの真菌類基部系統群の系統関係を正確に推定することは,真菌類の起源や初期進化を考察する上で重要である.これまで,初期の単領域から数領域の規模の分子系統解析から,近年のゲノムデータを用いた大規模解析まで,真菌類基部系統群の系統関係を明らかにしようとする研究が多数行われてきた.本稿では,広義ツボカビ門およびオピストスポリディア系統群に焦点を当て,それらの分類,系統に関する研究史を解説するとともに,今後の展望について考察した.

論文
  • 牧野 純, 中束 賢譲, 根津 郁実, 石栗 太, 中澤 武
    2023 年 64 巻 2 号 p. 41-55
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    わが国の『環境省レッドリスト2020』において,絶滅危惧種Ⅱ類(VU)にランクされているキリノミタケChorioactis geasterの保全を目的に,本種の菌糸成長と木材腐朽の特性を明らかにするとともに,原木栽培における子実体発生を試みた.その結果,菌糸はPDA培地において4℃から38℃までの範囲で生育し,その適温は30℃付近にみられた.木材腐朽に関与する環境要因等の影響は,線形混合効果モデルを用いて解析した.モデル選択の結果により,材の質量減少率は,樹種,培養温度,培養期間によって,また,ほだ木の材密度は栽培期間によって影響されることが示された.原木栽培においては,接種7年目の秋,イチイガシQuercus gilva のほだ木から最初の子実体が発生し,その時点における辺材の材密度は約0.62 g/cm3,質量減少率は約15%であった.子実体はその後も発生し,一部は裂開して子実層を裸出した.キリノミタケの原木栽培は,生息域外における有効な保全手法となる可能性が示唆された.

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