清酒製造用の黄麹菌(Aspergillus oryzae)のバリエーションを増やすため,自然界由来の黄麹菌を分離し,それらの清酒の種麹としての評価を行った.長岡高専敷地内の屋外より米-木灰-リン酸カリウム培地を用いて,Aspergillus属と推定された糸状菌13株を分離した.それらの形態観察,AF産生性の判別,ITS1-5.8S rDNA-ITS2領域およびAF生合成遺伝子ホモログの解析,amyコピー数の推定の結果より,全ての分離株はA. oryzaeと同定された.分離株および2つの清酒用種麹を含む3つの対照株を用いて米麹を製造し,それらの清酒醸造に重要な酵素活性を測定した.13の分離株は,実用株と同程度またはそれ以上のα-アミラーゼとグルコアミラーゼの活性を示したため,清酒用種麹としての利用が可能と考えられた.また,良質麹の指標であるG/A比では,NKK9株以外の12株は清酒用種麹より高い値を示した.これらのことから,NKK9株以外の12の分離株は,吟醸酒用の種麹としての利用が期待できる.
日本新産種Flammulina fennaeを新潟県産標本に基づき報告した.日本産標本は傘の縁が類白色を帯び,地中に偽根を形成する点,傘表皮の末端細胞がほとんど分岐しない点で原記載と一致した.本菌の核rDNA ITS領域とrpb2遺伝子の塩基配列について最節約法と最尤法で系統解析を行った結果,ITS領域の最尤法解析では単系統性が示されなかったが,その他の解析でこれらは単系統群をなし,本菌のユーラシア大陸北部から日本列島への連続的な分布が示唆された.
Cladosporium spp. 2株(NBRC 4459とNBRC 6348)とAureobasidium spp. 2株(NBRC 6353とANCT-11003)の各菌体ディスクを純水に浸漬し,2 ℃,7 ℃,25 ℃に30 wk投入して経時的な生存率変化を観察した.その結果,全温度で生存率100%が維持され,30 wk保存株のPDA平板培地における25 ℃での菌糸伸長は各コントロール(継代培養保存株)と同等であった.起菌した菌体に対するラベンダー油の抗カビ活性にコントロールとの違いはなかった.以上から2~25 ℃で30 wkを超える供試菌株の純水保存が期待される.
福島原発事故後に,富士山の方位別および標高別に野生食用きのこ3種を採集して,子実体の放射性Cs濃度を測定した.富士山東面では全ての地点で最高値を示す試料が多く,特に中標高地域が高かった.次いで北東面の中標高地域および高標高地域で高い傾向にあった.北面では低い値を示す試料が多く,高標高地域では特に低い値を示す傾向にあった.
ヒゲユスリカ族(ユスリカ科)幼虫の中腸からStachylina subgrandisを、同後腸からSmittium aggregatumを日本で初めて報告した。調査した4頭のうち3頭は2種が二重感染しておりそれぞれの部位に認められた。Smittium aggregatumは細胞が柵状に横に並び付着物質で覆われた発達した付着部を持っていた。この付着部細胞の配列の発達過程を考察し図示した。
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