日本菌学会会報
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36 巻, 4 号
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論文
  • 明智 洸一郎
    1995 年 36 巻 4 号 論文ID: jjom.H06-143
    発行日: 1995年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     Rhizoctonia solaniを糖を含まないツァッペク寒天の上にセルロース膜を置床した培地(CCMA)で培養すると,セルロース膜の下に特殊な菌糸構造物を形成した.

     供試15属27種の植物病原菌のうち,R. solani,R. oryzae等のRhizoctonia属菌,Sclerotium fumigatum,S. oryzaesativae,S. hydrophilum等のSclerotium属菌,Sclerotinia sclerotiorum,Corticium rolfsii,Nakataea sigmoidea var. irregulareなどで菌糸構造物の形成がみられた.グルコース,スークロースなどを添加したCCMAでは菌糸構造物は形成されなかったが,トレハロース,マンニトールを含む培地では形成された.菌糸構造物はセルロースなどの繊維よりなる濾過膜,ポリカーボネート濾過膜では形成されなかった.2種類の膜を重層した場合,菌糸構造物は常にセルロース膜の下に形成されたが,ポリカーボネート濾過膜をセルロース膜の上に重層した場合だけは両膜の間に形成された.バリダマイシン A 0.01 μg/ml の添加は菌糸構造物の形成を阻止した.

  • 武丸 恒雄, 鈴木 瑞穂, 三垣 尚美
    1995 年 36 巻 4 号 論文ID: jjom.H06-152
    発行日: 1995年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     エノキタケの野生型一核菌糸体上に形成された分裂子に,致死率98%以上の線量でUV照射を行った.分離総数4,624のうち187(4.0%)が栄養素要求性突然変異体であったが,完全培地上で7~50日培養する間にその56.7%に当たる106個体が野生型に回復した.残りの81変異体には,アデニン要求性19株,メチオニン要求性12株,p-アミノ安息香酸要求性6株,アルギニン要求性4株,ニコチンアミド要求性とヒスチジン要求性各2株,ロイシン要求性,イソロイシン要求性,リジン要求性各1株などが含まれている.二重変異体も3株分離された.相補性検定によって,アデニン生合成に関与する5つの遺伝子(ade 1~ade 5)が,またメチオニンでは4つ,p-アミノ安息香酸とアルギニンではそれぞれ3つ,ニコチンアミドとヒスチジンではそれぞれ2つの遺伝子が検出された.アデニン要求性の2遺伝子,ade 1ade 2,アルギニン要求性遺伝子の1つarg 1p-アミノ安息香酸要求性のpab 1遺伝子,および形態変異の遺伝子cについて,交配による遺伝解析を行った結果,3連鎖群からなる暫定的な連鎖地図を作成することができた.

  • MASUDA Paul, 野上 友美, 森 信寛, 北本 豊
    1995 年 36 巻 4 号 論文ID: jjom.H06-158
    発行日: 1995年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     エノキタケの高温生長性品種の育種における経験則を得るため検討を行った.栽培品種より作出した一核株の生長最適温度は22.0-25.7°Cまで連続した正規分布を示した.一核株を交配型で分別した場合,A2因子を有する株がA1因子を有する株より格段に高温性を示した.二核交雑株の温度特性も正規分布を示し,中心値は一核株より0.9°C高い23.4°Cであった.一核株の温度特性を高温性(H),中温性(M),低温性(L)に区分して交配したところ,(H)×(H)の交雑では64%,(H)×(M)では58%,(H)×(L)では42%が高温性株となった.高温性同士交配では,A1B1×A2B2の交配で高温性株が80%以上の比率で作出されたが,A1B2×A2B1では高温性株の比率は50%前後であった.正逆交雑により得た細胞質が異なる2種類の交雑株間の高温性株作出率の比較では,A1B2×A2B1の交配では差異があったが,AlB1×A2B2の交配では有意差はなかった.これらの検討の過程で,従来に報告のない生長最適温度が25.9°Cの高温性株が作出された.

研究レポート
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