日本菌学会会報
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39 巻, 4 号
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論文
  • 森本 信吾, 衣川 堅二郎, 種坂 英次, 小川 眞
    1998 年 39 巻 4 号 論文ID: jjom.H09-151
    発行日: 1998年
    公開日: 2023/03/31
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     栽培特性の異なるタイ国産と日本産ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)の間のF1菌株群に現れる特性の変異について検討した.交配試験の結果,両菌株は交配型因子AとBについて異なっていた.またF1菌株群を22℃栽培区での多回数発生と1回または無発生の2集団に分け,互いに比較した.Zスコアー散布図の結果から,発生温度特性と栽培形質,ならびに子実体特徴との間には相関関係のあることが推定された.以上から,タイ国菌株の生殖質導入は日本産菌株の育種に有効であることが判った.今回のF1菌株群の中にも優良な菌株が存在した.

  • ―土壌中のキュウリ幼植物根内外における両菌接触の場の顕微鏡観察
    木下 富雄, 一谷 多喜郎
    1998 年 39 巻 4 号 論文ID: jjom.H09-159
    発行日: 1998年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     キュウリ幼植物根に寄生者P. oligandrum,宿主P. ultimumを接種し,覆土して両菌の相互作用を調べた.宿主を単独接種した場合,キュウリは2日以内に全て倒伏枯死した.寄生者を単独接種した場合には根の損傷および生育遅延がみられたが,間もなく回復し枯死するものはなかった.また,予め寄生者を感染させた後宿主を接種した場合には,キュウリは一時的な生育遅延を示したが,やがて僅かな遅延にまで回復し,その生存率は50%前後に向上した.寄生者は根の表面に多く内部には少ないが,宿主は根内に激しく侵入し多数認められた.寄生者は宿主に接近,捕捉,侵入の過程を盛んに繰り返した.宿主菌糸は寄生者の接触で原形質が顆粒化し,侵入されると多数の隔壁を形成したが,やがて原形質が消失した.宿主は寄生者の存在下で早期に溶菌し,卵胞子が増加した.宿主の存在下では寄生者の菌糸密度は増加したが,卵胞子量は著しく減少した.

総説
  • ―彼らがいなくて何ができるというのか
    ワトリング ロイ
    1998 年 39 巻 4 号 論文ID: jjom.H09-169
    発行日: 1998年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     菌学の歴史におけるアマチュアの役割は,まず食物としてのきのこ採集に始まり,それが現在の活動に繋がっていることをたどってみました.そしてここでは特に,18世紀から19世紀及び今世紀前半にかけて,もっぱら菌類だけを研究したアマチュア,あるいは広く博物学の一環として菌類を研究したアマチュアの中で,最も重要な役割を果たした人々に注目しました.そして,それらの人々が菌学の発展にどのような影響を与えたかをお話ししました.私たちが日常的に使っている菌類の学名には命名者の名前が付記されていますが,それらの多くがアマチュアであることは忘れられがちです.これらアマチュアの本職が何であったのか,彼らがどのような情報交換の網をひろげていたのかなどを紹介し,それらが生き物としての菌類の全体像を把握するのにどのように役立ったかをお話ししました.さらに,菌学会の設立と,それがどのようにしてアマチュア活動の中心となったか,また,どのようにしてプロの菌学者に必要な正確でよく整理された情報の源になったのかを考えてみました.私がここでお話ししたアマチュアたちが手がけた仕事は,1996年に100周年を祝った英国菌学会の活動を例としております.

     西暦2000年の歴史の区切りを目前にした世界のいたるところで,これらアマチュアとそれに類する人たちが引き続きおこなっている仕事について述べました.多くの政府機関やそれらの顧問,とくに有力者は,分類学は先端的な研究ではないと勘違いしていますが,私はアマチュアたちは国家的に重要かつ必要な資源であることを強調したいと思います.さらに,アマチュアはこれから知識の保持者としてますます重要な役割を果たすであろうこと―少なくとも科学に対する現在の誤った風潮が改善されるまで―を強調したいと思います.

研究レポート
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