2011~2013年,青森県でムキタケの名で呼ばれているきのこの採集を行い,それらの生物学的特徴の解明と分子系統解析を行った.供試標本は子実体の傘表面の色に基づき黄色型と緑色型に類別された.両者は形態的に類似していたが,傘表面の色調のほか柄の表面構造,傘やひだ組織の顕微鏡的構造,担子胞子の大きさなどにおいて差異が見られた.D1/D2 領域の配列に基づく分子系統解析では,両者は系統的に近縁であるが,互いに独立したクレードを形成し,共にPanellus 属の基準種であるPanellus stipticus との関連性は極めて低かった.また両者の単核菌糸体はいかなる組み合わせにおいても不和合を示した.以上の結果から,黄色型をSarcomyxa edulis (Y.C. Dai, Niemelä & G.F. Qin) T. Saito, A. Tonouchi & Y. Harada, comb. nov.,和名ムキタケとし,緑色型をS. serotina,和名オソムキタケ(新称)として区別すべきことを提案する.
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