日本公衆衛生看護学会誌
Online ISSN : 2189-7018
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8 巻, 2 号
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巻頭言
研究
  • 麻原 きよみ, 小野 若菜子, 大森 純子, 橋爪 さつき, 井口 理, 池谷 澄香, 小林 真朝, 三森 寧子, 宮崎 紀枝, 長澤 直紀 ...
    原稿種別: 研究
    2019 年 8 巻 2 号 p. 80-88
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    目的:自治体で働く事務職と保健師が,両者が関わる中で保健師の仕事をいかに認識しているのかについて記述した.

    方法:2つの自治体の事務職10名,保健師15名に対するインタビューを中心として参加観察,資料の検討を行い,質的に分析した.

    結果:事務職については〈事務職がもつ基準で保健師の仕事をとらえる〉〈事務職と同じ行政職としての仕事を求める〉のカテゴリと4つのサブカテゴリ,保健師については〈保健師の仕事と専門性が理解されない〉〈行政組織の一員として保健師の仕事をするために努力する〉のカテゴリと4つのサブカテゴリが抽出された.

    考察:事務職は官僚制組織の特性を示す基準,保健師は専門職の基準で保健師の仕事をとらえていること,そこには組織内の集団間パワーバランスが関連していると考えられた.保健師は事務職とは判断基準が異なることを前提として,協働のあり方や基礎・現任教育を考える必要がある.

  • 久富 沙織, 佐伯 和子, 水野 芳子
    原稿種別: 研究
    2019 年 8 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    目的:60歳以上の地域住民がもつ認知症高齢者に対するサポートの実施意向の実態を明らかにし,さらに,個人属性,認知症の人に対する態度,地域に対する思いとの関連を明らかにする.

    方法:大都市に居住する225名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.個人属性,認知症の人に対する態度,地域に対する思い,サポートの実施意向をたずね,統計分析にはχ2検定とFisherの直接確率検定,t検定を用いた.

    結果:有効回答は176名(有効回答率78.2%)であった.実施意向「あり」130名,実施可能内容は「観察」102名,「話し相手」87名,「家事の手伝い」14名であった.実施意向の有無は,認知症の人に対する態度尺度の総得点と,地域に対する思いのうち積極性,協同による充実,行政との対等な関係と関連があった.

    考察:住民は観察や話し相手を引き受ける意向を示していた.よりよい地域づくりに向けた意識と認知症の人に対する態度が否定的であるよりも肯定的である方が,住民は認知症高齢者へのサポートの担い手になり得る.

  • 齊藤 葉月, 平野 美千代
    原稿種別: 研究
    2019 年 8 巻 2 号 p. 96-103
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    目的:前期高齢者の他者とのつきあいと孤独感との関連を明らかにする.

    方法:A県の3町に居住する要介護認定を受けていない65~74歳600名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,個人要因,他者とのつきあい,孤独感(AOK孤独感尺度)で構成し,分析は,孤独感を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を用いた.

    結果:調査票は回収数299部,有効回答数292部(有効回答率48.7%)であった.孤独感の平均得点は1.41±2.17点であった.友人と会うことに満足していない(OR=5.72),近所の者と会う頻度が月に数回以下(OR=2.94),近所の者と会うことに満足していない(OR=3.15),情緒的サポート受領の相手がいない(OR=2.81)者ほど孤独感を感じていた.

    考察:退職などにより生活が変化し,地域への適応が望まれる前期高齢者の孤独感に対して,近所の者との定期的な接触や,友人および近所の者との間に,会えば満足感が得られる充実した関係を構築・維持することの重要性が示唆された.

  • 松元 悦子
    原稿種別: 研究
    2019 年 8 巻 2 号 p. 104-112
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    目的:在宅療養生活を続ける難病患者が,喪失体験の連続が生じる中で,自分仕様の生活を再構築するプロセスを明らかにする.

    方法:在宅療養を続ける難病患者8名に半構成的面接を行い,病状の進行に伴い変化する状態や気持ちに関するデータを収集し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ法で分析を行った.

    結果:在宅療養生活を続ける難病患者が自分仕様の生活を再構築するプロセスは,[日常生活からの逸脱]から始まる.告知により[見込みの立たない将来への不安]を抱く中,【しょうがない】という気持ちの置き所を作る.この間に,主体的に[自己管理を頑張る]ことと[必要な支援を得る]ことのバランスを取り,長期療養生活に対応できる修正可能な自分仕様の生活スタイルを再構築することで[社会の中に役割や居場所を見いだす]に至るプロセスが明らかになった.

    考察:プロセスの展開には,気持ちを【しょうがない】に置くことが重要であった.

活動報告
  • ―全国健康保険協会加入事業所の取り組みについて―
    茂 寿枝, 成瀬 昂, 永田 智子
    原稿種別: 活動報告
    2019 年 8 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/30
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    目的:事業所での30歳代常用労働者の定期健康診断有所見者への保健指導(以下,同保健指導)の取り組み状況と阻害要因を明らかにする.

    方法:全国健康保険協会の3支部が2015年度特定保健指導を実施した事業所を対象事業所,その労働衛生管理担当者または代表者1名を対象者とし,事業所における同保健指導実施状況,未実施理由等について質問紙を用いた聞き取り調査を実施した.

    結果:調査に応諾した25事業所は同保健指導の実施体制と実施意向の有無により体制あり群(n=3),意向あり群(n=17),意向なし群(n=5)に分類された.阻害要因として意向あり群では産業保健支援機関,要指導基準,指導導入に関する情報の未普及が示唆された.意向なし群では同保健指導を事業者が実施すべきであるとは認識されていなかった.

    考察:実施意向を示す事業所への産業保健支援機関,要指導基準,指導導入に関する情報提供により体制整備が期待される.

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