土の力学における諸問題は土が弾性から塑性を経て降伏あるいは破壊に至る間に示す力学的性質の変化を法則化することによつて始めて解決への途が開かれるとの見解に立つて, 著者はここに一つの理論体系を提出する。この理論はさきに発表した基礎理論 (土木学会論文集, 昭24, 及び第2回土質力学国際会議論文集, 1948) を, その後実施した三軸試験結果に照して修正発展させたもので, 土のような塑性材料の変形と降伏が外力による仕事量すなわちエネルギー量によつて左右されるとの思想から出発している。新しい基本理論は旧理論の持つ本質的な欠陥から免かれ, その力学的な意味及び弾性との関係も明かでかつ多くの実験的裏付けの上に立つている。
このような土の塑性に関する新理論に基いて, 降伏の条件について論じ, 従来と異なる一見解を示し, 次いで応力条件または歪条件が与えられた基本的な場合に応用して, 体積変化, 剪断歪, 降伏応力などを求める算式を導き, 終りにこの基本理論を三軸試験による実験結果に適用し, 実測値から塑性の常数を求め, 理論が実験とよく符合することを確かめ, その妥当性を立証した。
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