本文は, 開水路水流の遷移現象に関する水理学的特性をあきらかにする第一歩として, 幅がゆるやかに変化する水路における開水路水流の遷移特性について, 水路の断面形状, 粗度あるいは水路床勾配というような境界特性との関連性から, 理論的に考察を加えたものである。
幅の変化する水路における漸変流では, 一次元解析法による水面形方程式にトポロジー的な特異点があらわれると, そこで流れは常流から射流へと, あるいは逆に射流から常流へという遷移現象をひき起こし, またしたがつて, 水面形状の様相はこのような遷移点の数学的な分類および水理学的な性質によつて決定されるから, その理論的解析をすすめるにあたつては, 非線型力学におけるトポロジー的な方法が応用される。
ここでは, この方法にしたがつて, 遷移点の分類, 遷移点によつてひき起こされる水流の遷移特性およびそれにともなう水面形状の追跡とそれらの水理学的意義をあきらかにするとともに, 実用上の問題との関連性から Chézy あるいは Manning の流れにおける遷移現象の水理学的諸特性について考察をすすめることにした。
このような解析法は, 単に本文で取り扱う遷移流の水面形状の追跡のみならず, 同様な形式の基礎方程式をもつ多くの水理現象の解析にも, 全く同じようにして応用することができる。
また最後に, 流量測定法における遷移流の水理学的特性が示す役割についても, 若干の考察を加えておいた。
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