コンクリートおよびモルタル各一種の断面10cm角, 50cm長の供試体に軸圧力と曲げ荷重を加えて, 断面内にひずみ分布の傾斜のある状態で圧縮破壊実験を行なった。この結果, ひずみ分布の傾斜が大となるほど破壊時のひずみ能力が大となることが明らかにされた。しかし, その増大には限度があり, 部材内のひずみ値が, ひずみ分布の傾斜のない, すなわち通常の一軸破壊試験のときのひずみ能力の, コンクリートの場合約 2倍, モルタルの場合約1.5倍になると, さらに, その傾斜を大としてもこれ以上ひずみ能力の増大は見られなかった。これらの結果を従来の慣用法すなわち外力や応力の面で比較するため破壊時間一定のときの強度という立場で説明すれば, ひずみ分布の傾斜が大なるほどコンクリートの強度が増大することが明らかにされた。しかし, その増大には限度があり部材内の計算応力値 (軸圧力の平均値と曲げ荷重による計算縁応力の和) が, ひずみ分布の傾斜のない, すなわち通常の一軸破壊試験のときのコンクリートおよびモルタルの強度の1.5倍になると, さらにひずみ分布の傾斜を大としても, これ以上, 計算上の強度は増大しなかった。
以上の結果はコンクリートの破壊を確率論的に取り扱うべきであることを示唆し, また現用コンクリート部材の設計における許容応力の採り方に重大な変換を要求するものであると考えられる。
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