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新舎 博, 熊谷 隆宏
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_898-I_903
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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固化処理土を海水曝露すると,その表面からカルシウム分が溶出して,強度の低い劣化層が生じることが知られている.そこで,浚渫土を原料として作製した固化処理土を対象として,海水曝露による劣化量を針貫入試験で調査した.処理土の配合は,水固化材比が2条件,含水比が4条件の計8条件である.実験結果から,次のことが明らかとなった.(1) 水固化材比が一定の場合,処理土の含水比が異なっても同じ曝露期間における劣化量はほぼ同じであった.(2) 今回実験に使用した浚渫土を用いる場合,劣化が生じない非劣化強度は約10 MN/m
2であると考えられる.
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本田 秀樹, 山本 佳知, 山口 裕章, 谷敷 多穂, 宮本 一之, 溝口 栄二郎
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_904-I_909
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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既存の地盤改良船に取り付けた密閉式バケットにより,原位置で海底地盤を改良する原位置混合工法を考案した.本工法は,海底粘土の掘削,改質材との混合,改質土の投入の工程を原位置で実施可能であり,大幅な施工簡略化が期待できる.また,バケット内がドライ状態に保持できるため改質土の強度品質の向上や施工時の濁り抑制が可能となる.ここでは,本工法の実現可能性を明らかにするため,1/20モデルの室内実験を行った.
実験の結果,粘土地盤の取り込み,改質材との混合,改質土の投入は実施可能であり,本工法の実現可能性は高いと考えられる.一方,実験では粒径1.18 mm以下の改質材を使用したが,実施工は,粒径40 mm程度が対象となる.このため,実粒径の改質材を用いた大型実験での混合性の評価が今後の課題と考えている.
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栗原 大, 髙岡 慶人, 土田 孝, 白神 拓也, 岡村 郁耶, 熊谷 隆宏
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_910-I_915
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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海底地盤が砂質土地盤である箇所に管理型廃棄物処分場を建設するため,海成粘土から作る人工遮水地盤材料を敷設して底面を遮水する工法が開発されている.本研究では遮水地盤材料に乾燥質量比2~4%程度のセメントを添加する少量セメント添加を行い,施工に必要な強度を付与する方法について検討した.セメント固化処理土はせん断変形によりクラックが発生し透水係数が上昇したが,少量セメント添加粘土では,20%程度のせん断変形を受けても透水係数は変化しなかった.ただし,少量セメント添加による固化構造によって同じ圧密圧力における間隙比が大きくなるため,透水係数が増加することに注意する必要がある.
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遠藤 秀祐, 土田 孝, 大山 真未, 片桐 雅明
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_916-I_921
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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港湾の維持・整備には航路や泊地の浚渫が不可欠であるが,浚渫土の処分場の容量が逼迫しており,新たな処分場の整備が課題となっている.本研究では,浚渫粘土の初期含水比を主要なパラメータとして,埋立処分方法の選択が処分土量や処分場の供用期間に与える影響を自重圧密解析によって明らかにした.さらに,適切な浚渫・運搬・処分方法の選択,投入前処理,投入後処理の3つを適切に組み合わせることにより,最適な処分方法とそれに適合した土砂処分場の設計を行う考え方を示した.
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野村 理樹, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 野畑 俊介, 平尾 隆行, 竹本 誠, 松村 聡
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_922-I_927
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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海面廃棄物処分場跡地を高度利用する際には,構造物を支持する基礎工として支持地盤への杭打設が必要となると考えられ,その場合,遮水基盤(粘性土地盤)を貫通するような杭の施工が必要である.杭を打設した場合には廃棄物を遮水基盤以下へ連れ込むこと懸念される.本研究では,杭の肉厚と廃棄物の粒径の大小関係の違いによる連れ込みメカニズムの違いから,小粒径の廃棄物については,廃棄物層とその下の粘性土層の剛性の違いによる廃棄物の連れ込み状況に及ぼす影響を検討した.大粒径の廃棄物については杭から受ける力の偏心量の違いによる,連れ込み挙動の違いを検討した.実験の結果,小粒径の廃棄物では粘性土地盤の剛性が相対的に低下することで廃棄物の連込み量は増加すること,大粒径の廃棄物については偏心量が異なると連れ込み深さが異なることがわかった.
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山城 徹, 山田 博資, 広瀬 直毅, 長濱 匡, 中村 啓彦, 仁科 文子, 内山 正樹, 上宇都 瑞季
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_928-I_933
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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2016年4月20日~2017年4月20日に和歌山県潮岬沖で海流発電に関連した黒潮の定点観測を我が国で初めて実施し,非大蛇行期における黒潮流速の変動特性を調べている.観測点は黒潮の北端に位置し流速の鉛直シアが大きかったが,深さ約50mのところでは流速が50cm/sを超える黒潮の流れが観測期間のほとんどで出現し1年間を平均した流速が100cm/sに達することや流向が東~東南東向きでほぼ一定していることを明らかにしている.
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山城 徹, 伊藤 孝暢, 山田 博資, 広瀬 直毅, 上宇都 瑞季, 濱添 洸也
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_934-I_939
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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2016年4月20日~2017年4月20日に潮岬沖4 kmの深さ47.2 mで測定された流速データを用いて,串本,浦神の潮位と黒潮流速との関係を調べた.黒潮流速との高い相関は串本と浦神の潮位差が潮岬沖の黒潮流速をモニターするのに良い指標であることを示唆した.串本と浦神の潮位差データと回帰式から推算すると,2007年1月~2017年4月までの非大蛇行期間の黒潮の平均絶対流速は96.0 cm/sであることが示された.また,黒潮流速は約2.2年の経年変動と2月に最小,8月に最大となる季節変動をとることが示唆された.
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石垣 衛, 三好 順也, 長岡 あゆみ, 黒川 忠之
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_940-I_945
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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再生可能エネルギーへの需要が高まる中,海洋エネルギー発電技術の実現が望まれている.瀬戸内海は予測可能な潮流が卓越しており,架橋が施されている場所が多く,既存の橋脚を活用した潮流発電が可能となれば発電施設等の建設コストの削減が期待できる.橋脚を利用した潮流発電では,橋脚近傍に形成される潮流や乱流が発電装置のエネルギー取得効率や装置設計強度に影響をおよぼすことが懸念される.本研究では,大島大橋第4橋脚近傍の海域を対象とし,超音波流速計を用いた潮流観測を実施することで,橋脚近傍で形成される潮流や乱流を詳細に解析した.解析結果より,橋脚近傍の潮流や乱流の分布がエネルギー取得量や効率,発電装置強度におよぼす影響を考慮した上で発電装置の最適設置位置を選定し,当該地点における潮流発電の実現性を検証した.
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白石 悟, 福原 朗子
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_946-I_951
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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地球温暖化対策としてのCO
2排出削減対策は世界的に重要な課題である.日本国内では港湾区域において「再生可能エネルギー源を利活用する区域」が設定され,洋上風力発電施設の導入の先導的役割を果たしている.本研究では,洋上風力発電を利用した港湾施設への電力供給システムを提案する.また,電力の需給バランス調整のために太陽光発電とのハイブリッドシステム,蓄電池の利用の検討を行う.さらに,提案するシステムによるCO
2排出削減効果に関して,2港をモデルとしたケーススタディを実施する.
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中里 廉, 大澤 輝夫, 杉山 康弘, 香西 克俊, 嶋田 進, 竹山 優子, 中村 聡志
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_952-I_957
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本研究では, 海上表層の風速観測値から風車ハブ高度風速を推定する手法としてWRF-現場観測値併用手法を提案し,鉛直1次元モデルMOST-EKMANとの比較を行うにより,その有用性及び問題点について検討を行った.精度検証には,波崎海洋研究施設(茨城県神栖市)の桟橋上の風速観測値を用いた.海からの風に限定した場合には,WRF-観測値併用手法の精度は,バイアス3.83 %,RMSE15.05 %,相関係数0.95であり,WRFのみを用いた場合やMOST-EKMAN手法よりも高い精度であることがわかった.ただし推定風速には過大評価傾向が見られたため,この要因を調べた結果,WRFで計算される風速鉛直プロファイルの鉛直シアーが陸風時に大きくなり過ぎることが原因であることが明らかになった.更に大気安定度との関係を調べた結果,波崎桟橋上で安定な時にこの傾向が見られやすいことが判明した.
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長谷部 雅伸, 竹内 真幸, 小野 秀平, 吉田 郁夫, 嶋田 健司, 中島 秀雄, 村井 基彦
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_958-I_963
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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大型浮体上に居住目的の高層タワーを備えた構造体について,東京湾を想定立地とした施設計画に基づき,構造安全性と居住性の観点から強風・波浪中の応答特性を水理模型実験と数値解析により検討した.特に本研究ではタワー部分の弾性挙動の効果を考慮し,浮体動揺や係留力,タワー基部での応力などの応答特性に与える影響について検討した.結果として,東京湾における再現期間200年の強風・波浪に対しては,係留力は係留設備の設計目標値を満たすことを確認したものの,タワー頂部の水平変位は浮体構造物の剛体的な回転運動とタワーの弾性応答により大きく増幅した.水理模型実験では,本研究で用いた数値解析では考慮していない浮体部分とタワー部分との連成による共振応答が確認され,特にタワー頂部の動揺応答とタワー基部の応力にその影響が顕著に認められた.
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惠藤 浩朗, 敷田 曜, 居駒 知樹, 増田 光一, 木原 寛明
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_964-I_969
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では,大型石炭貯蔵浮体(LFTS)システムの応答特性と荷役稼働率について述べる.LFTSシステムの実現可能性を検討する上で,対象海域での荷役稼働率を把握することが重要である.LFTSは50万tの石炭を積載可能であり,石炭の積載状態により喫水が大きく変動し,それに伴い長周期変動波漂流力を含めた波力や風荷重等が動揺に大きく影響を及ぼすことが考えられる.LFTSとバルクキャリアは双方ともに大型構造物のため,双方に作用する流体力は互いに影響を及ぼし合うことから2浮体間の流体力学的相互干渉影響は無視できない.そこで本研究では流体力学的相互干渉影響を考慮した複合外力下におけるバルクキャリアの運動応答を把握し,その結果をもとに荷役稼働率を算出し,LFTSシステムの運用可否の把握に努めた.
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米山 治男, 金城 信之, 峯村 浩治, 中村 隆志
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_970-I_975
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では,南北大東島の港湾において使用されている係船浮標を対象として,波浪外力に対して被災しにくく,かつ被災した場合でも交換が容易になるような係船浮標の部材構造について概念設計を行い,維持管理を考慮した新型の係船浮標として提案した.提案した係船浮標は,水中に位置保持された複数の浮体(フロート)と取り外し可能なシャックルにより連結された2本の係留索を用いた新型の水中フロート式係船浮標である.この係船浮標は,維持管理を考慮して,被災した場合に交換が容易な部材構造で構成されており,静的釣り合い計算により設計波浪外力に対しても十分に安全な構造諸元を有していることを確認した.
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吉野 純, 村上 智一, 鵜飼 亮行, 河野 裕美, 下川 信也, 中瀬 浩太, 水谷 晃
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_976-I_981
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では,西表島白浜湾(湾 1)と船浮湾(湾 2)の間を結ぶ接続水路の形状比(長さと深さの比)が2つの湾の海水交換過程に及ぼす影響について連結系湾内流動モデルにより考察した.接続水路の形状が現実に近い条件の場合,接続水路で活発な海水交換が行われ,湾 2の塩分は湾 1の塩分に比べて小さくなった.接続水路の形状比が極端に大きい場合には,接続水路での海水交換は不活発となり,湾 1と湾 2の塩分差はより大きくなった.一方で,接続水路の形状比が極端に小さい場合には,接続水路のみならず外洋間の海水交換も不活発となり,湾 1も湾 2も共に塩分が低下した.そのため,接続水路の形状はこれら2つの湾の海水交換や種子・果実分散にも大きな影響を及ぼすと考察される.
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犬飼 直之, 品田 啓太
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_982-I_987
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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石狩湾奥部の石狩海岸付近では度々水難事故が発生し,2016年8月にも石狩浜で男性4名の水難事故が発生した.既往研究では湾内で季節風による強い流れの発生が確認されているが,水難事故発生との関連は考察されていない.よって,石狩湾での事故発生時の気象・海象の特徴の把握を試みた.まず,既往事故発生状況を把握し,地図や衛星写真などで海岸の特徴を把握し,事故が多く発生している海岸を把握した.次に,既往事故発生時の気象・海象を,観測結果を利用して,過去の事故発生時の風向の変動状況及び流向・流速の変動状況を把握した.また,流況が大きく変動する時の天気図の特徴を把握した.次に,現地観測を実施し,現地の離岸流や沿岸流の発生状況を把握した.最後に数値計算を実施し,事故発生時の表層の流況の変動状況を把握した.
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二宮 順一, 浜野 竜太朗, 森 信人, Josko TROSELJ, 石川 洋一, 西川 史朗
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_988-I_993
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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日本を取り巻く海洋の環境,防災,資源開発を考える上で,日本近海の海洋環境を把握し,流動構造・水温変動などの海況の変動解析を行うことが大きな課題となる.そこで本研究では,日本近海を対象として 982年から約30年と長期間で水平解像度1/10度と高解像度の最新の再解析データFORA-WNP30を使用して,日本海を対象とした海洋環境解析を行った.FORA-WNP30の日本海における水温,塩分の再現性を評価し,どちらも高い再現性を有していることを確認した.その後,日本海における水温・海峡流量変動の解析を行った.その結果,日本海全域で水深300mまでの水温上昇が顕著であること,日本海の各海峡流量が約1年の周期で変動し,対馬・津軽・宗谷海峡の流動に高い相関があること,間宮海峡ではリマン寒流の影響を強く受けるために,他の海峡との流量の相関が小さくなることが分かった.
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梶川 勇樹, 小泉 知義, 黒岩 正光
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_994-I_999
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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有明海湾奥に位置する佐賀県鹿島市地先・塩田川河口域では,今後,カキ礁の整備個所を増やすことが予定されている.しかしながら,カキ礁の整備(配置)位置によっては,沿岸域における河川水の沖への拡散や海水交換に影響が現れる可能性がある.そこで本研究では,干潟処理を考慮したネスティング手法による平面2次元単層モデルを開発し,モデルの妥当性を検証するとともに,現況およびカキ礁の配置シナリオに基づく計算結果の比較から,カキ礁の配置が沿岸流動に与える影響について検討した.その結果,塩田川河口右岸へのカキ礁の新たな配置は,広範囲で時間平均の流速値が低下する可能性があることを明らかにし,また,河口右岸の現カキ礁の撤去によっても流速値が低下する可能性があることを指摘した.
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中村 倫明, 鷲見 浩一, 武村 武, 小田 晃, 落合 実
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_1000-I_1005
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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東京湾における放射性物質の影響について,中村ら(2017)は3次元力学モデルを用いて算出した東京湾の年平均流と,海水中のスキャベンジングによる影響や海底巻き上げ,生物攪乱による海水への再浮遊などの考慮した拡散モデルによる中・長期的な放射性物質の分布状況を把握してきた.しかしながら,湾奥中央における放射性物質濃度が実測に対し過少な値となっており,河川負荷方法の検討,Falloutの負荷方法の検討等が課題として挙げられた.本研究では,Hybrid Box Modelを用いることで流動再現の精度を向上し,拡散モデルを改良して水平・鉛直分布の再現性の向上化を図った.
その結果,放射性物質の実測値を十分に再現し計算モデルの精度が高いことを示した.また,2011年初期においては,Falloutによる影響が強いこと,湾奥中央では河川負荷による影響が強いことが示唆された.
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西 隆一郎, 川森 晃, 鶴成 悦久
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_1006-I_1011
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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現在,比較的に低価格のUAV(無人航空機・ドロ-ン)および空撮システムが利用可能となり,陸域の一般的な調査機材となりつつあるが,河川や海域等の水圏環境では,耐水性機能の問題,水面での反射等による画質の問題,水表面と水中地物表面の二値問題,透明度に伴う可視化の問題等のために利活用が進みにくい現状がある.一方,UAVの水圏環境への応用技術は,これまでUAVの操縦経験のない研究者,技術者,そして一般市民にも広がりごく当たり前の調査技術に変わる可能性もあるので,早急にできるだけ多くの水圏環境に対しUAVを試行する必要がある.本研究ではUAVおよび空撮機材を用いて出力される空間情報(三次元情報)を,多様な水圏環境へ応用する可能性について述べる.
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上久保 祐志, 伊豫岡 宏樹, 鬼倉 徳雄, 乾 隆帝, 山本 恭裕, 入江 博樹
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_1012-I_1017
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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熊本県南部を流れる一級河川球磨川の河口域においては,自然再生事業の一つとして,球磨川上流で発生した掘削残土を対象地域に覆土することにより,ヨシ原を再生し水質浄化や河口域を生息場とする魚介類等の増殖を行う取り組みが行われている.本研究では,この河口域で行われている自然再生事業により生態系および地形にどのような影響を与えるのか,地形の経年変化に関するモニタリングを実施した.その結果,希少な渡り鳥の休息地となっている河口の小島については大きな地形変化はみられなかった.みお筋に関しては,2015年から2017年にかけ増加と消失といった変化を確認できおり,希少な野鳥の飛来は確認できてはいるものの,引き続き今後のモニタリングおよび順応的管理は必要である.
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鶴成 悦久, 諸岡 想, 内田 桂, 中井 真理子, 西 隆一郎
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_1018-I_1023
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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バリア-アイランド状の細長い砂州地形から形成された龍神池は,災害の歴史的価値を含み,多面的機能を有する自然豊かなインレット状の海岸地形を呈する.近年,龍神池ではシジミが激減するなど環境変化が急激に生じたため,海水流入量を調整するための堰が水路に設置された.その後,閉鎖的な環境となり,富栄養化や成層化の進行によって,水質環境の悪化が指摘されるようになった.そこで,現地調査を実施した結果,龍神池の底質は中砂でありシジミの生息環境ではあるものの,水質は高塩状況が持続しているため生息環境に適していないと考えられる.海水交換は潮汐に伴う大潮時のみ生じ,海水交換量としては最大でも水容量の9%程度であることから,現状では海水交換が促進されず水質環境の悪化が懸念される.
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渡辺 雅子, 上月 康則, 辻岡 雅啓, 矢野 司, 松島 輝将, 花住 陽一, 岡田 直也, 山中 亮一
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_1024-I_1029
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では,より簡便な希少種ルイスハンミョウの生息環境モニタリング手法の開発を目的に,無人航空機(UAV)を使った測量方法に着目し,現行方法との測量精度や調査にかかる労力などを比較し,その有用性について評価した結果を報告する.
UAV測量方法は,高度30 m以下であればルイスハンミョウの生息環境モニタリング手法として,地形測量に使用可能な精度であり,労力や測量時間が大幅に軽減されることが分かった.植生被度の算定に対しては,高度10 mであってもその撮影画像からの解析が難しく課題となった.しかし,高頻度での地形測量が可能となり,ルイスハンミョウの生息地保全や整備方法の検討に役立つと考えられる.
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