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井内 国光, 野中 浩一, 山口 正隆, 宇都宮 好博, 畑田 佳男, 日野 幹雄
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_599-I_604
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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高い時空間解像度をもつ気象庁MSM風資料を入力海上風分布とした高地形解像度条件での第一世代1点浅海モデル(BRTM)および中規模地形解像度条件での第三世代モデルSWAN(Version40.91ABC)による長期波浪推算システムをそれぞれ韓国沿岸18地点別ならびに北西太平洋領域での13年間にわたる波浪推算に適用し,上記の地点に加えて後者ではわが国太平洋岸12地点の観測値との比較から精度を調べて,つぎの成果を得た.1) BRTMは韓国沿岸の全域に分布する観測地点の波高・周期に対して良好な再現性を示す.2) SWANは韓国沿岸地点のみならずわが国太平洋岸地点において波高に対して観測結果より高めの値を,周期に対して低めの値を生じる傾向にある.前者は地形解像度の不足,後者は減衰項などの定式化の問題に起因すると考えられる.
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横田 雅紀, 橋本 典明, 山城 賢, 井手 喜彦, 児玉 充由
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_605-I_610
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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有明海は高潮の危険性が高い海域の一つであり,特に背後に低平地を有する湾奥部の沿岸では,今後の気候変動による台風の強大化に伴う高潮リスクの増大が懸念されている.過去に多くの高潮シミュレーションが実施されているものの,氾濫解析を行ううえでは,同時に発生することが想定される波高の影響の程度を明らかにすることが重要である.本研究では,有明海における高潮発生時の波浪予測を行うにあたり,境界条件として与える潮位が推算結果に与える影響の程度を明らかにすることを目的として,潮位条件を種々変化させて波浪推算を実施し,台風T1216が東に2度平行移動した海上風条件で発生しうる波高を明らかにするとともに,高潮による潮位変化が有明海湾奥部の波浪推算結果に及ぼす影響の程度を明らかにした.
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川口 浩二, 藤木 峻, 末廣 文一, 鈴山 勝之, Chathura MANAWASEKARA
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_611-I_616
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本研究では,周期の長いうねり性波浪が来襲した台風1721号を対象に,3つの第三世代波浪推算モデル(WAVEWATCH III,SWAN,WAM)による推算を実施し,その推算特性を,沖合から沿岸域の波浪諸元の平面分布や時系列,方向スペクトルを用いて比較し,以下の結論を得た.(1)実務で使用する方向分割数は24や36で問題ないが,うねり性波浪を対象に海峡や回折域を有する海域の計算を行う場合は,72程度の検討も必要である.(2)沖合では,3モデルの有義波諸元の再現性は総じて良好であるが,観測値の方向スペクトル形状の再現性が良いモデルが有義波諸元の再現性が高い傾向にある.(3)風波が卓越する閉鎖海域では時空間解像度をダウンスケールした海上風を用いる方がよいが,波浪推算精度を向上させる必要条件ではない.(4)東京湾の海峡部の地形近似を200m以下としても波浪推算精度を向上させる効果は小さい.
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久保田 博貴, 辻尾 大樹, 森 信人
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_617-I_622
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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沿岸域の波浪を精度良く推算するためには,外洋から沿岸の変形を連続的に扱うモデルを用いることが望ましい.本研究では,外洋に適用可能なWAVEWATCH IIIと沿岸に適用可能なSWANを多段階ネスティングにより接続することで,外洋から沿岸までを一連で解析するモデルを構築し,構築したモデルの波浪推算精度を検討した.鳥取県沿岸を対象に通年の計算を行い,計算値と観測値を比較した結果,有義波高と有義波周期の再現性はSWANのみで構築したモデルによる計算結果よりも良好であることを確認した.また,空間解像度に応じた推算精度の検討を行い,沿岸域における波浪を精度良く推算するためには空間解像度を細かく設定することが有効であることを示した.
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澁谷 容子, 佐藤 あかね, 山野 貴司, 小竹 康夫, 中村 友昭
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_623-I_628
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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海上工事は波浪の影響を受けやすく,施工機会の確保や施工精度向上の点からも波浪特性を把握することは重要である.特に,ケーソン据付工事は波浪に影響されやすく,リアルタイムに来襲波浪やケーソン動揺量を把握することは,安全かつ精度のよい施工に繋がると考えられる.そこで,本研究ではケーソン据付工事を対象に,事前にケーソンの動揺量を数値解析で求め,ケーソン据付作業時にリアルタイムで波浪観測を行うと同時にケーソンの動揺量の測定を行った.本研究により,数値解析により波浪とケーソン動揺量の関係を把握し,リアルタイム波浪観測を行うことで,ケーソン据付作業時の安全性の確保と据付精度向上につながる可能性が示唆された.
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琴浦 毅, 田中 仁
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_629-I_634
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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海上工事においては長期間の高精度気海象予測データの入手が望まれる.そこで,本研究では気象庁が2017年夏から提供を始めた1ヶ月気象アンサンブル(日本域高解像度)をWAMの入力風として波浪計算することで得られた1ヶ月波浪アンサンブルデータを用いて,海上工事における適用性について検討した.摂動を与えないControl runと比較するとアンサンブル平均を用いた予測はRMSE,的中率においても精度向上が期待できることが分かった.また,ブライアスキルスコアを用いた評価の結果,特に日本海側では気候学的予測と比較してアンサンブル予測を実施することは価値がある結果となった.さらに,船舶退避などが発生する高波浪の予測については,台風起因の予測は容易ではないのに対し,温帯低気圧起因については発生割合を示すことで有用な情報となる可能性が示された.
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宇多 高明, 石川 仁憲, 三波 俊郎, 細川 順一, 蛸 哲之
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_635-I_640
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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2017年10月23日,台風21号に伴う高波浪が相模湾沿岸に作用し,相模川河口の東側に位置する柳島海岸では著しい侵食が起き,同時に海岸線に沿って設置されていた消波堤では構成部材の捨石が多数散乱した.これに対し,養浜が行われてきていた茅ヶ崎中海岸では被害は少なかった.しかし茅ヶ崎ヘッドランド東側の菱沼海岸では,遊歩道が崩壊するなど著しい被害が出た.本研究では,台風襲来の次の日の10月24日,一連の海岸の侵食状況を調べるために相模川河口~七里ヶ浜間で現地調査を行った.ここでは,調査結果のうち柳島・茅ヶ崎中・菱沼海岸の侵食状況を明らかにする.
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宇多 高明, 石川 仁憲, 五十嵐 竜行
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_641-I_646
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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2017年10月23日,台風21号に伴う高波浪が西湘海岸に作用し,西湘バイパスの道路護岸の倒壊などの被害をもたらした.被災区域は,2007年の台風9号による被災区間の東側に約600 m離れた区域であった.被災状況は2007年当時とよく似ており,10年後に再び同種の災害を受けることになった.被災原因を明らかにするために,台風21号の襲来から8日後の10月31日と,11月13日に西湘バイパスの被災箇所周辺の現地踏査を行い,被災状況を詳しく調べた.また,2014,2016年実施のNMB測量データを基に被災区域周辺の地形変化についても調べた.
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趙 容桓, 小林 泰輔, 菊 雅美, 中村 友昭, 水谷 法美
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_647-I_652
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では,2年間実施したUAV-SfM/MVS測量の結果より,井田海岸の体積変化量に基づいて養浜による井田海岸の海浜地形特性を考究するとともに,井田海岸に来襲する波浪の打上高と海浜変形の相関を評価した.その結果,高波浪来襲時に人工リーフ開口部背後地で侵食が卓越し,有義波周期12 s以上の長周期波が来襲すると広い領域で侵食が生じることが判明した.なお,近年実施している養浜によって,総体積量が増加したものの,大きい養浜材料によって井田海岸の前浜が急勾配となり,持続的モニタリングする必要性が示唆された.また,人工リーフ通過後の波の波向きを考慮した打上高算定式から井田海岸前浜に発生する海浜変形の最大標高を予測する可能性を示した.
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岡嶋 康子, 宮島 祥子, 宇多 高明, 大谷 靖郎, 繁原 俊弘
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_653-I_658
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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富山湾に面した下新川海岸では,各所に形成されている海底谷を経由した深海への土砂流出が起きている.このような漂砂特性を有する下新川海岸全体での底質粒径の水深方向については,検討が十分行われていない.そこで,下新川海岸全体を対象に10測線を設定し,これらの測線において汀線から水深20 mまでの水深域についてダイバーによる底質調査を行い,縦断測量データと合わせてこの海域での
d50と局所海底勾配の関係について考察した.この結果,
d50は水深によらず局所海底勾配と高い相関関係にあり,局所海底勾配が大きな場所では粒径が大きく,局所海底勾配が小さい場所では細粒の土砂が堆積していることが分かった.
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宇多 高明, 伊達 文美, 石川 仁憲, 大木 康弘
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_659-I_664
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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洲島において人工改変が行われると,漂砂バランスが崩れて大きな地形変化が起こることがある.宇多らは,モデル的に円形のサンゴ洲島を考え,洲島に離岸堤が設置された場合の海浜変形予測を行い,サンゴ洲島は閉じた漂砂の系を有するがゆえに,洲島の一か所で人工改変が行われるとその影響がサンゴ洲島全体に及ぶことを明らかにした.しかし,この種の問題に関する実証データは不足していた.本研究では,沖縄本島の本部半島沖の水納島を実例として取り上げ,人工改変に起因する海浜変形について考察し,利便性を高めるための行為が自然海浜の劣化を招き,洲島の観光利用にも影響を及ぼしたことを明らかにした.
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貝沼 征嗣, 袴田 充哉, 戸田 晃裕, 宇多 高明, 石川 仁憲
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_665-I_670
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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遠州灘に面した福田漁港周辺では1993年以降毎年1回深浅測量が行われてきたが,既往研究では,これらの現地データの解析は行われていない.そこで本研究ではこれらのデータを基に地形変化解析を行い,福田漁港周辺での地形変化の実態と漂砂量の評価を行い,とくに近年における土砂動態を明らかにした.また,実務で使われている等深線変化モデルの基本に立ち返り,新たに個々の等深線の沿岸方向勾配(Longshore slope of seabed contour: LSSE)を算出することにより,各水深帯での等深線の変動状況を調べた.
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貝沼 征嗣, 袴田 充哉, 永井 友子, 宇多 高明, 石川 仁憲
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_671-I_676
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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浜名湖今切口では1964~1974年に導流堤兼用の防波堤が延ばされた結果,退潮流によりebb tidal deltaが著しく発達したが,その後デルタの発達に伴い西向きの沿岸漂砂が再び流れるようになった.当沿岸では,これらの人工改変による地形変化が起きているが,今後の地形変化について検討するには現在までに起きた地形変化の特徴の理解が大事である.そこで既往空中写真を収集し,空中写真が時間的に密に測定された1972年を基準とした汀線変化を詳しく調べた.この結果,現在西向き沿岸漂砂はebb tidal deltaを回り込んでおり,新居海岸での通過沿岸漂砂量は12.1万 m
3/yrであることが分かった.
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宇多 高明, 五十嵐 竜行, 大谷 靖郎, 五味 久昭, 立石 賢吾, 繁原 俊弘
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_677-I_682
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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2014,2016年に西湘海岸で行われたNMB測量のデータを解析した.その際,沿岸漂砂が沖合の岩礁や海岸線から突出した構造物により阻止された場合に生じる堆積・侵食域の特徴的な分布や,波による地形変化が汀線付近から沖向きに低減するという漂砂の特性などに着目して解析を進めた.酒匂川河口部,小田原PA付近,粗粒材養浜の行われた二宮海岸など,顕著な地形変化が観察された6区域の地形変化を調べた.この結果,観測期間中,酒匂川河口周辺を除く地域では,西向きの沿岸漂砂による地形変化が起きたこと,また,葛川河口付近での沿岸漂砂量が2.5万 m
3/yrであったことが明らかになった.
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小林 昭男, 宇多 高明, 宮田 隆平, 野志 保仁
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_683-I_688
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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VietnamのNha Trang北部に位置するHon Chong Beachでは,2002年まではNha Trang南部と同様海浜が広がっていたが,道路建設のために2003年に海岸線付近が埋め立てられたことにより海浜利用が困難となった.近年,Hon Chong Beachでも海浜を戻して海岸利用の促進を図れないかとの議論がなされている.そこでHon Chong Beachについて深浅図,既往衛星画像,現地踏査により海岸の変遷を調べた上で,BGモデルを用いて養浜による海浜復元について検討した.これより,6×10
4m
3の砂を用いた養浜を行えば,養浜区間中央部で幅24 mの砂浜が確保できることを示した.
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田中 仁, Nguyen Thai BINH, Nguyen Xuan TINH, 三戸部 佑太, Nguyen Trung VIET
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_689-I_694
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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ニャチャン海岸はベトナム・カインホア省に位置するビーチリゾートであり,国際的にも高い人気を博している.しかし,同地域がほぼ飽和状態にあり今後のさらなる開発が望みにくいことから,その北に位置するバラン海岸に開発の期待が寄せられている.しかし,バラン海岸の北側では沿岸の道路建設後,砂浜が消失した.このため,養浜の可能性を検討する前段階として,砂浜消失の機構を検討することが求められている.そこで,Landsat, Google Earth画像を用いて,バラン海岸における海浜変形の特性に関する検討を行った.その結果,2002年に実施された海沿いの道路建設により砂浜の湾曲が失われ,これにより道路建設区間の両端部に向けて沿岸漂砂が生じて,この区間の砂が失われたことが明らかになった.
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Nguyen Quang DUC ANH, Dinh Van DUY, 田中 仁, Nguyen Trung VIET
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_695-I_700
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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ベトナム南部ロックアン河口において沿岸漂砂の下手方向への砂嘴の延伸が著しい.このため,河口右岸においては流路の移動に伴う深刻な侵食が見られる.しかし,当地ではこれまで様々な現地資料の蓄積が行われておらず,砂嘴延伸の状況・対策を論ずるための基礎資料が乏しい.そこで,1988年以降に撮影されているLandsat画像やGoogle Earth画像をもとにロックアン河口砂嘴の変動特性に関する検討を行った.その結果,砂嘴先端部は平均的に95m/年の速度で延伸し,一方,対岸の汀線位置もほぼ同じ速度で後退することから,一定の河口幅が維持されていることが分かった.また,この砂嘴移動速度に砂の移動高さを乗じることにより推定される沿岸漂砂量は,これまで数値シミュレーションにより評価された値と良好な一致を示した.
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田中 仁, Dinh Van DUY, Nguyen Xuan TINH, Nguyen Trung VIET
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_701-I_706
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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ベトナム中部に位置するミーケー海岸においては昨年の12月以降,海岸侵食に伴う沿岸施設の被害が発生している.そこで,2018年1月に現地調査を行い,被災状況の確認,GPS汀線測量などを実施した.さらに,Google Earthの画像を用い,2002年以降のミーケー海岸における海浜変形特性の検討を行った.その結果,同海岸においては北東モンスーン時期にメガカスプの形成が顕著であり,今回の侵食箇所はメガカスプのembaymentの位置で生じていることが明らかになった.また,南西モンスーン期の波浪が静穏な時期が始まってから数ヶ月後にメガカスプは消滅し,滑らかな汀線形状を示す.そこで,汀線データから卓越波長を求めたところ,100mから300m程度の波長であった.また,メガカスプの波高は最大で45mにも及んでいた.
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鵜﨑 賢一, 大熊 汐里, 倉持 顕, 田井 明, 池畑 義人
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_707-I_712
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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大分県中津干潟では,アサリを中心とした漁獲高が近年激減しており,地元の住民は干潟の侵食や泥質化の影響を懸念しているが,その実態解明はなされていない.そこで本研究では,高精度な測深技術を用い,三大学共同で大分県中津干潟の地形変化観測を行なって広域的な土砂動態を明らかにし,その侵食実態を解明するとともに,侵食・堆積機構を明らかにすることを目的とした.その結果,大出水による堆積とそれ以外の軽微な侵食という傾向と,山国川からの土砂供給と共に沿岸土砂輸送の影響が無視しえないことが示唆された.また,多変量解析から干潟の侵食堆積量を予測する回帰式を得た.その結果から,侵食堆積量の予測式は,堆積は降雨量に,侵食は有義波高に依存し,比較的大きな定数項も存在することがわかった.
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山口 龍太, 田畑 健吾, 辻本 剛三, 外村 隆臣
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_713-I_718
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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地盤高測量の結果から潮間帯では左岸,右岸共に堆積侵食を繰り返しており,深浅測量の結果からは前置層の前進がみられた.粒径は前年度に比べ前置層形成部分で平均粒径が粗くなっていた.地形パラメータの相関は左岸,右岸で違う結果を示した.白川河道の水位は地震後から上昇しており,現在も堆積した土砂の撤去作業が進んでいる.濁度計測の結果から土砂量に換算し流量との関係式を示した.流量が少ない平常時でも 従来の算定式と比べ土砂量が多く流出されていることから,熊本地震や阿蘇山の噴火の発生前に比べ,土砂輸送ポテンシャルの増加が見られ白川河口干潟の地形変動に影響を与えていることが分かった.
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坂本 崚, 清野 聡子, 會津 光博, 田井 明
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_719-I_724
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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五島列島福江島の北西に位置する砂質干潟の白良ヶ浜は,西海国立公園の一部に含まれ,遣唐使船の寄港地であり自然的,歴史的にも重要な海岸である.地域の基幹産業である漁業の施設整備に伴って堆砂が進み,湾奥の砂浜は砂干潟へと変化した.堆砂の進行により今後,漁港設備や海岸環境が影響を受ける可能性があるため,地形測量,観測,底質調査を行い,季節的な土砂動態を検討した.出水や季節的な変動はあるものの,干潟面の土砂量は平衡状態にある可能性が示された.砂質干潟の保全と持続可能な利用の検討の基礎情報集積のため,環境DNAメタバーコーディングを実施したところ49種の海水・汽水魚類が検出された.流入土砂量と干潟面と沿岸の土砂動態の把握,物理環境と生態系の対応の継続的なモニタリングが必要である.
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山口 龍太, 辻本 剛三, 外村 隆臣
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_725-I_730
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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2016年4月に発生した熊本地震が白川河口干潟にもたらした地盤沈下と土砂供給量の増大は,将来の地形変動に大きな影響を及ぼしている.従来の白川河口干潟地形の長期予測と前提条件が大きく異なったため,地盤沈下を考慮し、新たな供給土砂量算定式を用いて,地震後の河川出水量や波浪も含んだ入力条件を与えて,プロセスモデルによる新たな将来予測を行った.土砂量の変化は海面上昇や地盤沈下が発生しなくとも前置層の著しい後退をもたらし,従来の予測とは異なる結果となった.海面上昇や地盤沈下を考慮するとよりその傾向が顕著になった.また,地盤沈下のみでは50年間における地形変化は小さいことが明らかとなった.
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Shinwoong KIM, Ryoya NAKAYAMA, Tomoaki NAKAMURA, Soraka NEHASHI, Yongh ...
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_731-I_736
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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To determine the beach profile evolution of gravel beach under the irregular waves, the hydraulic experiments were conducted. A gravel beach with a slope of 1/7 was installed and the change of spatiotemporal profile according to the irregular wave was analyzed during 6 hours. Two types of beach profile deformation (reflective/step type) occurred under the accretive wave condition and it can be distinguished using discriminant equation of surf-scaling parameter with the representative wave information of irregular wave (
H5% and
Tp). In addition, it was revealed that the similar profile deformation can be reproduced by replacing the irregular wave with the regular wave on the gravel beach, when the regular wave has the same wave information with the representative wave (
H5% and
Tp).
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Thamali GUNARATNA, Saki AKIMOTO, Takayuki SUZUKI
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_737-I_742
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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In this study, laboratory experiments are conducted in a two-dimensional flume with a 1-m-long sandbox in the middle of a slope. Using fluorescent sand tracers and core sample methods, the spatial and temporal variation in the mixing depths in the surf zone are investigated. The core samples are collected from the sand bed where the wave breaking and impinging are observed. The mixing depth is defined as the fluorescent intrusion depth from the bed profile at the time of core sampling with a cut-off value of 10 tracers. In the case of sediment accumulation, the mixing depth is measured from the initial bed profile. Moreover, each case of the experiments is simulated by a numerical model, Large Eddy Simulation (LES), to compare the mixing depths with the velocity field of horizontal bottom eddies. The simulation results of the surface elevations and velocity fields are verified using the measured data. The experiment results indicate that the spatial variation of the mixing depths show different trends depending on the wave breaking style. Moreover, the mixing depth variations are compared with the simulated results of the bottom horizontal eddies. The results indicate that the plunging breaker type of sediment mixing pattern in space within the wave breaking zone correlates with the spatial distribution of the maximum bottom horizontal eddies.
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諸橋 良, 岡本 光永, 石野 巧, 宇多 高明, 石川 仁憲, 市川 義隆, 渡邉 卓弥
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_743-I_748
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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沼川第二放水路の函体に開口部を設けてセットバック型とした上で,高波浪時の土砂打ち込みによる函体内堆砂の排砂方法を現地実験により調べた.この結果,フラッシュ放流前に開口部前面を放水路の敷高と同程度まで掘削した上で,連続的なフラッシュ放流を行うことが函体内堆砂の排砂に効果的なことが分かった.また,放水流を制約する現況放水路の側壁とそれに沿って掘られた溝が,フラッシュ放流時のバームの側方侵食を促すことも明らかになった.
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横田 拓也, 小林 昭男, 宇多 高明, 勝木 厚成, 野志 保仁
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_749-I_754
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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飛砂が卓越する海岸においては,飛砂防止を図るために堆砂垣の設置が行われるのが一般的である.その有効性は各地での事例から明らかにされているが,飛砂が堆砂垣へと堆積する過程を予測可能で,実用に供しうる数値モデルはなく,飛砂対策としての堆砂垣設置効果の事前予測は難しかった.筆者らは,セルオートマトン法を用いた海岸砂丘でのblowout形成の予測を行ったが,本研究では,飛砂の発達する場での堆砂垣周辺の地形特性を湘南海岸で実測するとともに,セルオートマトン法を用いた堆砂垣における飛砂の堆積を再現する実用的なモデルを構築した.
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宇野 宏司
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_755-I_760
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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四国霊場の歴史は古く,その源流は古代にまでさかのぼるとされる.各札所とそれらを結ぶ遍路みちの多くは,沿岸寄りに立地しており,津波をはじめ様々な自然災害に見舞われる可能性がある.特に,四国地方では近い将来に発生が予想される南海トラフ地震及びそれに付随する津波の対策が喫緊の課題となっている.こうした社会背景のもと,四国霊場八十八ヶ所や遍路みちの自然災害被災リスクを把握することは,伝統文化財の次世代への継承のみならず,地元の地域防災力の向上の面からも必要である.また,各札所を結ぶ遍路みちは,現在の幹線道路と重複する区間も多く,発災時の物流確保の面からも重要なインフラの一つと位置づけられる.このような社会背景を踏まえ,本研究では,アンケート調査結果や各種空間情報の分析によって,四国霊場八十八ヶ所及び遍路みちの自然災害被災リスクの検証をおこなった.
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小池 則満, 服部 亜由未, 森田 匡俊
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_761-I_766
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究は,大津波警報発表時に,海上にいる釣り客を迅速に避難させるための課題とその対策について検討することを目的とする.具体的には,小規模な海上浮体構造物である海上釣堀や釣り筏にいる釣り客(本研究では海上釣り客と呼ぶ)を遊漁船業者が地震発生後に母港から迎えに行き,母港まで戻った後,釣り客が一次避難場所に辿り着くまでの一連の避難行動を取り上げる.団体釣り客に模した調査員の記録とGPSデータ,南海トラフを震源とした津波想定を基に,問題点や代替案について検討した.その結果,避難時間の最小化や避難後の対応を考慮した「海上釣堀・釣り筏」→「上陸ポイント」→「避難路」→「一次避難場所」を一体的に考えた海上釣り客向けの避難ルート整備が必要であることを示した.
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阿部 幸樹, 高野 伸栄, 加藤 広之, 佐藤 勝弘, 小口 哲史, 川崎 浩明
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_767-I_772
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際に,岩手県内では約400隻の漁船が沖出しし,このうち幾人かが津波の犠牲となり亡くなっている.津波常襲地域であり,全国と比較し相当数の小型船外機船で養殖漁業等を営む岩手県の田老町漁業協同組合をケーススタデイとして,水産庁の「災害に強い漁業地域づくりガイドライン」に沿って設定した避難海域と東日本大震災津波時の漁船避難実態分析などを行った.その結果,ガイドラインに記載されている「津波流速が平均船速の1/5以下の海域」でなくとも避難海域として設定しうる可能性が高いこと,小型船外機船への津波に関する情報伝達を迅速かつ正確に行うために沿岸海域の養殖漁場などで,夜間でも視認・聞き取りできる回転灯や防災無線スピーカーを岬の先端などに配置することが有効な手段であることが判明した.
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板宮 朋基, 村上 智一, 小笠原 敏記, 川崎 浩司, 下川 信也
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_773-I_778
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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最大級台風の最悪コースによる三大湾への襲来に対する高潮浸水予測の数値計算は,これまで数多く行われている.その結果は自治体などにおいてハザードマップなどの防災情報として活用されている.しかし,地域の住民や子供たちに有益な防災情報として提供していると思われがちであるが,実際には災害をリアルに捉えることが難しく,発災時に取るべき行動を,感覚的・知覚的に学ぶことができない.そこで本研究では,数値計算で得られる高潮浸水の結果を基に,専門知識がない人でも直感的に浸水状況を理解してもらうため,VR(人工現実感)ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いた高潮想定没入体験システムの開発と有用性の評価を行う.HMDはスマートフォンに装着して用いるため,1セット当たり約9万円と低価格で構築でき,運用が容易である.
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黒部 笙太, 高木 泰士
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_779-I_784
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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2013年11月にフィリピンを襲った台風Haiyanは強風と高潮により,沿岸域に甚大な被害をもたらした.台風常襲国でありながら被害が拡大した一要因として,高潮の理解が不十分で,避難が遅れたことが指摘されている.筆者らが行った調査では,海水が住居に浸水した時点で屋外に逃げ出したため,流れに巻き込まれて犠牲になった住民が少なからずいたことが判明した.事前避難が避難計画の大原則であるが,このように避難を行わない・行えない住民がいる現実を考えると,高潮の住居浸入という極限の状況を想定して避難行動を検証する必要がある.本稿では,台風Haiyanの際に住民がどのような避難行動をとったか,Tacloban市で現地調査を行った.また,高潮浸水と避難行動を同時解析するモデルを構築し,高潮到達時に水平避難を行うことが合理的な選択行動といえるか検証した.
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宇多 高明, 大谷 靖郎, 伊達 文美, 宮原 志帆
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_785-I_790
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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Saipan島の西海岸沖ではリーフがよく発達し,浅い海が広がる.西岸沖には洲島(Managaha島)があるが,この洲島の北西端にある砂州ではかなり大きな汀線変動が観察される.2017年8月27日,この砂州の状況について現地調査を行うとともに,Saipan島周辺の波候特性を調べ,さらに衛星画像より洲島の汀線変動について調べた.この結果,砂州形状は4タイプに分かれ,砂州周辺では2-4月および10-1月にはNE, N方向からの波の出現頻度が高く,これにより洲島の北西端の砂州では左回りの,一方7-9月にはSW, S方向からの波の作用により右回りの沿岸漂砂が生じ,これらに伴い汀線の季節変動が起きていることが分かった.
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市川 真吾, 大中 晋, 宇多 高明
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_791-I_796
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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ツバル国のフォンガファレ島において,防護と利用・環境の両面の機能を高めるための礫養浜の実証事業が実施された.養浜後の海岸を良好な状態で維持するには,主な利用者かつ受益者である地域コミュニティー主導による維持管理が不可欠である.しかし,海岸保全事業の実績や知見の乏しい大洋州の島嶼国で,地域主導型の海岸管理が機能している事例はない.本研究では,地域主導型の海岸管理の実現のため,広報・環境教育活動から住民の海岸に対する意識・知識を改善するアプローチを図った.その結果,確実な意識の変化が確認されるとともに,自主的な海岸管理活動が継続的に実施され始めたことが確認された.さらに,これらの活動をより持続的に実施するための体制を提案・試行し,その有効性を確認した.
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大中 晋, 市川 真吾, 泉 正寿, 宇多 高明
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_797-I_801
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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南大洋州の小島嶼国であるツバル国で顕在化しつつある海岸侵食や高波浸水被害に対し,礫と砂を用いた礫養浜を実証事業として実施した.工事完了から2年間にわたる海岸モニタリング結果を踏まえ,海岸の利用形態に応じた地域主導型の順応的管理を提案・実践した.その結果,ツバルの人々により今後創生された海岸を維持していくことが可能であることが示された.
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楠原 啓右, 櫻庭 雅明, 大中 晋, 市川 真吾
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_802-I_807
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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漂砂やシルテーションによる航路・泊地の埋没は未だ現象が完全に解明されていないとともに,多くの不確定要素が混在するため,特に海外の発展途上国などの計画段階における限られたデータしかない場所では適切に航路・泊地埋没を推定することが困難である.本研究では海外のM港をモデルケースとし,限られた期間,範囲の観測に基づき,汎用的に用いられる二種類の数理モデルを用いて推定した埋没量を,現地で入手した測量結果から得られる堆積量と比較することにより,その妥当性を調べた.得られた平均的な堆積厚について,実測結果と計算値を比較した結果,両者に多少の差異が見られたが概ね同様の傾向を示す結果となった.この結果から,海外の港湾のような限られた一定の期間・範囲の観測情報でも数値モデルの評価が可能であることが分かった.
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玉井 昌宏, 辻本 剛三
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_808-I_813
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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鹿児島県本土側の32海岸の砂の色彩を定量的に把握するとともに,それと海岸周辺地域の地質状況との関係を検討した.対象地域の過半を占めるシラス台地の影響の大きい海岸の砂の特徴は,中程度の暗さのこげ茶色を多く持つことであった.完新世の火山活動による火砕流堆積物あるいは苦鉄質火山岩が分布する地域の海岸砂は概ね黒色であった.大隅半島東岸に位置する海岸は花崗閃緑岩により,出水山地より北方の海岸は同山地に分布する四万十層群の付加コンプレックスにより,暗いこげ茶色を持っていた.このように,海岸周辺の地質が砂の色彩に強く影響していることが確認された.
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中原 悠輔, 重松 孝昌, 山野 貴司
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_814-I_819
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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流動・漂砂制御構造物の脚部で生じる局所洗掘は構造物そのものの安定性を損ねるため,あらかじめ,洗掘規模を予測したうえで対策を講じることが望まれる.本研究では,水平移動床上に設置された鉛直平板を対象として,鉛直平板近傍に形成される流動と砂移動現象を詳細に観察するとともに,その高さが鉛直平板の脚部で発生する局所洗掘の特性に及ぼす影響を水理実験により検討した.観察結果に基づいて局所洗掘の発現メカニズムを考究し,局所洗掘対策として鉛直平板の下端を根入れする手法,および,鉛直平板下部を盛土によって覆う手法を考案し,それらの有効性について検討した.
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緒方 ゆり, 増子 雅洋, 藤井 直樹, 阿部 光信, Dilan RATHNAYAKA, Sachini PATHIRANA, 田島 芳満
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_820-I_825
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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洋上風力発電の風車基礎であるモノパイルの基部まわりでは波浪や潮流により洗掘が発生することが懸念されている.そのため,洗掘対策を考慮した設計を必要とするが,洋上風力発電で設置するモノパイル径を対象とした洗掘の研究事例が少ないため,十分な精度をもった洗掘予測及び対策工の検討手法については確立されていない.そこで,本研究では,モノパイル基部周りの洗掘の特性を把握するとともに洗掘深の推定手法の構築に向けた基礎データを取りまとめることを目的として水理模型実験を行った.モノパイル径,入射波諸元,粒径をパラメータとした実験からモノパイル周辺における波の変化,流速の急激な変化,洗掘範囲及び洗掘深を確認した.得られた洗掘深はKC数に基づく既往の算定式と同様の傾向を示したものの,その値は算定式よりも大きくなった.
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Anh Quang TRAN, 三浦 均也, 松田 達也, 吉野 貴仁
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_826-I_831
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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直線構造物に平面波が垂直に入射するとその反射波との重ね合わせによって典型的な定常波を生じ,特有の底質移動が現れることは知られている.しかし,より一般的な状況において入射波が垂直ではなく斜行して直線構造物に作用する場合には,反射重複波は定常波の特性を示すものの三次元的な挙動となる.このような解析には,通常の波動水路による実験や解析の有効性に限界がある,本研究の目的は直線構造物および垂直に屈曲した直角構造物が平面波の入射を受けた場合に生じる反射重複波の波浪場における底質移動を海底地盤の有効応力応答を考慮して解析することであり,その結果としての海底の侵食・堆積挙動を定量的に検討した.線形波動理論,海底地盤の多孔質弾性モデル,および掃流漂砂の経験的な評価モデルを組み合わせた解析手法を用いた.
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本田 琢, 土橋 和敬, 小林 喬, 平野 宜一
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_832-I_837
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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石川県千里浜海岸では,砂流出防止工としてサンドパックを汀線に沿って設置し,背後地の侵食抑制を試みるとともに実用性を検討している.砂流出防止工の天端高は,高さが異なるT.P.+0.5 m及びT.P.+0.1 mの2種類とし,背後地への影響等についてモニタリングを行った.その結果,砂浜の回復性や景観性などの観点から,砂流出防止工の天端高はT.P.+0.1 mの方が効果的であることがわかった.また,砂流出防止工の天端高をT.P.+0.5 mで整備した箇所について,現地で中詰め材を排出することで砂流出防止工の天端高を調整することを試みた結果,比較的容易に目標としたT.P.+0.1 mまで高さを下げることができた.サンドパック工法は,施設の整備効果を確認しながら天端高を調整することができるため,計画時点で効果予測が難しい侵食対策を行う際に有効であると考える.
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小林 孝彰, 佐々 真志, 後藤 翔矢, 福井 晶浩, 大塚 悟
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_838-I_843
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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同一条件で室内調整した細粒分混じり砂質土を対象に,液状化強度とN値を室内試験によって測定し,結果を直接比較した.また現行の液状化予測・判定手法の高度化を念頭に,様々な塑性を有する細粒分を対象として,その影響を検証した.非排水繰り返し中空ねじりせん断試験により評価した細粒分混じり砂質土の液状化強度は,僅かな細粒分を含んだ場合,砂のみの場合に比べて低くなった.細粒分含有率が増加すると,塑性の高い細粒分に関しては粘着力による強度増加が卓越し,液状化抵抗が上昇する傾向が見られた.また実物大室内標準貫入試験装置によって評価したN値に関しては,塑性に依らず、細粒分含有率の増加に伴ってN値が減少した.今回対象とした試料について現行の予測・判定法の補正を行った場合には,液状化強度を過大に評価する結果となった.
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森鼻 章治, 高橋 英紀, 森川 嘉之, 高野 大樹, 斎藤 智志, 鈴木 亮彦, 竹内 秀克, 一井 康二
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_844-I_849
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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近年,港湾構造物の耐震設計では動的数値解析の地震時変形量によって性能評価がなされており,サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)による締固め改良地盤に大きな変形が生じるという解析結果が得られる場合が多い.一方で,液状化対策として実施したSCP改良地盤の被害報告はなく,その改良効果が確認されている.このことから,計算結果と実現象には差がある可能性があり,その要因は砂杭と原地盤の複合地盤であるSCP改良地盤の応力状態が複雑で評価が難しく,数値解析では適切にモデル化できない現状が背景にあると考えられる.その1つが実際の改良地盤で確認されている静止土圧係数
K0の増大である.本研究では,遠心模型実験でケーソン式岸壁模型のケーソン背後の締固め改良地盤に
K0増大を再現し,改良効果の検証を行った.その結果,地盤の種類にもよるが,密度増加に加え
K0増大の効果を確認できた.
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高野 大樹, 高橋 英紀, 小泉 勝彦
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_850-I_855
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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構造物の自重により背後の土圧を支える重力式岸壁では,背後地盤の液状化による水平土圧の増加が原因となりケーソンの傾斜,滑動の被害が生じる.地震により変位が生じた岸壁に津波,引波が作用することでさらなる被害の拡大が生じることが予測される.その対策として,ケーソン背後の裏込め石置換部分に流動性の高い固化剤を注入することで裏込め石置換部分の自重を増大し,水平土圧への抵抗力を増加させる方法が考えられる.本研究では,ケーソンの裏込めを固化した岸壁構造の地震時挙動について動的遠心模型実験により検討した.その結果,重力式岸壁において背後裏込め層を固化することでケーソンの滑動量を低減できることが確認でき,固化体とケーソンを一体化することでさらに大きな改良効果が得られることがわかった.
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宮本 順司, 佐々 真志, 鶴ヶ崎 和博, 角田 紘子
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_856-I_861
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では,高波作用時の洋上風力発電基礎モノパイルの安定性検討の観点から,砂地盤-モノパイル系の一連の波浪実験を行い,波による液状化にともなうモノパイルの不安定化過程を詳しく調べている.実験は遠心力場70gで行った.実験の結果,液状化の進展とモノパイルの不安定化とは密接に関係することが得られた.すなわち,根入れ長さDの1/3程度が液状化すると,パイプが揺動しはじめ,その後の液状化領域の拡大にともないパイルが倒壊に至ることが得られた.さらに,モノパイルを密な支持層へ適切な深さ(D/2)まで根入れしておくことで,波の液状化に伴うパイルの残留変位の発達が抑えられることや,モノパイルが地盤中に存在することで,液状化抵抗が増大することが得られ,進行波載荷に伴う主応力軸回転の重要性を示した.
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杉山 友理, 森川 嘉之
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_862-I_867
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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海洋空間の利用や海底資源開発の必要性に伴い,深海底地盤の安定性評価が地盤力学的に重要な課題となりつつある.安定性について検討するためには,原地盤の圧密特性や強度と剛性の把握が必要となる.しかし,地上とは異なり海洋底から採取される土試料は,超高圧化に存在し,間隙水中には多くの溶存ガスを含むため,溶存ガスの気化に伴うサンプリング時の乱れの影響が無視できないと考えられる.そこで,溶存ガスの状態変化を考慮できる数理モデルを用いて,より精微にサンプリング過程をシミュレートすることで,溶存ガスの状態変化が採取試料の力学挙動及び力学試験結果に及ぼす影響について検討した.その結果,サンプリングにより試料は不飽和化及び過圧密化し,原位置における圧密特性及び非排水強度を誤って評価する可能性があることが分かった.
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渋谷 義顕, 山下 聡, 八久保 晶弘, 小西 正朗, 坂上 寛敏, 南 尚嗣, 仁科 健二, 内田 康人
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_868-I_873
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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表層型メタンハイドレート(MH)が存在している深海底地盤の強度を調べるために,コアラーで採取した試料を用いて強度を求めた場合,間隙水にメタンが溶存しており,採取コアを引き上げることによって溶存ガスが気泡化し,試料が乱され正確な強度を求めることが困難である.そこで,表層型MHの存在が確認されている北海道道東沖のオホーツク海において,重力式コーン貫入試験(CPT)を行い,海底地盤強度の直接測定を試みた.また,コア試料に対する船上試験結果と比較し,試料の乱れについても検討した.その結果,間隙水溶存ガス濃度が高い試料や砂分が多い試料なでは船上試験結果の信頼性が低くなること,簡易な重力式CPT試験により原位置強度の測定が可能であることが明らかにされた.
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栗原 大, 土田 孝, 髙橋 源貴, 村上 博紀
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_874-I_879
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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福島第一原子力発電所事故後に実施された除染作業により,放射性セシウムを含有した除去土壌が発生した.本研究では,この除去土壌を海面処分場で最終処分することを想定し,海面処分場の底面遮水に用いる遮水地盤材料の開発を行った.底面遮水のための遮水材料の必要性能について検討を行い,海成粘土にベントナイト,砂,ゼオライトを混合することによる遮水性能への影響について検討した.ベントナイトは遮水性,砂は遮水材料の圧縮性の低減及び圧密係数の増加による施工性,ゼオライトはセシウムの吸着性の向上を目的として添加した.間隙内平均流速を考慮するためカラム試験により求めた有効間隙率は,圧密通水試験により求めた間隙率と同等であった.間隙内平均流速に関する透水係数は,砂の添加により増加するが,ゼオライトの添加では変化しないことが分かった.
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神戸 泉慧, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 大坪 宙夢, 山崎 弘芳
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_880-I_885
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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港湾における杭基礎を用いた構造物では,施設の大型化や構造形式の変化に伴い,杭に大きな支持力が期待されるようになり,杭の長尺・大径化が進んでいる.ところが,開端杭の閉塞の問題と深度に依存する杭の支持力評価の問題が混在するため,長尺・大径化した開端杭の支持力評価方法は定まっていない.本研究では,これまで模型杭貫入実験を通じて開端杭の内周面摩擦力推定手法の検討を行ってきた.本論文では,この内周面摩擦力推定手法を用いて算定した内周面摩擦力に影響を及ぼす要因について検討を行った.得られた結果より,杭内部に貫入した土により形成された栓の長さが内周面摩擦力の推定に大きく影響を及ぼすことが分かった.
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竹之内 寛至, 佐々 真志, 山崎 浩之, 足立 雅樹, 高田 圭太, 岡田 宙, 金子 誓
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_886-I_891
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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CPG工法は,低流動性のモルタルを地盤に圧入して地盤密度を増大させる工法で,港湾・空港を含め既設構造物下の液状化対策として広く適用されているが,施工に伴い発生する隆起抑制が課題であった.これまで著者らは,模型実験および現場実証実験を通じて隆起抑制効果ならびに液状化対策効果の高い新たなCPG工法であるアップダウン(U/D)施工を開発した.本研究は,U/D施工の今後の実用化に向け,(1) 施工能率がよく隆起抑制できる方法の検討および (2) 隆起抑制メカニズムの検証を目的としている.本研究の結果,以下の知見が得られた.(1) 貫入抵抗を低減できる先端テーパー形状の注入管を用いることで,隆起抑制効果を担保し,施工性を向上できる.(2) U/D施工は少ない繰返し体積で隆起抑制効果と密度増大効果が速やかに発現する.(3) 隆起抑制メカニズムは,地盤の繰返し弾塑性収縮で説明できる.
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國田 淳, 樋口 晃, 中島 秀樹, 山本 修司, 王丸 冬二, 加藤 卓彦, 大石 幹太, 片桐 雅明
2018 年 74 巻 2 号 p.
I_892-I_897
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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新門司沖土砂処分場3工区において,浚渫土砂を材料として作製された機械脱水処理土によって嵩上堤体が7年前に構築された.今後,浚渫土砂の投入にしたがって浚渫土砂面が上昇し,その圧力が堤体に作用する前に,堤体の性状と安定性を評価するために,表面波探査,ラジオアイソトープ機能を有するコーン貫入試験,3深度でのブロックサンプリングとその試料を用いた一面せん断試験等の力学試験を行った.
結果として,乾燥している表層部を除き,湿潤密度は設計時の値とほぼ同じであったこと,一面せん断試験の結果から得られた破壊線は,設計時の強度線よりも上位に位置し,安定性に問題ないことが確認できた.また,弾性波速度とせん断強さ,コーン先端抵抗とせん断強さの相関性はそれほど高くなかった.
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