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山田 義仁, 大﨑 美千枝, 山田 秀夫, 宇多 高明, 大谷 靖郎, 繁原 俊弘
2018 年74 巻2 号 p.
I_300-I_305
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
フリー
下新川海岸では養浜のための土砂調達の必要性が高まっている.その場合,荒俣地先の1号離岸堤周辺では過剰に砂礫が堆積して深海への土砂流出が起きていることから,過剰に堆積した砂礫を採取して土砂調達を図ると同時に,深海への土砂流出を防ぐ手法の確立が望まれている.この案の実現性を調べるために,2017年5月以降1号離岸堤背後で土砂を掘削し,その土砂を下手側の3号離岸堤付近へ運ぶサンドバイパスの試験施工を行った.本研究では,地形測量,ドローンによる撮影,CCTV画像・定点写真撮影結果などを波浪観測データとともに解析し,離岸堤背後での土砂再堆積状況を明らかにした.
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野口 孝俊, 寺島 美保子, 小原 剛
2018 年74 巻2 号 p.
I_306-I_311
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
フリー
国内空港の植生地は,沿岸部にも生育する芝による施工が多い.植生地は草刈工を実施しているが,植生面積が広大なために管理費も多大となっている.空港内の既設舗装版を撤去した区域は防塵・防草対策も必要とされており,新たに芝以外の植生地材料として特殊針葉樹皮改良材を活用した実証試験を実施した.その有効性についての検証結果を報告する.
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中野 敏彦, 宮田 正史, 清宮 理, 菊池 喜昭, 岩波 光保, 下迫 健一郎, 鈴木 高二朗
2018 年74 巻2 号 p.
I_312-I_317
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
フリー
旺盛な需要が見込まれる開発途上国のインフラ整備に対応して,インフラの品質を確保し,日本のインフラ輸出に寄与するため,技術基準の整備が重要である.一方,日本の港湾設計基準は,国内基準の進化により途上国で求められる技術水準や自然条件との相違が大きくなる傾向にあり,そのままでは途上国での適用・普及が難しくなっている.このため,日本の港湾設計基準を相手国の自然条件等の事情に合わせて調整した上で,相手国の基準として利用してもらうという新しいアプローチが重要である.
本研究では,日本とベトナムとの間で行われたベトナムの港湾の新しい国家技術基準の共同策定を通じて得られた知見から,設計において重要となる設計条件の設定方法について,潮位,波浪,地盤,耐震設計等の相違点とその調整方法と課題について論じる.
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赤倉 康寛
2018 年74 巻2 号 p.
I_318-I_323
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
フリー
国際海上コンテナ輸送は,企業のグローバリゼーションを大きく進展させてきた.しかし,超大型コンテナ船就航やアライアンス再編に起因する船混み等により,定時性の顕著な低下が聞かれる.定時性が確保できない場合,グローバル・サプライチェーンの存続が脅かされる恐れがある.本研究は,日本の対欧州輸出を例に,輸送の定時性の実態を把握・分析し,輸送の遅れが日欧の経済に与える影響を試算し,今後の方向性について考察を加えたものである.その結果,欧州直航航路において慢性的な遅れがあること,その遅れが日本の欧州輸出に大きな影響を与える可能性があることを明らかにし,定時性向上の方向性を示した.
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嶋田 陽一
2018 年74 巻2 号 p.
I_324-I_329
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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北極海航路の運航の現状を明らかにするために,人工衛星で収集された船舶情報時系列データである衛星AISを用いて北極海における船舶運航の現状を調べた.北極海の海氷面積が最小となった年である2012年において北極海航路を航行した船舶であるタンカーに注目した.衛星AISで示された航路と海氷密接度を比較すると,タンカーは海氷密接度が低い海域を航行し,速度も速くなる傾向を示した.衛星AISによって北極海航路における運航を海氷密接度である程度説明できることが示唆される.
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木原 一禎, 細川 恭史, 鯉渕 幸生, 山本 悟, 近藤 康文
2018 年74 巻2 号 p.
I_330-I_335
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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昨今地球環境悪化に伴い,地球温暖化が進行している.日本を代表するサンゴ礁である石西礁湖は,2016年の夏に7割のサンゴが消滅する深刻な被害を受けた.著者らは,2007年から10年にわたる長期研究により,電源レスの流電陽極法を応用した微弱な電場発生(電場効果)(サンゴ幼生着生基盤)など造礁サンゴの再生技術(Galvanic Method for Corals;以下GMC)のサンゴ礁再生への有用性を実証した.
本報は,これまでの研究成果を基に開発したサンゴの再生を目的として,サンゴの生活史を考慮したGMC技術によるサンゴ生育棚(鉄構造)の開発について概説する.
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杉本 憲司, 植野 仙之, 高田 陽一
2018 年74 巻2 号 p.
I_336-I_341
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
フリー
本研究は,製鋼(電気炉系)スラグが干潟造成材料として使用されてきた海砂や砂利の代替材料としての利用について検証を行うことを目的に行った.製鋼(電気炉系)スラグは,人工海水を用いた室内実験や海域での使用においてpHの上昇はなかった.アサリ幼生は,珪石砂利よりも製鋼(電気炉系)スラグに3~14倍の着底があった.アサリ稚貝の成育実験では,製鋼(電気炉系)スラグと珪石砂利でアサリ稚貝の生残率にほとんど差はなかった.海域に設置した製鋼(電気炉系)スラグと珪石砂利へのアサリ湿重量に差はほとんどなかった.製鋼(電気炉系)スラグは,干潟造成材料やアサリ成育のための被覆材料として利用されてきた珪石砂利の代替材料として利用できることが確認できた.
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大橋 正臣, 梶原 瑠美子, 伊藤 敏朗, 穴口 裕司, 片山 真基, 門谷 茂
2018 年74 巻2 号 p.
I_342-I_347
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
フリー
本研究は,栽培漁業による漁業振興と港内泊地の有効利用のため,対象種をマナマコとし,北海道南部の漁港において中間育成に適した放流・生息基質の検討として実証試験を行ったものである.放流基質として貝殻礁,生息基質として材質・空隙等を変化させた5種類のユニットを設置し,稚ナマコの放流,約1年の生息環境調査を実施した.これによりマナマコ体長はバラツキが大きいが成長しており泊地内での地点間の差異は見られない.また,泊地内でも砂や陸域由来の落ち葉など堆積が多い地点は,生息個体数は他地点と比較して少ない.放流後1年後のユニットは,材料としてホタテ貝殻をメッシュパイプに入れたもので,この間隔が狭いユニットは生息個体数が多いという結果が得られた.これらの結果は漁港内でマナマコ中間育成を検討するにあたり,有用な基礎資料となると考える.
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丸山 修治, 梶原 瑠美子, 大橋 正臣, 伊藤 敏朗, 金森 誠, 清水 洋平, 門谷 茂
2018 年74 巻2 号 p.
I_348-I_353
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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北海道南西部に位置する江良漁港(松前町)の港内蓄養施設において,人工種苗を用いたアサリ垂下養殖試験を行い,殻長の成長結果と餌料の供給量から,垂下養殖事業の可能性を検討した.その結果,生残率が良好であったこと,当該施設内への餌料は,成長効率を0.188とした場合,アサリの成長に十分な量が供給されていると考えられたこと,北海道南部および東部の干潟と同程度の成長が得られたことから,垂下養殖事業の実用化の可能性が示唆された.一方,道内の函館漁港内における垂下養殖試験に比べて成長が遅い結果となり,その要因を整理・解明するといった課題も得られた.
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竹下 修平, 笠間 清伸, 中川 康之, 善 功企, 古川 全太郎, 八尋 祐一
2018 年74 巻2 号 p.
I_354-I_359
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本論文では,防波堤の耐津波対策の一つである,被覆ブロックに着目した.そこで,我々の研究グループが提案する,浸透流を考慮した被覆ブロックの安定重量算出式を用いて適当な形状を導き,水理模型実験によりその有効性を検討した.以下にその結果をまとめる.1) 間隙のある被覆ブロックは浸透流による被害が抑えられた.2) 脚の効果により,浸透流による滑り落ちるような移動が抑えられた.3) 本方法により算出された重量のブロックでは設定外力以下の条件で移動が生じる場合があり,算出方法に改良の余地がある.4) 被覆ブロックの水位差による浸透流に対する安全率を求めたところ,実験結果を適切に評価できることがわかった.
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林 建二郎
2018 年74 巻2 号 p.
I_360-I_365
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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潮流等の一方向流れが卓越する海底に置かれた藻場増殖用ブロックの安定性照査を目的として,開水路床面に水没している立方体に作用する流体力特性と安定性能および,ブロックに定着する沈水植生模型に作用する流体力特性を室内模型実験により調べた.分力計を用いて,立方体に作用する時間変動流体力とモーメントの同時計測を行い作用流体力の示力線を算定し,立方体に作用する流体力による転倒モーメントを評価した.藻場造成に用いられるアマモ等の沈水植物に作用鵜する流体力特性および搖動・変形特性を,曲げ剛性
EIは極めて小さく浮力で自立しているアマモ等と類似な揺動特性を示す発泡部材を用いて調べた.沈水植物模型定着の有無による,立方体の滑動破壊指数と転倒破壊指数の差異を評価した.
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大熊 康平, 安田 誠宏, 安冨 翔哉, 松下 紘資, 伴登 昭夫, 中西 敬
2018 年74 巻2 号 p.
I_366-I_371
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本研究では,透過性没水平板を有する中空立方体ブロック(中空ブロック)を用いて水理模型実験を行い,人工リーフにおける中空ブロックの不規則波に対する安定性を明らかにすることを目的とした.さらに,被災形態について検討し,設計・施工上の留意点を提示しようとした.実験の結果,中空ブロックの安定性は周期が長くなると低くなることがわかった.一方で,周期が同じであれば,安定性は前面マウンド敷幅
Lmを大きくすることで高くなることがわかった.被災形態を調べた結果,
Lmを大きくした際に,特定の周期と波高を持つ波浪が作用すると,被害が拡大し易いことがわかった.現地の波浪条件に留意し,適切な
Lmを設定する必要があることが示唆された.また,岸側端部の中空ブロックの転動には,マウンド天端岸側への被覆ブロックの設置が対策として有効であることが示された.
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武田 将英, 宮崎 哲史, 津田 宗男, 藤田 岳, 片山 勝, 井上 博士
2018 年74 巻2 号 p.
I_372-I_377
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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大水深護岸における反射波低減対策のひとつとして,天端が水中に没した鋼板セルに,上部工と消波ブロックを上載した構造の低反射型鋼板セル護岸が挙げられる.本研究は,低反射型鋼板セル護岸の消波特性とセル天端上の消波ブロックの安定性について,数値計算と水理模型実験により検討したものである.今回の実験範囲に限定されるが,低反射型鋼板セル護岸の反射率は,約0.2~0.4の範囲となり,低反射型鋼板セル護岸に上載した消波ブロックだけでも反射波が大きく低減することを確認できた.また,鋼板セル上の消波ブロックの所要質量は,一般的な消波ブロックと同様に,ハドソン式を用いて設計すれば実用上は問題ない.
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中村 英輔, 三井 順, 久保田 真一, 松本 朗
2018 年74 巻2 号 p.
I_378-I_383
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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2016年に国土技術政策総合研究所から発刊された「人工リーフ被覆ブロックの波浪安定性能評価のための水理実験マニュアル」に則り,開口部を有する被覆ブロックの人工リーフにおける波浪安定性を確認する実験を実施し,水深波長比
h/
Liの影響を検討するとともに,既往実験の結果との比較も行った.また,人工リーフの維持管理をするにあたり重要となる被覆ブロックの被災進行過程も観察した.実験の結果,
h/
Liが小さいほど安定性が低下し,被覆ブロックの安定性には厳しい条件であることがわかった.また,開口部を有する被覆ブロックは,初期被災後,すぐに連鎖的に被災が進行するのではなく,徐々に被災が進行していく過程がみられた.
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加藤 絵万, 川端 雄一郎, 宇野 健司, 宮田 正史, 福手 勤
2018 年74 巻2 号 p.
I_384-I_389
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本検討では,過去の設計法で設計された防波堤ケーソン部材を現行の設計法で照査した結果の一例を示し,改良設計時のケーソン部材の照査結果の傾向について調査した.また,現行の設計法で設計された防波堤ケーソン部材について,断面決定における支配的要因を調査した.これらの調査結果を踏まえて,既存ケーソンの延命や転用による有効活用に向けて解決すべき課題を整理した.その結果,一部の部材の情報からケーソン全体の健全性を評価せざるを得ないことから,長期利用に対するリスクを十分に認識する必要があることや,健全性に問題はないと判断されたケーソンについても,設計供用期間中の性能を満足できない可能性があること,また,ケーソン部材の使用性に関する照査項目と照査指標の妥当性の検討などが課題として挙げられた.
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小笠原 哲也, 和田 眞郷, 野口 孝俊, 菅 崇
2018 年74 巻2 号 p.
I_390-I_395
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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船舶の大型化に対して既存係船岸を増深する検討事例が増加している.そのため捨石マウンドの一部を注入・固化することで,法線位置を変更せずに重力式係船岸の増深を可能とする工法が水谷ら
1)により開発された.しかし当該工法は注入・固化に用いる可塑状グラウトの2次元注入実験を行った段階であり,実施工上の課題は未検討であった.そこで本研究では,容易に注排水できる京浜港ドックにて実大規模の捨石マウンドを構築し,水中にて捨石内へのグラウト注入や潜水士による捨石掘削など増深手順を模擬した実証試験を行い,当該工法が施工可能であることを確認した.その後ドック内から排水して増深時の捨石斜面の状況を確認し,さらに固結していない捨石を撤去して改良体出来形を陸上計測して,実用化に向けた研究成果が得られたので報告する.
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菅野 雄一, 遠藤 敏雄, 中川 大, 本田 和也, 水野 匠, 渡邉 真悟, 藤井 照久
2018 年74 巻2 号 p.
I_396-I_401
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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輸送船の大型化に伴い,既存の係船岸の増深が検討されている.本工法は重力式係船岸の捨石マウンドの一部に可塑性グラウトを注入・固化することで,既設の重力式係船岸の岸壁法線の位置を変更せずに増深を可能とする新工法である.本工法には,改良体の出来形及び改良体の強度という品質確認調査手法の確立という課題があった.これらの課題に対応すべく,実施工に先駆けて,京浜港ドッグにおいて本工法の実証実験が実施された.実証実験では,改良体の出来形の品質確認手法として,ボーリングコア観察,ボアホールカメラによる孔壁観察,孔内密度検層,音響トモグラフィ探査を実施した.強度に関する品質確認手法として,一軸圧縮強度試験,孔内水平載荷試験を実施した.本研究では,これらの品質確認調査結果の実施工への適用性を検討した.
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柳橋 寛一, 熊谷 隆宏, 上野 一彦, 小西 千里
2018 年74 巻2 号 p.
I_402-I_407
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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土木構造物の設計や施工において,N値や非排水せん断強さなどの地盤の強度や剛性に係る情報が重要である.これらと相関の高いS波速度を海底地盤から取得する技術として,海域へ適用可能な新しい表面波探査手法を提案した.現地試行により提案手法の有効性について検証した結果,得られたS波速度分布は,ボーリング調査および標準貫入試験によって得られた土質やN値の分布と概ね整合する傾向が確認された.当該手法を用いることにより,海底地盤の強度や剛性に関する情報を空間的に獲得して,可視化することが可能となり,港湾構造物や港湾施設のより合理的な設計や施工に向けての活用が期待される.
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粟津 進吾, 小濱 英司, 大矢 陽介, 塩崎 禎郎
2018 年74 巻2 号 p.
I_408-I_413
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
フリー
臨海部のエネルギー関連施設は,地震後も供給を継続するための高い耐震性能が求められる.エネルギー入出荷用の鋼管杭式桟橋では,ローディングアーム等の設備が上載され,陸域の貯槽と繋がる配管を有するため,耐震対策には桟橋上部工の加速度と変位の低減および杭の損傷の抑制が要求される.これらの要求に応えるため,桟橋の両サイドに組杭構造を新設し,それらを制震部材で結合する補強構造を対象に,模型実験と数値解析による効果の検証を行った.その結果,桟橋と組杭構造の水平剛性の違いから,制震部材に大きな変形が生じることで減衰が生じ,上部工の加速度,変位および杭の曲げモーメントの抑制を両立できることが確認できた.また,上部工の加速度応答スペクトルも同等以下に低減され,上載設備の応答低減も期待できることが分かった.
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高橋 英紀, 地本 敏雄, 福尾 原悟, 山谷 早苗
2018 年74 巻2 号 p.
I_414-I_419
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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東日本大震災後,ケーソン背後に石を積み上げる腹付工が既存の混成堤の補強方法として注目されている.実験や解析によって,石積みはケーソンの滑動を抑制し,基礎マウンドの支持力を増すことが確認されており,定量的な耐力評価方法も提案されている.一方,腹付工を設置した場合のケーソンへ作用する底面反力特性については検討された研究が無い.大きな端趾圧はケーソン端部を破損したり,マウンドを形成する捨石を圧潰したりする恐れがあり,底面反力特性を把握しておくことは重要である.そこで本研究では,腹付工を有する混成堤におけるケーソンの底面反力特性を遠心模型実験によって調べた.その結果,腹付工は端趾圧を大幅に低減できることが分かった.また,単純化した計算モデルでの底面反力とも整合性が取れていた.
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毛利 惇士, 引地 宏陽, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 秋田 桂一, 妙中 真治, 森安 俊介, 及川 森
2018 年74 巻2 号 p.
I_420-I_425
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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ケーソン式防波堤を鋼管杭と裏込めで補強した構造形式が提案されている.本構造に用いられる杭に作用する外力分布の推定を行うため,模型載荷実験を実施した.模型実験では,杭に作用する曲げモーメント分布を測定し,そこから杭に作用する外力を求めた.本研究では,求められた荷重分布から杭に港内側から作用する地盤反力を差し引くことで,ケーソンから作用する外力が算定できるとした.この際,杭頭水平載荷実験における実験結果をもとに,港研方式S型の地盤反力係数を用いた.推定した港外側からの外力分布から,ケーソンからの外力は主として裏込めと地盤の比較的浅い部分に作用していることがわかった.
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森田 浩史, 竹中 寛, 末岡 英二, 福手 勤
2018 年74 巻2 号 p.
I_426-I_431
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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けい酸塩系改質材や面ファスナーによるコンクリート打継処理の有効性に関して,力学的特性および耐久性について検討した.その結果,けい酸塩系改質材による打継処理方法は,水セメント比の違いによりコンクリート打継目の一体性や透気性に対する効果が変わる.一方,面ファスナーによる打継処理方法は,コンクリート打継目の一体性はやや低下するものの,耐久性は従来の打継処理方法と同等の性能を有していることが認められた.
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岸本 健一, 有田 守
2018 年74 巻2 号 p.
I_432-I_437
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本研究では,石川県そわじ浦海岸を対象として抽出された藻場の空撮画像を用いてアマモ及びその他の植生を判別する手法を開発した.アマモ場などの海草群落を空撮画像から分布推定する手法は様々な手法が提案されているが,衛星画像を利用する分布調査では画像取得に時間がかかることや衛星画像から詳細な分布を把握することは困難である.本研究では,自動運転技術などで一般物体の識別に用いられるCNNを使用して広域に及ぶアマモ場の分類手法としての有用性について検証を行う.特に一般物体識別と比べて画像内の対象物が小さい場合でもHyper Parameterの設定によって抽出した藻場の分類が可能であるかを検証した.
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太田 和彦, 北橋 貴博
2018 年74 巻2 号 p.
I_438-I_443
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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小型船舶においても航走が懸念されるような極浅海域で生育するアマモ等の藻場調査のため,ソーナー・水中カメラ等の観測機器の搭載が可能な遠隔操作式のトリマラン型小型無人航走体(ROV)を試作し,アマモ群落域の検出を試みた.極浅海域では音波はその伝搬特性のため遠方にまで伝わりにくいことから,ソーナーの観測範囲は制限を受ける.このため比較的安価で機能の異なる複数のイメージングソーナーを組み合わせてアマモ群落の観測域の拡張を図り,ROVの調査効率の向上を目指した.また,ソーナー出力に画像処理を施し,その検出・解析能力の向上を図った.特に,光学的観測だけでは深さ方向の変化が検出できないアマモ場に対し,イメージングソーナーを用いることにより草丈が地形と共に変化している状況が把握され,さらに画像処理に基づく統計解析からアマモの草丈分布が得られた.
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田多 一史, 中山 恵介, 駒井 克昭, Jeng-Wei TSAI, 佐藤 之信, 桑江 朝比呂
2018 年74 巻2 号 p.
I_444-I_449
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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北海道道東に位置するコムケ湖を対象とし,水中CO
2分圧のモデル化を目的として溶存無機炭素濃度(DIC)モデルの構築を行った.コムケ湖は汽水湖であり,淡水と海水のDICの値が大きく異なるとともに,気象や潮汐等の外的条件の変化により時々刻々とDICの空間分布が変化するため,3次元数値計算モデルによる再現計算を行った.
アマモ場による呼吸と光合成を考慮したDICモデルを提案し,現地観測との比較・検討を行った結果,良好な再現性が得られた.数値解析の結果によると,コムケ湖内で成層が強化されることにより,表層のDICが減少し,水表面付近の水中CO
2分圧は大気と比較して低くなることが分かった.また,河川出水により大量の炭素が与えられたとしても,アマモ場による効果で水中CO
2分圧は大気と比較して低く,湖全体としてCO
2は吸収傾向であることが分かった.
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武村 武, 内田 裕貴, 落合 麻希子
2018 年74 巻2 号 p.
I_450-I_455
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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衛星データによるアオサの繁茂状況把握を目的に,谷津干潟にてUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と衛星画像を用いて検討を行った.2016年10月27日と11月4日,2017年5月9日と11月16日にUAVにより撮影された画像より,アオサの被度を算出した.その結果,それぞれの観測日におけるアオサの被度は80 %,81 %,45 %,0 %であった.一方,衛星データより算出したNDVIを検討した結果,それぞれの観測日におけるプラス値の割合は,現地の状況とは大きく異なっていた.そこで,東京湾の潮位から推定された谷津干潟内の水深を考慮したNDVIの修正式を構築した.その結果,現地の状況を概ね表すことが出来た.
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村上 智一, 河野 裕美, 中村 雅子, 水谷 晃, 岡辺 拓巳, 下川 信也
2018 年74 巻2 号 p.
I_456-I_461
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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網取湾において礁縁から水深40 mに至る礁斜面深部までのサンゴ被度調査を実施し,得られたデータを水平・鉛直方向で比較・検討した.その主要な結果は以下である.
(1) 湾内9地点の礁縁から礁斜面深部までの形状別サンゴ被度を初めて明らかにした.(2) 卓状およびコリンボース型枝状サンゴは,礁縁部において生息が確認された一方で,それ以深では被度がほぼゼロとなった.(3) 葉状サンゴは,水深30および40 mの深部で高被度となった.(4) 網取湾では,浅部と深部で優占するサンゴの形状が大きく異なるため,礁斜面深部に生息するサンゴが礁原のサンゴの回復に寄与することは,難しいと推察される.
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土井 航, 村上 智一, 吉岡 雅人, 水谷 晃, 下川 信也, 河野 裕美
2018 年74 巻2 号 p.
I_462-I_467
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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オカガニ類の保全にとって重要な幼生の動態を明らかにするため,実際に野外で観察されたミナミオカガニとオカガニの幼生放出の日時と場所,風向・風速,河川流量の観測値を用いて,網取湾周辺海域における幼生粒子追跡を行い,移動と加入について解析した.オカガニ類の幼生放出は,主に満月前後の夜間満潮時に行われたが,その場所と日時は種間にわずかな違いがみられた.幼生は30分間で平均20~43 m移動し,ほとんどの幼生は放出から1週間程度で,湾外へと輸送された.放出場所への回帰率(< 0.01%)は,隣接する生息場所への来遊率(< 10%)を下回ることが多かった.回帰率の低さは幼生が分散型の移動戦略をもっていることを示唆しており,オカガニ類の保全にはメタ個体群動態を考慮する必要があると考えられる.
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秋山 吉寛, 岡田 知也
2018 年74 巻2 号 p.
I_468-I_473
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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侵略的な外来生物であるムラサキイガイは,港湾構造物表面に密生し,多量の糞を生産することによって底生環境の富栄養化を増長する.しかし,局所的な富栄養化により貢献しうる急速に沈む糞の形態の特徴,およびその糞を生産する本種の体格の特徴はほとんど注目されていない.本研究の目的は,ムラサキイガイの糞の沈降速度と直接的に関係する糞の形態の特徴,および,間接的に関係する貝の体格の特徴を明らかにすることである.糞の沈降速度はデトライタスと比べて850-7,360倍速かった.湿重量の重い個体によって生産された幅の長い糞は,より急速に沈降する傾向があった.
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上村 了美, 上月 康則, 大谷 壮介, 平川 倫, 岩見 和樹, 竹山 佳奈, 山中 亮一
2018 年74 巻2 号 p.
I_474-I_479
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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尼崎運河とその近隣の港湾において,環境DNA手法のひとつMiFish法を用いて魚類相の種多様性を検出し,富栄養化の進んだ沿岸域での本手法の有効性ならびに課題を明らかにした.種多様性を検出するためには,少なくとも1000 mlのろ過が必要であることが示唆された.運河では計16種が検出され,前年の採捕調査(13種)よりも多く,採捕調査では籠の制約によって評価できなかったと考えられるボラとクロダイ属が環境DNAによって検出された.検出された種数や魚類相を過去のデータと比較し,MiFish法は運河・港湾域での生物多様性モニタリングに有効であると考えられた.課題としては,適切なろ過量を選択する必要があること,結果について実際に生息している魚種であるかを精査する必要があることなどがあげられる.
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山本 浩一, 白水 元, 里 優作, 神野 有生, 関根 雅彦
2018 年74 巻2 号 p.
I_480-I_485
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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全長7.5mのポールの先にAPS-Cデジタルカメラを取り付けたカメラで5m程度の低高度の干潟の空中撮影を行って写真測量を行った.干潟地盤の比高とサクションの関係から干潟上に発生した砂州のサクション分布を推定することができ,これがサクションに依存するコメツキガニが選好するサクションの分布と極めてよく一致した.また,地下水の一次元流動計算を行った結果,現地で観測されたサクションを説明できた.ドローンによる空中写真測量と地下水流動計算によって,より広範囲における砂質干潟上のサクション依存型のベントスの生息範囲を推定することができると考えられた.
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梁 順普, 佐々 真志, 高田 宜武
2018 年74 巻2 号 p.
I_486-I_491
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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土砂内部の水分張力を表すサクションが砂浜の潮間帯に生息する小型底生端脚類であるナミノリソコエビの分布域を制御していることが明らかになっている.このような背景から,本研究では,ナミノリソコエビ及びその近縁種を含む3種の小型底生端脚類の生物分布とサクションの関係,又,潮汐による地下水位変動に伴うサクションの変動と生物分布の関係を明らかにすることを目的とし,3種の小型底生端脚類がそれぞれ生息し,潮差が大きく異なる新潟海岸に位置する五つの海浜,北海道の斜里海浜及び韓国済州道のサムヤン海浜で現地調査を行った.その結果,3種の小型底生端脚類の生物分布はサクションとの関係において,潮差及び潮汐の変動に関わらず,共通的な地盤環境適合場が存在することを明らかにした.
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遠藤 徹, 森田 司, 田村 陽, 大岡 宏行
2018 年74 巻2 号 p.
I_492-I_497
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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底質の砂質化により底層生態系の劣化が懸念される人工干潟の環境保全対策として,堆積層への落ち葉散布に着目し,その有効性について検討するため,易分解性と腐植させた難分解性の落ち葉を用いて,(1)水質と底質への影響評価のための溶出試験,(2)ゴカイとヤドカリの生残試験,(3)現地散布実験によるモニタリング調査を実施した.その結果,易分解性落ち葉を散布した場合,有機物分解により堆積層で硫化物が発生し,ゴカイなどの底生生物の生息に悪影響を及ぼすことが明らかとなった.一方,難分解性の落ち葉は,硫化物はほとんど発生せず,ゴカイの生存率は落ち葉散布なしの場合よりも高くなった.また,現地実験より落ち葉を散布した方が生息する生物種が多くなる傾向が確認でき,腐植落ち葉の散布は底層生態系の保全に有効であることが示唆された.
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上月 康則, 岩見 和樹, 平川 倫, 齋藤 稔, 竹山 佳奈, 西上 広貴, 田辺 尚暉, 山中 亮一
2018 年74 巻2 号 p.
I_498-I_503
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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尼崎運河は,矢板護岸に囲まれ,年間の大半で貧酸素化した状態にあり,生物の生息場としては大変厳しい環境にある.著者らは,運河の環境修復の方法として,貧酸素化されにくい水面付近に空隙のある構造物を設け,生物生息場としての運河の機能を高めることを考えた.本研究では,まず,尼崎運河で優占する底生魚チチブを用い,溶存酸素,明暗,空隙の設置水深といった条件を種々に変えた室内実験を行い,チチブの行動を観察した.その結果,チチブは,明暗で行動に違いがあることが定量的にわかった.またいずれの条件においても空隙を強く選好し,底層が貧酸素化した時には,水面近傍の空隙に長時間滞在した.他にも,空隙は貧酸素化のストレスを緩和するように作用することも示唆された.
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大谷 壮介, 野元 あい, 上村 了美, 東 和之, 上月 康則
2018 年74 巻2 号 p.
I_504-I_509
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では近年,大阪湾湾奥の御前浜において再確認されている準絶滅危惧種のウミニナを対象に御前浜を含む11干潟で生息環境の定量化を行った.ウミニナは大阪湾において2012年以降,生息地点は増加しており,11干潟においてウミニナの生息した地点の個体群密度は56~1307個体/m
2であった.また,決定木を用いて御前浜におけるウミニナの個体群密度および11干潟における生息の有無を推定した結果,シルトクレイ率,含水率が寄与していた.さらに,11干潟のウミニナの平均殻長とChl.
a量の関係より,ウミニナの成長には藻類量が寄与していることが示唆された.御前浜にみられた近年のウミニナの加入は,他の海域からウミニナが流入したものではなく,大阪湾にある干潟がソースとなってネットワークが機能するとともに,生息環境が整っていた可能性が示唆される.
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竹山 佳奈, 田中 克彦, 河野 博, 木村 賢史, 中瀬 浩太, 岩上 貴弘
2018 年74 巻2 号 p.
I_510-I_515
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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都市部運河域は,夏季の貧酸素化,淡水化および底質の悪化等により環境変動が大きい.運河域に造成された干潟,海浜そして浅場について,長期的な環境の変遷を明らかにするために,造成後約15年間にわたる調査を実施し,生物生息場としての機能や条件を把握することを目的とした研究をおこなった.その結果,造成直後から底生生物が加入し,毎年30種~40種が出現した.また,運河域では,地盤高が生物分布制限要因となっている可能性が示唆され,干潟造成の際には安定して生物が出現していたA.P.±0.0m~A.P.+0.5m(L.W.L付近)の範囲を拡大することで,生物の生息空間が広く確保され,早期に生物相が形成されると考えられた.また,近年注目されているグリーンインフラの考え方に基づいて,運河域に造成された干潟・海浜環境の生物生息場としての機能を整理した.
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村上 和仁, 伊藤 優太, 磯 祐介, 渡邉 悠太, 高木 結花
2018 年74 巻2 号 p.
I_516-I_521
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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谷津干潟(千葉県習志野市)最奥部の船溜りおよび東京湾と連絡する谷津川を対象として,生物指標としての付着珪藻(一次生産者)と大型底生動物(高次消費者),および新たに考案した生態環境状態指標による水環境評価を実施した.いずれの生物指標においても季節変遷がみられ,夏季の東京湾の水温上昇,赤潮・青潮の発生,アオサ藻体の崩壊等の影響により,夏季の干潟環境の評価が低くなった.谷津干潟の変遷と照合すると、船溜りは底質が有機物を多く含有する泥質であることから過去の谷津干潟の状態を示し,谷津川は底質が貝殻で覆われていることから現在の谷津干潟の状態を表していると考えられた.両地点の比較から,過去にごみが不法に投棄されていた頃と比較して,現在の谷津干潟は底生動物にとって生息しやすい環境になっていると考えられた.
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梶原 瑠美子, 大橋 正臣, 丸山 修治, 伊藤 敏朗, 門谷 茂
2018 年74 巻2 号 p.
I_522-I_526
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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本研究では,保護育成機能の寒冷域漁港での整備手法提案のために,漁港内の高波浪からの避難場,底生生態系に考慮した餌場機能に着目し,北海道周辺漁港の保護育成機能に関する基礎的知見を得ることを目的とした.調査の結果,漁港内は港外に比べ静穏でありながら,水温,塩分は大きく違わず,稚仔魚が港内で多かったことから,稚仔魚期は漁港の波浪からの避難場機能を利用している可能性が考えられた.また,港内では動物プランクトンだけではなく底生動物も多く現存し,静穏域に堆積した有機物の無機化により再生された栄養塩を利用し底生微細藻類などが基礎生産を行うことで,港内の餌場機能を支えていると考えられ,全調査で確認されたアイナメなどは,港内の餌場機能を利用している可能性も示唆された.
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鮫島 和範, 仲井 圭二, 内藤 了二, 川口 浩二, 額田 恭史, 橋本 典明
2018 年74 巻2 号 p.
I_527-I_532
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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副振動について,これまで余り注目されなかった周期と振幅との関係に関する解析を行い,平均周期が大きい地点ほど,無次元振幅の散らばりが小さいことが分かった.また,無次元周期の出現頻度が高い階級では,無次元振幅の平均値は周期や地点に依らず1に漸近する.仲井ら
1)2)は,気象庁の振幅5 cm以上の観測資料を用いて,個々の副振動の出現特性を示す確率密度関数の形等により,全国の地点を3種類に分類した.本研究では,港湾局の5地点において観測されたデータを対象に確率密度関数を算出したところ,気象庁のA群の形とほぼ一致した.平均振幅が小さい地点について,5 cm以上のデータだけを用いて確率密度関数を計算すると,真の確率密度関数からずれるということを仲井ら
2)は指摘していたが,このことが港湾局のデータにより確認できた.
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谷川 正覚, 山城 徹, 上宇都 瑞季, 加古 真一郎, 濱添 洸也
2018 年74 巻2 号 p.
I_533-I_538
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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夏季に発生する副振動は,台風によって引き起こされる.そのため,港湾などでは高潮に副振動が重なることで水位が上昇し,冠水などの災害を引き起こす危険性が高くなる.また,この副振動は高潮が収まった後で最大の偏差となることもあるため,その特徴を知ることは重要である.本研究では,台風が頻繁に襲来する奄美大島の小湊漁港において数値計算を行い,2012年6月18~20日に台風通過時に発生した副振動の再現を試みた.その結果,定性的ではあるが6月19日以降に発生した副振動が数値計算でも現れた.この結果から,周期6分の振動モード特性や副振動発生原因である海洋長波の伝播特性を明らかにした.
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中條 壮大, 金 洙列
2018 年74 巻2 号 p.
I_539-I_544
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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定点の気圧変動から微小気圧波成分を抽出した.離れた地点間でもその変動特性はよく似ていることが示された.また,その伝播特性を調べ,進行速度と進行方位の推定を行った.その結果,2009年および2010年2月の総観規模の低気圧変化は類似しているが,微小気圧波の伝播には差異が見られた.推定した微小気圧波の伝播過程を簡潔な正弦波で模擬し,その波群を外力条件として非線形長波方程式を解くと,実際の水位変動を過大もしくは過小に評価する結果となった.しかし,非常に小さな気圧振幅であっても1 m近い水位変動を生じさせることや進行方向による水位変動振幅の増減の変化,波の数や波長変化により最大水位やうなりに似た水位変動特性が変化することなどの結果を得た.
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長谷川 巌, 遠藤 敏雄, 遠藤 正洋, 五月女 誠, 高嶋 宏, 宮里 一郎
2018 年74 巻2 号 p.
I_545-I_550
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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港内で長周期波の反射波を抑制する工法として研究が進められているマウンド構造物について,現時点では十分に検討がなされていない消波ブロックの被覆層の厚さに着目して,マウンド構造による反射特性を検討した.既往の研究と同様に没水堤よりも没水離岸堤の反射率が小さいことを確認した.新たな知見として,没水離岸堤の全体を消波ブロックで構成するよりも,中詰め石材層を消波ブロックで被覆する構造の反射率が小さいこと,消波ブロックの層厚が小さい条件で反射率が小さいことなどを確認した.これまでの研究により没水堤や没水離岸堤は天端を潮位面と一致させると効果的であることが確認されているが,潮位変化を考慮すると天端をM.W.L. より高く設定することが効果的であることを示した.
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関口 翔也, 高木 泰士
2018 年74 巻2 号 p.
I_551-I_556
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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開発途上国では木杭が簡便な消波工として使われる.木杭は波打ち際に設置され,波はほぼ完全な砕波状態で木杭に作用する.このような極浅水域の円筒杭に着目した研究は少なく,消波性能評価や波圧計算に直ちに使用できる算定式はない.したがって,その設計には極浅水域での波浪変形や流体挙動を精度良く再現できる解析モデルが必要となる.本研究では,浅瀬を想定した造波水路実験を行い,解析と実験の結果を比較した.解析モデルには,波浪解析への応用例も増えつつあるOpenFOAMを活用した.比較の結果,OpenFOAMによる極浅水域の波浪解析は,砕波点の再現性などに課題が残るものの,完全に砕波した後,ボア状の波が到達するような水深条件で特に高い精度を示した.木杭は通常このような場所に設置されるため,OpenFOAMは木杭の詳細な検討にも応用できることがわかった.
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河村 裕之, 浅田 潤一郎, 中村 孝幸, 平山 隆幸, 伊井 洋和
2018 年74 巻2 号 p.
I_557-I_562
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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陸域から離れて構築される島堤では,沖側前面の重複波による波力のみならず,背面側において島堤両端からの回折波による波力も作用する.このため,堤体前背面に作用する波力の合成値は,それらの時間位相差に依存して,沖側前面の重複波力を上回るようになる場合もあり,島堤の蛇行被災との関係から検討されてきている.
本研究は,島堤の蛇行災害の軽減・防止を目的として,従来において十分に検討されていない,島堤の前背面の波高分布や前背面の合成波力に及ぼす堤体幅や低反射構造の影響などをまず規則波を対象にして明らかにする.さらに,実際場を想定して,多方向不規則波に対する同様の検討を進め,波高分布や作用波力に及ぼす波の不規則性や多方向性の影響などについて考察する.
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松浦 知徳, 長谷 美波, 村上 智一, 下川 信也, 川崎 浩司
2018 年74 巻2 号 p.
I_563-I_568
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本研究では,2008年2月下旬に起きた寄り回り波の追算シミュレーションを行い,富山湾沿岸の入善町下新川地区(湾東部),伏木富山港の富山地区(湾中央)と伏木地区(湾西部)の波浪特性の違いを海岸線と海底地形の影響の観点から明らかにした.また,富山湾沿岸における波浪と流れの相互作用は漂砂等の関連で解明されるべき重要な課題である.そこで特に,下新川地区を中心とした海底地形の変化の激しい海域について,radiation stress (RS)やwave-induced radiation force (WIRF)から,うねりと海底地形変化の関係を解析し,この海域での寄り回り波の変形特性に伴う流れの発生を調べた.
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中村 孝幸, 佐伯 信哉, 村上 剛
2018 年74 巻2 号 p.
I_569-I_574
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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本研究は,透過堤を含む外郭施設の配置計画など,事前検討の段階における港内静穏度等の効率的な推定を目的として,透過堤の特性を反射・透過率などの1次元的な指標を用いて簡易的に取り扱う方法論を展開した.ここでは,特に港湾域に複数の透過堤が含まれる場合にも対処できるように,透過堤間および陸域との間での波浪干渉効果を考慮した平面波高分布の近似解析法を明らかにする.近似解析法の妥当性を検証するため,複列カーテン防波堤による波変形に関する従来の実験結果との比較検討を行った.
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平山 克也, 長沼 淳也, 柴田 邦善, 森谷 拓実
2018 年74 巻2 号 p.
I_575-I_580
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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地震・津波等により被災し水没した防波堤に残存する防波性能を把握することは,暫定利用する港湾の安全性や事前嵩上げの要否等を評価する上で極めて重要である.また,これと同様な水理特性を有する没水堤は水面付近の波力を直接受けずに分裂による伝達波の短周期化が期待されるため,特にうねりによる荷役障害が懸念される離島港湾などで新たな静穏度対策となり得る.
そこで本研究では,不透過の矩形・台形潜堤及び透過台形潜堤上を伝播する不規則波の断面模型実験を行い,波高伝達率の推定式の妥当性,及び不透過潜堤上で生じる成分波間の非線形干渉とその背後での自由波へのエネルギー移行により,砕波直前の非砕波時に潜堤背後で有義波周期が2割以上短くなること等を確認した.また,これらの現象はブシネスクモデルを用いて非常によく再現された.
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安田 誠宏, 横山 彼杜, 平井 翔太, 中條 壮大, 金 洙列
2018 年74 巻2 号 p.
I_581-I_586
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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近年,地球温暖化の影響により気象が極端化し,大型で強い台風が来襲する頻度が高くなっている.特に台風強大化の影響を受けるのは高潮災害である.大きな被害をもたらす高潮は低頻度事象であるため,観測数が不足している.そのため,観測データをもとに高潮の確率評価を行うことは困難である.本研究では,確率台風モデルと非線形長波モデルを用いて高潮解析を行い,簡易予測式を提案する.広島と松山を対象に,簡易予測式の推定精度に及ぼす資料数や経路の影響評価を行う.検討の結果,資料数を増やすことにより誤差やばらつきは減少し,精度を向上できることが示された.また,同規模の台風であっても経路によって高潮偏差が異なるため,経路を分類した上で係数を算定すれば,任意の地点で高潮の簡易予測式を提案できる可能性を示すことができた.
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井手 喜彦, 中尾 直幸, 児玉 充由, 橋本 典明, 山城 賢
2018 年74 巻2 号 p.
I_587-I_592
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
ジャーナル
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大規模アンサンブル気候予測データベース(d4PDF)を用いて,将来気候における台風特性を評価した.まず,d4PDFから抽出した台風中心気圧をベストトラックデータと比較することで,モデルバイアスの把握と補正を行った.これより,d4PDFのバイアスの大きさは緯度依存性を持つことが分かり,それを考慮した補正を行うことで精度の良い補正結果を得ることできた.次いで,日本周辺における台風特性の将来変化を,将来の海面水温分布の違いに着目し評価した.その結果,台風の存在頻度は将来の海面水温分布によって異なることや,将来気候での台風強度が現在気候での強度よりも高まる程度は将来の海面水温上昇量が大きな場合に顕著であること,また将来的な台風強度の上昇量が大きい海域は海面水温分布によって異なることを明らかにした.
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Md. Rezuanul ISLAM, Hiroshi TAKAGI, Le Tuan ANH, Atsuhei TAKAHASHI, Ke ...
2018 年74 巻2 号 p.
I_593-I_598
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/12
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Based on our preliminary survey, which began 13 days after the landfall of Typhoon Lan, this paper assesses the situation along the coastline of Kanagawa, Chiba, and Tokyo, with a particular emphasis on the damage to coastal and port structures. It also discusses the research necessary to mitigate the future coastal flooding risk in and around Tokyo Bay. Storm-surge height, wave run-up height, coastal erosion, and infrastructure damage in various places are given. Extensive scouring was observed at a yacht harbor on Enoshima Island and at Kanaya port, where the elevation of the dykes was 7.3 m and 5 m from Tokyo Peil (TP), respectively. Waves overtopped and destroyed a long stretch of the breakwater parapet inAkiya Fishery Port and Kanaya Port. The highest elevation of wave run-up was 6.7 m from TP, recorded at a restaurant on a coastal hill in Tateyama. The maximum storm-surge heights at the tidal stations of Kanagawa, Tokyo, and Chiba Prefecture was 2.47 m (Banyu river bridge station), 1.28 m (Horie), and 1.21 m (Mera), respectively. Analysis based on best track data shows that Lan was one of the strongest, largest, and fastest typhoons ever to make landfall in Kanto.
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