東日本エリアの戸建て向けFTTH 市場は、サービス開始以降、NTT 東日本が高いシェアを維持する一方で参入が十分生起せず、競争が不活性なまま今日に至っている。
本稿では、市場形成を主導する支配的事業者、参入を目論む潜在的競争事業者からなる仮想的FTTH 市場を構築し、反事実的想定を含む複数のシナリオに対して、両事業者が「自社の事業価値の最大化に向けてシナリオ選択する」モデルを分析することにより、実際のFTTH 市場が競争不活性となったメカニズムについて考察する。
分析結果によれば、NTT 東日本が選択したシナリオにより、潜在的競争事業者の利益が圧迫され、参入障壁が形成されたと考えられる。一方、NTT 東日本のシナリオ選択それ自体は経済合理的であり、行政指導により競争環境の改善が予見されたため、シナリオ変更を必要とする状況には至らなかったと推察される。その結果、参入機会が十分確保できず競争不活性な状態になったと考えられる。
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