情報通信学会誌
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37 巻, 1 号
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論文
  • 米国法上の議論を手がかりとして
    海野 敦史
    2019 年 37 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
    ジャーナル フリー

    匿名表現の自由が憲法上保障される程度に関し、米国法上の議論を参照しつつ考察すると、以下の帰結が導かれる。すなわち、①匿名性は個人の尊厳の確保に資する役割を果たすうえに、それが表現物と結びつくことにより固有の価値を有することを踏まえ、匿名表現の自由は憲法21条1項に基づき保障される、②他人の基本権に関する法益を著しく害する表現については、公共の福祉に基づき制約され、当該他人との関係において表現者を特定する必要性が生じ得る限りにおいて、その匿名性についても制約される、③公共的事項に関する表現のうち、その表現者の身元の把握が民主政の意思決定過程における各種の判断に際して必要となると認められる場合における匿名表現の自由については、国民の「知る権利」と緊張関係に立つ結果、憲法上一定の範囲で制約され得る、④前記③以外の表現に関する匿名表現の自由は、前記②の場合を除き、憲法上手厚く保障される、⑤匿名性は、非表現の行為との関係においても憲法上一定の保護を受ける、と考えられる。

  • 目的、機能、文化から見るCSIRT
    小宮山 功一朗
    2019 年 37 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
    ジャーナル フリー

    サイバーセキュリティガバナンスが重要な政治課題となる中、CSIRT(コンピュータ・セキュリティ・インシデント・レスポンス・チーム)への関心が高まっている。先行研究で繰り返された「CSIRT=サイバー空間の消防署」などの定義は変容の激しい世界において有効性を失いつつある。より普遍的なCSIRTの概念が必要である。本研究はサイバーセキュリティガバナンスの数々のレジームを目的と機能と文化という3つのレンズを通して眺めれば、CSIRTは被害者救済とシステムの復旧を目的にかかげ、機能としてインシデント対応能力を持ち、互恵主義の文化を信条とする組織群のことであると主張する。特に互恵主義の文化は他のレジームとの重要な違いであり、それが根付いた背景には、インターネットの特質がインシデント対応のための国際協力と、科学的知識の共有を要請したことがあったことを指摘する。

  • 中村 彰宏
    2019 年 37 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
    ジャーナル フリー

    本論文では、2018年4月に筆者が実施したWEBアンケート調査データを用いて、スマートフォンゲームにおけるオンラインマルチプレイが課金行動に与える影響を分析した。オンラインマルチプレイの相手として、リアル(現実世界)でも知っているプレイヤーと、リアルでは知らないプレイヤーとに分け、それぞれのマルチプレイ有無と課金有無の関係を実証的に考察した。分析の結果、リアルでは知らないプレイヤーとマルチプレイをするプレイヤーの方が、課金をしやすく、リアルで知っているプレイヤーとマルチプレイするプレイヤーの方が、課金しにくいことなどが明らかとなった。また、空き時間が少ないプレイヤーの方が課金をしやすい傾向なども示され、スマートフォンゲームのアイテム課金の目的の一つとして時短効果があることはしばしば言われるが、その点が実証的にも確かめられた。当該分析結果はタイプ別のマルチプレイを促進することでゲーム会社の収益が改善する可能性を示唆している。

  • 山口 真一, 彌永 浩太郎, 坂口 洋英
    2019 年 37 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
    ジャーナル フリー

    本研究では、インターネット上の口コミ投稿行動の分析を行う。分析の結果、口コミ投稿経験者は約32%にとどまった。また、回帰分析による属性検証では、投稿経験に対し、年齢が有意に負で、大卒・新聞購読・インターネット利用時間が有意に正となった。また、動機としては利他的な動機が多いという結果となった。さらに、虚偽の口コミについては、口コミ投稿経験者の約5.7%が経験しており、属性分析では年齢が有意に負で、既婚、男性が有意に正となった。また、投稿動機が「投稿自体が楽しいから」「見返りがあるから」等の利己的な人は、虚偽の口コミを投稿しやすいことが分かった。

    以上のことから、口コミを投稿している人はインターネット利用者の約3分の1に過ぎず、その口コミも、ある特定の属性を持った人々が投稿しやすい傾向がある。そして、虚偽の口コミは少なからずあり、特に、若い人、既婚者、男性を対象とするような製品・サービスではその傾向が強まるといえる。

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