情報通信学会誌
Online ISSN : 2186-3083
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34 巻, 1 号
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論文
  • 大野 志郎
    2016 年34 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/17
    ジャーナル フリー
    SNS や動画サイト、オンラインゲームなどの普及に伴い、憂うつな気分やストレスからの逃避を目的としてウェブサービスを使用する「ネット逃避」の機会が、特に青少年に増えている。ネット逃避はインターネット依存の一因となり、日常生活における実害となって顕在化するものと考えられる。しかしながら、ネット逃避と実害との関係性については、十分に研究が行われていない。本研究では都立高校の生徒 (n=15,191) を対象に質問紙調査を行い、抑うつが、ネット逃避、インターネット依存を介してネット使用の実害へと結びつく構造について検証を行った。共分散構造分析の結果、抑うつがネット逃避 (.23) と潜在的ネット依存傾向 (.04) へ、ネット逃避が潜在的ネット依存傾向 (.66) とネット使用の実害 (.06) へ、潜在的ネット依存傾向がネット使用の実害 (.72) へ影響する、逃避型インターネット依存モデルの適合を確認した。このモデルは、ネット逃避が、インターネット依存を介してネット使用の実害へと結び付く強いパスを示している。抑うつなどの心理的ストレス要因に対し、ネット逃避に代替する効果的な対処方法を見つけ出すことが重要である。
  • 藤野 克
    2016 年34 巻1 号 p. 11-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/17
    ジャーナル フリー
    アジア太平洋地域の各国間で締結が進められている個別的 FTA には、各国の情報通信市場の環境整備のための規律を定める情報通信規定が多く設けられている。米国は、積極的に自国の国内ルールを投影させた個別的 FTA を拡大させるアプローチを進めている。この結果、米国の FTA は、シンガポールや豪州のような他の先進国が途上国等と締結した FTA とは異なる内容のルールが設定されている。個別的 FTA によるルールの多様化は、その個別的 FTA を手直ししなければ多国間でのルール共有を阻害すると論じられてきた。しかし、米国は、他の先進国との FTA 交渉では、互いの国内自由化アプローチの差異により一方にしかメリットのないルールオプションは棚上げにして両国にメリットのあるルールのみを FTA に盛り込むことで合意している。これは、FTA で共有することにメリットがあると考えられているルールが十分多く存在しているためである。現状のようにそういった違いを先進国間で認め合う限りは、米国が現在進めるような個別的 FTA の拡大は、多くの国で共通のルールを持つことを阻害せず、むしろ促進していると見られる。
  • 政府企業間関係論的視座からの国際比較分析
    米谷 南海
    2016 年34 巻1 号 p. 27-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/17
    ジャーナル フリー
    本論文は、日本、韓国、台湾を事例に、ケーブルテレビ事業者の差別化戦略がどのように決定されるのかを、政府企業間関係の観点から分析したものである。三か国のケーブルテレビ事業者は同様の技術的発展経緯を辿り、現在では世界有数のケーブルテレビ大国に成長した類似点がある一方、その差別化戦略と政府企業間関係の密接度には大きな違いがある。分析の結果、ケーブルテレビ事業者の政府企業間関係が密接な日本では、事業者が採算性の低い地域サービスを事業の中心に据えながらも「地域メディア」として市場で生き残ることが可能だったことが判明した。それに対し、政府企業間関係が希薄な韓国と台湾では、ケーブルテレビ事業者の地域性は初期段階で失われてしまい、現在では採算性を重視した通信サービス中心の差別化戦略を採用するに至っている。ケーブルテレビ事業者の差別化戦略は国によって多様であるが、そこには政府企業間関係の違いが反映されていることが明らかになった。
寄稿論文
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