情報通信学会誌
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36 巻, 2 号
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論文
  • 日本とアメリカの比較分析を交えた調査データからの検証
    辻 大介, 北村 智
    2018 年 36 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/08
    ジャーナル フリー

    インターネット上では、従来のマスメディア中心型の環境よりも、情報・ニュースの選択的接触が生じやすく、それによって人びとの意見の極性化が生じ、世論や社会の分断を招くのではないかという懸念が、多くの研究者や評論家から表明されている。本稿では、日本の「ネット右翼」やアメリカの“Alt-Right”に見られるようなネット上の排外主義に着目しつつ、2016年に日本とアメリカで実施したウェブ調査のデータから、ネットでのニュース接触が排外的態度の極性化(二極分化)傾向との連関について検証する。分位点回帰分析の結果、日本ではPCを用いたネットでのニュース接触頻度がユーザの排外的態度の二極化傾向と有意に連関していたが、アメリカではむしろ専ら反排外的な方向のみに変化させることが確認された。このことは、ネットにおける態度・意見の極性化の生起が、社会・政治・文化的コンテクストによって左右されることを示唆している。

  • 大槻 明, 町田 悠貴, 川村 雅義
    2018 年 36 巻 2 号 p. 111-126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/08
    ジャーナル フリー

    ユーザ(消費者)の潜在的なニーズを明らかにするために,最近ではサイレントカスタマー分析やサイレントマジョリティー分析などのアプローチが盛んに研究されている.また,スマートフォンやSNSの普及により,ユーザがいつでも簡単に趣向等をSNS上に投稿することが可能となった.そこで,本研究ではTwitterで「暇」と対外的に意思表示をしているユーザが何を求めているのか,という観点でユーザシチュエーション分析を行うことで,マーケティングに資するユーザの潜在的ニーズを明らかにする分析アプローチについて提案する.

    具体的には,独自に開発したスクリプトを用いて,2015年9月〜2016年8月の期間で,全国で「暇」というキーワードが含まれるツイートを約80万件取得し,これらのツイートを対象に,T値及びMI値を用いて「暇」と共起関係が認められる単語(名詞,動詞,形容詞,形容動詞)を抽出した.

    そして,三大都市を対象に,「暇」と共起関係が認められる単語の位置情報を日本地図に可視化することで,暇ツイートが集中しているスポットを明らかにし,極性分析を行うことで暇ツイートが集中しているスポットでは,どのようなつぶやきがされていて,それらがポジティブもしくはネガティブのどちらの意味でつぶやかれているのかについて,三大都市の違いを明らかにした.

    さらに,極性分析では拾い切れなかったユーザの潜在的な状況について,共起ネットワーク分析及びTF-IDFの両アプローチを用いて分析を行うことで三大都市の違いを明らかにした.

  • 斉藤 邦史
    2018 年 36 巻 2 号 p. 127-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/08
    ジャーナル フリー

    本稿では,私人間におけるプライバシーの法的保護を再検討することにより,以下の考察を得た。第一に,信頼関係に基づく情報の分配状況は,個人の自律的な選択により実現する状態としてのプライバシーそのものなのであり,米国では信認義務の法理による保護の拡張が模索されている。第二に,私人間でプライバシー外延情報の「適切な管理についての合理的な期待」を保護する日本の判例法理は,当事者間の信頼関係に基づく情報の分配状況を保護法益と捉えるものであり,信認義務の法理と共通する側面がある。第三に,情報の「適切な管理」に関する事業者の義務を,信義則に基づくものと理解するならば,秘密保持義務だけでなく,情報開示義務をも基礎付けることができる。

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