電気通信事業法は、他人のサーバー等へのアクセス権限のみで電子掲示板を運営する個人等、「電気通信事業者にも電気通信事業を営む者にも該当しないが通信の秘密たる情報を直接取り扱う者」の取扱中に係る通信の秘密を保護していない。これは、立法政策の所為というよりも、近年になって急増したかかる者への立法的対応が追いついていない結果であり、今日的な「法律上の通信の秘密の間隙」となっているものと考えられる。立法論上、これを適切に解消するためには、電気通信役務の概念について、他人の通信の「媒介」及び「供用」に加えて、伝送行為を伴わずに媒介的な役割を果たす「実質的な媒介」という行為の要素を新たに含めつつ、それに従事する者を電気通信役務提供者と位置づけることが望ましい。そのうえで、「電気通信事業者その他電気通信役務提供者(もっぱら電気通信設備の供用を行いつつ通信の秘密たる情報を直接取り扱わない者を除く)の取扱中に係る通信の秘密」を適切に保護することが求められよう。近年、実質的な媒介を通じて通信の秘密たる情報を取り扱う者は増加かつ多様化していることから、「電気通信役務提供者」の観念を設け、それに基づき法律上の通信の秘密の射程を再構成する有用性は高まりつつあると考えられる。
データの利活用は、経済成長や雇用創出等に重要な役割を果たす。そのためには、データの利活用に関するルールを明確化し、法的な確実性を確保することが必要である。欧州連合(EU)においては、個人データについては包括的な法的な枠組があるが、「非」個人データについては未整備である。2017年1月、欧州委員会(EC)は、「非」個人データの利活用に関するルールのたたき台を示す文書を公表した。その中には、第三者によるデータ利用のルールの検討等も含まれている。本論説においては、公表された文書を概観するとともに、データが有する情報の非対称性を勘案した経済分析を行う。
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