排ガス中のダイオキシン類分解処理に対する電子線照射の有効性を調べ, 分解特性を明らかにするために, 五塩化ベンゼン (P
5CBz) と四塩化ダイオキシン (1, 2, 3, 4-T
4CDD) をケイ酸マグネシウム粉末に吸着させた模擬試料を用いて分解実験を行うとともに, P
5CBzの量子化学計算を行った。照射量を300kGyとするとP
5CBzとしての分解率は96%に達したが, 低塩素化物が生成するため, 生成物も含めた塩化ベンゼン (CBz) 全体の分解率は62%であった。また, 1, 2, 3, 4-T
4CDDの分解実験でも, CBzとほぼ同じ分解率が得られた。分解反応は, 塩素数が多い場合は脱塩素が主であるが, 低塩素ではベンゼン環の開裂が起きていると考えられる。脱塩素の容易さは置換位置により差があり, P
5CBzではC-Cl結合解離エネルギーの値が低い結合からの順であった。生成物の異性体分析は, 両側に塩素の存在するP
5CBzの3位あるいは1, 2, 3, 4-T
4CDDの2 (3) 位が脱塩素しやすいことを示している。したがって, 高塩素化ダイオキシンの処理でも, 2 (3) 位に置換した毒性の高い異性体はできにくいと予想される。
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