廃棄物学会論文誌
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16 巻, 6 号
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論文
  • 秋山 貴, 原科 幸彦, 大迫 政浩
    2005 年16 巻6 号 p. 429-440
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    住民が廃棄物処理施設について感じる迷惑感の広がりとそれに影響を与える要因を, 住民に対するアンケート調査をもとに検討した。生存分析モデルにより最終処分場までの距離と反対率の関係を求めたところ, 1km, 20kmにおける反対率は76%, 12%であり, 処分場に対する否定的態度が広範囲に及ぶことが示された。焼却施設への反対率は処分場と同等であったが, リサイクル施設では小さかった。また, 処分場と焼却施設では回答者の約半数にNIMBY的態度が見られた。処分場への反対率に影響を持つ要因は, 処分場のリスク認知, 立地計画の手続不備の認知, 地域エゴへの反対姿勢, 身近な廃棄物問題の経験であり, 行政や事業者への信頼感, 廃棄物問題への責任感, 処分場の必要性の認知の影響は見られなかった。このことから, 一般論としての施設受容と立地を想定した場合の施設受容では, 施設に対する態度を決定する要因が異なる可能性が示唆された。
  • 松藤 敏彦, 田中 信壽, 小石 哲央, 柴田 哲也
    2005 年16 巻6 号 p. 441-452
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ガラスびん, スチール缶・アルミ缶, PETボトルを対象に, 自治体における収集方法別実施状況と収集量, 選別施設における物質収支を明らかにするため, 全国の自治体を対象としたアンケート調査, ヒアリングを行った。
    収集方法別に収集量を比較すると, 大部分の飲料容器は自治体収集によって集められており, 品目別収集よりも混合収集を行っている自治体が多い。しかし混合収集は品目別収集より選別施設における回収率が低く, 特にパッカー車による場合に低下している。この原因は収集時のガラスびんの破損であり, 回収されずに残渣として埋め立てられている。回収率とエネルギー消費量の点で, 分別収集方法としては, ガラスの破損を避けるためにガラスびんを平ボディ車, 缶, PETボトルを積載効率の高いパッカー車とするのがよい。また拠点回収は, 1, 000~2, 000人に1箇所程度の設置密度があれば, これのみで高い収集率が得られる。自治体収集のみに頼るのではなく, 物質回収および環境影響低減の視点から収集方法の見直しが必要である。
  • 小谷 克己, 古市 徹, 石井 一英
    2005 年16 巻6 号 p. 453-466
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    地域に受け入れられる最終処分場を建設するためには, 構造面での安全性と信頼性が重要である。しかし, 最終処分場は様々な土木分野の技術を集約した構造物であるため, システム的に構造物を設計・施工する技術は未熟であり, 技術的なトラブルが多発している。したがって, 従来, 表面化することが少なく活かされることがなかった, 過去のトラブル事例を解析し, トラブルを未然に防ぐための対策の構築が不可欠と考えられる。
    本研究では, 著者らが実際にトラブルに関して携わった43箇所の最終処分場での48種類のトラブル事例を対象に, その原因と実施された対策を解析した。そして, トラブル回避のための対策案を検討し, その対策効果の評価について, 最終処分場建設に携わった経験のある実務者にアンケート調査した。その結果, トラブルは施工中や供用中で発見される場合が多いが, その原因は複数で多岐にわたるものの, 主に設計と施工の段階にあることがわかった。そのためトラブルを回避するには, マニュアルの整備や資格制度の導入等の対策が効果的であることが示唆された。さらに, 立地条件に応じた設計だけではなく, 施工管理の徹底や設計時に予期されなかった事態への柔軟な対応が, トラブルを回避する上で重要であることも示唆された。
  • ―システム境界の影響―
    稲葉 陸太, 橋本 征二, 森口 祐一
    2005 年16 巻6 号 p. 467-480
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    その他プラスチック製容器包装のごみ焼却発電によるサーマル・リサイクル, および鉄鋼産業におけるケミカル・リサイクルを含む事例のLife Cycle Assessment (LCA) を対象として, 既存産業が関与するリサイクルのLCAにおける適切なシステム境界を検討した。まず, 事例間での物質・エネルギー収支の変化を検討し, 変化が予想されるプロセスをすべて包含するよう, 既存のLCA研究よりも拡張したシステム境界を設定した。次に, 製鉄所内のプロセスを省略あるいは包含したシステム境界に基づくインベントリ分析を実施したところ, 両者で事例間の相対的評価が明確に異なり, 前記プロセスの考慮の有無が評価を大きく左右することが示された。この結果から, 既存産業プロセスが関与するリサイクルにおいて, 産業内の物質・エネルギー収支が変化するプロセスの明確化と, これを包含したシステム境界の設定が必要であることが示された。
  • 齋藤 哲, 大林 宏至, 中井 智司, 細見 正明
    2005 年16 巻6 号 p. 481-491
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    真空加熱分離法によるPCB使用電気機器からのPCB分離実験をパイロットスケールの実験プラントを使用して実施し, 処理温度および処理時間がPCB分離処理の性能に及ぼす影響について検討した。試料には実際のPCB廃棄物で低濃度PCB汚染物であるワニス含浸柱上トランスおよび高濃度PCB汚染物である高圧トランスおよびコンデンサを使用した。処理圧力は100Paに固定し, 処理温度を200~400℃, 処理時間を1~3時間で変化させて実験を行った。その結果, ワニス含浸柱上トランスは, 処理温度300℃, 処理時間1時間が最適な処理条件であると考えられた。一方, 高圧トランスおよびコンデンサは, 処理温度400℃, 処理時間1時間が最適な処理条件であると考えられた。
  • 佐々木 秀幸, 安部 隆司, 中南 真理子, 平野 高広, 藤原 智徳, 藤原 忠司, 小山田 哲也
    2005 年16 巻6 号 p. 492-500
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    国内最大規模の産業廃棄物が岩手・青森県境に不法投棄された。その処理方法として, セメントの原料化や溶融処理が検討され, セメント原料化としての利用は, 既に実施されている。一方, 溶融処理に関しては, 一般廃棄物の実績はあるものの, 不法投棄物を対象とした例はほとんどない。
    本研究では, 主として溶融処理を念頭に, 不法投棄物の性状を調べ, さらに実機を用いた焼却・溶融試験も行って, 不法投棄物を溶融処理するにあたっての留意点を整理した。
    不法投棄廃棄物の性状は, 場所によって大きく異なっていたが, 総体的に, 主成分は珪素, アルミ, 鉄およびカルシウムで, 灰分が多く, 発熱量は比較した一般廃棄物の1/6程度に過ぎない。塩基度の低いものが多く, 溶融助剤を添加して溶流温度を低くする必要がある。
    実機試験では, 焼却および溶融に伴う有害ガスの発生は認められなかった。また, 溶融スラグからの重金属等の溶出はなく, 安全性の観点からは, 骨材としての利用が可能と思われる。
  • 北村 寿宏, 田中 貴裕, 片山 裕之, 石飛 裕司
    2005 年16 巻6 号 p. 501-507
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    廃木材の有効利用の観点から, 木炭を製造し床下などの調湿材としての利用が進められている。しかし, 木炭の吸放湿特性を評価する統一的な方法が確立されておらず, 製造された木炭の性能比較を行う, 木炭の製造方法を開発するなど, 様々な場面で課題となっている。
    本研究では, 日本工業規格の「調湿建材の吸放湿特性試験方法」を参考に木炭の吸放湿特性の評価方法を検討し, 同様の測定条件で単位重量あたりの吸湿量, 放湿量を測定することで木炭の吸放湿特性を評価できることを明らかにした。
    廃木材を原料に製造した木炭の吸放湿特性を評価し, 従来の木炭と同等の性能を有することを明らかにした。木炭の吸放湿特性は, 炭化温度の影響を受け, 650~920℃の炭化温度の範囲内では温度が高くなるほど吸湿量と放湿量とも大きくなる傾向が見られた。木炭の吸放湿特性に及ぼす炭化時間や比表面積の顕著な影響については, 今回の炭化条件内では見られなかった。
  • 布施 正暁, 鹿島 茂
    2005 年16 巻6 号 p. 508-519
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    わが国では2005年1月より「使用済自動車の再資源化等に関する法律 (自動車リサイクル法) 」の本格施行が予定されており, それに向け使用済み自動車のリサイクル過程を適切にかつ正確に把握および評価することが求められている。筆者らは, 中村によって既に作成されている廃棄物産業連関表をベースに使用済み自動車のわが国の経済活動内での循環と海外輸出, そしてその経済活動に伴い環境へ排出される環境負荷を定量的に記述した自動車リサイクル産業連関表の作成を試みた。1995年を対象にして使用済み自動車のリサイクル過程の把握および評価に適した財と部門の分類を設定し, そのリサイクル過程でのマテリアルフロー量を推計した。さらに, そのときに用いた推計方法と既存の推計方法や調査と比較を行うことで推計の妥当性を検証した。
  • ―炉内雰囲気条件に対する反応速度の評価―
    宇多 信喜, 佐川 寛, 松田 健志, 瀧口 智志, 朝倉 祝治
    2005 年16 巻6 号 p. 520-530
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ゴム, 塩化ビニール等に代表される難燃物を溶融スラグに投入し, 加熱, ガス化するとともに, 残渣分 (以下, 灰分と呼ぶ) をスラグ内に溶融する処理手法 (以下, スラグ流動床方式と呼ぶ) において, 主たる運転条件である炉内の温度, 酸素濃度に対する反応速度の特長を一般的な処理方式である空気燃焼方式と対比しながら把握した。ゴム試料およびポリスチレン試料の大きさおよび灰分含有率がそれぞれ, 3mm, 30%と3.5mm, 0%の難燃物を対象に, 炉内温度が800~1, 200℃, 酸素濃度が3~21%の範囲において, 処理中の難燃物質量の時間変化を計測し, 次の結果を得た。
    難燃物の反応速度は, 灰分含有率が小さく揮発分の割合が多いものは空気燃焼方式およびスラグ流動床方式ともに運転条件の影響を受けにくい。一方, 灰分含有率が大きく揮発分の放出の後, 固定炭素の表面燃焼を伴うものは, 空気燃焼方式の方が運転条件の影響を受けやすい。特に酸素濃度の低下に伴い, 固定炭素の反応速度は顕著に低下した。一方, スラグ流動床方式では反応速度の低下は軽微であった。
    微粉炭燃焼での研究を参考にして, 数値計算をもとに速度反応論的な議論をした結果, スラグ流動床方式では難燃物表面に生成する灰分がスラグに溶融することから, 固定炭素と空気が直接, 接するとともにサイズが小さくなることで単位面積あたりの反応速度が大きくなることが上記の要因であると考えられる。
  • 渡辺 敦雄, 田嶋 直樹, 迫田 章義
    2005 年16 巻6 号 p. 531-539
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    PCB製品を対象とする紫外線分解施設の反応容器のスケールアップを目指して, 209種のPCB異性体の紫外線分解に関する脱塩素化反応速度定数を先行研究結果の解析により求めた。次に実験ごとに異なる見かけの反応速度定数はPCB分子への入射紫外線強度の0.85乗に比例することに注目し, 実験間の反応速度定数補正式を提案した。さらに (1) すべて塩素数が1個ずつ減じる逐次反応で反応次数はほぼ1, (2) 最終的には, モノクロロビフェニルからビフェニルになる, (3) 3-クロロビフェニル, 4-クロロビフェニルが残留し中間生成物のように振舞う, などの脱塩素化分解反応の特徴に基づき, 脱塩素化分解反応速度定数からビフェニル化反応スキームと反応速度予測式を推定した。最後にPCB製品による本研究実験結果と上記反応速度予測式との比較評価により脱塩素化反応速度定数の妥当性を確認した。
研究ノート
  • 土屋 禎造, 松井 亮, 尾中 貴宏, 三宅 義和
    2005 年16 巻6 号 p. 540-544
    発行日: 2005/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ウエハ研磨工程から排出される金属シリコンは, その粒径が約240nmであり, その濃度は7.6wt%の懸濁液であった。この懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を添加してアルカリ処理すると, 金属シリコン1gあたり1, 870cm3の水素ガスが発生した。この過程は次の反応式に従っていると考えられる。Si (s) +2OH-+H2O→SiO32-+2H2 (g) ↑
    水素発生速度は, 金属シリコン濃度に依存しなかったが, 水酸化ナトリウム濃度が薄くなると減少した。アニオン性界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) およびカチオン性界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロマイド (CTABr) を懸濁液中に添加してアルカリ処理すると, 初期段階では水素発生が見られない誘導時間が観察され, 発生速度は大きく減少した。また, 水素発生量は無添加系に比べて5wt%SDSでは44%, 5wt%CTABrでは70%に低下した。
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