廃棄物学会論文誌
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19 巻, 5 号
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論文
  • 竹本 智典, 江藤 次郎, 成岡 朋弘, 島岡 隆行
    2008 年19 巻5 号 p. 293-302
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却灰中には,不溶性塩素であるフリーデル氏塩 (Friedel’s salt, 3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2O) が多く含まれている。Friedel’s saltの生成は,3CaO・Al2O3(C3A) を介することが知られているが,生成メカニズムには依然として不明な点も多い。本研究では,C3Aを介さない不溶性塩素の生成経路,不溶性塩素のエトリンガイト (ettringite, 3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O) への変化を実験により検討した。その結果,焼却灰中には,C3Aを介して生成されるFriedel’s saltとC3Aを介さず生成されるhydrocalumiteの生成経路が異なる2種類の不溶性塩素が含まれていることが認められた。また,焼却灰中のFriedel’s saltは,高いSO42−濃度下においてettringiteに変化することも認められた。
  • 長田 文夫, 永井 和代
    2008 年19 巻5 号 p. 303-309
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    自動車シュレッダーダスト (ASR) は,再利用できる部品・材料を廃自動車から回収した残りを破砕したもので,埋立もしくは焼却処分されている。ASRの成分は,金属やガラス,ゴム,回収しきれなかったPVC被覆電線・ABSなどのプラスチックである。このASRを焼却すると,発生する塩化水素により焼却設備が腐食する問題が生じる。そこで,軟質PVCの脱塩素処理方法を適用し,NaOH水溶液濃度2~16mol/L,マイクロ波加熱により,反応温度100~190℃,反応時間0~1時間処理し,脱ハロゲン挙動を調べた。約22%のClを含有したASRに適用すると,2mol/L NaOH水溶液において,反応温度190℃,反応時間30分で塩素を98%除去でき,硫黄,臭素についてもそれぞれ99.3,100%除去できていることがわかった。脱ハロゲンした残渣を,低品位における燃焼熱量について調べたところ,約8,000Kcal/kgと,石炭と同等であることがわかった。残渣の回収率は約52%で,灰分は10%であった。廃棄物固形化燃料として利用できる可能性が示唆された。
  • 廣瀬 孝, 菊地 徹, 横澤 幸仁, 内沢 秀光, 櫛引 正剛, 奈良岡 哲志
    2008 年19 巻5 号 p. 310-317
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,リサイクルが求められている廃ペットボトルとホタテ貝殻を複合した新たな素材の基本的特性評価を目的として行った。具体的内容として,1) 加熱によるホタテ貝殻含有有機基質やホタテ貝殻の物性変化の確認,2) 複合した際の成形品表面の観察や黄色度およびその強度性能について,一般的にフィラー (充填剤) として用いられている炭酸カルシウムを複合した材料との比較を行った。その結果,加熱によるホタテ貝殻含有有機基質の熱分解に起因するホタテ貝殻の黄色度変化は,炭酸カルシウムのそれよりも大きいことがわかった。また,廃ペットボトルとホタテ貝殻を複合した材料の表面は,ホタテ貝殻に存在する有機基質の熱分解ガスに起因する発泡痕等は見られなかったものの,炭酸カルシウムと複合したものと比較して黄色度の高い成形品となった。強度性能は,ホタテ貝殻を複合した方が炭酸カルシウムを複合したものよりも高い値を示した。これらの結果より,廃ペットボトルとホタテ貝殻の複合材料は,炭酸カルシウムと複合したものと比較して,黄色度は高いものの表面に発泡痕等がなく,強度性能は高いことが明らかになった。
  • 坂本 篤, 鈴木 正人, 西垣 誠, 小松 満, 今井 淳, 佐藤 泰, 横田 季彦
    2008 年19 巻5 号 p. 318-327
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    最終処分場において,覆土を介して浸透する雨水の量を制御することで,水処理費用の縮減・安定化に即した埋立環境の形成と,その結果から管理期間の短縮や地下水汚染リスクを低下させることが期待される。そこで,雨水浸透水量を抑制する方法の一つであるキャピラリーバリア型覆土について,浸透水量制御の観点から覆土の構造について検討するとともに,表面流や蒸発などによって,浸透水量を約半減させる役割をなす表層の砂質土や粘性土などの鉛直方向の透水性について検討した。この結果,浸透水量制御範囲の拡大および浸透水量の均等化に有効な覆土構造を提案し,屋外実規模試験覆土によってその有効性を確認した。また,本覆土の浸透水量を予測するための解析手法について提案した。
  • 中谷 隼, 藤井 実, 吉田 綾, 寺園 淳, 森口 祐一, 平尾 雅彦
    2008 年19 巻5 号 p. 328-339
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    日本で発生した使用済ペットボトルの国内リサイクルと日中間リサイクルを,エネルギー消費および再生樹脂の品質の観点から比較分析した。まず,比較対象となるリサイクルシナリオを設定するために,日本および中国において使用済ペットボトルのリサイクルフローの実態を調査した。様々なリサイクルシナリオを特徴づけるために設計したフォーマットによって,実態調査をもとにした国内および日中間のリサイクルシナリオを記述し,それらの比較において重要となる観点を抽出して,国内リサイクルと日中間リサイクルの差異を特定した。さらに,日本と中国におけるペットボトルリサイクルに対する制約条件と,特定された差異の関係性について考察した。
  • 吉仲 賢晴, 福原 知子, 長谷川 貴洋, 岩崎 訓, 安部 郁夫
    2008 年19 巻5 号 p. 340-346
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    廃木材のリサイクルが重要視されている中,生産量が増加している新たな木質系素材としてファルカタに着目し,炭化物を製造してそのトリクロロエチレン (TCE) 吸着性能を評価した。ファルカタを様々な温度で炭化した結果,800℃炭化時にヨウ素吸着性能が極大となった。また,BET比表面積や細孔容積は900℃炭化で最大となり,それぞれ444m2 g−1, 0.196mL g−1であった。また,TCE吸着性能は平均細孔径が最も小さくなった800℃炭化物で最大となり,市販活性炭よりも高い吸着性能を示した。市販活性炭に比べると比表面積や細孔容積の値で劣るファルカタ炭化物が市販活性炭よりもTCE吸着性能が高くなったのは,TCEの吸着に適した径の細孔が多かったためだと考えられ,比表面積や細孔容積の値だけでは,溶液中に低濃度で存在する有機化合物の吸着量を推定することは困難であることが確認された。これらの結果より,ファルカタから製造した炭化物はTCE汚染地下水の浄化に有効な吸着剤になりうることが示された。
研究ノート
  • 藤田 昌史, 今井 健太郎, 辻 幸志, 坂本 康
    2008 年19 巻5 号 p. 347-351
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    キノンバイオマーカーを活用することにより,一般廃棄物最終処分場の安定化診断を行うことを想定して,晴天時,雨天時におけるキノンバイオマーカーの動態を調査した。晴天時では,5日間にわたり4回,調査を行ったが,キノンの流出量や組成には明らかな違いは認められなかった。一方,雨天時では,浸出水流量のピーク前後で,おもにQ-10の流出が相対的に増加したことにより,キノン組成が明確に変化した。そして,流量のピークに遅れて,キノン流出量が著しく上昇した。粒子状成分には,Q-10を含有するAlphaproteobacteriaが相対的に多く吸着しており,それがこの間の流出に寄与していた可能性が考えられた。その後は,流量の減少にともない,降雨前の状態に近づいた。
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