廃棄物学会論文誌
Online ISSN : 1883-163X
Print ISSN : 1883-1648
ISSN-L : 1883-1648
18 巻, 6 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
論文
  • 岡田 敬志, 松藤 敏彦, 東條 安匡
    2007 年 18 巻 6 号 p. 357-366
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    溶融処理によって発生する溶融飛灰はZn, Pbを高濃度に含むことから資源として価値がある。本研究は, 精錬施設において規制が厳しいClに注目し, 溶媒で洗浄除去する方法について検討を行った。用いた洗浄溶媒は, 蒸留水, Na2CO3溶液, Na2SO4溶液, 蒸留水にCO2を通気したものの4種類であり, 最適の濃度, ガス流量, 回数, 温度, 時間を決定したのち, 23種類の溶融飛灰を各洗浄溶媒で洗浄し, それぞれの洗浄残渣中のCl量を比較した。
    Na2CO3溶液はフリーデル氏塩, Zn, PbのCl化合物を溶解することができるため, 最もCl除去に効果的であった。Na2CO3洗浄により残留する難溶解性Clは, 溶融飛灰中のSi量との相関が見られた。Na2CO3洗浄後の残渣はCl含有量がISP精錬の基準値0.2%を満足し, Znの品位も40%以上とISP精錬あるいは亜鉛精錬の要求品位を満たしていた。さらにNa2CO3溶液は繰り返し利用することが可能であり, 薬剤コストを低減できる。
  • 阿部 清一, 岡田 正治, 中井 志郎, 後藤 謙治, 武田 信生
    2007 年 18 巻 6 号 p. 367-373
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    廃棄物溶融水砕スラグからの鉛の溶出要因について実験的検討を行った。廃棄物中の鉛含有量は溶融スラグ中の鉛含有量, 鉛溶出量, および水砕水中の鉛濃度に影響を及ぼすことを確認した。鉛の溶出要因として水砕スラグ自体からの溶出とスラグに付着する水砕水が考えられ, 水砕水が排ガスと接触する構造の溶融炉での実験により, 水砕水に排ガス由来の鉛が溶解して水砕水中の鉛濃度を増加させることを確認した。さらにこのような溶融炉形式の場合, 水砕スラグの品質向上に向けて以下の提言を行った。(1) 鉛の揮散促進, (2) 可能な限り排ガスを水砕水に接触させないこと, (3) 水砕水のpHを中性付近に調整すること, (4) 水砕水中の鉛濃度の制御, (5) 洗浄によるスラグ付着水の除去
  • 加藤 孝太郎, 亀卦川 和宏
    2007 年 18 巻 6 号 p. 374-381
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    強制通気自動攪拌式発酵槽を用いた一次発酵と, 堆積法による二次発酵とを組み合わせて良質のコンポストを製造している大型プラント (エコハーズプラント) から, 製造過程に沿って牛ふんコンポストを採取し, 理化学および生物学的パラメーターの分析とリン脂質脂肪酸 (PLFA) 分析による微生物群集解析を行った。単位重あたり微生物バイオマス量は5日目に最大となり, その後減少した。微生物の多様性は10日目まで減少した後に急増し, 20日目以降一定になった。微生物群集は, 発酵槽による一次発酵過程ではグラム陽性細菌が, 堆積法による二次発酵過程では放線菌や嫌気状態に関連する細菌の変化が大きかったことが示唆された。グラム陽性細菌のバイオマーカー脂肪酸の割合とコマツナ発芽率の間には高い正の相関があり, 本プラントで製造された牛ふんコンポストにPLFA分析による腐熟度判定が適用できることが示唆された。
  • 関戸 知雄, 土手 裕, 井上 雄三
    2007 年 18 巻 6 号 p. 382-391
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    畜産業が盛んな南九州では, 家畜ふん尿が大量に発生しており, 農地への過剰な施肥による地下水汚染やリンの蓄積などが指摘されている。本研究では, 家畜ふん尿が大量に発生している宮崎県を事例とし, 家畜ふん尿の排出方法や, 処理方法について敷料を含めた発生および処理実態調査を行った。この結果を基にして物質フローを推定し, 家畜ふん尿の適正な資源循環の仕組みを提案することを目的とした。また, 家畜ふん尿由来の窒素・リン (P2O5) フローを明らかにした。これらの農地への施肥量は, 窒素・リンの適正施肥量に対しそれぞれ2倍, 3倍量であり, 過剰に施肥されていた。過剰施肥を防ぐためには, 焼却など堆肥化以外の処理や, 工業原料化など, 農地への還元を回避した処理・資源化を行う必要がある。
  • 谷川 昇, 古市 徹, 石井 一英, 清水 心太
    2007 年 18 巻 6 号 p. 392-399
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    北海道の3地域の牛を飼養している畜産農家に対するアンケート調査によって, 家畜排せつ物の取り扱い, 自動撹拌式堆肥化施設とバイオガス化施設に対する認識等の現状分析を行い, 家畜排せつ物の適正処理と有効利用を推進する際の課題とその対応策を明らかにした。
    家畜排せつ物法に適合する管理施設 (以下, 適合管理施設とする) 内で家畜排せつ物を単純保管しているとみなせる畜産農家の割合は約30~60%であったこと, 適合管理施設内の家畜排せつ物を農地に散布するまでの間, 一時的に野積みする畜産農家が約30%存在していたことから, 適合管理施設の一層の有効活用と適合管理施設外での家畜排せつ物の適正管理の必要性が明らかとなった。
    また, 自動撹拌式堆肥化施設とバイオガス化施設を畜産農家が導入する可能性はほとんどないのが現状であり, 今後の両施設の導入促進には, それらの利点・費用・手間等の詳細な情報が重要であることがわかった。
  • 松藤 敏彦, 藤本 有華
    2007 年 18 巻 6 号 p. 400-409
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理施設の周辺住民に対してヒアリング調査を行い, 施設に対する反対, 受容の理由を分析した。対象施設は一般廃棄物, 産業廃棄物の焼却施設, 埋立地, 焼却以外の中間処理施設であり, 計10施設, 回答者は各施設5名前後, 計45名である。
    反対理由は, 大きく運転トラブル発生や有害物による健康影響などの「施設からの影響」と, 住民の意向を無視した建設計画など「行政・処理業者の対応に関するもの」に分けることができ, それぞれをさらに内容別に5分類した。これらは, 施設の種類, 廃棄物の種類にかかわらず起こりうる反対理由である。一方, 個人差はあるが, 施設が受け入れられるための条件は施設からの影響がないこと, 行政・処理業者の対応がよいことであり, 回答者全員が受容している施設の状況から, 後者がより重要と考えられる。
  • 乙間 末廣, 松本 亨, 坂口 寿志
    2007 年 18 巻 6 号 p. 410-416
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    本研究では北九州エコタウン事業を総合評価するための前段階として, エコタウンに搬入される物質量, エコタウン内での取引量, エコタウンから搬出される物質量を詳細に調査し, マテリアルフロー分析を実施した。搬入された物質の多くはエコタウン内で再資源化されているが, 一部はエコタウンで処理されたのち外部の企業に送られそこで資源として再生されているものもある。外部での再資源化も含めた物質回収による再資源化率は74%で, 熱回収を含むと再資源化率は94%となる。うちエコタウン内での再資源化率はそれぞれ65%, 75%である。再資源化率は, 金属類, 無機物類, プラスチック類, バイオマス類の順で大きい。エコタウン全体として, 搬入物質の24%が有価物であるが搬出時には3倍弱の66%に増加し, エコタウンを出た後さらなる処理・処分を必要とする廃棄物は76%から22%へと減少している。エコタウン内には多くの環境関連企業が立地しているが, 企業間の相互連携はいまだ十分ではなく, 企業集積のメリットを活かすことが今後の課題である。
  • 碓井 健寛
    2007 年 18 巻 6 号 p. 417-425
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    今後の容器包装リサイクル法の見直しに関する主要な論点は, 市町村と事業者の間で費用負担を誰がどの程度の費用負担をすべきかという点である。しかし議論のために必要な市町村レベルの費用構造に関する研究はほとんどない。そこで本研究は5年間の全国自治体データを用いてパネルデータ分析を行った。その結果, 自治体規模が大きいほど規模の経済性の程度は減少することがわかった。また埋立処分場を一部事務組合で広域処理を行う場合に, 埋立処分場をまったく所有しない場合と比較して, 費用を節約できることがわかった。容器包装リサイクル法で指定された容器に関して自治体での分別の有無について費用を比較した結果, 紙製容器包装の分別を行うことによって, 分別を行わない場合よりも費用の節約につながることがわかった。
  • 山田 信吾, 内藤 勇太, 高田 誠, 中井 智司, 細見 正明
    2007 年 18 巻 6 号 p. 426-433
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    POPs指定物質であるヘキサクロロベンゼン (HCB) の光分解反応における溶媒の影響を評価するため, ヘキサン, IPA, メタノールを用いて光分解速度および分解経路を比較した。HCBの分解は還元脱塩素化で進行しており, 一次反応で近似することができた。分解反応速度定数はヘキサン中で0.55min-1, IPA中0.48min-1, メタノール中0.37min-1であり, メタノール中で最も遅かった。光分解生成物を経時的に追跡し, 脱塩素化分解の主経路をHCB→P5CB→1245-T4CB・1235-T4CB→124-T3CB・135-T3CB→13-D2CB・14-D2CB→MCBと提示し, いずれの溶媒中においても主経路は一致していた。ヘキサン, IPA, メタノールの3種の溶媒は分解速度に影響を及ぼすものの, 分解経路に与える影響は認められなかった。
  • 土田 大輔, 高橋 浩司, 濱村 研吾, 鳥羽 峰樹, 黒川 陽一, 永瀬 誠, 宇都宮 彬
    2007 年 18 巻 6 号 p. 434-442
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    産業廃棄物の不適正埋立が行われた施設の跡地において, 廃棄物中の有害化学物質による土壌や地下水などへの影響を調査した。施設跡地の埋立廃棄物を2003~2004年に調査した結果, 内部に油状廃棄物が残留した金属缶が発見された。油状廃棄物は, ガソリン, 軽油, エンジンオイル, コールタール製品に大別された。油状廃棄物中には, テトラクロロエチレン (PCE), トリクロロエチレン (TCE) などが含まれていた。施設跡地の土壌では, 一部の揮発性有機化合物 (VOC) が溶出基準値を超える濃度で検出された。検出された成分は, 油状廃棄物の含有成分と一致しており, 漏洩による汚染であると判断された。また, 埋立行為発生後の1990年から2004年まで, 廃棄物が地中に存在する状況で, 周辺地下水などを調査した結果, PCE, TCE, およびこれらの分解生成物であるシス-1,2-ジクロロエチレンなどが検出された。VOCによる汚染をこれら3成分のモル濃度比およびモル濃度和で評価した。モル濃度比は5年間の調査期間中ほぼ一定であり, PCEおよびTCEの分解度は約70%と推定された。3成分のモル濃度和は2000年以降に漸減した。
  • 藤井 実, 村上 進亮, 南齋 規介, 橋本 征二, 森口 祐一, 中村 卓也, 越川 敏忠
    2007 年 18 巻 6 号 p. 443-453
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    家庭系ごみをリサイクルするには分別収集が欠かせない。そのために要する費用については調査が進んでいるが, 資源消費や結果的に生じる環境負荷に関する実態調査は不十分である。本研究では, 基礎的なデータとなる収集車の走行距離や燃料消費, 使用台数について, 40市区町村にアンケートおよびヒアリング調査を実施した。特にプラスチック製容器包装を中心に, 各ごみ区分において, プラスチック製容器包装の分別収集開始前後の両期間における実績値を調査した。また, ごみ重量あたりの走行距離をグリッドシティーモデルの値と比較し, ある程度説明されることを確認した。プラスチック製容器包装の分別収集開始前後の比較では, 収集回数が増加しなければ, 走行距離や必要台数は増加しない実例も確認された。
  • 酒井 啓介, 中山 勝也, 河地 貴浩, 西井 智広, 窪田 光宏, 松田 仁樹
    2007 年 18 巻 6 号 p. 454-462
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    本研究では, 減圧加熱下における溶融飛灰からの重金属塩化物の揮発特性を, 実溶融飛灰および模擬飛灰を用いて実験的に検討した。
    その結果, 減圧加熱下における単一重金属塩化物 (ZnCl2, PbCl2, CuCl) の揮発速度は, 減圧度の増大に伴って増加した。一方, ZnCl2-PbCl2-CuCl混合物からの各重金属塩化物の揮発速度は, 単一重金属塩化物のそれよりも小さくなり, 試料中重金属の含有量の減少に伴って減少した。このときの重金属塩化物の揮発速度は, 試料中の重金属濃度の1次式で表された。さらに減圧加熱下における重金属塩化物の揮発挙動に及ぼす灰組成の影響を調べた結果, ZnCl2揮発量は, Al2O3含有量の増加に伴って減少した。また, NaCl, KCl, CaCl2の共存によって, 溶融飛灰中重金属の揮発量は, NaCl, KClおよびCaCl2を含有しない模擬飛灰に対して0.27~0.65倍となることが認められた。
研究ノート
  • 小口 正弘, 長沼 誠, 加藤 みか, 浦野 紘平
    2007 年 18 巻 6 号 p. 463-468
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2009/01/23
    ジャーナル フリー
    これまでにフロン破壊処理の十分な実績のあるロータリーキルン式産業廃棄物焼却施設において, 廃棄物混焼法方式によるハロン1301の破壊処理実験を行い, ハロン導入方法の確立と分解効率等の実証データの取得を行った。その結果, 湯浴や恒温室などの設備がなくても, ボンベを上下逆に設置して少量の散水を行うだけでハロン1301を安定的にボンベから取り出せること, ロータリーキルンへのハロンの導入方法によって分解効率が低くなる可能性があることがわかった。これらをふまえて, ハロンを火炎より手前に導入し, 空気や廃棄物中の炭化水素と十分に混合してから火炎へ接触させることで, ハロン破壊処理ガイドラインにある分解効率, 副生成物, 有害物質等排出の要件を満たした確実・安全なハロン1301の破壊処理が可能であることを実証した。
feedback
Top