廃棄物学会論文誌
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15 巻, 2 号
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論文
  • 神崎 広史, 立本 英機
    2004 年15 巻2 号 p. 77-85
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    循環型社会を実現するためには, 単なるごみの資源化の拡大だけでなく, ごみの排出抑制を一層進めることが必要である。このような観点からごみ排出者である住民を対象として, ごみ減量・資源化に向けた「意識啓発事業」が多くの自治体で行われている。意識啓発事業は, パンフレット等による情報提供が一般的であるが, これらの情報媒体を活用しつつ, 自治体から住民へ, 政策意図を強く反映した働き掛けが行われている。このような情報を伴う働き掛けが一般家庭のごみ量に与える影響について明らかにするため, 家庭ごみ計量調査および働き掛けに関する実験を行った。その結果, ごみ排出者に対して情報提供を伴う働き掛けを行うと, 幅広いごみ組成に対する排出抑制として現れ, 4ヶ月以上経過しても, ごみ減量効果が持続することを確認した。
  • 坂本 勝, 長野 晃弘, 鈴木 昌治, 野池 達也
    2004 年15 巻2 号 p. 86-95
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    食品廃棄物の処理方法として, 好気性生ごみ溶解槽と二相式メタン発酵法を組み合わせた新しいシステムを考案した。本システムの190日間の連続運転から, 生ごみ溶解槽の容積負荷は80~100kg-garbage/ (m3・day) , 二相式メタン発酵法の酸生成槽はHRT=1.2day, メタン発酵槽 (EGSB) の容積負荷は9kgCOD/ (m3・day) で運転できることがわかった。システム全体のHRTが短く, 処理水の下水道への放流が可能な点から, 単相式メタン発酵法と比較して, 有利であると考えられた。しかし, 酸生成槽では油脂分, メタン発酵槽 (EGSB) では固形性物質の蓄積がみられた。なお, 酸生成槽に蓄積した油脂分は肉類や魚介類の動物性油脂由来であることが確認された。
  • 柳瀬 龍二, 平野 文昭, 松藤 康司, 花嶋 正孝
    2004 年15 巻2 号 p. 96-104
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    わが国では, 水銀を含む乾電池が使用後に廃棄されることで, 水銀による環境汚染が懸念されるとして, 1983年に使用済み乾電池問題が大きな社会問題となった。特に, 使用済み乾電池の埋立処分に伴う水銀の埋立特性は不明な点が多く, その挙動がこれまで十分に解明されていない。
    本研究では大型埋立実験槽を用いて, 水銀の浸出水への流出や水銀の気化に伴う大気拡散状況を調査した。そして, 埋立10年後に埋立実験槽を解体し, 埋立地内での水銀の挙動を検討した。
    その結果, 埋立10年間に浸出水へ流出した水銀は総水銀量の0.1%以下であった。大気拡散量は2%以下であり, 埋立地系外への水銀流出は大気拡散の方が寄与していた。また, 乾電池中の水銀が外装部の破損や腐食によって廃棄物層へ移動していたが, 埋立10年後においても総水銀量の90%以上が埋立実験槽内の廃棄物乾電池中に残存し, 水銀が埋立地内から系外に流出しにくいことが確認できた。
  • 姫野 修司, 弥富 洋介, 小松 俊哉, 藤田 昌一
    2004 年15 巻2 号 p. 105-113
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    一般廃棄物処理において, ガス化溶融処理技術の普及が進んでいるが, エネルギーのさらなる有効利用や最適な運転条件の検討のためには, 廃棄物組成と熱分解挙動との関係の把握が必要である。本研究では, 一般廃棄物を代表的な化学物質に置き換え, 熱分解挙動のモデル化を検討した。まず, 組成調査から, セルロース, キシラン, リグニン, ポリエチレン, ポリプロピレン, ポリスチレン, 二酸化ケイ素を一般廃棄物を構成する代表物質として決定し, これらの熱重量曲線 (TG曲線) をモデル化した。また, これらの混合試料のTG曲線を測定し, 各単一成分の熱分解モデルを加成することで混合物のTG曲線のモデル化も可能であることを確認した。さらに微粉砕した一般廃棄物や廃棄物固形燃料のTG曲線も代表物質の加成によってモデル化が可能であり, モデルにより求まった組成比は実際の組成とおおむね一致したことより, 組成による熱分解挙動の違いを把握することが可能であると考えられた。
  • 土井 麻記子, 深津 和彦, 花嶋 正孝
    2004 年15 巻2 号 p. 114-120
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    生分解性プラスチックの一般土壌中における分解については研究報告がなされているが, 焼却灰主体の埋立廃棄物中に埋設された場合の分解特性と微生物活性に関する知見はこれまでにない。本研究では, PLA, PBSA, PHB/V, PBS, PCLの5種類の生分解性プラスチック素材を, 焼却灰主体の埋立廃棄物 (A: 焼却灰+不燃破砕ごみ, B: A+コンポスト) 中に埋設した場合の分解の様子, 面積消失率, SEM観察など物理的側面からの観察を行い, その分解要因を調査した。その結果, 焼却灰中での分解特性として, 以下の点が明らかとなった。 (1) 焼却灰主体の埋立廃棄物中における分解型は, 微生物関与で生じている孔拡大型と, 焼却灰中のアルカリ成分による加水分解で生じるクラック発生型の2タイプみられた。 (2) 焼却灰主体の埋立廃棄物中において, 有機物の添加や温度上昇など, 微生物活性を高める操作を行うことによってBPの生分解が促進された。 (3) 有機物含有量の少ない焼却灰中においては, 一般土壌と同程度の分解速度を示すことがわかった。 (4) 生分解を受けたBPは, PBSA>PHB/V>PCL>PBSの順で分解が速かった。 (5) BPが生分解を受けない場合は, 焼却灰中のアルカリ成分によってクラックが生じた。 (6) 焼却灰主体の埋立廃棄物は, PBSAとPCLによって微生物活性が高められたと推察された。
  • ―関東圏を対象として―
    秋山 貴, 大迫 政浩, 松井 康弘, 原科 幸彦
    2004 年15 巻2 号 p. 121-130
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    産業廃棄物処理施設は忌避施設と見なされ, その設置をめぐる紛争が多発している。このような特性を有する施設が偏在することは, 環境保護と社会正義の同時達成を目指す「環境的公正」の概念に照らして問題であるとの仮説を基に, 本稿ではその空間的偏在性について定量的に検討した。同時に, 昨今大きな社会問題になっている産業廃棄物の不法投棄についても検討した。分析対象は関東とその周辺の1都8県の最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄とし, それらを市町村ごとに集計してその立地や発生の傾向を調べた。分析の結果, 最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄のすべてにおいて正の空間的自己相関が存在し, これらが市町村単位で見たとき偏在性があることがわかった。さらに, 最終処分場立地点と不法投棄発生点には空間的分布において類似性が認められることから, 問題構造に共通性が存在する可能性があることが示された。
  • 原 雄, 半野 勝正, 依田 彦太郎, 根本 久志
    2004 年15 巻2 号 p. 131-138
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    焼却施設解体廃棄物を適切に処理するための基礎データを得るために, ストーカー炉主灰およびガス冷却塔内, 冷却塔出口ダクト内, 集じん機入口ダクト内, 電気集じん灰, 誘因送風機内たい積物について化学組成とそれらが構成する鉱物種の同定を行った。
    1) EDXRF分析から, Si, Ti, V, Al, Fe, Mn, Mg, Ca, Na, K, S, P, Cl, Br, Cu, Zn, Pbの17元素が検出された。
    2) Si-Ti-Al-Fe-Pは焼却炉から離れるにしたがって濃度を減じ, C1は前5成分と逆の傾向を示した。
    3) 同定された鉱物は, CaAl2Si2O8 (Anorthite) , Ca2Al2SiO7 (Gehlenite) , SiO2 (Quartz) , Fe2O3 (Hematite) , CaO (Lime) , Ca (OH) 2 (Portlandite) , Ca4Al2O6Cl2・10H2O (Hydrocalumaite) , CaClOH, Ca (ClO) 2・4H2O, NaCl (Halite) , KCI (Sylvite) , CaCO3 (Calcite) , CaSO4 (Anhydrite) である。また, Ca2MgSiO7 (Akermanite) , CaTiO3 (Perovskite) , Mg3 (PO4) 2 (Farringtonite) , Mg2P2O7の存在も推定された。
    4) 酸性ガス処理のために吹き込まれたPortlanditeはHClと反応しLime, CaClOH, Ca (ClO) 2・4H2Oを生成していた。
  • 浅利 美鈴, 高月 紘, 酒井 伸一
    2004 年15 巻2 号 p. 139-148
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物処分量減量化と資源有効利用の観点から, 様々な廃木材のリサイクリングが検討されているが, リサイクリングプロセスにおける副生成物や廃木材原料とともに流入する可能性のある木材保存剤の挙動については十分に把握されていない。そこで, 廃木材チップを原料とした建築部材 (パーティクルボード) 製造プロセスにおいて重金属類, 有機塩素化合物, 多環芳香族炭化水素 (PAHs) の挙動を調査した。その結果, 原料としてペンタクロロフェノール (PCP) やクレオソートで処理された木材が混入している可能性が高いこと, 製造プロセスにおいて, PCPの不純物として含まれていたダイオキシン類 (PCDD/DFs) に加え, わずかながらPCP等を前駆物質としてPCDD/DFsが生成する可能性があること, 製品中にはその挙動に由来する化学物質が含まれることがわかった。本研究で調査できた検体数は限られており, 含有レベルのさらなる検証と分別・選別を中心にした管理は求められるが, 廃木材のパーティクルボード利用は管理の可能な, 重要な再利用方法とみなすことができる。
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