廃棄物学会論文誌
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7 巻, 1 号
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論文
  • 小川 雄比古, 田所 正晴, 大野 茂
    1996 年7 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理対策の一環として, 家庭用合併浄化槽の設置促進が精力的に進められている。
    本報では, し尿処理施設に搬入される浄化槽汚泥を処理する目的で, 固液分離の基礎的な特性値を把握したところ, 次のことがあきらかとなった。
    1) ろ過性能を示す指標は消化汚泥などに比べてきわめて低かった。浄化槽汚泥は非常に脱水性が悪く, 無調質のままでは効率的な固液分離を期待することは困難と推測された。
    2) 浄化槽汚泥の固液分離特性を実験的に検討したところ, 重力濃縮法に比べ機械濃縮法が効果的であった。しかし, 無調質のままではほとんど固液分離ができなかった。
    3) 高分子凝集剤を用いて調質することにより脱水性は著しく改善された。
    4) 浄化槽汚泥の緑農地利用を目的に, 無薬注脱水を行ったところ, 凍結融解処理が最も有効で, 薬剤処理とほぼ同等の調質効果が得られた。
  • 森澤 眞輔, 田中 佐世子, 井上 頼輝
    1996 年7 巻1 号 p. 8-17
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    長崎大水害を対象にして, 廃棄物処理システムが直接的・間接的に被害を被る場合に, 災害ごみを含めて廃棄物流動がどのように変化するかを評価するための数学モデルを構築した。水害後に実際に採用された廃棄物対策がそれぞれ講じられない場合を想定し, 廃棄物流動をシミュレーションにより推定し, 講じられた対策の効果を評価した。本研究により得られた主要な結論を要約すると以下のようになる。
    (1) 構築した数学モデルは, 廃棄物処理システムを構成するプロセスが一時的に機能を喪失する条件下での, 廃棄物流動を説明するモデルとして利用することができる。
    (2) 水害後に採用された廃棄物対策の内では, 発生源での廃棄物滞留を早期に解消する面からは, 輸送能力の増強や一時保管場の設置等の効果が著しく, 仮焼却 (野焼き) の効果は大きくなかったといえる。
    (3) 廃棄物処理システムを構成する各プロセスの処理能力や輸送能力等の増強は, システム内での廃棄物流動が過不足なくバランスするように調整された場合に, その効果が最大になる。
  • 鈴木 守也
    1996 年7 巻1 号 p. 18-27
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    塩化物を19wt%含む都市ごみ焼却飛灰に廃砂と炭酸ソーダーを添加した調合物を, 溶融塩流出部を付帯した容量約150kgの一槽式電気溶融炉によって溶融した。焼却飛灰の処理速度4.2~25.4kg/hで電力原単位, 溶融塩とスラグの分離率, 有害な重金属類の固定率を測定した。
    トレーサー実験におけるマーカーの最短滞留時商 (Ta) が0.7時間より長い時, 塩化物を多量に含む廃棄物の連続的な溶融は可能であった。溶融スラグの安定条件で, 溶融スラグを得るのに要する電力の最小値は1.7kWh/kgであった。また, スラグ中の塩素濃度から求められた溶融塩分離率の最大値は97%であった。
    スラグ, 溶融塩中への重金属類の固定率は重金属の種類により異なることがわかった。
  • 福永 勳, 伊藤 尚夫, 澤地 實
    1996 年7 巻1 号 p. 28-35
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    新しく改正された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では, その焼却灰のうち飛灰は「特別管理一般廃棄物」に指定され, 今後新設工場については厚生大臣が定める4方法による中間処理を講じることになった。著者らは, 既設工場においても「廃掃法」の精神に則った対策をとるべく検討し, すでに無害化処理法の一つとしての飛灰の水洗浄法の可能性を明らかにした。水洗浄法とは, ごみ焼却飛灰を灰汚水, 最終放流水あるいは工業用水で洗浄し, さらに脱水をして, 溶出試験に合格する飛灰は埋立て, 重金属などが溶出した洗浄液は通常の排水処理システムで処理をするものである。環境庁告示13号に基づいて, その洗浄した飛灰の溶出試験を行った結果, pHはいずれも9台と, 溶出液の重金属濃度はごく低い値で, すべて判定基準に合格した。したがって, この方法は, セメント固化方注などに比べてはるかに簡易で経済的であると考えられ, 簡易なごみ焼却飛灰の処理法として採用できる可能性を持っていると考えられた。
    その後, 実用化のために重金属類の溶出要因としてpHの及ぼす影響, 溶出時間の影響, 飛灰と溶媒の溶解比などの諸条件の実験室的な検討および実工場の実態調査を行った。その結果, (1) 洗浄飛灰はpH9~11となりほとんど溶出しない, (2) 海水, 淡水について, 1年近い長期的溶出を行っても両者に相違なくほとんど溶出しない, (3) 無害化処理のための洗浄による溶出は15分もあれば充分である, (4) 飛灰: 溶媒の比は, 1: 5以上の溶媒が必要である, (5) 水洗浄法はごみ焼却工場の飛灰の中間処理に適用できる, ことが分かった。
  • 安田 憲二, 高橋 通正
    1996 年7 巻1 号 p. 36-41
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却炉4施設について, N2Oの排出挙動および排出量を調査した。その結果, 炉内温度とN2O排出濃度の間に負の相関が認められた。このため, 炉の立ち上げや埋火時など, 炉内温度が低い時にN2O濃度および排出割合が高くなった。排ガス中のCO濃度が高い施設の場合, CO濃度とN2O濃度の間に強い正の相関が認められた。また, 燃焼温度が高い施設では, NOx濃度とN2O濃度との間に負の相関があらた。都市ごみ焼却炉からのN2Oの生成については, 気相反応による生成寄与が大きいと推測された。
    さらに, 都市ごみ焼却炉からのN2O排出量 (1990年度) を2.0~6.8Gg-N2O/yr〓と推定した。この排出量は, 下水汚泥焼却炉の約2倍に相当している。
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