廃棄物学会論文誌
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8 巻, 7 号
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論文
  • 太野 公人, 林 彬勒, 横井 亜希, 細見 正明, 村上 昭彦
    1997 年8 巻7 号 p. 303-310
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    産業廃棄物の投棄による海洋汚染防止条約 (ロンドン条約) の制限を受け, 写真廃液を経済的かつ実用的に処理できる陸上処理プロセスの研究開発は緊急の課題となっている。その処理法として本研究では, 過酸化水素処理―生物学的硝化・有機物処理―脱窒処理という複合プロセスを検討した。その結果, 写真廃液中のTOC, CODともに96%, T-N99%, T-P98%除去できることを確認した。
    過酸化水素処理では, 写真廃液中の鉄を利用してpHの調整もなく過酸化水素を添加するだけでフェントン反応が生じ, 難分解性現像主薬の生物分解性を向上するとともに, 廃液中のTOC, CODもそれぞれ60%, 87%除去された。生物学的硝化・有機物処理では負荷量0.09~1.0kgNH4-N/m3/d (滞留時間HRT: 11.6~3.7日) で連続処理した結果, ほぼ完全な硝化が行われ, TOC, CODはそれぞれ150mg/l, 173mg/lにまで低下した。脱窒処理では上向流嫌気汚泥法 (UASB) を用いて負荷量は0.39~0.78kgNO2, 3-N/m3/d (HRT: 4.9~2.4日) で連続処理を行ったところ, 平均窒素除去率として99%が得られた。
  • 坂井 るり子, 大迫 政浩, 吉田 幸弘, 芳賀 直樹, 岩島 清, 田中 勝
    1997 年8 巻7 号 p. 311-320
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物の処理・処分の各段階におけるダイオキシン類を低コストで迅速に検知する方法の一つとして, 近年開発された酵素免疫測定 (EIA) 法の適用可能性について検討した。まずダイオキシンEIAの感度と再現性および濃度依存性を確認した。次に都市ごみ焼却施設からのEP灰試料を用いて干渉物質の影響について検討し, 粗抽出試料と最終精製試料とで有意な差がなく, EP灰では粗抽出液での測定が可能であることが示された。さらにEP灰に加え排ガスや汚泥試料の粗抽出液を用いてEIA測定を行い, GC/MS分析によるTEQ値との比較を行った。両者の間には良好な相関が得られたが, 低濃度域試料ではダイオキシン類の存在量に依存しない正の干渉要素が示唆された。これらの詳細な検討は課題として残るものの, EIA法はダイオキシン類のスクリーニング技術として有望であり, 抽出操作の迅速簡易化や低濃度域試料における妨害要素の除去により, さらに広範囲な適用が可能になると考えられる。
  • 金子 栄廣
    1997 年8 巻7 号 p. 321-326
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却飛灰を試料として環境庁告示13号法にしたがって作成した溶出液の毒性を藻類生長阻害試験によって評価した。その結果, この溶出液は藻類の生長に対して強い毒性を示した。
    化学分析結果との比較によってこの溶出液の藻類に対する毒性の主因について検討したところ, 亜鉛がその毒性に大きく寄与していることが明らかとなった。したがって, 生態毒性も含めて都市ごみ焼却飛灰の適正管理を考える際には, 現在は未規制である亜鉛についても配慮が必要となる可能性があると考えられた。
  • 明河 一彦, 立田 真文, 池 道彦, 藤田 正憲
    1997 年8 巻7 号 p. 327-334
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    日本各地で環境汚染を引き起こしているトリクロロエチレンなど有機溶剤の学術研究機関における使用と回収の状況を, 大阪大学工学部をモデルとして, アンケート様式で調査し, 管理方法のあるべき姿を考察した。アンケート調査から溶剤の種類や研究室の運営方式によって, 回収率に大きな差があることが明らかになった。また低い回収率の原因は, 主に研究室の管理体制の不備, 個々の実験者の溶剤管理の認識不足であることが示された。さらに収集したデータに研究室での聞き取り調査を加味して未回収溶剤の大気, 排水への放出量を推定した。その結果, 環境中への放出の内訳は, 大気中へ約70%以上, 排水中へは約30%以下であると推定された。ジクロロメタンなどは未回収量の約7%程度が排水中に放出された場合でも排水規制値を超えてしまう結果となり, 溶剤管理には細心の注意を払わなければならないことが再確認された。
研究ノート
  • 乙間 末広, 森 保文, 麻生 知宣, 鮫島 良二
    1997 年8 巻7 号 p. 335-341
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ごみ焼却熱を利用して発電を行うためには発電設備を追加設置しなければならず, これらの設備の製造・建設・運転に伴うエネルギーも必要となる。ここでは, ごみ発電の高効率化を目的としたリパワリングおよびNOx, ダイオキシン同時抑制を目指したリバーニングについてライフサイクルエネルギーバランスを検討し, これらの方法がエネルギー回収に有効であり, また, リパワリングではごみ焼却炉に併設するガスタービンについて総合的に効率の最も良くなる最適なサイズが存在することを示した。
  • 横井 亜希, 太野 公人, 林 彬勒, 細見 正明, 村上 昭彦
    1997 年8 巻7 号 p. 342-347
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    写真廃液はEDTA, CD-4のような難分解性有機化学物質を多量に含むため, 単一処理は難しい。
    フェントン処理とは, Feイオンが触媒として存在下で, 強力な酸化剤である。OHを生成する反応であり, 写真廃液処理に, 化学酸化→生物処理プロセスは有効であると思われる。
    そこで, 本研究では写真廃液中に含まれる20種類の化学物質 (メトール等) のフェントン分解性と, その後の生物処理において生分解率の測定から, フェントン処理が生分解性に与える効果を評価した。また, 逆プロセス (生物処理→フェントン処理) の効果も検討した。
    その結果, 各物質はフェントン酸化によりDOCの30~50%程度除去され, その後100時間の生物処理により, DOC90%以上の除去ができた。また, 逆プロセスによる除去率は (EDTAを除いて) 60%程度であった。よって難分解性有機化合物はフェントン処理により, 易分解性物質へと変換したものと考えられた。
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