廃棄物学会論文誌
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17 巻, 2 号
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論文
  • 藤枝 繁, 小島 あずさ, 兼広 春之
    2006 年17 巻2 号 p. 117-124
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    全国のべ120海岸から収集された6, 609本のディスポーザブルライターを指標として, 国内海岸に漂着する海洋ごみの流出地を推定した。流出地・流出国の判別は, ライターのタンク表面の印刷文字, タンク底面の刻印記号, タンク形状によった。中国ライターの割合は, 沖縄県与那国島から鹿児島県屋久島までの東シナ海沿岸で最も高く5割を越え, 日本海沿岸では山形県まで1~2割を占めた。韓国ライターの割合は, 沖縄県から九州西岸までの東シナ海沿岸では約1割で太平洋沿岸ではほとんど収集されなかったが, 日本海の島根県から福井県では5割を越えた。日本ライターは, 全国で収集され, 特に四国以北の本州太平洋沿岸, 北海道, 東京湾, 瀬戸内海で9割以上を占めた。漂着ライターの流出地は, 漂着地周辺の内陸部や沿岸部, 中国浙江省・広東省の沿岸部, 台湾・韓国の全域であり, ライターを指標とすることにより, 海洋ごみの漂着地と流出地の関係が明らかにされた。
  • 山崎 友紀, 木下 睦, 小高 康二郎, 金 放鳴, 榎本 兵治
    2006 年17 巻2 号 p. 125-134
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    アルカリ水熱反応によりPCBを選択的に分解させることで微量PCBを含むトランス油の再利用を目的とした研究を, モノクロロベンゼンをモデル化合物として用いて実施し, 分解率に及ぼす反応パラメータの影響, 脱塩素反応挙動, トランス油の反応への影響, トランス油の再利用の可能性について検討した。その結果, (1) トランス油中の微量クロロベンゼンは反応温度400℃, 反応時間2minで1N NaOHを用いた場合に99.99%以上分解する, (2) クロロベンゼンの脱塩素反応は加水分解的に進行しフェノールを生成するが, さらにビフェニルも生成する, (3) 脱塩素反応は270℃以上の温度でKOHを用いた場合にNaOHの場合よりも容易に進行する, (4) 脱塩素反応の活性化エネルギーはNaOHの場合135~137kJmol-1, KOHの場合187kJmol-1であり, トランス油の存在は頻度因子に影響する, 等の知見を得た。
  • 森村 茂, 劉 凱, 重松 亨, 緒方 智成, 野中 敬正, 木田 建次
    2006 年17 巻2 号 p. 135-141
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    トレイやカップなどの発泡ポリスチレン系容器を有機溶媒中でクロロメチル化し, さらにピリジン誘導体と反応させることにより, ピリジニウム基を持つ粉末状樹脂を製造した。この粉末状樹脂を用いて, 真正細菌 (グラム陰性菌, グラム陽性菌) , 真核生物 (酵母) および古細菌 (酢酸資化性メタン生成細菌) の吸着試験を行った。対象としたすべての微生物を60分以内に吸着し, 付着した真正細菌の酸素消費速度あるいは酵母および酢酸資化性メタン生成細菌のガス発生速度を測定したところ, 粉末樹脂を加えなかった場合と比較して活性低下は見られなかった。ピリジニウム基を導入した粉末樹脂は, 微生物を生きたまま付着する非常に優れた担体であると評価された。
  • 原田 高志, 今泉 繁良, 西崎 到
    2006 年17 巻2 号 p. 142-152
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究は, 遮水シートの耐久性評価を目的とし, 室内促進暴露実験と実暴露実験を実施し, 遮水シートの力学特性 (硬さ, 引張強さ, 伸び率) や表面状態の変化を追跡評価したものである。室内促進暴露実験の結果, 伸び率は経過時間とともに徐々に低下し5, 000時間では初期値のおおむね80%程度となり, そのとき遮水シート表面には亀甲状の微小亀裂が発生していることが確認された。一方10年間の実暴露実験を行った遮水シートの力学特性の変化は小さく, ある種類の遮水シート表面には室内促進暴露実験と同様の亀甲状の微小亀裂が観察されたが, 最終処分場の標準的な供用期間である15年に対して遮水シートの耐久性は充分余力あるものと推測された。また両実験結果を比較検討した結果, 2, 000時間強の室内促進暴露実験の結果が実暴露実験10年間に相当することが確認された。さらに遮光性保護材を用いると, 遮水シートの劣化の主要因とされる紫外線を遮断することができ, 遮水シートの耐久性が大幅に向上することも確認できた。
  • 谷川 昇, 古市 徹, 東海 明宏, 石井 一英, 太田 陽子
    2006 年17 巻2 号 p. 153-161
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    札幌市の農家を対象としてアンケート調査を実施し, 農家の堆肥利用と堆肥への認識を明らかにして都市近郊農家の堆肥選択要因を解析するとともに, 農家に受け入れられる需要重視の堆肥化促進方策を検討した。
    札幌市の農家では, 現在堆肥を利用している農家の割合は約53%であり, 化学肥料を併用しながら作物の収穫量の増加と品質向上を目指して, 多くは外部で製造された家畜ふん尿を主原料とした堆肥を多少の重労働を覚悟して利用していることがわかった。農家が化学肥料を利用して堆肥を利用しない第一の理由は堆肥原料への不安, 第二の理由は堆肥利用に伴う労力, 第三の理由は堆肥利用効果の不明瞭さであると考えられた。また, 堆肥を将来利用しようとする場合には, 農家は, 家畜ふん尿のように信頼できる原料から他の人が製造した堆肥を極力労力をかけずに安価で利用したい意向を持っていることを明らかにした。これらのアンケート結果から, 農家に受け入れられる需要重視の堆肥利用の促進を図るためには, 主原料として家畜ふん尿の使用, 畜産農家がオンサイトで堆肥製造し耕種農家が利用するシステムの整備, 堆肥利用中農家と堆肥未利用農家の連携による堆肥利用ノウハウ等の堆肥情報の共有化が重要であることを示した。
  • 小山 秀美, 小林 政行, 白子 定治, 野々村 誠, 堀尾 正靱
    2006 年17 巻2 号 p. 162-171
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    東京23区内で発生するごみ焼却灰は, 減容化・安定化・資源化する目的で, 全量スラグにする計画が推進されている。こうした中, ごみ焼却灰のスラグ化を開始した都内清掃工場では, 溶融過程における耐火物の浸食抑制とスラグ品質向上の目的から, 塩基度 (CaO/SiO2) 調整剤として砂を焼却灰に対し約10%添加している。本研究では, 砂の代わりにガラスびんカレットを塩基度調整剤として利用することを検討した。その結果, ガラスびんカレットの添加は, スラグの粘度を下げる効果があるが, その他の特性には, 大きな差は生じなかった。溶融炉の運転温度を50℃程度下げて運転できる可能性があることから, 省エネルギー効果が期待でき, 溶融炉耐火物の浸食抑制の点からも大きなメリットが期待できる。
  • 加藤 裕之, 渡辺 孝雄, 大森 英昭, 河村 清史, 牧野 好晃
    2006 年17 巻2 号 p. 172-183
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    浄化槽汚泥の減量化・資源化を目的として, 脱水汚泥に対する計画処理能力が60kg/hのパイロットプラントを用いて炭化を検討した。脱水汚泥の直接の炭化および乾燥経由の炭化のいずれにおいても, 脱水汚泥の含水率が約80%のとき重量減量率は約90%であった。また, いずれの場合も, 汚泥加熱のための一次バーナーの設定温度が高くなると, 溶出試験で溶出されるTOCの濃度 (以下, 溶出TOC濃度) は低くなる傾向にあり, 炭化が進行した。なお, 乾燥経由の炭化では, 乾燥汚泥の50kg/h程度以上の投入によって必要な乾留ガス発生量が確保され, 直接の炭化では得ることが難しい溶出TOC濃度10mg/L程度以下の炭化汚泥が生成された。炭化汚泥の溶出試験では, 重金属は「金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令」の別表第一の基準値以下であった。また, 含有重金属は, 一試料でCdとPbが普通肥料の公定規格を超過したが, 他はすべて満足した。さらに, 肥料成分であるN, P, K, Ca, Mgについては, N以外は脱水汚泥と比較して高い濃度となった。
  • 米山 豊, 西井 啓典, 西本 将明, 山田 紀夫, 鈴木 隆幸
    2006 年17 巻2 号 p. 184-192
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    乳牛糞の搾汁液を原料とした高効率メタン発酵システム (熱処理+中温メタン発酵処理+オキシデーション・ディッチ (OD) 処理+脱水処理) の検討を行った。はじめに室内実験において熱処理でのバイオガス発生量増加効果を確認し, 次にパイロット規模の屋外実験にて後処理を含めたシステムの検討を行った。
    その結果, 投入VSあたりのバイオガス発生量は対照系列で0.20~0.25Nm3CH4/kg, 熱処理系列で0.26~0.33Nm3CH4/kgであり, 熱処理することでバイオガス発生量は1.3倍増加した。熱処理温度160~170℃, 30分の条件で前処理することで熱処理温度180℃, 30分の前処理条件に比べると, 処理液の色度増加が少なく, 脱水処理におけるポリマ添加量を軽減できた。また, メタン発酵処理液を直接OD処理することで, T-N除去率を増加できた。
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