廃棄物学会論文誌
Online ISSN : 1883-163X
Print ISSN : 1883-1648
ISSN-L : 1883-1648
19 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
展望論文
  • 今井 剛, 荒金 光弘, 樋口 隆哉, 関根 雅彦, 村上 定瞭, 竹内 正美
    2008 年19 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    下水処理施設から発生する下水汚泥は年々増加の傾向にある。これまで,発生した汚泥は濃縮,脱水さらに焼却工程を経て埋立処分されてきた。しかし,埋立処分場の絶対的不足から,埋立処分の量を減らし下水汚泥を有効利用する気運が高まってきている。下水汚泥を有効利用する方法として,緑農地利用,建設資材化ならびにエネルギー利用などがあげられるが,こうした方法は多くの問題を抱えている。そして何より,こうした方法は下水汚泥を有効利用するだけであって,下水汚泥の発生そのものを削減できるものではない。そこで近年,下水汚泥から資源回収できることに加えて,下水汚泥の発生量を削減できる可溶化技術が注目を集めるようになった。
    本稿では,従来用いられてきた汚泥処理法について触れ,下水汚泥を化学的,生物学的あるいは物理学的に可溶化できる技術をそれぞれ紹介した。さらに,可溶化技術の今後の課題ならびにそれを用いた汚泥処理に関する研究展望について述べた。
論文
  • 中村 一夫, 来住 宜剛, 池上 詢
    2008 年19 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    廃食用油からバイオディーゼル燃料を製造する際に,触媒のカリウムを多く含むグリセリンやメタノールの混合廃液が発生する。この廃液は,現在廃棄物として処理されているが,グリセリンやメタノールのような分解性の有機物の有効利用の観点からメタン発酵での再資源化の可能性について実験を実施した。
    実験の結果,グリセリン混合廃液は,廃液中に含まれるカリウムによる発酵阻害もなく,良好にメタン発酵することが確認された。その際のCODCr分解率は80%以上であった。また,グリセリン廃液におけるガス発生率は分解CODCr1gあたり0.51NL-dryであり,理論上のガス発生率とほぼ一致する結果を得た。一方,メタン発酵を問題なく進めるためには,窒素やリンのような栄養塩や固形物を適切な濃度に保つ必要があるが,グリセリン廃液は固形分を含まないうえに窒素やリンの含有量が少ない。この対策としては,生ごみとの投入が効果的であった。
  • 阿部 清一, 笠井 節一, 吉川 猛, 贄川 豊, 木村 哲雄, 武田 信生
    2008 年19 巻1 号 p. 17-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    多成分系である廃棄物の溶融処理特性を表現する指標としてCaO/SiO2を主とする塩基度がよく使われている。塩基度は,廃棄物種を固定した時には溶融処理特性に関して一定の傾向を示すが,汎用性に欠ける。
    本研究では,SiO2, Al2O3, CaO, FeOに関わる14種の平衡状態図を一定のAl2O3含有率の平面で切り取り,SiO2, CaO, FeOを頂点とする新たな図 (四成分平衡状態図) を作成した。各種廃棄物の溶融温度 (溶流点温度) の実測値と塩基度または四成分平衡状態図における位置とを比較すると,後者の方が成分と溶融温度の関係をより正確に表し得ることがわかった。また,高炉スラグの粘性に関する実験結果から得られた溶融温度をこの図上にプロットすると,溶融温度の分布傾向は酷似しており,四成分平衡状態図は溶融処理特性を表現するのに有効であることが確認された。
  • 李 松林, 安田 八十五
    2008 年19 巻1 号 p. 26-34
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    容器包装リサイクル問題は,容器包装リサイクル費用は一体いくらかかっているのかという問題と,容器包装リサイクル費用を誰が負担すべきかという問題とに集約することができる。本論文では容器包装リサイクルの費用測定の解明を行う。容器包装廃棄物のリサイクル費用を容積ベースで測定・評価するため,容器包装素材別「逆かさ密度」(かさ比重) を実測し,容器包装の収集費用を容積ベースで算出できるようにした。容器包装廃棄物のリサイクル費用の算出にあたっては,自治体にアンケート調査を依頼し,13自治体から回答を得た。自治体からの回答結果を用いて,アルミ缶・スチール缶・ペットボトル・ガラスびんの4品目のリサイクル費用を重量ベースおよび容積ベースで測定し,容器間および自治体間の分析・評価と比較を行った。
  • 小寺 洋一, 石原 由美子, 武藤 大志郎, 黒木 健
    2008 年19 巻1 号 p. 35-43
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    既存の廃プラスチック類の油化技術および油化リサイクルの進展を阻害した要因を分析し,油化リサイクルの普及に必要な,次世代型油化技術の基本的要件の調査研究を行った。従来の主な油化技術はバッチ式タンク反応器をもつ小規模油化プラントによるもので,炭化物障害による処理能力の不足から油化事業は経済的に成立困難であった。廃プラスチックの発生量・流通量の実態調査と試算から,油化リサイクル普及に必要なプラントの仕様・性能は,油化能力日量3~7ton,装置コストは処理量1tonにつき0.5億円,油化コスト約40円/kgであった。既存技術は,日量1ton程度と過少かまたは,日量20ton以上の過剰設備で,いずれも企業の事業規模に適合しなかった。油化リサイクルの促進には新型式反応器の開発,実用化が必要で,その基礎となる事業性と技術的鍵となる反応器の伝熱効率の評価を通じて,次世代型油化技術の具備すべき基本的要件を明らかにした。
  • ―プラズマテレビのリサイクル率,リサイクルコストの評価―
    赤堀 友彦, 松野 泰也, 足立 芳寛, 山本 典明, 濱塚 康宏, 西 隆之
    2008 年19 巻1 号 p. 44-50
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    現在,家電リサイクル法などの法規制により,家電製品のリサイクルが推進されており,法規制の対象となる製品は今後増加するものと見られる。廃棄段階の製品を精緻に解体することで,リユース可能な部品やリサイクル可能な素材の量は増加するが,一方で解体による時間,コストも増加する。よって,各種製品をどこまで解体し,リサイクルすべきかを考慮することが重要となる。日立製作所が開発したリサイクル性評価法 (REM:Recyclability Evaluation Method) は使用済み製品のリサイクル可能率と解体に必要な時間,リサイクルコストの関係を算出する手法である。本研究ではプラズマディスプレイテレビについて,リサイクル性評価法を適用して各解体段階のリサイクル可能率とリサイクルコストの算出を行い,ブラウン管テレビと比較した。そして,本手法において算出されたリサイクル可能率の信頼性とプラズマディスプレイテレビへの家電リサイクル法の適用について考察を行った。
  • ―超高温可溶化/アンモニアストリッピング技術の導入効果―
    坪田 潤, 角新 支朗, 津野 洋
    2008 年19 巻1 号 p. 51-60
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    コーヒー滓を50%以上含む食品工場残渣を対象とした湿式メタン発酵施設をモデルとして,超高温可溶化/アンモニアストリッピング技術の導入効果を,2Lメタン発酵連続評価装置を用いて検証した。本技術の導入により,発生メタン量を20%増加させるとともに発酵残渣発生量を50%削減できた。さらに廃液処理負荷量も溶解性CODcr換算で50%削減できた。本装置の運転条件である80℃でpH7.5では,アンモニアストリッピングによりメタン発酵槽のアンモニア性窒素濃度を1,000ppm程度に抑えることができるため,原料の希釈水として用いることができた。超高温可溶化/アンモニアストリッピング技術導入のエネルギー収支から,獲得電力が増大することを示した。
  • 上村 一哉
    2008 年19 巻1 号 p. 61-71
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究では,全国351市のデータを用いて,ごみ処理有料化の導入と,ごみ処理手数料の水準決定にあたって各自治体が考慮している要因を分析した。結果として,有料化導入と手数料水準決定についての自治体の判断は,ごみ処理費用とは強い結びつきのないことがわかった。有料化の実施については財政的な基盤の強弱が特に強く関係し,手数料水準については所得水準や住民説明会の回数などが,その大小を決定している。またこれら自治体固有の内生的な要因の他に,隣接自治体の有料化状況といった外生的な要因も強く働いていることが,有料化導入についても手数料水準決定についても確認された。さらに図と事例分析を通じて,これらの結果を補完する考察を行った。
  • 川口 光雄, 古市 徹, 谷川 昇, 石井 一英
    2008 年19 巻1 号 p. 72-79
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/17
    ジャーナル フリー
    遮水シート破損時に単純な管理で修復状況および修復の確認が同時にあるいは連続して行える自己修復システムの必要性を示し,二重シート内に水分散コロイド溶液 (スメクタイト系粘土薄板状結晶のコロイド粒子からなる懸濁液) を充填した自己修復型ライナーシステムを提案した。また,重量比3~5%のコロイド溶液を用いて3種類の室内実験を行い,システム実用化の可能性を示した。
    コロイド溶液中のコロイド粒子分散の長期的な継続性について,密度の経時変化測定から分散状態が安定的に持続することを確認した。
    コロイド溶液の二重シート内での流動性能について,二重シート内をほぼ水と同様に充填および還流できることを確認した。
    シート破損時には,保護土や遮水工下地に泥膜および浸透沈積層が形成され,遮水機能が回復されることを確認した。保護土としてまさ土を使用した場合,遮水性能を締固め度で管理できることを示した。
feedback
Top