廃棄物学会論文誌
Online ISSN : 1883-163X
Print ISSN : 1883-1648
ISSN-L : 1883-1648
13 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
展望論文
  • 金 容珍, 大迫 政浩
    2002 年13 巻6 号 p. 341-350
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    疎水性有機汚染物質 (HOPs) の溶出試験に関してこれまでヨーロッパで行われてきた研究とダイオキシン類の溶出および移動性に関する研究を中心に, 溶出試験における影響因子との関連から整理した。また, それらの情報整理を踏まえて, 廃棄物およびその処理物, あるいはリサイクル製品の安全性評価を目的とした溶出試験について, 溶出試験器具の材質, 振とう時間と接触方法, 溶媒のマトリックス, 固液分離法, 温度, 固液比, 試料の粒径, 揮発や光分解性などの観点から, 現段階で妥当性のある溶出試験操作および今後検討すべき課題について述べた。最後に, 溶出試験における安全性の判断基準を設定する上で留意すべき点として, 想定する環境条件と規制レベル, 水質環境基準との整合性などの点から論述した。
論文
  • 中野 加都子, 三浦 浩之, 和田 安彦, 谷口 正修
    2002 年13 巻6 号 p. 351-360
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    広域処理では, ダイオキシン類発生量の大幅な低減, リサイクルの効率化による環境負荷の削減が期待できる一方で, 広域輸送による総輸送距離の増大, 大規模な処理施設の建設に関わる環境負荷の増大等が予想される。本研究は広域処理のシナリオを設定し, それによる輸送, 中間処理, 再生処理を経て埋立処分に至るライフサイクルの環境負荷を定量し, 同時に, 広域処理ブロックの規模によるサーマルリサイクル, マテリアルリサイクルの環境負荷削減効果を予測したものである。その結果, サーマルリサイクルによる回収可能エネルギーが大きいことから, その導入効果が大きいこと, マテリアルリサイクルによるエネルギー消費削減効果が期待されるが, そのためには質の高い分別が必要であることを明らかにした。一方, 広域輸送による環境負荷の増加は処理システム全体からみると相対的に小さいが, 質の高い分別を行うたあの効率的な収集を行うことが必要である。
  • 吉野 敦志, 桃井 清至, 小松 俊哉
    2002 年13 巻6 号 p. 361-369
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    塩基度 (CaO/SiO2) およびAl2O3の量的変動を指標として用い, それらが1) 焼却灰の溶融特性, 2) スラグのすり減り減量, 3) スラグからの金属類の溶出に及ぼす影響について検討した。試料には6成分系の人工灰 (SiO2-CaO-Al2O3-Fe2O3Na2O-P2O5) を用いた。
    実験から, 1) では塩基度0.54~1.07でOthers (=Al2O3+Fe2O3+Na2O+P2O5) 量15~20mol% (Al2O310mo1%程度) の範囲に低溶融点域の存在することが観察でき, 主要3成分 (SiO2-CaO-Al2O3) の影響が支配的であった。2) ではSi, Al, Ca, Oが複合結晶 (CaAl2Si2O8 (Anorthite) , Ca2Al2SiO7 (Gehlenite) , Ca2SiO4 (Larnite) ) として析出している結晶質スラグであればすり減り減量は30%以下となった。3) ではPb (人工灰にPbOとして0.3mol%添加) の溶出濃度は, 塩基度0.53~3.2, Al2O3量6~15mol%程度の組成で1mg/L以上となった。以上の特性をスパイダーグラフとしてまとめた結果, トレードオフの関係が見られ, 軸スケールを使用目的に応じて限定していくことで適切な組成範囲が把握できると考えられた。
  • 小野 芳朗, 加納 佐江子, 劔持 堅志, 岡村 秀雄
    2002 年13 巻6 号 p. 370-378
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    埋立処分地に埋設される焼却飛灰・底灰の浸出水中への溶出挙動, 浸出水の環境影響を検討する目的で, 飛灰および底灰に含まれる多環芳香族炭化水素類 (PAHs) 濃度, 溶出・吸着特性およびエストロジェン様増殖活性を調べるとともに, 埋立地浸出水および処分地下流の河川水および河川底質中のPAHsの濃度と分布を調査した。飛灰および底灰からのPAHsの溶出は4環以下のPAHsが比較的溶出しやすく, PAHsは焼却灰, 底質等に対して強い吸着性を示した。また, 浸出水中のPAHs濃度は低く, また排出後に, 周辺河川の底質中に吸着し, 除去されていた。さらにMCF7細胞を使ったエストロジェン様増殖活性をあわせて適用した結果, 同じ抽出法による成分での増殖活性は, 理論的な活性の50%程度であることがわかった。
  • ―微生物分解型生ごみ処理装置の分解基材材料の検討―
    竹本 稔, 塚本 賀子, 藤原 俊六郎
    2002 年13 巻6 号 p. 379-386
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    現在, 多数の生ごみ処理装置が市販されているが, 分解基材 (菌床) には, 多くの場合, 木質チップが利用されている。しかし, 木質チップは, 分解が遅く, 生ごみ分解処理後, 堆肥として利用するには, 長期の追熟期間を要することになる。
    このため, 園芸資材を中心に生ごみ処理装置における各種資材の菌床としての適性の検討および生ごみ処理装置に用いる菌床の作成を検討した。
    23種類の資材について菌床としての特性について検討をおこなった結果, アンモニア揮散抑制効果等の面から資材特性を把握, 分類することができた。
    続いて, 生ごみ処理に適した菌床の作成を目的として, その中からバーク堆肥, ベラボン, バーミキュライト, これに水分吸収剤を加えた特性の異なる4資材を用い, L-16直交表に基づいて, 資材を組み合わせて混合した試験区を設定し, 試験をおこなった。
    試験期間の前期, 中期, 後期よりそれぞれデータを抽出し, それぞれ要因解析をおこなった結果, 全期を通して, バーク堆肥はアンモニア揮散抑制への寄与, ベラボンは資材の攪拌性能向上への寄与が高いことが示された。これに対し, バーミキュライトは, 攪拌性能の低下, アンモニア揮散の増加が生じる傾向にあった。水分吸収剤については, 中期に良い傾向がみられたが, その効果は, 短期間で消失する傾向にあった。
    以上の結果からバーク堆肥とベラボンを主体とした混合によって生ごみ処理に適した菌床の作成が可能と考えられた。
    また, 前試験の結果からバーク堆肥とベラボンの混合比を検討した結果, 菌床としては, アンモニア揮散抑制の面からバーク堆肥1/4以上, 攪拌性能の面からベラボン1/4以上の混合が適当と考えられた。
  • 六川 暢了
    2002 年13 巻6 号 p. 387-393
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    重油系燃焼灰からの有価金属の回収を目的として, 火力発電所の電気集塵器から排出された燃焼灰からの有価金属の浸出および浸出液からの金属イオンの分離について検討し, 重油系燃焼灰からバナジウムおよびニッケルを回収するプロセスを開発した。本プロセスは主に浸出, 溶媒抽出および晶析工程からなる。燃焼灰中のバナジウムおよびニッケルは過酸化水素水溶液により浸出し, 浸出されたバナジウムはトリ-n-オクチルメチルアンモニウムクロライド (TOMAC) により抽出し, 水酸化ナトリウム水溶液によりバナジウムを逆抽出し, 次に, 抽出残液中のニッケルは2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム (HNAPO) により抽出し, 硫酸によりニッケルを逆抽出する。分離されたバナジウムおよびニッケルはエタノールによりそれぞれ金属塩として回収される。
  • 藤井 隆夫, 迫田 章義, 鈴木 基之
    2002 年13 巻6 号 p. 394-400
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    省エネルギー型で膜の耐久性に優れた汚泥分離システムを提案した。このシステムの特徴は分離濾材の孔径が45μmのマイクロストレーナーを使用するところにあり, 膜分離に障害となる目詰まり物質を透過させるため, ケーク層比抵抗を大幅に小さく維持でき, 長期間安定した分離が可能である。基本的にはケーク層濾過を応用した汚泥分離であるが, 分離差圧を1~2kPaで操作することにより汚泥の圧密化を防ぐことができる。さらに回転平膜法と組み合わせることにより, 濾材の回転による剪断力でケーク層の形成を抑制することができる。また濾材表面に疎水性処理を施したステンレス製スクリーン (孔径45μm) を用いて長期間の実証実験を行った結果, 3ヵ月間に2回の簡単なブラシ洗浄だけで安定した運転が可能であり, 処理水質 (SSおよびTOC濃度は10mg/L前後) も良好であった。
  • 石田 葉月, 東田 啓作
    2002 年13 巻6 号 p. 401-409
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究は, 自治体によって分別収集された資源廃棄物の再利用を促進するためのインセンティブを事業者に与えるための経済的手法として, 処女資源の利用に対する課税とリサイクル行動に対する補助金制度に関するものである。まず第一に, 部分静学モデルを用い, 資源廃棄物の再利用を促進するための経済的手法が廃棄物削減効果を持っために満たすべき条件を導出し, それがリサイクル財の需要の価格弾力性値と, 廃棄物発生係数 (一単位の消費により発生する廃棄物量) の大きさに依存することを明らかにした。第二に, 一定の廃棄物削減目標を実現するために効率的な課税/補助金体系を検討し, 各財の廃棄物発生係数の比に応じた生産税と資源廃棄物利用補助金の組合わせが最適解の1つであり, かっ実行性が高いことを示した。
  • 大迫 政浩
    2002 年13 巻6 号 p. 410-418
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    有機性廃棄物の微生物処理過程におけるアンモニア (Am) とメチルメルカプタン (MM) の発生特性について, 半密閉型空気循環方式の高温発酵処理装置を用いて実験的に検討した。その結果, 1バッチ処理における時間的な変動特性は, 両成分の見かけのヘンリー定数とそのpH依存性から説明できた。ドッグフードおよび生ごみの連続投入分解試験の結果から, 循環空気中のAm濃度はアンモニア性窒素の蓄積とともにpH8程度以上で急激に上昇し, Amの見かけのヘンリー定数の増大とアンモニア性窒素の蓄積が相乗的に影響していた。しかし, 同程度の蓄積濃度でも菌床の種類によってpHに違いが見られ, 菌床のアルカリ緩衝能 (酸度) が影響していた。循環空気中のMM濃度は, ドッグフード分解時の二酸化炭素発生速度と相関があり, また, ドッグフードと生ごみの分解におけるMM濃度の違いは, 分解試料中のタンパク質含有の程度が影響していると考えられる。さらに, ドッグフード分解時の窒素の物質収支に関する検討から, 含有窒素から転換されたアンモニア性窒素は, pHが低い状況では蓄積するが, 蓄積の増加とともにpHが上昇するとアンモニア性窒素の大部分が発散することによって蓄積濃度の増加はほとんどみられなくなり, pHも安定することがわかった。
  • 山川 肇, 植田 和弘, 寺島 泰
    2002 年13 巻6 号 p. 419-427
    発行日: 2002/11/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では, 全国の有料化実施都市に対する質問紙調査に基づき, 有料化にともなう不法投棄問題の実態とその影響要因について検討し, 次の結果を得た。1) 有料化時に不法投棄の増加が非常に問題となった自治体の割合は4%で, やや問題となった自治体を含めると4割弱となった。またその約9割は現在も問題が継続していた。2) 不法投棄されたごみの回収量データが入手できた2自治体の例では, 不法投棄ごみ回収量の増加は可燃ごみ減少量の1%未満であった。3) 有料化時に不法投棄増加が問題となった自治体のほとんどは有料化以前に不法投棄が問題となっていた自治体であった。4) 以前から不法投棄が問題となっていた自治体の中でも, 有料化と同時に分別の変更を行った自治体において, 不法投棄が問題となりやすい傾向にあった。5) 袋価格が高い自治体でやや問題が起こる割合が高かったが, 統計的には有意ではなかった。
feedback
Top