廃棄物学会論文誌
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15 巻, 6 号
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論文
  • 川本 克也, 倉持 秀敏, 呉 畏
    2004 年15 巻6 号 p. 443-455
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    バイオマスおよび/または廃棄物からの水素製造を循環型社会に必要とされる再生可能資源利用技術と位置づけ, 現状と課題を整理した。熱分解一ガス化および改質にもとつく技術開発例とその特徴, 影響因子に関する研究例などについて各種文献をもとにレビューした。さらに, 今後の総合的なシステムとして発展させる上で考慮・検討されている種々の技術的要素, とくに, 大きな課題となる水素や一酸化炭素などの生成効率とタールの転換効率などに対する触媒適用の効果, 燃料電池などとの組み合わせを考慮した場合に重要となる阻害物質あるいは微量有害物などの環境負荷物質の分離, 精製, 除去などの技術的方策について整理した後, あるべき将来像に言及した。
  • 鈴木 和将, 山崎 均, 神田 伸靖, 川本 克也
    2004 年15 巻6 号 p. 456-464
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物の熱分解ガス化溶融工程を主な対象として, ボイラ部など排ガス冷却工程で採取された灰を加熱することによるダイオキシン類生成能試験を行った。その目的は, 灰を加熱して生じるデノボ合成温度域でのダイオキシン類生成に関し, 把握の容易な指標によって生成能の予測を可能とし, また, 効果的な発生抑制対策をとるために生成への影響因子を的確に把握することである。実験の結果, 生成能試験前の灰に対する500℃または600℃での加熱処理, 溶媒抽出処理, 水洗浄処理のうち, 溶媒抽出処理を除いてダイオキシン類生成能を低減させることがわかり, 灰に含まれる炭素分と水溶性成分が生成因子として重要なことがわかった。各種熱分解ガス化溶融灰のダイオキシン類の生成総量は, 1.3~330ng/gであった。このダイオキシン類生成総量と灰組成の関係について検討を行ったところ灰の炭素量とダイオキシン類生成量との間に正の相関があることが示唆された。水洗浄による影響因子の除去性について, 金属化合物の大部分は水中に溶出しなかったが, ダイオキシン類生成能を示すと推測される鉛化合物に水溶性成分が認あられた。
  • 松野 基次, 友田 勝博, 川本 孝治, 中村 崇
    2004 年15 巻6 号 p. 465-471
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却炉飛灰は特別管理廃棄物として指定されており, 処分にあたっては無害化が義務づけられている。無害化技術としては特に無害化の信頼性および環境安全性が強く要求されている。また種々の溶融炉から生じるスラグ類は確実な活用を目指してさらなるリサイクル技術の開発が求められている。本研究では, 都市ごみ焼却飛灰の処理およびスラグ類の混合処理に関し, 製錬技術を応用した新しい無害化焼成技術を開発し, 実証に成功したので報告する。具体的処理方法は, 当該飛灰を成形後, ロータリーキルンにより焼成無害化するとともに, 焼成物を有効活用しやすい材料として回収し, かつ二次飛灰を製錬二次原料化する。本技術の特徴は, 焼成回収物が, 環境安全性の高い, かつ強度が改善されたペレットとして得られ, さらに二次飛灰も山元還元できる点にある。試験は処理能力100kg/時間の試験設備を用いて種々の飛灰組成について行った。
  • 炭谷 晃平, 柏田 祥策, 尾崎 夏栄, 山田 正人, 毛利 紫乃, 安増 茂樹, 井内 一郎, 小野 芳朗
    2004 年15 巻6 号 p. 472-479
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    現在, 廃棄物埋立処分場浸出水および処理水による周辺水環境汚染が指摘されている。われわれは, これまでヒメダカの成魚または孵化稚魚を用いた処分場浸出水の水環境汚染影響評価について検討し, 報告を重ねてきた。その一方で, 魚類の受精胚に与える浸出水の影響については十分な検討をしておらず, また魚類受精胚に対する化学物質および環境試料の影響研究に関する報告例も比較的少ない。そこで本研究では, ヒメダカ受精胚に与える廃棄物埋立処分場処理水が及ぼす影響を評価することを目的として, 1) 受精胚に対する孵化阻害試験および2) 孵化酵素発現に与える影響試験を行った。その結果, 孵化率は処理水の割合に対して濃度依存的に低下した。また奇形発生も確認されたが, これは濃度依存的ではなかった。奇形発生は, 試験水の特定浸透圧範囲すなわち試験水の浸透圧が, ヒメダカを含む硬骨魚の血液浸透圧 (300mOsm/L) 付近である250mOsm/Lから300mOsm/Lとなったときに頻発するという現象が確認された。本研究の結果, 処理水には, ヒメダカ受精胚に対して孵化阻害および奇形発生という生態影響を引き起こすリスクが存在することが確認された。
  • 中野 加都子, 和田 安彦, 大島 裕行
    2004 年15 巻6 号 p. 480-490
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    リサイクル工程では現在でも人の労働が必要とされることが多い。これまでのライフサイクル環境負荷を定量化する研究においては, 人の労働が環境負荷評価システムの境界内に存在していながら, それに伴う環境負荷が組み込まれて分析・評価された例はほとんどない。しかし, 人の労働においても人間が手作業するために必要な何らかの機器・設備等の使用を伴うため, これを無視した評価は包括的とはいえない。本研究はリサイクル施設で実態調査を行い, リサイクル工程で不可欠と考えられる人の労働に伴う環境負荷の定量化を行ったものである。さらに, この結果を, モーターからの銅回収を手作業で行う場合に適用し, 今後期待できる形状記憶合金ネジを用いた自動解体による回収の環境負荷と比較した。このことにより, リサイクル工程での手作業を自動化に置き換える可能性を考察した。
  • 高橋 泰弘
    2004 年15 巻6 号 p. 491-499
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    下水汚泥焼却灰中の有用な資源を回収する目的で水酸化ナトリウム溶液による溶出実験を行った。リン含有率の異なる4種類の焼却灰を用いてリンだけでなく, その他有用成分についても溶出特性を明らかにした。リンについて溶出温度と溶出時間の関係を検討した。アルミニウム, 亜鉛の効率的な溶出条件を調べるために焼却灰濃度, 温度について検討した。リンはリン含有率が高いほど溶出濃度は高かった。アルミニウムはアルミニウム含有率に関係なく, リン含有率が高いほどアルミニウム溶出濃度が高かった。焼却灰中のアルミニウム含有率にかかわらずリンとアルミニウムの溶出挙動は同じであったことからリン酸アルミニウムが溶出していると考えられる。アルミニウムの溶出率は溶出温度と焼却灰濃度に関係があることが明らかとなった。亜鉛の溶出率は水酸化ナトリウム濃度10%, 溶出温度80℃の時, 最大で16%であった。
  • 堀 直子, 島岡 隆行, 宮脇 健太郎, 崎田 省吾, 花嶋 正孝
    2004 年15 巻6 号 p. 500-510
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 日本では新規の埋立用地の確保が困難であり, 埋立地の延命化を目的に, 覆土容積を低減させるための覆土代替材の開発が行われている。本研究では, 覆土材が埋立廃棄物の安定化に与える影響を把握するため, 埋立廃棄物の質変化および埋立廃棄物層からの浸出水の流出特性について着目した。本研究では, 一般的な土壌による覆土, または古紙を有効利用した覆土代替材を施工した二次元大型埋立模型槽を用いて長期実験を行った。
    土壌による覆土を施工した場合は埋立廃棄物層内で水分移動が水平方向に偏り, 可溶性汚濁成分の洗い出しが遅れる部分が生じ, また有機汚濁成分の分解に必要な酸素の供給が十分でないことが明らかとなった。このため, 廃棄物安定化の遅延の可能性が示唆された。また, 覆土層厚が土壌の場合に比べて薄い古紙覆土代替材は, 透水性に優れ, 廃棄物安定化を促進する役割を果たすことが確認された。
  • 坂本 広美, 福井 博, 惣田 〓夫, 金子 栄廣
    2004 年15 巻6 号 p. 511-520
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    神奈川県内に設置されている一般廃棄物および産業廃棄物の最終処分場浸出水および処理水に含まれるビスフェノールA (BPA) の濃度を測定した。一般廃棄物最終処分場浸出水中のBPA濃度はく0.05~4, 960μg/L, その処理水はく0.05~19.8μg/Lであり, 濃度が高かった処分場では, 不燃ごみ・粗大ごみの破砕物と焼却灰を一緒に埋め立てていた。一方, 産業廃棄物最終処分場浸出水中のBPA濃度はく0.05~494μg/L, その処理水はく0.05~55.2μg/Lであった。埋立廃棄物の繰り返し溶出実験結果から, 検出されたBPAの多くが軟質の塩化ビニル樹脂 (PVC) に由来し, 降雨による洗い出しにより継続的に溶出する可能性が示唆された。また, 焼却灰と不燃ごみ破砕物を混合した繰り返し溶出実験により, BPA溶出量の増加が確認された。以上のことから, 浸出水中にBPAが検出された場合には, 気象条件等により濃度の変動はあるものの, しばらくその状態が継続することが予想された。
研究ノート
  • 宮永 俊明, 茂木 卓治
    2004 年15 巻6 号 p. 521-524
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    現在, 日本の家電メーカの多くがテレビキャビネット用難燃樹脂の難燃剤としてノンデカブロ系難燃剤あるいはノンハロゲン系難燃剤を選択している。一方, 現在家電リサイクル工場から発生するテレビキャビネット由来の樹脂のほとんどはデカブロ系難燃剤含有樹脂であるため, 日本国内では, 再び家電製品向け材料として活用するリサイクル利用が難しい。したがって, 再生利用用途の制限と資材コスト的な面から, デカブロ系難燃剤含有樹脂の多くが黒物樹脂として中国輸出等に回されており, そのリサイクル流通状況が不透明になりつつある。一部のリサイクル業者によれば, いったん海外に輸出されたデカブロ系難燃剤含有樹脂の一部は, 汎用の黒色樹脂に混合されて, 再びビデオテープ用途等の黒色樹脂の原材料として再生されて再び日本に戻ってきているという情報もある。
    そこで今回, これらの樹脂のリサイクル流通状況を検証すべく, 日本国内の普通の量販店でさまざまな一般雑貨を購入し, その樹脂の成分分析を実施することによって, 本問題の実態を検証した。
    調査の結果, 日本の大手家電メーカ製が明示されているにも関わらず, 安価な中国製ビデオテープからは, 臭素のみならず, アンチモンも検出され, また一般雑貨の一部からも臭素が確認された。今回の調査結果より, 廃プラスチックの再生流通の問題点が明らかになった。
  • 福井 博, 斎藤 邦彦
    2004 年15 巻6 号 p. 525-528
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    最終処分場におけるばいじん等の飛散を簡易に確認する方法を検討した。ばいじん等を水に捕集すると, ばいじん等に含まれる電解質成分により捕集水の電気伝導率が高くなることに注目し, 電気伝導率をばいじん等の飛散の確認指標に利用することが可能か否か検討した。最終処分場内の5ヵ所に, イオン交換水を入れた容器を6週間設置し, 捕集水の電気伝導率を測定した。一方, ばいじん等に多量に含まれる亜鉛, 銅, 鉛含有量からばいじん等の存在を確認するために, 捕集水をろ過し, ろ紙上に残った固形物の亜鉛, 銅, 鉛含有量を調べ, それらが実験対象とした埋立地から飛散したばいじん等であることを確認した。ついで, 捕集水の電気伝導率が10mS/m以上 (対照地点の上限) の地点での捕集水の電気伝導率と, それに含まれる鉛の量から算出したばいじん等の量はよく相関していた。すなわち, これらはばいじん等に含まれる電解質が電気伝導率に反映することが示唆されている。これらの結果から, ばいじん等の降下場所や埋立作業場所の近くに容器を設置した場合には, ばいじん等の飛散の確認に, この方法が有用であるものとして提案する。
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