廃棄物学会論文誌
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17 巻, 5 号
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論文
  • 谷川 昇, 古市 徹, 石井 一英, 松尾 晃治, 井関 孝弥
    2006 年17 巻5 号 p. 305-312
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    市販のハンディタイプオープンパス型都市ガス漏れ検知器 (オープンパス型メタン計測器) と反射板を用いた簡便な大気環境中の平均メタン濃度の計測手法を提案し, その計測手法の測定値の信頼性と実際の最終処分場への適用性を検討した。
    オープンパス型メタン計測器を用いたメタン濃度の測定値は, 水素炎イオン化方式炭化水素自動計測器 (FID自動計測器) のメタン濃度の測定値と良い相関関係が認められたこと, オープンパス型メタン計測器と反射板間の距離にほとんど影響されないこと, 再現性も良好であったことから, 提案した計測手法によって, 大気環境中のメタン濃度をFID自動計測器と同程度の精度で計測できることがわかった。さらに, 提案した計測手法は, 実際の最終処分場内において, 平均メタン濃度とその変化を簡便かつ正確に把握でき, 埋立ガスによる作業環境への影響や埋立廃棄物の安定化の進行状況の把握等に活用可能であることを示した。
  • 山田 宏之, 松野 泰也, 醍醐 市朗, 足立 芳寛
    2006 年17 巻5 号 p. 313-321
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    日本における木材パルプのマテリアルフローにマルコフ連鎖モデルを適用し, 木材パルプの平均使用回数の解析を行った。2003年の日本における木材パルプの平均使用回数は2.16回であった。輸出先での使用状況も国内同様と仮定し, 輸出先の使用も含めて計算すると, 3.01回となる。この輸出先の使用も含めた平均使用回数は, 88年と比べ, 0.93回増えていた。
    各製品の使用しているパルプの使用回数別構成比率を解析したところ, 新聞用紙の古紙の使用は近年大きく向上しており, 2003年では, 使用3回目以上のパルプの割合が50%近い割合となった。また, 段ボール原紙においては, 使用5回目以上のパルプが原料の60%以上を占めることがわかった。
    感度分析を行った結果, 2003年のマテリアルフローを基準として, 印刷・情報用紙の古紙消費率を40.0%まで向上させると, 平均使用回数は3.61回まで向上することがわかった。
  • 町田 基, 春原 聡, 森脇 三郎, 立本 英機
    2006 年17 巻5 号 p. 322-330
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    プラスチック廃棄物から調製した炭化物を調湿材として適用することを検討した。プラスチック廃棄物はPC+PETおよびPVCを用い, 炭化温度500~700℃で炭化物を調製した。比較としてプラスチック炭と同条件で調製した竹炭および市販の活性炭の調湿特性も調べた。調湿特性は本研究用に製作した測定装置を用い, 湿度56%と96%において, 炭化物の平衡吸湿量の差である調湿量および平衡時からの吸放湿速度である調湿速度を求めた。調湿特性は炭化温度によって変化し, PC+PETは600℃炭化物, PVCは700℃炭化物が最も優れた特性を示した。これらの調湿量は, 活性炭には及ばないものの, 竹炭を凌いでいた。また, これらの調湿速度は, 竹炭より速く, 活性炭と同等の作用をするものもあった。炭化温度によって調湿特性が変化するのは, プラスチック炭の細孔分布と灰分形態が変化したためであると考察した。
  • 藤井 実, 村上 進亮, 南齋 規介, 橋本 征二, 森口 祐一, 越川 敏忠, 齋藤 聡
    2006 年17 巻5 号 p. 331-341
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    家庭から排出されるプラスチック製容器包装の分別収集, 中間処理, 再商品化事業者への輸送について, CO2排出量と費用を市町村の世帯密度と面積の組み合わせで求めるモデルを作成した。収集モデルはグリッドシティーモデルの考え方を基に, 収集ブロックの地理的分布を考慮可能な形に変更したものであり, これに中間処理としての圧縮梱包と, 再商品化工場までの輸送を考慮するモデルを追加した。結果は, 世帯密度が大きいほど, また収集面積が小さいほど, 収集に伴うごみ重量あたりのCO2排出原単位および費用原単位が小さくなることを示した。また, 収集回数に変化がなければ, 可燃ごみとして混合収集する場合と, 分別収集する場合とで, CO2排出原単位および費用原単位に大きな差はなかった。圧縮梱包と再商品化事業者への片道200kmの輸送を含めても, CO2排出量はプラスチック製容器包装のもつ炭素量の5%程度であると予想された。
  • 齋藤 哲, 祝 炳〓, 今野 祥子, 大林 宏至, 中井 智司, 細見 正明
    2006 年17 巻5 号 p. 342-348
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    真空加熱分離法によるPCBを吸着した活性炭からのPCB分離について, その適用性を検討した。PCBが吸着した活性炭 (151mg/kgおよび101mg/kg) を処理圧力300~600Pa, 処理温度300~600℃, 処理時間1~4時間で処理をした結果, 処理圧力600Pa, 処理温度400℃にて2時間処理することにより, 活性炭中のPCB残留濃度は0.5mg/kg以下まで減少した。これより, PCBを吸着した活性炭からPCBを分離する方法として真空加熱分離法は有効であることが示された。また, 真空加熱分離法によるPCBの分離挙動を検討した結果, 活性炭に残留するPCBの一部の脱塩素化が確認され, 処理温度が高く, また処理時間が長くなるにつれて脱塩素化が進行することが認められた。また, PCBの脱塩素化は, 分離されたPCBの組成においても認められた。
研究ノート
  • 原 雄, 堤 克裕, 依田 彦太郎
    2006 年17 巻5 号 p. 349-354
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    天然骨材の表乾密度 (ないし絶乾密度) が2.5~2.6g/cm3程度であるのに比べて, 溶融スラグのそれは天然骨材のそれよりも大きい傾向を示す。その原因を探るため, 溶融スラグ (水冷スラグ・空冷スラグ・結晶化スラグ24試料) の密度測定および顕微鏡観察, 化学分析, X線回折分析を行った。分析結果の主なものは以下であった。
    1) 溶融スラグの密度を規定する第1因子はFe2O3含有量であった。2) 溶融スラグの密度を規定する第2因子は, スラグ粒子中に生じた鉱物の晶出であった。3) スラグを非晶質スラグ, 部分結晶化スラグ, 結晶化スラグに分類することにより密度と鉱物の関係を適切に表すことができた。とくに, 晶出した鉱物がGehlenite, Augite, Hematite等のように密度が大きい場合では, 溶融スラグ密度を高ある効果が示された。
  • 野村 祐吾, 藤原 一夫, 高田 誠, 中井 智司, 細見 正明
    2006 年17 巻5 号 p. 355-360
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    最終処分場の不足により, 都市ごみ焼却残渣の再資源化が急務となっている。本稿では, セメント資源としての焼却飛灰の価値に着目し, 製鉄所から排出される高炉スラグを助剤としてメカノケミカル (MC) 処理を行い, ダイオキシン類の分解挙動および処理後残渣のセメント化物の重金属 (Pb) やアルカリ溶出特性について評価し, 高炉スラグを用いた焼却飛灰の無害化処理・ 再資源化の可能性を検証した。
    飛灰中に含まれるダイオキシン類は初期濃度およそ9ng-TEQ/gであったが, MC処理4時間後には30pg-TEQ/g以下まで分解され, 処理8時間後には検出されなくなった。未処理飛灰からのPb溶出量を基準として, MCセメント固化によるPb不溶化率はほぼ100%となり, MC効果による重金属類の溶出抑制効果の可能性が示された。MC処理後の溶出液のpHは, MCセメント固化によって8~9に抑制されることが明らかとなり, 飛灰はセメント原料として利用できることが示された。
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