多国間経済を国際比較する際に,為替レートで1つの貨幣単位に統一して比較を行うことが多い。しかし,為替レートにより換算された集計量の国際比較は実質的に経済規模・経済水準の国際比較になっているかどうかが問題である。とくに,為替レートが激しく変化し,それ自身が政策の手段の1つにもなっている今日では,この方式による比較には問題大きいといえる。また,それぞれの国の各生産物間の価格比は多くの要因によって形成され,そのありかたは産業ごとにかなり異なっていると考えられる。産業連関表を利用する際に,各産業部門に同ーのレートを使用すると,各財貨・サービスの相対価格の相違を無視することとなり,各部門の技術的投入構造を正確に国際比較することにならないことがある。中国経済と日本経済を比較研究する際には,この2つの面の問題はともに深刻である。経済が立ち後れている国の使用貨幣は,先進国と比較して相対的に過小評価される場合が多い。現在の中国の元はまさにこういう状態におかれている。また,生産物間の価格比についても,集権計画経済の後遺症がまだ残されている。一方,日本の価格体系にも国際的にみて一種の特殊性が存在しているかと考えられる。ここで,購買力平価を用いて,中国と日本の産業連関表を再編成することによって,両国間の絶対価格水準及び、各生産物間(各産業部門間)の相対価格比の差をなくし,物量ベースでより正確に両国の比較分析が実現できるような実質値データの作成を試みる。
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