SUT バランシングとは,供給・使用表(SUT)の枠組みに基づき,それぞれのアプローチ,段階ごとの推計結果を突合し,調整する方法のことである.当該手法を用いることで,いわゆる統計上の不突合を解消又は縮小させることができる.統計上の不突合は,発生原因が様々であり,構造的な要因だけでなく,偶発的な要因によっても発生するため,絶対的なバランシングのルールや規則というものは,そもそも存在しない.一方で,SUT バランシングについて,国民経済計算体系の推計精度を累積的に改善するためのシステムとして捉えるならば,系統だった方法でバランシングを行うことが重要となる.本章では,Eurostat(2008)および国際連合(2019)などを参考に,バランシングの前提条件,体系,手順,具体的な方法などについて解説する.
経済のグローバリゼーションが進む中で,グローバルバリューチェーンの実態を明らかにする付加価値貿易(Trade in Value Added,TiVA と呼称される)指標が注目を集めている.付加価値貿易は,国際貿易における各国の貢献を付加価値で測るものであり,貿易統計や国際収支統計とは異なった視点を提供する.OECD は,産業×産業の国際産業連関表の開発を行っており,これを用いて付加価値貿易指標を作成している.国際産業連関表は,主要国の産業連関表を国際財貨貿易・サービス貿易統計を用いて連結する形で作成されるが,欧州諸国等のように産業連関表を直接作成していない国では,同表は,供給使用表から産業連関表が派生的に作成されている.