SNA(国民経済計算)においては,SUT(供給・使用表)は,生産物とそれを産出する産業の関係を示す「供給表」と,産業の中間投入・付加価値と生産物の中間消費・最終需要を記述することで支出側と生産側のGDP推計の整合性を確保する「使用表」から構成される.我が国の政府は近年,産業連関表のSUT体系移行に向けて産業連関表等の見直し作業を進めており,本稿ではその背景を解説する.
従来から,供給・使用表は推計されていたが,2020年を対象とする基準年から,産業連関表と供給・使用表については大きく見直すこととされた.この見直しの背景としては,これまでの産業連関表のサービス部門については,現実として投入推計が難しい場合がみられていたことがあげられる.本稿では,このような見直しの背景となる,統計単位や部門の関係,基礎統計を用いた基本的な推計方法について,作成担当者の立場から説明する.
供給・使用表(SUT)は,供給ベースの分類基準に基づく産業分類と,需要ベースの分類基準に基づく生産物分類を基礎として推計されることが望ましい.本稿では,SUTにおいて重要な役割を果たす産業分類および生産物分類について,両者の違いは何か,なぜ2種類の分類体系を併用する必要があるのか,といった点を解説したうえで,日本のSUTに適用される日本標準産業分類および新たに構築された生産物分類の概要を紹介する.
従来,我が国の産業連関表と欧米諸国のSUTが異なっていた理由の一つは,その基礎となる産業統計が欧米諸国とそもそも異なっていたからであった.そのため我が国において産業連関表からSUTへの移行するためには,我が国の産業統計を欧米諸国のそれを参考に変えていくことが必要であった.2012年には経済センサス―活動調査が開始され,これまで十分でなかったサービス産業のデータが大幅に拡充された.2019年には経済構造実態調査が開始され,それに伴い経済産業省「特定サービス産業実態調査」,「商業統計調査」が廃止された.2022年には工業統計調査も「経済構造実態調査」に包摂された.産業連関表からSUTへの移行は,こうした産業統計の再編があって始めて実現することになる.