本研究は,小水力発電のなかでも相対的に規模の大きな出力200∼1,000kW未満の技術を対象にライフサイクルCO2排出量を計測し,CO2排出削減ポテンシャルを推計したものである.ヒアリングや公表データから小水力発電の施設建設及び運用アクティビティを作成して総務省「産業連関表」を拡張し,産業連関分析のオープンモデルによって小水力発電のライフサイクルCO2排出量を計測している.その結果,小水力発電(200∼1,000kW未満)のライフサイクルCO2排出量は28.1g-CO2/kWhであり,先行研究と比較すると,相対的に規模の小さな小水力発電のライフサイクルCO2排出量よりも小さいが,一般水力発電よりは大きくなることが明らかにされた.また,河川部における小水力発電のCO2排出削減ポテンシャルは,概して首都圏を除く東日本で大きいことが示された.
国際的なサプライチェーン・アウトソーシング・垂直貿易の進展による世界的規模の中間財貿易興隆を背景にして,WTO・OECD等の国際機関はこの数年間に共同してグローバル・バリューチェーン論すなわち付加価値貿易論の急成長を先導してきた.粗産出・粗輸出から付加価値への視点転換は,新たな器のもとに,産業連関分析の世界的なルネッサンスをもたらした.この連載では,付加価値貿易論のABC から進んだ応用にいたるまで順次平易に説明する.付加価値貿易論は,専門家の間でも十分に確立した領域ではないので,解説とはいえ,筆者のレンズを通してみた見取図提供の試論であることをあらかじめお断りしておきたい.
中国は石炭中心のエネルギー構造のため,現在PM2.5や酸性雨などの深刻な環境問題を抱えている.今後の経済発展とともに,エネルギー消費量がさらに増加することが想定される.再生可能エネルギー発電は石炭火力発電と比べて汚染物質やCO2などの排出量が少ないため,今後のエネルギー構造改革の重要手段として注目されている.
本稿はシナリオ産業連関分析を用いて全面的に再生可能エネルギー発電産業の経済効果と環境効果を分析した.従来の産業連関分析と異なり,生産構造は随分と異なる発電部門は同じ生産物「電力」を産出するという電力産業の特性を考慮し,異なった発電部門でどれぐらいの電力を発電するかによって,国内総産出やCO2排出削減効果などを試算した.
本稿では,平成23年(2011年)島根県産業連関表の作成及び作成をめぐる課題について,平成23年表固有の問題と自治体固有の問題の2つに分けて報告する.前者には,産業分類の大幅な変更,基礎データの変更などが,後者には,人員不足・時間不足,知識や作業ノウハウの不足・検証や検討方法の課題などが含まれる.
作表をめぐる環境は年々厳しくなっており,課題の解決には,国・県などの境を超えた連関表担当者の連携や,各自治体が共通して使用できるマニュアルの改善などがいっそう求められると考えられる.
今回の報告は,本県におけるこれら課題への対応及びその反省であり,今後の地域産業連関表作成の効率化,精度の向上につながることを期待している.