産業連関
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29 巻, 1 号
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投稿論文
  • 奥村 豪
    原稿種別: 投稿論文
    2021 年 29 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     本稿では,2010年と2017年のベトナム産業連関表を用い,国内生産額の変動要因のほか,産業部門間の中間財に関する取引関係や輸入依存度,ベトナム経済を牽引している輸出による生産誘発の海外流出の程度等について分析を行った.また,その上で,ベトナム国内産業の脆弱性や課題について考察し,当該課題を踏まえた施策の方向性やその効果について検討を行った.今回の分析においては,特に,ベトナムの「電子・光学機器」部門に着目し,輸出による生産誘発の海外流出の要因が主に「金属加工基礎製品」部門との中間財取引等における輸入依存率の高さにあること,また,ベトナムにおいては,このような産業部門間の中間財取引における輸入依存率の低下が生産技術構造の変化を通じて国内生産額及び粗付加価値額の増加に寄与することなどの示唆を得ることができた.

  • 須原 菜摘
    原稿種別: 投稿論文
    2021 年 29 巻 1 号 p. 16-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/02
    ジャーナル フリー

     本社機能活動が集積する東京に,国内他地域の生産現場活動を統括するかたちで所得が集中するメカニズムを定量的に捉えるために,本稿では47都道府県の各地域内表(2011)から本社部門を推計し,地域ブロック単位および都道府県単位の分析を試みた.その結果,以下のような点が分かった.まず,生産額そのものより地域間取引に注目することで,本社部門が経済全体に占める割合が大きくなるだけでなく,本社部門の集中する地域の経済規模の大きさが顕著になる.また,本社部門は地理的近接性のある地域や経済規模の大きい地域との関係が強い傾向にある.さらに,北海道,宮城県,愛知県,大阪府,広島県,香川県,福岡県において,電力・ガス・熱供給の本社部門が大きい.

  • 菅 幹雄
    原稿種別: 投稿論文
    2021 年 29 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル フリー

     緊急事態措置実施(2020年4月~5月)による家計消費支出の変化に伴う経済波及効果を計算した.具体的には総務省統計局「家計調査」による1世帯当たり家計消費支出を家計調査品目を産業連関表部門に組み替え,さらに消費者物価指数を用いて品目別に実質化した上で,購入者価格を生産者価格に変換し,その消費ベクトルを産業連関分析に応用して経済波及効果を計算した.これを世帯員1人当たりに換算し,これに推計人口を乗ずることによりマクロへの影響も推定した.

  • ―中部圏地域間産業連関表を用いた仮説的抽出法による分析―
    紀村 真一郎
    原稿種別: 投稿論文
    2022 年 29 巻 1 号 p. 65-79
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

     愛知県と静岡県は,特定企業による自動車組み立て工場が複数立地している共通点を持つ.しかし,愛知県自動車産業では,隣接県に留まらず,九州地域や東北地域へも生産拠点を立地させていった.本論文では,生産拠点の広域化に伴う自動車産業による地域間取引の変化を経年で把握すべく,両県の自動車産業を対象とし,複数年の地域間産業連関表に仮説的抽出法を適用した.その結果,愛知県は自地域以上に,東海3県やその他全国との地域間取引を拡大させているのに対し,静岡県は自地域内取引を拡大させていることが示された.また,愛知県自動車産業が自地域の従来からの関連産業以上に他地域の産業との結びつきをより強めながら広域化させているのとは対照的に,静岡県自動車産業が自地域の他産業との結びつきをより強めていることが明らかとなった.

  • 宇多 賢治郎
    原稿種別: 投稿論文
    2022 年 29 巻 1 号 p. 80-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル フリー

     日本の産業連関表(基本表)は,競争輸入型だけでなく,国産と輸入を分けた非競争輸入型も作成されてきた.しかし,この非競争輸入型の特徴を活かした分析手法は確立されているとは言い難い.そこで本稿では,まず生産誘発効果の計算方法を検証し,非競争輸入型産業連関表を使い,生産誘発効果を要因別に分解する方法を説明した.また,この分析手法の意義を示すため,1980年から2015年までの基本表の部門分類を揃えるよう加工し,それを使って35年間の日本の経済構造の変化を分析した.この分析により,日本の生産誘発構造の変化は1995年前後で逆転し,2011年以降には生産誘発効果的には自給ができていない状況に転じたことを示した.

報告
  • ―文化GDPの推計―
    藤川 清史, 川村 匡
    原稿種別: 報告
    2021 年 29 巻 1 号 p. 39-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

     近年欧米では文化芸術が成長産業の1つとみなされるようになった.日本でも「未来投資戦略2017」において,文化芸術による付加価値を拡大する方針が示された.また2017年には「文化芸術基本法」が成立するとともに「文化経済戦略」が策定された.これらが日本での文化の経済的評価の契機となり,文化庁内に「文化GDPの推計のための調査研究会議」が設置された.本報告では,UNESCOの文化GDPの推計基準を紹介するとともに,それに基づいた上記会議による日本の文化GDPの推計を紹介する.日本の文化GDPは10兆5,385億円でGDP総額の約1.9%となった.このシェアは米国や英国と比較するとやや小さい,今後は文化GDPの推計法を改善するとともに,文化雇用者や文化商品の輸出入を含めた文化サテライト勘定を推計することにしたい.

  • 産業連関表作成の現場から(12)
    舟橋 哲也
    原稿種別: 報告
    2021 年 29 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

     岐阜県郡上市では,令和元年度の重点事業の一つとして,2015年郡上市産業連関表を作成し令和2年3月に公表した.推計については,平成27年(2015年)産業連関表作成基本要綱(総務省)を参考に,総務省・経済産業省から提供を受けた平成28年経済センサス―活動調査データの再集計を行うとともに,移出入把握を主目的とした市単独の調査等を組み合わせる,簡便なサーベイ法により実施した.
     市町村産業連関表は,自治体による作成事例が少なく,岐阜県では高山市に次ぐ二事例目となる先進的な取組である.本稿では,作成経緯や予算要求等の諸準備状況を説明したうえで,推計方法や推計結果の概要ならびに分析事例について報告する.最後に,推計担当者の視点から技術的諸課題や問題点及び解決方法を紹介する.これにより,特に小規模市町村が地域産業連関表を作成する際に,実務担当者の参考事例となれば幸いである.

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