市場為替レートの変動は多くの諸要素によって決定され,必ずしもそれぞれの貨幣のもつ購買力を反映していない.多国間経済を国際比較する場合に,為替レートをそのまま使用して換算することは名目的な比較にすぎず,それぞれの貨幣のもつ購買力を反映する相対価格,つまり購買力平価が必要である.しかし方法論上の問題と膨大な作業が必要であり,精度の高い購買力平価の作成には多くの困難をともなう.とくに産業連関表を利用して環境問題や産業別生産性問題などについて国際比較する際には,最終財のみならず中間生産物もふくむ産業部門ごとの,いわば供給サイドによる購買力平価が必要になり,その作成にいっそうの困難をともなうことになる.幸いなことに,韓国の産業連関表は日本とほぼ同様な作成方法を採用しており,品目別国内生産額や生産数量あるいは単価をふくめ,多くの付属データを産業連関表とともに公表しているため,供給サイドによる日韓購買力平価の作成に格好の材料となっている.また,国際比較にとって精度の高い購買力平価を得るためにはできるだけ比較の目的にかない,かつ種々の条件や性質にもとづいた算式を考慮しなければならない.今回は日本を基準国とするパーシェ型,ラスパイレス型,フィッシャー型の日韓購買力平価の推計とともに,産業連関表の国際比較にとってとりわけ重要と思われる基準国不変性,行列整合性等をみたすG K法による日韓購買力平価を推計し,それらの性質をみたす日韓産業連関表の実質値を作成した.
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