鉄道の仕事をKahneman のシステム2 やHollnagel のSafety-II の概念を用いて考察するとともに,JR 東日本で実施している「『うまくいっていること』にも着目する取組み」の展開を紹介した.具体的には,(1)安全に作業するためにマニュアルが活用されることが多いが,人間の作業のかなりの部分をシステム 1 が占めることを考えると,マニュアル順守のみではエラー防止は難しく,システム2 が適宜介入しリスクを回避できる力が重要であること,(2)実際の鉄道従事員の「うまくいくための工夫・コツ」を調査すると,それに類する構造(リスクを察知しひと手間かける)がみて取れ,すでにパフォーマンス調整が行われていること,(3)そういったことを考慮しながら,現場における「うまくいくための工夫・コツ」の抽出・共有化を支援するツールを開発し,取組みを展開していることなどを述べた.
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