日本地球化学会年会要旨集
2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
選択された号の論文の303件中151~200を表示しています
G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
  • 亀崎 和輝, 服部 祥平, 小川 貴弘, 石野 咲子, 豊田 栄, 加藤 広海, 片山 葉子, 吉田 尚弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    本発表では、昨年開発されたOCSを安定同位体比質量分析計(IRMS)に直接導入し、イオンソース内で生成するS+フラグメント(m/z: 32, 33, 34)を測定する手法(Hattori et al., 2015 Anal. Chem.)を用いて、土壌から単離した既知のOCS分解菌株を用いた微生物培養実験を行い、OCS濃度減少に伴うOCSのδ34S値の変化を分析した。その結果、すべての培養系でOCS濃度減少に伴いδ34S値は上昇し、レイリー解析の結果負の34ε値を有することが明らかとなった。
  • 伊藤 元雄, 清水 健二, 牛久保 考行, 小澤 恭弘, 岩森 光
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    本研究では、微小なメルト包有物中の揮発性元素(H2O, CO2, S, F, Cl)の分布を測定領域5ミクロン以下の局所分析法だけではなく、空間分解能200 nmでのイメージング法を用いて高精度に定量を行った。今後は、メルト包有物に関する包括的な多元素・多同位体の分析プロトコルを異なる分析機器を用いて開発を進め、その複雑な形成過程を一つ一つ読み解いて行く研究につなげていく予定である。
  • 槇納 好岐, 平田 岳史, 鈴木 敏弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    LA-ICPMS法では、使用するレーザーのパラメーター(波長、パルス幅、エネルギー密度)や、サンプルの化学組成に応じてアブレーションされる体積は異なる。天然試料では複数の化学組成を持つ相が混在しているため、相ごとにサンプリングされる量に差異が生じ、LA-ICPMS法によるイメージング分析の定量性低下の要因となっていた。

     本研究では、レーザーアブレーションによる掘削量ならびにICPMSの信号強度から、LA-ICPMS法によるイメージング分析の定量化を試みた。ArFエキシマレーザーとTi:Sフェムト秒レーザーを用い、パラサイト隕石のオリビン相、金属相、酸化物相、ガラス(NIST SRM610)に対して、異なるエネルギー密度および走査回数でサンプリングを行い、分析後のクレーターについてレーザー顕微鏡を用いてサンプリング量を見積もった。本発表では、実験結果から考察されるLA-ICPMS法によるイメージングの定量性および分解能、技術的課題を発表する。
  • 服部 祥平, Savarino Joel, 石野 咲子, 吉田 尚弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    SO42-およびNO3-のΔ17O分析を可能な限り自動化し、ハイスループットに分析できる自動計測法を立ち上げたのでその報告を行う。硫酸は試料から抽出後イオンクロマトグラフによる自動分離精製の後、硫酸銀(Ag2SO4)に変換しその熱分解法によってO2を生成し三酸素同位体組成を分析した。他方、NO3-は脱窒菌法によりN2Oに変換した後、放電分解法によって生成されるN2及びO2を同時に測定する手法を開発し確立している。
  • 池谷 康祐, 安藤 健太, 中川 書子, 角皆 潤, 小松 大祐, 柴田 英昭, 福澤 加里部
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    本研究では、自然環境下で生育する植物の個体内に含まれるNO3-の窒素・三酸素同位体組成の定量法を主に木本類に適用し、植物に同化されるNO3-の供給源同定を試みた。植物試料は、セコイア(針葉樹)、アラカシおよびソメイヨシノ(広葉樹)を含む木本類、ササを含む草本類などの様々な植物種について分析を行ったところ、ササ中のNO3-は高い三酸素同位体組成値を持ち、半分近くが大気由来のNO3-であることが示された。木本類についても、およそ3割は大気由来のNO3-であることが示された。
  • 辻阪 誠, 高野 祥太朗, 村田 レナ, 平田 岳史, 宗林 由樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    近年のマルチコレクターICP質量分析装置(MC-ICP-MS)の発達により重金属安定同位体比の精密な測定が可能になった。堆積物中のモリブデン同位体比は酸化還元プロクシとしてさかんに研究されており、またタングステン同位体比が海底熱水活動の新たなプロクシになると期待されている。本研究ではキレート樹脂、陰イオン交換カラム濃縮分離操作によってモリブデン、タングステンを共に定量的に回収することが出来た。現在はモリブデン、タングステンの安定同位体比測定条件を検討中であり、その報告を報告する予定である。
  • 石川 厚, 成田 進, 山村 舞, 竹内 あかり, 大木 寛, 吉野 和夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    塩素同位体比は表面電離質量分析(TIMS)により[133Cs235Cl+]/[133Cs237Cl+]の信号強度比の測定から得られるが、この塩素同位体比はCH3Cl+分子イオンを使う気体質量分析法の測定結果と異なる場合がある。TIMSの場合、測定条件が原因とされる機構不明の塩素同位体比シフトが指摘されている。原因を探すためCs2Cl+の生成機構を考察し、TIMSの試料調製法を始めに研究した。今回は測定中にCs2Cl+分子が分解すると仮定 して、反応(Cs2Cl+ → 2Cs+ + Cl-)の塩素同位体効果を分子軌道計算し、実験と比較した。
  • 大野 剛, 廣野 睦, 齋藤 陽介, 村松 康行
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    本研究では、福島原発事故により放出された極微量放射性同位体を調べることを目的に、学習院大学設置のICP-MS/MS(Agilent 8800)を用いて極微量放射性同位体ストロンチウム90測定法の検討をおこなった。安定ストロンチウム溶液を用いて、質量数90の妨害信号/88Sr比を測定したところ、5×10-12の値が得られた。これは土壌中に安定ストロンチウムを含んでいても通常のICP-MS法に比べ影響が少ないことを意味している。本発表では福島原発事故により汚染された土壌・環境試料の測定例を紹介し、ICP-MS/MSを用いた極微量放射性同位体分析の現状と環境放射能研究への応用について議論を行う。
  • 中田 亮一, 田中 雅人, 谷水 雅治, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    吸着時および沈殿時に生じるセリウム(Ce)安定同位体分別は優れた酸化還元指標であることが示されているが,先行研究はpH = 5.0にて行われており天然環境に即座に応用できるものではない.Ceは低pH下ではCe3+として存在するが,pHの増加に伴い炭酸錯体を形成するため,溶存種の違いが同位体分別に与える影響を評価する必要がある.そこで本研究では,溶存錯体が異なる際の吸着および沈殿時のCe同位体比を測定し,XAFS法および密度汎関数法(DFT)計算から同位体分別を支配する原因を議論する.
  • 井上 麻夕里, Nikolaus Gussone, 古賀 奏子, 岩瀬 晃啓, 鈴木 淳, 酒井 一彦, 川幡 穂高
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    サンゴ骨格を含む海洋石灰化生物殻中のカルシウム同位体比(δ44Ca)は地球史における海洋のカルシウムサイクルを考える上で重要であり、各生物の生物鉱化作用を考察する上でもCaの同位体分別がそれぞれどのように起きているかを検証することは重要である。本研究では、CaCO3からなる造礁サンゴの骨格の材料となるCa2+の輸送経路をδ44Caより推察し、同位体分別の程度や分別がどのようにして起きているかを検討した。実験の結果、骨格成長は温度やpHなどの環境によって有意に変動するものの、Caの同位体分別は温度のみに見られ、温度依存性は0.02 ‰/°Cであった。また海水からのCaの平均的な同位体分別は-1.2‰であり、カルシウムチャネルでCa2+が造骨細胞に輸送される時に、軽い40Caが選択的に取り込まれていることが分かった。
  • 若木 重行, 若杉 勇輝, 谷岡 裕大, 石川 剛志, 壷井 基裕
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 最先端計測・同位体化学の地球化学及び境界領域への応用
    セッションID: 2B13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    一般に火成岩の重元素安定同位体組成は変動しないが、Srなど一部の元素では有意な変動が報告されている。火成岩のδ88Sr変動には、斜長石の分別結晶作用が関与している可能性が指摘されているが、マグマ分化とSr安定同位体分別は直接に関連づけられていない。本研究ではマグマ分化過程でSr安定同位体分別が生じている事を実証する目的で、単一の花崗岩体に対してSr安定同位体分析を系統的に行った。

     只見川古期花崗岩は、ハーカー図上で単一のトレンドを形成し、95.3 Maに相当するRb-Sr全岩アイソクロンを形成する事から、単一の親マグマの分化によって形成したと考えられる。そのδ88Srには0.27から-0.74と非常に大きな変動が見られた。δ88SrはSr濃度の減少とよく相関して減少する。これは、マグマの結晶分化によってSrが連続的にマグマから取り除かれる過程でSr安定同位体分別が生じている事を示す。
S2  鉄の地球微生物学と地球化学
  • 光延 聖
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S2  鉄の地球微生物学と地球化学
    セッションID: 2C01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    鉄は、地球表層に豊富に存在する元素であり、ほぼすべての生物にとって不可欠な金属である。海洋地殻などの岩石圏や堆積物、土壌にも多くの鉄が含まれており、それらの環境に生息する微生物は、鉄をエネルギーや生体成分として利用し、結果として微生物活動は地球上での鉄循環の一翼を担ってきた。講演では演者が最近進めている以下の研究や研究動向を紹介しながら、微生物-鉄-鉱物相互作用研究における分子スケールスペシエーションの有効性と今後の方向性について議論する。
  • 牧田 寛子, 田中 英美子, 布浦 拓郎, 平井 美穂, 阿部 真理子, 鈴木 優美, 関野 優也, 菊池 早希子, 光延 聖, 高橋 嘉夫 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S2  鉄の地球微生物学と地球化学
    セッションID: 2C02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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     世界各地の海洋環境において、酸化鉄で覆われた海底面(酸化鉄被膜地帯)が確認されている。それらは、環境中の鉄を直接的あるいは間接的に利用する微生物により形成された微生物と鉱物(主に酸化鉄)の複合体であり、それらの複合体(酸化鉄被膜)は、鉄利用微生物の生理・生態を理解する上で最適な試料であると考えられている。

     我々はこれまでに、沖縄トラフやマリアナ島弧そして南部マリアナトラフの熱水活動域に存在する酸化鉄被膜地帯での微生物学的調査を行ってきた。本発表では、微生物群集構造解析から予想される酸化鉄被膜での生態系維持に最も貢献する一次生産者について議論し、培養手法によって明らかとなった新規鉄酸化細菌の存在とそれらの生化学的性状、酸化鉄被膜形成に関わる海洋性鉄利用微生物の生態について報告する。
  • 加藤 真悟
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 2C03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    鉄は地球上に普遍的に存在し、主にFe(II)とFe(III)の状態で酸化還元反応を繰り返しながら、様々な元素の分布や挙動に影響を与えている。化学合成独立栄養性鉄酸化バクテリア(以下、FeOB)は、Fe(II)とO2の酸化還元反応から得られるエネルギーを使って増殖することができ、その副産物として、リンや重金属等に対する吸着能を持つ細胞外鉄バイオミネラルを大量に産出する。これまでに分離された中性pH付近を好むFeOBは、すべて微好気性である。鉄および微好気環境の空間的な広がりを考えると、FeOBは地球上に幅広く存在し、地球規模での元素・エネルギー循環に多大な影響を与えている可能性がある。しかしながら、分離株が極めて少ないため、その生理や分布はよくわかっていない。演者はこれまでに、淡水性および海水性の新奇FeOBを分離し、その性状・ゲノム解析を進めてきた。本講演では、これまでのFeOB研究を俯瞰し、演者の最新の成果も踏まえて、FeOBの生物地球化学的意義を議論する。
  • 加藤 創一郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 2C04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    近年、人工的な電極や鉄鉱物などの導電性物質との電子授受によりエネルギーを得て生育可能な微生物が発見され、大きな注目を集めている。我々のグループでは、自然界にも存在する導電性の鉄鉱物をいわば “電線”として利用する、新たな微生物代謝機構を見出した。まずGeobacterShewanellaといった、電極を呼吸の電子受容体として利用可能な微生物が、(半)導体性の鉄鉱物粒子との電子授受を介した導電性ネットワークを形成することで、遠く離れた電極への長距離電子伝達を可能にすることを明らかにした。さらに、導電性の鉱物粒子が2種類の微生物の異なる代謝を“電気的に”つなぐことで、個々の菌単独ではなしえない共生的な代謝反応が進行しうることを明らかにした。本講演では、このような導電性鉄鉱物との電子授受に基づく新たな微生物代謝について概説する。
  • 藤井 学, T. David Waite
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S2  鉄の地球微生物学と地球化学
    セッションID: 2C05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    鉄は藻類にとって必須である。海域や湖沼などの水環境中において,水中での鉄不足が藻類の増殖や代謝に影響を及ぼすことが明らかとなっている。本研究では、アオコの代表種である淡水性藍藻類Microcystis aeruginosaの鉄摂取に及ぼす影響を調べ、Microcystisの鉄摂取速度論モデルを構築し、自然水中での鉄摂取動態について考察した。
  • 菊池 早希子, 牧田 寛子, 白石 史人, 今野 祐多, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S2  鉄の地球微生物学と地球化学
    セッションID: 2C06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    微生物由来の水酸化鉄(BIOS)は吸着を通して様々な微量元素の挙動を支配する鉱物である。一方、BIOSは還元的な環境で鉄還元菌に容易に還元され、鉱物種が変化することも報告されている。よって、BIOSを介した微量元素の循環を理解するためには、BIOSの生成から還元までに生じる一連の鉱物種変化を把握することが重要である。本研究では、BIOSに富む堆積物中の鉄鉱物種変化およびその割合を把握することで、実際の天然で生じているBIOSの還元とその要因を明らかにすることを目的とした。XAFS分析の結果、堆積物に含まれるBIOSは還元的な環境で一部がGoethiteやSideriteに変化するが、大部分はFerrihydriteとして残ることが明らかになった。また、還元的環境下でFerrihydriteが完全に還元されない原因は、SideriteやGoethiteがFerrihydriteを覆うことによるBIOSの生物利用性の低下であることが示唆された。
  • 鈴木 智子, 橋本 英樹, 久能 均, 高田 潤
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 2C07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、鉄酸化細菌の代表的種であるLeptothrix ochraceaならびにGallionella ferrugineaが生成する酸化鉄(Biogenous Iron Oxide: 以下BIOXと略称する)に着目し、工学的材料としての利用に向け、その特性を詳細に明らかにした。L. ochraceaはチューブ状の酸化鉄(L-BIOX)を生成し、G. ferrugineaは、ねじれた紐状酸化鉄(G-BIOX)を生成する。両BIOXは、異なる由来、形状にも関わらず、組成、表面積、最小粒子径、結晶構造において非常に酷似した材料特性を示した。また、有機無機ハイブリッド構造を有する人工合成が困難な複雑な構造体であることが明らかとなった。
  • 髙島 千鶴
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 2C08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    温泉成鉄質沈殿物は先カンブリア紀に形成された縞状鉄鉱層(BIF)と組成的・組織的に非常に類似しているため,BIFのモダンアナログとしてのポテンシャルが高い.

    入之波温泉の鉄質沈殿物に見られる縞状組織は炭酸塩鉱物の基質と上方に向かって枝分かれしたフィラメント状鉄水酸化物で構成されている.鉄質沈殿物から中性環境で生息する鉄酸化細菌や他の生育するために溶存酸素が必要な独立栄養化学合成細菌が検出された.おそらく,これらの微生物群集の競争により縞状組織が発達したと考えられる.

    奥々八九郎温泉の鉄質沈殿物にも縞状組織が認められ,鉄酸化細菌とシアノバクテリアが検出された.奥々八九郎温泉水には溶存酸素を全く含んでおらず,おそらく奥々八九郎温泉の鉄質沈殿物は,シアノバクテリアの光合成により発生した酸素を沈殿物表面で鉄酸化細菌が利用することにより,沈殿したと考えられる.
  • 山方 優子, 田中 祐樹, 田辺 信介, 板井 啓明, 平田 岳史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S2  鉄の地球微生物学と地球化学
    セッションID: 2C09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    鉄は多くの生物にとって必須元素であるが、鉄が生体内でどのように吸収・代謝されているのかは不明な点が多く、また海洋表層の鉄存在量も少ない(<10-7 wt%)ため、生体間での鉄循環(鉄バイオサイクル)に関しても制約条件は限定的である。陸上動物では、身体の部位ごとに鉄安定同位体比(δ56Fe/54Fe)の値が異なることが報告されている(Hotz et al., 2011; Walczyk and Blankenburg, 2005)が、海洋生物においては、鉄同位体比に関する報告例はマグロの筋肉の鉄同位体比に限られており(Walczyk and Blankenburg, 2002)生体内での鉄代謝に関して十分に議論できないため、本研究ではマグロ類に注目をし、海洋生物の鉄代謝や鉄のバイオサイクルに関する新たな知見を引き出す試みを行った。
G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
  • 佐藤 志彦, 末木 啓介, 笹 公和, 小野 貴大, 飯澤 勇信, 阿部 善也, 中井 泉, 足立 光司, 五十嵐 康人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    2011年3月に発生した福島第一原発事故では、大量の放射性物質が環境中に放出した。放出時における放射性物質の化学形態は、環境動態研究において重要な初期情報の1つであるが、その一形態として、放射性セシウムを含む粒子が確認されている。しかしながら福島事故では、炉心爆発・火災などの粒子状放射性物質が直接放出される可能性のある事象は報告されておらず、粒子の存在については多くが未解明である。本研究では福島事故における放射性粒子の実態を明らかにするため、第一原発から北西方向の半径20 km圏内の帰還困難区域において採取した土壌から放射性粒子を分離し、粒子の化学形態について分析を行った。
  • 山口 紀子, 藤原 英司, 井倉 将人, 浅野 眞希, 足立 光司, 小暮 敏博
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    福島県南相馬市の南部において、2013年産玄米から基準値を超える放射性Csが検出された。もみやイネの葉にスポット状に高放射能領域が存在することから、土壌中の放射性Csがイネに経根吸収されたのではなく、大気経由で輸送された放射性Csを含む粒子がイネ沈着したことが汚染の要因であると考えられた。そこで本研究では、基準超過のあった地点のイネ、双葉町および福島第一原子力発電所敷地内で採取した大気フィルターに捕捉された粒子を分析し、2013年に沈着した放射性セシウムを含む粒子との関連性を明らかにすることを目的とした。

    イメージングプレート(IP)およびSEMにより放射性Csが検出される粒子を同定し、形状および組成分析をおこなった。IPを感光させたイネの葉付着粒子は直径0.5μm、フィルター捕捉粒子は直径1~3μmの球状粒子であり、いずれの粒子からもCsが検出された。Csの他に、Si、Fe、Zn、Rb、Sn、Mo等が検出された。
  • 賞雅 朝子, サフー サラタ クマール, 中井 俊一, 新江 秀樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    福島第一原発事故由来の放射性物質のうち、ウランやプルトニウムなどのα線核種についての挙動を理解するため、マルチコレクター型ICP-MSを用いて、高精度なウラン同位体比測定を行った。

    MC-ICP-MSでの高精度分析には、ウランの分離が必須であるため、U-TEVA樹脂による2回の分離方法を採用し、鉄などの妨害元素の除去を行いながらウランを分離した。

     土壌中のグローバルフォールアウトによるウランと比較するため、福島第一原発事故以前の沖縄、神戸の土壌試料を測定した。福島第一原発付近(30km以内)の試料は、空間線量率が大きい試料を12試料測定し、235U/238U比および234U/238U比から土壌中の原発由来のウランの寄与を観察した。
  • 朝日 一成, 福士 圭介, 青井 裕介, 富原 聖一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    東北地方太平洋沖地震に起因する福島第一原子力発電所の事故により、原発周辺の広範囲の地域で放射性セシウム(Cs)による土壌汚染が深刻な問題となっている。原発周辺では、土壌中に普遍的に含まれている陽イオン交換能を有する粘土鉱物がCsの取り込み媒体である可能性が指摘されている。一方、溶液中の主要陽イオンが高濃度である場合、強固に保持されたCs+であっても他の陽イオンとの交換によってCs+が溶出する可能性が指摘される。主要陽イオンによる粘土鉱物からのCs+の溶出挙動の予測は、放射性Csの天然環境における拡散挙動や健康影響の評価に不可欠である。本研究では、福島第一原発周辺に分布する土壌の土壌中の粘土鉱物を用いて、主要陽イオン(Na+,K+,Mg2+,Ca2+,NH4+)添加による133Csと137Csの脱離挙動を系統的に検証すること目的とした。
  • 室田 健人, 斉藤 拓巳, 田野井 慶太朗, 寺井 隆幸
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    除染土壌の適切な処分には、Csの土壌中の長期挙動の理解が必要である。本研究では、Csとの接触時間を変えた雲母系粘土鉱物からの長期間のCsの脱離を調べることで、異なる収着状態にあるCsの脱離速度を評価した。CaおよびKで置換したイライト、バーミキュライト試料にCsを1日、4週間、8週間収着させた後、プルシアンブルーを含む液相中でCsを脱離させ、収着・脱離量の時間変化を求めた。収着においては、K型やK+Ca型の試料に比べCa型の試料の収着割合が大きかったが、収着時間の増加による収着割合の増加は小さかった。脱離においては、Ca型イライト以外の試料は、収着したCsの大部分が脱離開始12時間以内に脱離し、これらの試料においてCsのほとんどが親和性の低いサイトに収着していたことが明らかになった。一方、Ca型イライトは収着時間の増加に伴い初期の脱離量が減少し、その後もゆっくりとしたCsの脱離が見られた。
  • 山崎 信哉, 宇都宮 聡, 末木 啓介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    環境中に放出された放射性セシウムは土壌中の粘土鉱物に強く吸着することが明らかとなっている。これは土壌を構成している層状ケイ酸塩鉱物の層間またはフレイドエッジサイトと呼ばれるサイトに取り込まれ安定に吸着していると考えられている。一方で、粘土鉱物の一部(スメクタイトなど)はエチレングリコールなどの低分子量有機物を加えると、層間距離が広がることが分かっている。そこで本研究では、土壌試料にさまざまな有機物を加え、放射性セシウムの脱離量をガンマ線測定により定量し、土壌鉱物からの放射性セシウムの脱離に対する低分子量有機物の影響についてインターカレーションの観点から検討した。本研究の結果、一部のアミノ酸や直鎖アルキルアミンなどの有機物を加えると、天然土壌からの放射性セシウムの量が1%近く増加することが明らかとなった。これは、土壌中のスメクタイトへの有機物のインターカレーションにより層間が広がったことで放射性セシウムが脱離したためと考えられる。
  • 田中 万也, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    樹皮から吸収されたセシウムの化学形態を調べるために、コナラ及びコシアブラの幹から樹皮、辺材、心材をそれぞれ切り出した。切り出した試料にセシウムを吸着させ、Cs-L3吸収端EXAFSスペクトルの測定を行った。EXAFSスペクトルの解析結果は、樹皮、辺材、心材に吸着したセシウムが外圏型錯体として存在していることを示した。
  • 加藤 弘亮, 恩田 裕一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、福島県伊達郡川俣町山木屋地区のスギ林及び広葉樹混交林を対象として、福島第一原子力発電所事故から4年間の林内雨、樹幹流、落葉に伴う林床へのセシウム-137沈着量を観測するとともに、各林分における林内空間線量率の時間変化傾向に及ぼす影響について調査した。福島県伊達郡川俣町山木屋地区のスギ林及び広葉樹混交林を調査対象に選定した。スギからなる人工林2林分(31年生・15年生)と広葉樹混交林(コナラ及びアカマツ)において、樹冠通過雨、樹幹流、リターフォールに含まれる放射性セシウム濃度を測定し、森林樹冠から林床への移行量をモニタリングした。4年間の観測期間中に森林樹冠から林床に移行したセシウム137は、スギ壮齢林、スギ若齢林、広葉樹混交林でそれぞれ166 kBq/m2、174 kBq/m2、60 kBq/m2であった。これらの移行量は、原発事故後に大気から沈着した総量の38%、40%、13%にあたる。
  • 恩田 裕一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    福島原発事故により地表に降下した放射性物質の森林からの放射性物質の移行,水の移動に伴う,放射性物質の土壌水・地下水・渓流水・河川水への移行調査と,様々な土地利用での土壌区画からの土砂および放射性物質の河川への移行モニタリングを行った。

     集中調査地域は,阿武隈川水系口太川上流域の川俣町山木屋地区である。畑地,採草地,牧草地,およびスギ林を含む5 カ所の傾斜地と試験水田を選定し,区画内からの土砂・放射性核種の流出量の観測を行った。また,阿武隈川流域を中心に30 カ所の測定点において,浮遊砂を通じた放射性物質の移行量についてモニタリングを行っている。3 年の結果,侵食土砂のCs-137 濃度はあまり減少していない一方,水田からのCs-137 浮遊砂濃度には減少が見られた。河川を通じた浮遊砂中のCs-137 は減少を続けており,現在のところ2 重指数関数モデルにフィッティングされるような変化が見られていることがわかった。
  • Alex Malins, 佐久間 一幸, 操上 広志, 町田 昌彦, 北村 哲浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
  • 神林 翔太, 張 勁, 柴沼 成一郎, 成田 尚史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原子力発電所事故により飛散し,陸上に沈着した放射性セシウム(Cs)は水・物質循環に伴う移動で海洋へ移行するため,今後は海洋への移行予測が重要になる。水・物質循環の経路において,汽水域は河川水と海水の混合領域であり,塩分の急激な変化に伴う吸着・溶脱等により化学物質の濃度が大きく変化するため,海洋への移行を考える上で汽水域での放射性Csの動態把握は重要である。しかし,先行研究では大河川や沿岸域での動態把握に留まり,汽水域での挙動は明らかにされていない。本研究では,汽水域での放射性Csの動態を把握し,「河川-汽水-海洋」の系における移行挙動を明らかにするため,幅広い塩分変動をもつ海跡湖「松川浦」において現場観測を行った。
  • 松中 哲也, 笹 公和, 末木 啓介, 恩田 裕一, 石丸 隆, 谷口 圭輔, 脇山 義史, 高橋 努, 松村 万寿美, 松崎 浩之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     本研究は、原発事故由来129Iの移行挙動に関して、1)新田川における粒子状129Iの供給源とフラックス、2)新田川河口沖における海洋堆積物中の129I分布、および3)海水、海洋生物中の129I分布について明らかにする事を目的とした。

     新田川下流における懸濁物質の129I濃度は 0.92-4.1 mBq kg-1であり、懸濁物質量と相関性が認められた。2013年9-10月の粒子状129Iフラックスは7.6 - 9.0 kBq month-1であった。新田川沖堆積物中の129I濃度は5.8-8.4 μBq kg-1であり、河川の懸濁物質より2~3桁低かった。2014年7月における海水中の溶存態129Iは0.12-2.2 μBq L-1であった。シロメバルの129Iは42-48 μBq kg-1であり、海水よりも20-400倍高かった。事故直後における海水の高い129I濃度の保存による可能性が考えられた。
  • 高畑 直人, 熊本 雄一郎, 山田 正俊, 佐野 有司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 2D13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原発の事故により、トリチウムがどのくらい海洋に放出され、どのように広がったかはよくわかっていない。本研究では原発事故後に東北沖太平洋で採取した表層海水のトリチウム濃度を分析することで、トリチウムの海洋での分布を明らかにし福島第一原発からの直接漏洩量を見積もることを目的とした。分析した福島沖海水のトリチウム濃度は0.1~0.3Bq/Lであり、セシウム-137濃度との間に正の相関が見られた。この相関からトリチウムの海洋への直接漏洩量を見積もることができるかもしれない。
G4  鉱物境界面の地球化学,水‒岩石相互作用
  • 徳永 紘平, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、バライト中に取り込まれた微量元素の組成および化学種を併用することで、バライト1粒子から過去の詳細な地球化学的環境の復元を行う水質計の開発と利用を目的とする。鉱物中の微量元素の価数比を用いてEhを復元するためには、それぞれの価数で鉱物への分配挙動が類似し、同様の分配比を持つことが必要となる。本研究では、取り込まれる微量元素としてセレンとヒ素に着目して実験を行い、溶液中の価数比(セレン酸(Se(VI))/亜セレン酸(Se(IV))比と(亜ヒ酸(As(III))/ヒ酸(As(V)比))を反映してバライト中にそれぞれ取りこまれるかどうかの検証を行う。加えて、これらのオキソアニオンのバライトへの取り込みは、溶存化学種のプロトン解離度(=pH)により影響を受ける。そのため、pHに応じたバライト中のAsとSeの価数と濃度の2つを特定することで、バライトが沈殿した環境のpHを推定するpH計としての利用可能性の評価を行う。
  • 高橋 聡, 山崎 慎一, 小川 泰正, 木村 和彦, 吉田 武義, 土屋 範芳, 中田 亮一, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 2E02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    約2億5千万年前の古生代ペルム紀のおわりに、地球生命史上最大の大量絶滅が起き、その後の生命環境の回復には500万年以上の期間を要したことが知られている。この事変が起きた当時には、高一次生産を背景に大規模な貧酸素海洋が発達していたと推定されている。そのような海洋環境変動史の研究例の多くが浅海性炭酸塩岩層の研究からなされてきたなかで、日本に残る遠洋域深海性の堆積岩層はより広域の地球環境変動史を知る上で重要な研究資料として注目されている。本発表では、世界で最も連続保存性が良い深海相ペルム紀-三畳紀境界層を用いた地球化学分析の成果を報告する。研究成果は、大量絶滅事変と海洋環境変動の同時性と因果関係を議論することに加えて、大規模な海洋環境変動にともなう微量元素の挙動を理解する上でも有意義な情報を提供する。
  • 鈴木 庸平
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    大陸地殻に花崗岩は広く分布し、花崗岩の亀裂を流動する地下水は、冷却過程での熱水活動や海進・海退等の影響をうけて変遷する。最終氷期以降の氷河融解と隆起により、淡水と海水が深部まで浸透した北欧の花崗岩体では、還元的地下水中でウランが高濃度で検出され、その要因は明らかでない。日本最大級のウラン鉱床が東濃地域で約1000万年前に形成したが、花崗岩中で大規模にウランが移動した要因についても明らかではない。東濃地域は1800から1500万年前にかけて、水深が200メートルに至る海進を経験し、花崗岩の亀裂中で当時の海水から沈殿した炭酸カルシウムが充填鉱物として保存される。地下水中でのウラン濃度の変動を復元することを目的とし、瑞浪超深地層研究所の深度200 mの掘削孔から、炭酸塩脈が発達する花崗岩コア試料を採取し、微量な炭素酸素安定同位体測定とナノスケールでの鉱物解析を行った結果について発表する。
  • 丹羽 萌子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     岩石が風化し溶出した成分と河川水や地下水中の成分には密接な関係があると考えられる。本研究では花崗岩と花崗岩地域の渓流水の水質との関係解明を念頭に置き、花崗岩と水の反応実験を行い、岩石・鉱物からの元素の溶出過程の検討を行った。

    実験では粉砕した花崗岩と造岩鉱物をそれぞれ装置内で水と反応させた。岩石や鉱物から溶出した成分を分析し、アルカリ度や各イオン溶出の経時変化から反応初期で変化が大きく、約2週間経過するとほぼ一定になることが分かった。また、元素の溶出は黒雲母からが最も多かったことから、有色鉱物の風化に対する抵抗度の低さが確かめられた。各鉱物からはCa2+の溶出が最も多くなった。FとCa2+の溶出量の関係から、蛍石からのCa2+の溶出が考えられる。また方解石の存在も確認できたことから、Ca2+の溶出は斜長石以外にも蛍石と方解石からである可能性が示唆された。
  • 大西 浩之, 福士 圭介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    これまで地球初期環境を模擬した多くのアミノ酸重合実験が行われてきた。先行研究では、鉱物による重合化促進効果が確認されているが、鉱物のどのような要因によりアミノ酸の重合化が促進し、重合化挙動に違いをもたらすのかは未だに分かっていない (e.g. Greiner et al., 2014)。しかし、Bujdak and Rode, (1997)をはじめとするいくつかの先行研究で鉱物表面にアミノ酸が吸着することでアミノ酸の重合反応性が増加する可能性が示唆されている。鉱物を媒介させた際にアミノ酸の重合化が促進する理由を明らかにする上で、鉱物表面におけるアミノ酸の状態を把握することは重要であると考えられる。先行研究でも鉱物表面へのアミノ酸の吸着実験が行われている。しかしながら、吸着挙動を支配している表面錯体構造の理解には至っていない。そこで本研究では、様々な鉱物表面でのグリシンの表面錯体生成反応を表面錯体モデリングにより推測し、鉱物表面でグリシンの重合化が促進する理由を考察にすることを目的とした。
  • 田中 雅人, 有賀 大輔, 柏原 輝彦, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    6族元素であるクロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)は酸化還元状態に敏感であり、多くの安定同位体を持つことから古環境を知る上で重要な微量元素である。特にMoは鉱物や酸化還元状態によって様々な同位体分別を示し、過去の大気や海洋の環境を知るための指標として注目されている。また、モリブデン酸の同位体分別は、X線吸収端微細構造(XAFS)法を用いた解析から吸着時の対称性の変化(4面体構造から8面体構造への変化)により生じると報告されている。このように吸着構造と同位体分別は密接に関係しているが、十分に理解されてはいない。そこで、本研究では、密度汎関数法(DFT)による量子化学計算とXAFS法で得られた吸着構造の情報を用いて、6族元素の鉱物への吸着に伴う同位体分別についての理解を試みた。
  • 元川 竜平, 遠藤 仁, 横山 信吾, 西辻 祥太郎, 矢板 毅, 小林 徹, 鈴木 伸一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 2E07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原子力発電所の事故により環境中へ放出された放射性セシウムが、福島県を中心に広範な地域に対して環境汚染をもたらした。放射性セシウムは、水を介して拡散し、土壌に吸着しているが、その中でも特に風化黒雲母・バーミキュライトといった特定の粘土鉱物に濃縮され、強くとり込まれることが明らかにされている。そこで我々は、X線小角散乱(SAXS)法を用いて、バーミキュライト・風化黒雲母/セシウム懸濁液の構造解析を行い、セシウムイオンの吸着に伴う粘土鉱物の構造変化を明らかにした。
  • 牛山 智樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    鉛を含む土壌中の重金属元素の多くは鉄酸化物に選択的・特異的に吸着することが知られている(Dzombak and Morel, 1990)。鉄酸化物は酸化的な環境では安定であり、還元条件下では存在しない。鉄酸化物が存在しない還元的な環境ではAl, Siからなる酸化物が主な吸着体になると推測される。特にAl、Siからなる微結晶アルミニウムケイ酸塩(NAS) は土壌中に多く存在し、比表面積も大きいため主な吸着体として考えられる。土壌全体において鉛の吸着挙動を理解し、予測するには鉄酸化物だけではなく、NASなど他の土壌鉱物のもつ鉛の吸着挙動を様々な水質条件において理解する必要がある。
  • 伊藤 茜, 大竹 翼, 安楽 総太郎, 申 基澈, Kamar Shah Ariffin, Fei Yee Yeoh, 佐藤 努
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    火成起源や漂砂型のレアアース鉱床の開発においては、鉱石鉱物であるモナザイトやゼノタイムなどが放射性元素であるThやUを含み、これらが生産過程、特に製錬過程において濃集するため、放射性物質の環境への漏洩が懸念されている。そのため、レアアース鉱床の開発には適切な環境影響評価が重要である。本研究では、かつて錫尾鉱から回収される重鉱物からレアアースが製錬され、また現在もチタン鉄鉱などのプロセシングが行われているマレーシア・イポー市周辺地域において環境への影響を評価するために、鉄・鉛安定同位体比やREEパターンなどの地球化学的指標を用いて汚染物質の起源を特定し、汚染河川中でのThやUの挙動について明らかにすることを目的とした。鉄・鉛同位体分析の結果およびREEパターンの変化より、汚染源は周辺の重鉱物プロセシングの影響であることが明らかとなった。また、地球化学モデリングの結果より、汚染河川中でThはpHの上昇に伴う沈殿形成、Uは鉄水酸化物への吸着によって河川水中から除去されている事が示唆された。
  • 斉藤 拓巳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G4  鉱物境界面の地球化学,水?岩石相互作用
    セッションID: 2E10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    有機配位子存在下における難溶解性酸化物の溶解挙動を評価した.配位子による難溶解性酸化物の溶解促進の程度は配位子の吸着量や配位子と酸化物を構成する金属イオンとの錯生成の安定度定数には依存せず,表面における配位子の吸着構造を反映したものであることが示唆された.発表では,フロースルー型全反射赤外分光測定を用いた吸着配位子のin-situ測定による吸着構造の推定の結果と合わせて,配位子による溶解促進のメカニズムを考察する.
受賞講演
ポスター発表(第二日目)
S2  鉄の地球微生物学と地球化学
  • 牧田 寛子, 鈴木 優美, 関野 優也, 田中 英美子, 光延 聖, 大橋 優莉, 高村 岳樹, 高井 研
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2  鉄の地球微生物学と地球化学
    セッションID: 2P01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    深海熱水活動域には、熱水噴出孔から供給される化学物質と海水との混合によって生じる化学的な勾配によって多様な微生物生態系が育まれている。活発な熱水活動域に見られるチムニーには鉄や硫黄が主要な元素として含まれており、それら固体状の鉄や硫黄は微生物のエネルギー源に利用されていると考えられる。既往の研究において、熱水活動が停止した場所で採取されたチムニー表面の微生物叢は、活発なチムニーの表面に生息する微生物叢とは異なることが報告されており(Suzuki et al., 2003)、検出されたそれら微生物群のエネルギー源は固体状の鉄である可能性がある。本研究では、パイライト(FeS2)をチムニーにみたて、深海の熱水活動域周辺と非熱水活動域の両者において、どのような微生物群が固体状の鉄をエネルギー源として利用できるのか、また熱水の存在がエネルギー源として固体状の鉄を利用する微生物群にどのような影響をもたらすのかを明らかにすることを目的とした。
  • 大橋 優莉, 光延 聖, 坂田 昌弘, 鈴木 優美, 牧田 寛子, 野崎 達生, 川口 慎介
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2  鉄の地球微生物学と地球化学
    セッションID: 2P02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    岩石圏の生態系における一次生産者は、無機物質をエネルギー源とする化学合成独立栄養微生物である。これらの微生物群がエネルギー獲得に用いる反応の1つとして、海洋地殻を構成する玄武岩等に含まれる2価鉄酸化反応がある。本研究では、深海底にて一定期間ごとに、2価鉄を含む基質(玄武岩、パイライト)を用いた微生物の現場培養実験を実施し、鉄酸化微生物の生態および生物的な鉄酸化プロセスを直接的に調べることを試みた。講演では、放射光源X線分析による分析結果に基づいて、微生物による固体状2価鉄の酸化機構やその地殻内生命圏での重要性について議論する。
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