岩手医科大学歯学雑誌
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42 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 髙橋 晋平, 下山 佑, 石河 太知, 佐々木 大輔, 木村 重信, 八重柏 隆
    2017 年 42 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2017/06/07
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー

    ‘Red complex species’ をはじめとする歯周病原細菌が歯周炎患者の病巣歯肉組織内に侵入することは明らかにされているが, その詳細な侵入の分子メカニズムについては未だ不明な点が残されている. 本研究では歯周病原細菌の歯肉上皮バリア突破機構について, 細胞内を通過するtranscellularルートと, 細胞間隙を通過する paracellular ルートから検討を行った. 株化ヒト歯肉上皮細胞 (Ca9-22) を上部チャンバーに培養した double-chamber culture 法を用い, Porphyromonas gingivalis, Tannerella forsythia, Treponema denticola およびAggregatibacter actinomycetemcomitans を添加した. 歯周病原細菌の上皮バリア突破能は菌種特異的 real-time PCR 法 (q-PCR) により下部チャンバーへ通過した菌量から検討した. 歯周病原細菌による細胞間結合の破壊能については FITC-dextran の通過量から検討を行った. また, 細胞層に付着, 侵入した歯周病原細菌数についても q-PCR から検討した. その結果, P. gingivalis は, 培養6時間で transcellular, paracellular の両ルートを通じて上皮バリアを突破することが明らかとなった. また, T. forsythia, A. actinomycetemcomitans P. gingivalis 同様に上皮バリア突破能を有していることが明らかとなった. しかし, これら2菌種の上皮バリア突破経路はtranscellular ルートのみであることが示唆された. これらの結果から,複数の歯周病原細菌は歯肉上皮バリアを突破するが,その侵入経路は菌種により異なることが強く示唆された.

  • 小山田 勇太郎, 金村 清孝, 田邉 憲昌
    2017 年 42 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2017/06/07
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,上部構造破損の破損と終日の咀嚼筋筋活動について携帯型筋電計を使用して,その関連を明らかにすることである.

    岩手医科大学附属病院歯科医療センター口腔インプラント科を受診している患者で,上部構造装着後に前装部材料の破損が認められた10名を被験者とした.今回,上部構造の破損によって Catastrophic failure (CF 群)と Control (CO 群)の2群に分けて各々の筋活動動態の解析を行った.実験使用した携帯型筋電計は本体と電極で構成されている.筋電計は終日(約24 時間)咬筋に装着し,日常生活を阻害することなく測定が可能である.得られたデータはパーソナルコンピュータ上で分析を行い,行動記録を対応させた.ブラキシズムの識別閾値は過去の研究から値を設定した.

    全被験者に閾値を越えたブラキシズム様イベントが観察された. CF 群はCO 群と比較し覚醒時と睡眠時の非機能運動時における筋活動量が有意に高い値を示した(p<0.05 Mann-Whitney U-test).また,機能運動時における筋活動量に有意差はみとめられなかった.

    本研究の結果から,インプラント上部構造の破損と筋活動量に関連があることが示唆された.

  • 深澤 翔太
    2017 年 42 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2017/06/07
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー

    口腔内スキャナーならびにデスクトップ型スキャナーを使用して,インプラントアバットメント間における距離の真度,精度の比較検討を行い,口腔内スキャナーの精度を評価した.

    接触式三次元測定機により基準模型の計測を行った.続いて,口腔内スキャナーとデスクトップ型スキャナーを用いて基準模型の測定を行った.得られたデータを基に,距離における真度と精度の比較解析を行った.

    真度に関して,True Definition Scanner (TDS),Carestream3500 (CS)はTRIOS3 (TR3) とKaVo (KA) との間で有意な差を認めた.精度に関しては,CS と全てのスキャナーとの間で有意な差を認めた.基準模型に関して,CS によって測定された精度は,他の口腔内スキャナーによって測定されたものと比較して,有意に大きかった.CS を除く口腔内スキャナーの誤差範囲は非常に小さかった.

    本研究から,口腔内スキャナーによる光学印象法は,複数歯のインプラント治療への臨床応用が可能であることが示唆された.

  • 飯島 伸, 石橋 修, 原 康文, 世良 耕一郎, 武田 泰典, 杉山 芳樹
    2017 年 42 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2017/06/07
    公開日: 2017/06/27
    ジャーナル フリー

    口腔扁平苔癬は口腔外科臨床で遭遇する機会が多い粘膜疾患である。疾患の治療には原因を除去することが重要である。しかし、口腔扁平苔癬は原因が明確でないため、治療が難渋することがある。 われわれは、これまでに挙げられている口腔扁平苔癬の病因説のうち、関与が有力とされている金属アレルギーに注目した。アレルギーの発症には、生体が直接的に抗原としての金属を取り込む過程が必要である。そこで、口腔扁平苔癬に罹患した粘膜組織の含有元素をPIXE 法を用いて分析した。そしてこの結果を、これまでにわれわれが報告した健常者口腔粘膜組織の分析結果と比較検討を行い、口腔扁平苔癬の原因金属を特定することを目的とした。

    対象は口腔扁平苔癬に罹患した44 名で男性16 名、女性28 名で平均年齢は62.9 歳であった。対照は健常者口腔粘膜組織の100 名で男性48 名、女性52 名で平均年齢は31.6 歳であった。

    その結果、病変部粘膜から検出された微量元素は、必須元素であるSi, Cu, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Zn, Se, Mo, Sn の12 種類で、超微量元素はGe, As, Br, Rb, Pd の5 種類であった。また、汚染元素はAl, Ti, Ga, Sr, Zr, Nb, Ag, Sb, Au, Hg, Pb, Y の12 種類が検出された。これは、健常者群の粘膜組織から検出されたものと同様であった。 検出率、含有量の比較検討では、本来生体には存在しないはずの汚染元素が、OLP 群の粘膜組織は健常者群の粘膜組織に比べて検出率は低いが含有量では多い傾向を示した。

    同一個体から採取した血清、粘膜組織、唾液から検出された元素の種類は三者とも同じであった。 汚染元素が粘膜組織に蓄積し、粘膜上皮の脱落とともに排泄されている可能性も考えられた。

岩手医科大学歯学会第82回例会抄録
特別講演
優秀論文賞受賞講演
一般演題
大学院歯学研究科第3学年研究発表会
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