本研究の目的は, 在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy : HOT)患者のQuality of Life (QOL)の構造を明確にし, 効果的な看護介入のあり方を検討することである. Maslow A. H. のニード論を概念枠組とし, QOLを, 患者の「療養への満足感」と定義し, 指標にはPGCモラールスケールを用いた. 対象は, 関東地区の1区役所と2病院で管理している慢性呼吸不全患者の内, 成人HOT患者32名(内, 女性14名, 平均年齢67.4歳, 平均HOT期間2年4ヶ月)と, その家族である. 資料の収集は, 患者及び家族に対する質問紙調査, 面接調査, 観察法を家庭訪問によって行った. 分析は, 量的, 質的方法で行った. その結果, 以下の知見を得た.
(1) 対象の疾患やHOTの状況に,施設差はなかった. (2)質問紙調査の結果, PGCモラール得点の平均は10.6点で, 健康老人と同じ位満足感が高かった. その他の指標には施設差がみられなかったにも拘らず, 区役所の対象に比べ, 2病院の対象では満足感が有意に高かった. これら2病院では, 保健婦が, 患者の退院前から移行期, 安定期へと継続的かつタイムリーに援助しており, この援助は効果のある事が示された. (3) パス解析の結果, HOT患者の満足感には, 患者の身体的要因(自覚症状が少ない・日常生活動作の自立)が, 心理的要因(自尊心が高い・不安が少ない)や, 社会的要因(家庭内役割の有無・仕事の継続の有無)を介して影響する事, その際, 患者支援ネットワーク(情緒的支援・専門職からの支援)も関与していることが示された. (4) 事例による質的分析においても上記の関係が検証された. (5) 今後, 患者の活動範囲拡大のための支援・情報ネットワーク作りが必要であることが示唆された.
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