日本看護科学会誌
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26 巻, 3 号
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原著
  • 金子 眞理子, 眞嶋 朋子, 小泉 晋一, 岡本 高宏, 佐藤 紀子
    原稿種別: 原著
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_3-3_12
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,がんに病む対象者の苦悩を測定する40項目の自記式質問紙「がん患者苦悩尺度」を洗練し,その信頼性と妥当性を検討することである.調査は2000年9~12月,167名を対象に行った.対象群の内訳は健康者群100名,がん対象群67名であった.健康者群の有効回答数は90名(90%)であった.がん対象群について,有効回答数は59名(88.1%)であった.なお,内的整合性,構成概念妥当性を検討するうえで,がん患者苦悩尺度の開発の際のデータの一部(N=242)をあわせた301名の分析を行った.がん対象群について因子分析(主成分分析,Varimax回転)を行い,因子負荷量が0.4以下の項目等を吟味し,最終的に32項目に絞ったものをSuffering調査票とした.本測定用具の信頼性について,テスト-再テストの結果,r=0.80(p<0.01)で安定性が確認された(N=28).クロンバックのα係数は0.92であり,がん患者苦悩尺度に比べ内的整合性が高まった(N=301).基準関連妥当性について,SDSとの相関係数はr=0.33(p<0.05)であり,低い相関が認められた(N=57).MACにおけるFighting Spiritsとの相関係数はr=−0.33(p<0.05)で低い負の相関が認められ.Helpless/Hopelessとはr=0.65(p<0.01)で高い相関が認められた.
  • 五十嵐 由希子, 中野 真寿美, 中谷 隆, 森山 美知子
    原稿種別: 原著
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_13-3_21
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本版健康関連ハーディネス尺度(JHRHS)の作成である.ハーディネスは「ストレスフルな生活上の出来事において,ストレス耐性資源として機能する性格特性」と定義され,コミットメント,コントロール,チャレンジの3要素から構成される.この概念をもとにPollockが開発したHealth-related Hardiness Scale(HRHS)は,今日まで医療研究者に広く使用されている.HRHSは研究チームにより日本語に翻訳され,バック・トランスレーションを経て本調査が行われた(N=655).因子分析の結果,原版と同じ2因子にまとまる14項目が選定され,因子妥当性が確認された.JHRHSと3心理尺度との関連では,自己効力感,日本版Health Locus of Control尺度のInternal,Family,Professional,情動焦点型コーピングとの中程度の有意な正の相関を認め,構成概念妥当性が確認された.JHRHS総得点と下位尺度のCronbach's α係数は0.71~0.87であり,内的整合性が確認された.最後にダミー項目3項目を追加し,17項目のJHRHSが完成した.結論として,17項目から成り2因子にまとまるJHRHSが作成され,妥当性と信頼性が確認された.
  • 井沢 知子
    原稿種別: 原著
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_22-3_31
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    乳がん術後に起きる上肢のリンパ浮腫に対して,Complete Decongestive Therapy(以下よりCDTとする)という複合的な理学療法の内容を基に,IASMモデルを概念枠組みとしたナーシングリンパドレナージプログラムを開発した.本研究では,リンパ浮腫症例5名に対して,本プログラムに沿ってリンパ浮腫のケアに関する「知識・技術・看護サポート」を約3週間提供した.プログラムの介入前後に,浮腫減少率,QOL尺度,上肢のADL評価尺度,および患者のセルフケア能力を比較した結果,すべての事例で浮腫の減少がみられ,各尺度は介入後に改善が認められた.セルフケア能力については,2事例が部分代償レベル,3事例が支持・教育レベルであった.セルフケア能力の改善に関しては,IASMに基づいて提供したことが効果的であったと推察された.以上の結果から,本開発プログラムは,CDTの提供だけでなく,看護の要素を組み込んだことによって患者の症状マネジメント能力を高めたことが強く示唆された.
研究報告
  • ──共分散構造分析を用いた検討
    酒井 淳子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_32-3_40
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    特定機能病院に勤務する女性看護師790名を対象として,職場のサポートが看護師の心理的well-beingに与える直接的間接的影響について,デモグラフィックデータ要因を加えて,共分散構造分析を用いて検討した.その結果,看護師の上司,同期,後輩からのサポートの知覚は個人の能力を発揮する機会に影響し,能力発揮の機会が多いことは心理的well-beingの高さに影響することが示された.サポートの直接的間接的影響の仕方は心理的well-beingの因子によって異なっていた.これらの結果から,看護師が自分の能力を発揮していきいきと働くための支援について,主に看護管理の視点から考察された.
  • ──概念分析
    鈴木 良美
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_41-3_48
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    「コミュニティヘルスにおける協働(Collaboration in Community Health)」概念が日本の地域看護学分野においてどのように活用できるかを検討することを目的として概念分析を行った.分析方法としてRodgersの概念分析のアプローチを用い,看護学,公衆衛生学,社会学,心理学分野の文献を検索して収集し,定義と属性,先行因子,帰結,関連する概念を質的に分析した.その結果,本概念の定義は見当たらず,2つの属性,4つの先行因子,4つの帰結,1つの関連概念が抽出された.分析結果から本概念を,「ハイリスク集団の健康増進,専門職の実践・教育・研究の向上,参加者・組織やコミュニティのエンパワメントをもたらすために,異なる立場の人々・組織が参加し,共通の企画や業務に対して,互いの関係を形成し発展させながら,ともに活動しあい調整しあうプロセスもしくは戦略である」と定義した.本概念は日本の地域看護学分野において,日本独自の状況的背景を考慮したうえで,ハイリスク集団を含む住民の健康増進,専門職の実践・教育・研究の向上,参加者・組織やコミュニティのエンパワメントをもたらすためのプロセスや戦略として活用可能であると考える.
  • 長島 緑, 飯島 節
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_49-3_57
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,機能性尿失禁リハビリテーションプログラム開発の基礎的資料を得るために,従来の看護計画の構造とその問題点を明らかにすることである.対象は,脳損傷後に機能性尿失禁をきたしリハビリテーション実施中の患者146名に実施された延べ783件の看護計画である.Mayringに従って説明的内容分析,要約的内容分析,構造化内容分析を行った.また,実施困難だった看護計画の問題を抽出し,原因別に分類した.
    その結果,従来の看護計画は,「脳損傷後の自主的な排尿行動が行えるための精神的,身体的環境の調整介入」,「脳損傷後の新しい排尿動作スキル獲得のための介入」,「脳損傷後の特異的な障害から起こる排尿の問題に対する代替的な介入」の3領域からなり,それぞれ4,1,4の計9カテゴリーによって構成されていた.一方,看護計画を困難にする問題点は5カテゴリーに分類された.以上の結果を取り入れることにより,看護計画をより効果的にできる可能性が示唆された.
  • ──介護する配偶者の内的心情を中心に
    高橋(松鵜) 甲枝, 井上 範江, 児玉 有子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_58-3_66
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,高齢者夫婦二人暮らしの介護がどのように継続されているかについて示唆を得るため,介護継続の意思を支える要素と妨げる要素の二つの側面から介護する配偶者の内的心情を探求した.その結果,介護継続の意思を支える要素は,『やりがい』,『被介護者への愛着』,『慈愛の気持ち』,『献身的な思い』,『被介護者への恩義』,『安心感』,『気晴らしがあること』,『負担に思わないこと』の8つのカテゴリーが抽出された.『被介護者への愛着』は『慈愛の気持ち』とともに『献身的な思い』という自己犠牲の感情を支えていると考えられ,『やりがい』は介護継続の意思を直接的に支えていると考えられた.一方,介護継続の意思を妨げる要素は,『いらだたしさ』,『閉塞感』,『不安感』,『諦めの気持ち』,『孤独感』,『周囲への気兼ね』の6つのカテゴリーが抽出された.『いらだたしさ』は直接的に介護継続の意思を妨げる要素だと考えられた.介護者は,夫婦二人暮らしの中で,『諦めの気持ち』から生じたやらざるを得ない気持ちと『献身的な思い』とのせめぎあいの中で介護を行っていることが推察された.看護職は,介護者自身が介護の効果を確認できるように関わり,自己犠牲の思いにつながる負担を軽減することの必要性が示唆された.
  • 船越 明子, 宮本 有紀, 萱間 真美
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 3 号 p. 3_67-3_76
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    訪問看護ステーションにおいて,精神科訪問看護を実施するうえで,訪問スタッフの抱える困難に対する管理者の認識,および,その影響要因を明らかにすることを目的として,訪問看護ステーションの管理者10名に半構造化面接を実施し,Grounded Theory Approachにおける継続的比較分析法を用い分析した.その結果,管理者が訪問スタッフにとって困難な出来事だと捉える10項目の訪問スタッフが経験する具体的困難状況が抽出された.管理者はこれら訪問スタッフが経験する具体的困難状況を,それぞれ《援助関係の構築技術に関する問題》《精神科訪問看護の臨床技術に対する情緒的問題》《地域の継続看護の実践に関する問題》《訪問看護の継続の危機》として認識していた.また,訪問スタッフの困難に関する管理者の認識は,利用者と看護師の関係性と訪問看護開始からの時間的な経過に影響を受けていた.精神科訪問看護を実施するうえでの訪問スタッフの困難の特徴に沿ったサポートの提供が重要である.
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