日本看護科学会誌
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26 巻, 1 号
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原著
  • 松尾 ひとみ
    原稿種別: 原著
    2006 年 26 巻 1 号 p. 1_3-1_12
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,身体の回復過程を体験した学童が自分の病状を「だいじょうぶ」ととらえる構造を明らかにする目的で,グランデッドセオリーを用いて行った.結果は,子どもが「だいじょうぶ」ととらえるようになっていくプロセスの構造が明らかとなり,4つのコアカテゴリー『何をされるんだろう』,『自分を守るコツをつかむ』,『身体と仲良し』,『再チャレンジ』からなるプロセスと,そのプロセスに絡む1つのカテゴリー『大人の力も必要』が見出された.このプロセスは,子どもが日常生活から逸脱した体験に脅威を感じるが,やがて苦痛体験の蓄積から苦痛のパターンに気づき,パターンを基に独自の解釈や予測を行うようになり,戦略を見出し,身体の違和感も日常感覚に取り込めるようになる.しかし,克服していない新たな課題が発生した時は,コントロール力をいったん失い再構成するという段階を踏む構造があった.そして,この構造より,構造に内包する子どもの「だいじょうぶ」を抽出し,定義した.
  • ―新生自己の創出―
    松田 光信, 八木 彌生
    原稿種別: 原著
    2006 年 26 巻 1 号 p. 1_13-1_22
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,悪性リンパ腫と診断され自己末梢血幹細胞移植を受けたAさんの生活史を記述し,その中から経験の意味を解釈することであった.
    本研究は,Merleau-Pontyの身体論を理論的前提とし,データ収集および分析にはライフヒストリー法を用いた.
    研究方法は,①Aさんが病を克服する過程について聞き取りを行い,②語られた内容に基づいて逐語録を作成し,③逐語録に基づいてライフヒストリーを構成した.
    研究者は,面接の際にカウンセラーとしての態度をとり,病の経験を理解することを目指した.
    結果,Aさんにとっての病の経験に関する中心的なテーマは,«新生自己の創出»と解釈できた.この中心的なテーマは,3つの時期およびサブテーマによって構成されていた.
    看護実践への示唆としては,患者に対する精神的ケア,家族の緊張感や負担感を軽減させるための精神的ケア,そして患者の苦悩に寄り添う看護ケアを開発することが重要だと考える.さらに,患者が病の肯定的な意味を見出したり,前向きに生きるために長期にわたる援助が必要だと考える.
  • 森下 晶代, 津田 紀子, 石川 雄一, 矢田 真美子
    原稿種別: 原著
    2006 年 26 巻 1 号 p. 1_23-1_33
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,心筋症患者のパワーレスネス(結果に対して自分自身の行動が重要な影響を与えないという知覚.現実の状況や直後に起こる出来事をコントロールできないという思い込み)について検討することである.研究は質的帰納的研究デザインとし,研究参加者は男性26名,女性4名の計30名,平均年齢54.4±2.06(SE)歳であった.参加者への面接は半構成的面接とし,面接内容はKrippendorffの内容分析の方法を参考にして分析を行った.分析の結果,心筋症患者のパワーレスネスの感覚は【先行き不明の困惑】【十字架を背負う自覚】【災難にみまわれる感覚】【見込みのない願い】【命が消えてゆく感覚】という5つのカテゴリーに分類された.参加者は心筋症の診断を受けたあと,徐々に病気を受け止めていく一方で“本当に病気なのか? 自分はどうなっていくのか?”という疑問を抱きつつ病気を自覚していく.病気であること,そして病気による災難を意識し,周囲に及ぼす影響に対して罪の意識をもち自分を責めることさえする.参加者は,見込みのない将来に対して“生きたい,助かりたい”という叶わぬ願望をもちながらも自らの命のはかなさを認識していた.これらのカテゴリーに表された参加者の感覚は“自分の力だけではどうにもならない”という参加者自身の力量不足,つまり自身の力や生命に対して調整することが困難だという感覚であることが確認された.今後はパワーレスネスの感覚を抱きながらも日常生活を送っている患者の対処行動を明らかにして,心筋症患者のパワーレスネスとコーピングの全体構造を検討することにより,患者への更なる看護の方向性を見出していく必要があると考える.
研究報告
  • 佐々木 真紀子, 針生 亨
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 1 号 p. 1_34-1_41
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,看護師の職業的アイデンティティを測定する尺度(Professional Identity Scale for Nurses: 以下PISN)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである.PISNはErikson E.H.のアイデンティティの概念をもとに「斉一性」「連続性」「自己信頼」「自尊感情」「適応感」の5つを下位概念とする22項目から作成した.調査はA県内に勤務する看護師252名を対象として行った.PISNの回答形式は5段階評定とし得点化した.その結果,Cronbachのαは0.84,主因子分析では20項目が第1因子に所属し,尺度の信頼性と一次元性が確認された.また既存の尺度であるRasmussenの自己同一性尺度,Self-Esteem Scale,適応度意識とは有意に正の相関が確認された.対象者の背景では,役職にあるものがないものよりPISN得点が高い傾向にあり,職業的アイデンティティに関する先行研究と同様の傾向を示した.これらのことからPISNの内容妥当性が一部確認された.
  • ―造血幹細胞移植事例を通して―
    野村 佳代
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 1 号 p. 1_42-1_50
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    ハイリスク治療における子どもの権利の尊重や治療参加への促しは重要であるが,子どもの認知能力の限界とともに親の関わりが問題となる.そこで造血幹細胞移植の意思決定への子どもの参加を巡る親の関わりの要素と過程を探求する目的で,これから移植を受ける子どもの親を対象に質的帰納的なプロスペクティブスタディを実施した.
    その結果,親は「移植への親の踏み切り」に基づき,子どもの治療受け入れの必要性を考え,「子どもの意思決定に対する親の見解」を見出し,「治療受け入れに向けた子どもへの働きかけ-子どもの受け入れへの促し,受け入れの確かめ」を繰り返していた.この過程に「子どもの見極め-これまでの姿,子どもの理解と決断,促しへの子どもの反応の予測」と「親の振り返り-移植の受けとめ,親としての役割意識,親の対応力の予想」が影響していた.これらは『子どものハイリスク治療受け入れに向けた親の関わり』を意味していた.
第25回日本看護科学学会学術集会
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