本研究の目的は,悪性リンパ腫と診断され自己末梢血幹細胞移植を受けたAさんの生活史を記述し,その中から経験の意味を解釈することであった.
本研究は,Merleau-Pontyの身体論を理論的前提とし,データ収集および分析にはライフヒストリー法を用いた.
研究方法は,①Aさんが病を克服する過程について聞き取りを行い,②語られた内容に基づいて逐語録を作成し,③逐語録に基づいてライフヒストリーを構成した.
研究者は,面接の際にカウンセラーとしての態度をとり,病の経験を理解することを目指した.
結果,Aさんにとっての病の経験に関する中心的なテーマは,«新生自己の創出»と解釈できた.この中心的なテーマは,3つの時期およびサブテーマによって構成されていた.
看護実践への示唆としては,患者に対する精神的ケア,家族の緊張感や負担感を軽減させるための精神的ケア,そして患者の苦悩に寄り添う看護ケアを開発することが重要だと考える.さらに,患者が病の肯定的な意味を見出したり,前向きに生きるために長期にわたる援助が必要だと考える.
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