日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第42回研究大会
選択された号の論文の344件中1~50を表示しています
A会場
個人発表
【準備委員会企画 分科会】 侵犯する身体・増殖する身体
  • 田中 雅一
    セッションID: A-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本大会事務局企画の分科会として身体をテーマに取り上げることにします。一見当たり前に存在する「身体」はどこからはじまり、どこで終わるのでしょうか。本分科会では、このような問いかけのもと、侵犯あるいは増殖という概念で身体について考察しようと思います。具体的には、皮膚への刻印(刺青)、ファッション・化粧、フィギュア、宗教的な身体表象やイコンを取り扱います。これらの事例から、あらたな身体像を提示します。
  • フェティシズムの植民地主義からの解放のために
    田辺 明生
    セッションID: A-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    リンガ・ヨーニは、男女交合による豊饒のシンボルではなく、「女陰に生えた男根」のイコン的表象である。それは、フェティッシュの定義である「母のファルス」に等しい。植民地主義的言説は、西洋とインドの差異を認めつつ否認するのであり、フェティシズムと同様に、自己と他者の差異と同一性の揺れがある。リンガ・ヨーニの不二的関係性を理解することは、フェティシズムを植民地的な束縛から解放するために必要なことである。
  • 17、18世紀のタヒチの世界観とその変容
    桑原 牧子
    セッションID: A-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    タヒチ社会では、皮膚は世界、または、社会関係そのものであるかのように扱われていた。皮膚には身体の表層としての機能以上に象徴的意味が込められ、また、その皮膚に手入れや加工を加えることによって世界観と社会関係を構築し維持していた。18世紀になり、西欧人との接触を通して皮膚に込められたフェティシズムも変化していく。本発表ではタヒチの象徴体系における皮膚と包む行為の意味とフェティシズムを明らかにする。
  • 合衆国から日本への移転と変容をめぐって
    佐藤 知久
    セッションID: A-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、ドラァグ・クイーンという現象についてアメリカ合衆国と日本での状況を比較検討しつつ論じるものである。特に本発表では1990年代初頭の合衆国から日本へのドラァグ・クイーン文化導入の経緯とその後の展開について考察し、日本ではドラァグの「転覆」「脱臼」的な効果がゲイ男性による批判的実践のみならず、ヘテロセクシュアル女性による美や女性身体をめぐる規範の批判としても用いられていることを指摘する。
  • 西村 大志
    セッションID: A-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     人体模倣の多様な現場(具体的にはダッチワイフ、ドール、人体模型、ヒューマノイド型ロボットなど)では、どこまでも人間そっくりをめざす技術と、そこから独自の距離をおく手法が開発されてきた。また、人体模倣が精緻をきわめるなかで、「性」の問題が浮上してきた。これを、具体的に考察することで、人工身体における「性」の利用と隠蔽の問題を明らかにする。
  • 小牧 幸代
    セッションID: A-18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    イスラームにおける聖遺物の大半は、預言者ムハンマドの身体に付着していたモノで構成されている。その断片化された身体はイスラーム世界の各地に移送され、ローカルな聖地の形成に寄与してきた。本発表では、聖遺物の拡散に伴う聖地の増加の事例を紹介し、聖遺物を安置した各地の聖地が、それぞれ預言者の身体の構成部分を分有しているという意味で相互に関連づけられ、全体としてひとつのモノを希求している様子を明らかにする。
  • 韓国仏教の物質化
    岡田 浩樹
    セッションID: A-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    1990年代後半より、韓国仏教において「増殖するブッダ」とも言える興味深い現象が見いだせるようになった。韓国仏教における中心的な礼拝対象である聖なる仏陀(プッチョニム)が、カリカチュライズされ、様々なキャラクターグッズとして複製化される。本発表ではこの現象を「増殖するブッダ」としてとらえ、今日の複製化時代における<わたし(信者)>と<イコン(外部)>の関係性を検討する。
個人発表
  • -「世界遺産」と「世間遺産」のはざまで-
    永吉 守
    セッションID: A-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     日本における文化遺産の中で、近代化産業遺産における、他の文化遺産と比較した場合の特殊性を明らかにし、その保存・活用の価値観をめぐるポリティクスを探る。特に、本発表では、「九州・山口の近代化産業遺産群」のユネスコ世界遺産登録を目指した動きを追いながら、その動きを応援・補完しつつも、ある種対抗的な動きとして、「世“界”遺産」ならぬ「世“間”遺産」という言説とその価値観の創造過程について、発表者自身が関与しているNPOや九州内で同様の活動をしているNPO連合「九州伝承遺産ネットワーク」の事例から考察する。
  • フランス地域自然公園の「公園の家」で働く人びと
    出口 雅敏
    セッションID: A-21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、遺産の保護と活用を「仕事」とする職業集団・専門家集団について検討する。具体的には、1970年代以降、地域の文化遺産や自然遺産の保護及び活用を積極的に行ってきたフランスの地域自然公園において、その中心的役割を担ってきた「公園の家」と呼ばれる集団を対象とし、彼らへの聞き取り調査で得た資料に基づき、遺産の保護や活用に携わることの意味を彼らの生活との関わりから考察する。
  • トルコにおける「国土」創出と古代アナトリア文化遺産
    田中 英資
    セッションID: A-22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、トルコの「国土(Homeland)」の形成と、「トルコらしさ」と直接的には結びつけられない古代アナトリア文化遺産の関係について考察する。特に、近代トルコ国民国家の「国土」としてアナトリアが位置づけられていく過程で、その過去や歴史に対してどのようなアプローチがとられていったのかを分析し、古代アナトリア文化遺産との結びつきを中心に、トルコの「国土」としてのアナトリアの創出のあり方の多様性を示す。
【準備委員会企画 分科会】 ネオリベラリズムの時代における人類学の可能性
個人発表
B会場
個人発表
【準備委員会企画 分科会】 「専門性」とは何か?
  • 浮ヶ谷 幸代
    セッションID: B-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    近年、1970年代以降議論されてきた専門家システムや専門的知識への信頼の失墜という状況を受けて、専門家システム内部で再検討の動きが興っている。他方で、国内外で素人の体験知が注目され、制度化される動きがある。また、専門家システムから排除されながらも、ローカルな文脈では人々に支持され続けている民俗的な知の実践がある。本分科会では、専門家の知や体験知、民俗知が交叉する場で、「専門性」とは何かという問題提起を試みる。
  • 医学教育における「患者中心の医療」モデルの展開
    星野 晋
    セッションID: B-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     近年の医学・医療の大きな変化は、病態生理よりも臨床判断に重点を置くこと、そして臨床判断の主体が患者であることの二つの特徴があり、これを集約するモデルが「患者中心の医療」モデルである。最近の医学教育もこの概念に基づく教育プログラムに移行しつつある。報告者は、医学教育に参加する立場から、医学・医療および医学教育における医師の専門性・専門知の動向を紹介し、医療をめぐる生活の現場の知との関係を論じる。
  • 北海道浦河赤十字病院精神看護の事例から
    浮ヶ谷 幸代
    セッションID: B-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    日本の看護は医学への従属を脱し自律性を確保しようと医学との差異化を意識する反面、科学的根拠に基づいた看護EBNという概念を導入し、論理性、客観性、普遍性、合理性という1970年代に専門性への懐疑の対象となった抽象的システムを志向している。看護記録に関するPOSとSOAPという概念をとりあげ、看護の「専門性」の一端を明らかにする。それに対して、精神科病棟での患者を主人公に看護スタッフ参加のソーシャルドラマの事例を発表し、浦河日赤というローカルな文脈における看護の「専門性」として、即興性と演劇性について検討する。
  • 養護教諭の専門性と身体実践をめぐって
    田口 亜紗
    セッションID: B-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    養護教諭は教員、医療者、カウンセラーとしての役割を重層的に果たす専門家であるが、他方、その両義性ゆえに二流であるという批判にもさらされている。そこで彼らは「健康相談活動」を独自の専門活動として制度化し、集団の再編成を図った。また、臨床の場では養護教諭は生徒への柔軟で即興的な応対によって生徒の快復を助けている。このような雑多な知や実践の蓄積が日々の養護教諭の専門性をいかに成立させているか検討する。
  • 英国保健省の取り組み「Expert Patient Programme」の調査より
    松繁 卓哉
    セッションID: B-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    慢性疾患を持つ人々がその症状と共に日常生活を送る中で獲得するスキル・知識を、何らかの「専門性」を有するものとして評価し、国家の保健制度に活用しようとする取り組みが着手されている。本研究では、その代表的なものの一つである英国保健省による取り組み、Expert Patient Programmeを事例として、「素人の専門知識」が国家の保健医療制度の中で取り入れられる際の可能性および限界について考察する。
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