日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
23 巻, 2 号
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Ⅳ.成人骨折・脱臼
  • 上杉 彩子, 栗山 幸治, 片岡 利行, 塩出 亮哉
    2016 年23 巻2 号 p. 186-189
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     鉤状突起粉砕骨折新鮮例に対し肋骨肋軟骨を利用して一期的に鉤状突起再建術を施行し良好な成績を得た1例を経験した.症例は36歳男性.CTにてO'Driscoll分類type 2 subtype 2の尺骨鉤状突起骨折と診断した.手術は,鉤状突起の前内側関節と先端が粉砕していたため,肋骨肋軟骨を用いて鉤状突起を一期的に再建しロッキングプレートで固定を行い,内側・外側側副靱帯も修復した.術後24週で骨癒合を認め,術後12か月の肘関節可動域は屈曲125°伸展-5°回内80°回外90°,関節不安定性や疼痛は認めなかった.尺骨鉤状突起前内側関節を含む骨折は後内側関節不安定性を生じると報告されており整復固定が必要とされるが,本症例では鉤状突起が粉砕していたため一期的再建術を施行した.肋骨肋軟骨を形成することにより軟骨面の再建と関節面形状の再建を同時に行える有用な方法であった.

  • 石垣 大介
    2016 年23 巻2 号 p. 190-192
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     鉤状突起が上腕骨小頭後面に陥入したことで徒手整復が不能となり,観血的整復を要した肘関節脱臼の1例を経験した.症例は46歳,女性.つまづいて左手をついて受傷した.骨折を伴わない後外側脱臼で,CTで鉤状突起が上腕骨小頭後面に陥入する所見を認めた.麻酔下の徒手整復が不能であったため,すぐに手術を行った.肘内外側を展開し,創内に指を入れて上腕骨と尺骨を直接把持して整復した後,断裂していた内側側副靱帯を修復した.術後は2週間の固定の後に可動域訓練を行い,良好な機能回復が得られた.骨折を伴わない肘関節脱臼は通常徒手整復が容易であるとされており,骨性の嵌入が整復阻害因子となった報告はない.本症例は外側側副靱帯を支点として前腕骨が内旋しつつ後方に脱臼する後内側回旋メカニズムにより受傷し,残存した外側支持機構の緊張により骨の嵌入が解除されなかったものと考えられた.

  • 長谷 康弘, 堀井 恵美子, 洪 淑貴
    2016 年23 巻2 号 p. 193-195
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     可動域制限を生じた上腕骨小頭骨折に対して授動術を行ったので,治療成績を報告する.症例は男性1例,女性2例,罹患側は右1例,左2例,受傷時平均年齢は46.7歳であった.術前平均可動域は屈曲103°,伸展-55°,回外51.7°,回内56.7°,qDASHは平均24.2点であった.受傷から平均12か月で授動術を施行し,術後平均観察期間は9.3か月である.平均可動域は屈曲124°,伸展-30°,回外81.7°,回内67.7°で,qDASHは平均3.0点に改善,Mayo Elbow Performance Scoreは全例excellentだった.上腕骨小頭骨折は展開が困難な関節内骨折であるため,治療には正確な関節面の整復が必要である.そのために3DCTを用い手術法を検討することが有用である.関節内骨切り術は術後骨壊死の可能性があり,疼痛の軽減とROMの獲得のための関節形成術などの代替療法が必要と考えられる.

  • 佐野 和史, 木村 和正, 高橋 里奈, 藤井 達也, 大関 覚
    2016 年23 巻2 号 p. 196-198
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     高度な関節拘縮を伴う陳旧性上腕骨小頭骨折3例の治療経験を報告する.内訳は男性2例と女性1例で,平均年齢は46.3歳であった.Grantham type II-Bの保存加療後遷延性治癒が1例,type III-Cの手術加療後遷延性治癒1例と変形治癒が各1例で,術前平均可動域は肘関節伸展/屈曲-28°/60°,前腕回内/回外30°/90°,日整会-日肘会肘機能スコアは平均63点であった.2例は後外側切開(津下法)により,1例は後方切開(Campbell法)を用いて上腕骨小頭の遷延性治癒および変形治癒に対する処置と肘関節授動術を施行した.術後平均可動域は肘関節伸展/屈曲-13°/132°,前腕回内/回外80°/93°,日整会-日肘会肘機能スコアは88点に改善した.肘関節拘縮を伴う陳旧性上腕骨小頭骨折では骨折に対する治療に加えて,十分な関節授動術を同時に施行できる津下法やCampbell法による展開は有用であった.

  • 竹内 直英
    2016 年23 巻2 号 p. 199-201
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     はじめに:われわれは手術加療を行った上腕骨小頭骨折4例の治療成績を報告する.

     対象と方法:対象は全例女性で,平均年齢は62.8(62~64)歳であった.骨折型はBryan and Morrey分類でtype 1:3例,type 3:1例であった.全例,Kaplanの外側アプローチにて展開した.骨片を整復後,headless compression screwを前方から後方へ挿入し,骨接合術を施行した.後療法は,1週間の外固定の後に可動域訓練を開始した.最終調査時の平均可動域は,屈曲136.3°,伸展-6.3°,回内87.5°,回外87.5°であった.また,JOA-JES scoreは平均96.8点であった.

     考察:Headless compression screwを用いた整復固定術により良好な成績が得られた.

  • 深井 敦大, 瀧川 直秀, 安井 憲司
    2016 年23 巻2 号 p. 202-205
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     比較的稀な骨折とされる上腕骨遠位端coronal shear fracture 7例の治療成績を報告する.対象は7例,男性3例,女性4例,平均年齢は55.6歳でDubberley分類ではtype 1A:2例,type2A:3例,type 3A:2例であった.合併損傷は外側上顆骨折を2例に認めた.全例headless compression screwを使用した.全例で骨癒合が得られ,合併症は認めなかった.最終観察時の平均肘関節可動域は,伸展:-5.0度,屈曲:125.8度.JOA-JESスコアは平均90.8点,MEPSはexcellentが6例,goodが1例であった.Dubberly分類subtype Aでは外側および前外側アプローチによるheadless compression screwを用いた内固定にて概ね良好な成績が得られた.

  • 土谷 正彦, 小泉 雅裕
    2016 年23 巻2 号 p. 206-208
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     橈骨に対するHenry進入法は橈骨全長を展開することが可能であるが,橈骨近位骨幹部に粉砕を伴う場合,上腕二頭筋腱の存在が視野の妨げや整復阻害因子となる.今回,このような骨折に対して上腕二頭筋腱をZ型に一時的に切離し,骨接合術を施行した.症例は34歳,男性.橈骨頚部骨折を伴う近位骨幹部粉砕骨折を認めた.手術の際,同部の展開にはHenry進入法を用いたが,上腕二頭筋腱付着部を含めた高度粉砕骨折であり,視野の確保と正確な骨片整復のため一時的に同腱を切離して手術を行った.この腱は修復時に過緊張とならない様に,あらかじめZ型に切離し,骨折の内固定後に適度な緊張下で縫合修復を行った.本症例の経験から,同様の症例に対しては上腕二頭筋腱を一時的に切離することで手術操作が容易となり,またZ型に切離して修復時の緊張を緩めることで,術後拘縮や前方不安定性を軽減することが可能と考えられた.

  • 畑中 渉
    2016 年23 巻2 号 p. 209-211
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     18歳男性.肘伸展位で手をつき受傷.X線撮影写真上,Mason type2の橈骨頭骨折を認め,橈骨は前方に脱臼し,上腕骨小頭に対向した位置に小骨片があった.尺骨には急性塑性変形を含め,骨傷を認めなかったが,遠位橈尺関節の掌側亜脱臼がみられた.Kaplan approachにて進入し橈骨頭を前方から圧迫するも整復されず,橈骨頭と尺骨の間にエレバトリウムを挿入し尺骨を支点にして橈骨頭を下から持ち上げると整復され,整復とともに遠位橈尺関節の不安定性は改善された.軽度自動運動障害の残存あるが,日常生活上の問題はない.本症例では,橈骨頭脱臼の整復にて遠位橈尺関節の不安定性が改善し,目立った機能障害も残さなかったことから,骨間膜の損傷を伴わず予後が良い回旋力優位型の前腕bipolar injuryの1つと考えられた.

  • 下崎 研吾, 山内 大輔
    2016 年23 巻2 号 p. 212-215
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     尺骨近位部の粉砕を伴う成人Monteggia骨折の2例を経験したので報告する.2症例ともに交通事故による高エネルギー外傷で,それぞれGastilo I型,IIIA型の開放骨折であり,受傷当日に創外固定を行い,2週後に内固定を行った.最終経過観察時,日本整形外科学会―日本肘関節学会肘機能スコア(JOA-JES score)は各々81,90点であった.われわれは本骨折の治療のコンセプトは尺骨長を保ち関節の安定性を獲得することと腕尺関節面の再建による肘関節機能の回復と考えている.そのため,尺骨鉤状突起と橈骨頭に着目し,まず尺骨鉤状突起骨片と骨幹部骨片の一体化を図る.これにより尺骨長を保ち,橈骨頭が整復される.一方で腕尺関節面は粉砕し正確な整復は望めないため関節面の曲率を合わせることに留意し,橈骨頭・尺骨鉤状突起を整復した後,上腕骨滑車の関節面に合わせて肘頭骨片を滑らせ骨片が接触した時点でプレート固定を行う.

  • 大島 明, 堀井 恵美子, 洪 淑貴, 小野田 亮介, 杉浦 洋貴, 山賀 崇, 長谷 康弘
    2016 年23 巻2 号 p. 216-218
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     肘頭骨折は転位のある場合手術治療が基本となるが,骨粗鬆症を合併する高齢者では,固定材料による合併症を生じやすい.これを回避するために,われわれはsoft wireによる8字締結法で治療を行ったので,治療成績を報告する.症例は,3例で平均年齢74歳(70~78歳),全例女性であった.術後肘頭骨片の転位はなく骨癒合は得られた.最終診察時,平均可動域は屈曲135度,伸展-12度で日常生活への支障はみられなかった.1例に鋼線締結部による皮膚刺激症状を認めたが,抜釘は行っていない.TBWやプレート固定と比較すると,力学的には固定力不足が懸念されるが,軟部組織障害は起こりにくく,適応を限れば有効な方法であると考えた.

  • 森澤 妥, 吉田 篤, 河野 友祐
    2016 年23 巻2 号 p. 219-221
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     肘頭骨折Colton分類2cまでの症例で高度転位,粉砕,骨粗鬆症,小さい近位骨片を認める症例に引き寄せ鋼線締結法と8の字鋼線締結法の併用療法を施行し,良好な成績が得られた.対象は14例14肘,年齢は63.3歳,経過観察期間7か月であった.骨癒合の有無,手術時間,術後合併症,最終関節可動域,JOA-JES scoreを検討した.全例で骨癒合を認めた.平均手術時間は54分,再転位・内固定材料の逸脱・折損は認めなかった.最終関節可動域は屈曲132度,伸展-4度,JOA-JES scoreは95点であった.本法は①術中骨折・整復不良の防止,②骨把持鉗子の干渉なく整復しながら透視下にピンが刺入可能,③骨粗鬆症例・骨折型によって通常の引き寄せ鋼線締結法のみでは十分な固定性が得られない場合の固定力の補強が可能である.高度転位,粉砕,骨粗鬆症,小さい近位骨片を認める肘頭骨折では,本法は有用な術式と考える.

  • 森田 晃造, 谷野 善彦
    2016 年23 巻2 号 p. 222-225
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     尺骨肘頭および近位部に及ぶ粉砕骨折に対して,ロッキングプレート固定術を施行した症例の治療成績を検討した.対象は8例8肘で,手術時年齢は平均70.9歳であった.4例にVariAxplate,3例にA.L.P.S. plateを使用した.結果は全例で骨癒合を認め,最終観察時肘関節可動域は,伸展平均-10.3°屈曲平均132.5°であり,JOA-JES scoreは平均92.8点であった.関節面の粉砕の軽度な肘頭骨折ではtension band wiring法による固定が手術の侵襲度および医療経済的観点からも推奨されるが,関節内の粉砕および鉤状突起を含めた尺骨近位に及ぶ粉砕骨片を伴う骨折に対しては,関節面の曲率半径の維持,尺骨の骨長維持のために本固定術は有用である.今回使用した各プレートとも固定性,臨床成績とも概ね良好であったが,スクリュー突出に起因する合併症も起こりうるため,その使用には注意を要する.

  • 岡林 諒, 鈴木 大介, 大石 強
    2016 年23 巻2 号 p. 226-228
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     近年普及してきた肩腱板縫合法の1つとしてsuture bridge法がある.今回われわれは肘頭骨折に対し,suture bridge法を用いて骨接合した1例を経験した.症例は39歳男性.受診時X線でMayo分類2Bの右肘頭骨折を認めた.受傷後8日で手術を行った.粉砕骨片は上腕三頭筋に付着しており,上腕三頭筋を遠位に牽引することで整復位を得た.SwiveLock3.5®(Arthrex社)を用いてsuture bridge法で骨接合を行った.結果,術後合併症はなく,術後8週で骨癒合を得た.術後6か月での最終調査時で疼痛は最大屈曲時に軽度生じた.可動域は0~140度であった.Mayo分類2Bに肘頭骨折ではプレート固定が一般的であるが,本症例のような骨折型ではsuture bridge法が有用であると考える.手術法の長所としてプレート固定と比較し,手術法が簡易であること,抜釘が不要であることが挙げられる.

  • 蒲生 和重, 佐柳 潤一
    2016 年23 巻2 号 p. 229-232
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     外傷性橈尺骨癒合症に対し,近位橈骨骨幹部切除術を経験したので報告する.症例は,35歳男性で仕事中に機械に左上肢が巻き込まれて上腕骨骨幹部骨折と尺骨近位粉砕骨折を受傷した.各骨折に対し,骨折観血的手術が行われたが,術後早期から骨折部での橈尺骨癒合を認めていた.初回手術の9か月後に尺骨の変形治癒に対し矯正骨切り術と癒合部の切除を行ったが,感染を起こし,橈尺骨癒合が再発した.本人が,職場復帰のために前腕回内外可動域の改善を強く希望したため,初回手術の36か月後に前方アプローチで近位橈骨骨幹部切除(癒合部遠位端から約1cmの骨幹部切除,断端にはbone waxを塗布)を行った.最終手術後1年が経過し,問題なく元の職場に復帰している.外傷性橈尺骨癒合症に対する近位橈骨骨幹部切除術は,salvage procedureとして考慮して良い術式であると考えられた.

  • 鈴木 志郎, 藤田 浩二, 宮本 崇, 二村 昭元
    2016 年23 巻2 号 p. 233-236
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     成人の上腕骨内側顆骨折に関する報告は少なく,その治療方法,具体的な手術手技に関する情報は不足している.今回われわれは,2例経験したので報告する.症例1:74歳女性.肘頭骨切りアプローチで,骨接合を行った.術後2週で肘頭骨切り部の離開をみとめたため,同部の再固定術を行った.症例2:74歳女性.後内側アプローチで,骨接合を行った.本骨折では,肘頭骨切りアプローチを用いれば,良好な視野が得られ関節面の整復・固定は困難ではなかった.しかし,肘頭骨切りアプローチでは,合併症が生じる可能性があり,症例1では,骨切り部の再固定術を要した.症例2は,高度な変形を伴ったリウマチ肘であったため,症例1の結果を踏まえ,完璧な関節面の整復を得ることよりも,合併症の回避を優先して,肘頭骨切りアプローチはせずに内固定を行った.本骨折の手術では,患者背景に応じて,手術アプローチの選択には注意を要すると考えられた.

  • 山中 清孝, 松村 健一, 森 基
    2016 年23 巻2 号 p. 237-239
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     再手術に至った前腕骨幹部の不安定性を伴う肘頭骨折の2例について報告した.症例1は鉤状突起骨折,橈骨頚部骨折を伴う肘頭骨折,症例2は経肘頭肘関節前方脱臼骨折であった.2症例とも肘頭骨折にはtension band wiring(以下TBW)が使用されておりこれが再手術に至った原因と考えられた.

     1例は比較的短期間であったためプレートによる再建にて良好な結果が得られたが,もう1例は長期間経過し関節症となっていたため人工肘関節置換術による再建を行った.前腕骨幹部の不安定性を伴う肘頭骨折では,肘頭の骨接合はTBWではなくプレート固定による滑車切痕の確実な骨性再建が必要である.

  • 塩出 亮哉, 片岡 利行, 栗山 幸治, 上杉 彩子, 村瀬 剛
    2016 年23 巻2 号 p. 240-243
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     骨折治療にcomputerによるシミュレーションを応用した報告は変形治癒骨折に対する矯正骨切り術が主であり,新鮮骨折例に対する報告は少ない.術前整復シミュレーションが有用であった肘関節脱臼骨折の1例を報告する.

     症例は17歳男性,肘関節脱臼骨折:橈骨頭骨折+鉤状突起粉砕骨折で,肘頭窩に骨片が存在した.術前CTから3Dモデルを作成し,健側鏡像を目標とした整復シミュレーションを行った.鉤状突起周囲の骨片のみでは整復が不十分で,肘頭窩に存在した骨片をあわせて良好な整復となることが術前に確認できた.手術は術前のシミュレーション通りに骨片を整復し固定した.

     通常の3DCTのみでは肘頭窩の骨片が鉤状突起からきたものであることを判断するのが難しいが,本症例では整復シミュレーションにより鉤状突起の整復には肘頭窩の骨片が必要であることを術前に確認できて,実際の整復が比較的スムーズに行えた.

  • 串田 淑久, 志村 治彦, 若林 良明, 宮本 崇, 藤田 浩二, 二村 昭元
    2016 年23 巻2 号 p. 244-246
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     出血傾向などの既往がなく,術中に止血困難が生じ術後に血友病と診断された肘関節脱臼骨折の1例を経験した.13歳男児,転倒し右肘関節の脱臼骨折を受傷した.脱臼整復後に外固定を行い保存的に加療を行った.異所性骨化による可動域制限が残存したため受傷後4か月で異所性骨化切除術を施行した.術後8日に肘可動域が悪化し,CT検査にて関節内血腫が疑われ,血腫除去術を施行した.術中に出血がコントロールできず,血友病が強く疑われた.第VIII因子の補充療法を行い異所性骨化切除術の12日後に再度血腫除去術を施行,出血のコントロールは可能であった.術後2年5か月で肘伸展-5度,屈曲130度まで改善している.血友病の軽症患者では家族歴がなく,外傷や手術を契機として診断される場合がある.術前凝固検査では軽症の血友病が存在する可能性を念頭に置かなければならない.

  • 小川 健, 井伊 聡樹, 平野 篤
    2016 年23 巻2 号 p. 247-250
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     アームレスリングにより発症した橈骨頭単独前方脱臼は,過去に報告がない.われわれの経験症例は,48歳男性で,アームレスリングで負けた際に肘関節伸展・前腕回外を強制され受傷後2か月で紹介受診となった陳旧例である.徒手整復不能であり,手術を行った.脱臼した橈骨頭後方に微小骨片と異所性骨化病変が存在し,整復阻害になっていた.上腕骨外側上顆と尺骨鉤状突起を繋ぐように靱帯様組織が存在したため,整復後,橈骨頭を前方より押さえ込むように,尺骨鉤状突起橈側へ縫着することで,制動が得られた.術後3か月で軽作業に復帰し,6か月の現在も再脱臼なく,重労働を行えている.受傷機転としては,アームレスリングによる肘関節部での屈曲・回内力に抗して,肘関節への伸展・回外力と,過伸展力が加わったためと推察した.

  • 細川 吉暁, 船越 忠直, 松井 雄一郎, 河村 太介, 亀田 裕亮, 岩崎 倫政
    2016 年23 巻2 号 p. 251-253
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     症例は23歳男性,スノーボードで転倒して受傷し右肘屈曲障害を認めたが受傷から4か月後に近医受診し,陳旧性右肘関節脱臼の診断となった.

     初診時,肘頭の後方突出を認め,右肘可動域は伸展0°,屈曲45°と制限があり,単純X線で右肘後方脱臼と異所性骨化を認めた.

     徒手整復不能であり,受傷後7か月に観血的脱臼整復術を施行した.肘関節内部は著明な線維性瘢痕組織と異所性骨化があり,これが脱臼整復阻害因子となっていた.術中は軟部組織等を可及的に縫合し,靱帯再建は行わなかった.術後は創外固定器を設置し,術後3日間は90°ロックとし,その後肘屈曲60~120°で可動域訓練を開始した.術後5週で創外固定器を抜去し,以降は術後8週までfunctional brace装着とした.

     術後12か月の現在まで肘関節可動域は伸展-35°,屈曲135°で再脱臼なく経過しているが,今後も慎重な経過フォローが必要と考える.

Ⅴ.人工肘関節
  • 西脇 正夫, 稲葉 尚人, 堀内 孝一, 河野 友祐, 別所 祐貴, 越智 健介, 森田 晃造, 堀内 行雄
    2016 年23 巻2 号 p. 254-257
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,関節リウマチ肘に対するK-NOW version 1を用いた人工肘関節置換術の中期治療成績を調査することである.2005年10月から2011年4月までに当院で関節リウマチ肘に対してK-NOW version 1を用いて人工肘関節置換術を行った20例25肘中3年以上経過観察した15例19肘の後ろ向きカルテ調査を行った.手術時年齢は32~77歳であり,術後経過観察期間は3~10年であった.術後早期に,脱臼,亜脱臼,駆血帯麻痺が1肘,尺骨神経刺激症状が2肘に生じた.6肘で尺骨ポリエチレンコンポーネントが内側に脱転し,うち1肘では尺骨骨折,1肘では尺骨骨折と上腕骨ステムのゆるみを合併した.ほか2肘でステム周囲のゆるみを認めた.K-NOWは,2011年にversion 2に改良されたが,version 1では尺骨ポリエチレンコンポーネントが内側に脱転する症例が多く,注意深い経過観察が必要である.

  • 池田 純, 富田 一誠, 川崎 恵吉, 久保 和俊, 中村 正則, 稲垣 克記
    2016 年23 巻2 号 p. 258-262
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ進行期などで,やむを得ず若年者にも人工肘関節置換術(以下TEA)を適応とする場合がある.当科で経験した45歳以下の若年者に対するTEAの成績と問題点を検討した.当科で施行したTEA 124肘のうち45歳以下の症例は5例7肘で女性4肘,男性3肘で,基礎疾患はRAが5肘,JIA 1肘,外傷後の変性が1肘であった.手術時年齢は平均39歳で,術後平均経過観察期間は4年9か月(最長8年0か月)であった.全例で疼痛および安定性が著明に改善し,Mayo Elbow Performance Scoreの総合評価は平均36点から80点に大きく改善,患者満足度は高かった.術後比較的短期での評価ではあるが,成績は概ね優良であった.若年者へのTEAは適切な位置へのインプラントの設置に加え,将来的な再置換の可能性を念頭に骨温存型インプラントの選択が必要であり,長期耐用につながるような生活指導も重要である.

  • 藍澤 一穂, 信田 進吾
    2016 年23 巻2 号 p. 263-266
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     上腕骨遠位端骨折の3例に対し人工肘関節全置換術(total elbow arthroplasty, 以下TEA)を施行し良好な短期治療成績を得た.

     症例1:81歳女性.右上腕骨顆部骨折後,他院での観血的整復固定術後の肘拘縮と外傷性肘関節症に対し,受傷9年後にTEAを施行し,TEA後18か月で肘関節可動域は30~120度と改善した.症例2:60歳女性.関節リウマチを合併し,左肘関節内骨折後,他院での外固定後の偽関節に対し,受傷2か月後にTEAを施行した.術後10か月で肘関節可動域は30~110度である.症例3:80歳女性.左上腕骨顆部骨折陳旧例に対して2度の観血的整復固定術を施行したが,骨癒合が得られず偽関節となった.受傷18か月後にTEAを施行し,TEA後5か月で肘関節可動域は45~125度である.

     上腕骨遠位端骨折の難治例に対して,TEAは治療の選択肢となり得ると考える.

  • 亀田 裕亮, 西尾 泰彦, 近藤 真, 加藤 貞利, 三浪 三千男, 船越 忠直, 松井 雄一郎, 河村 太介, 岩崎 倫政
    2016 年23 巻2 号 p. 267-269
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     背景:腕橈関節-関節症に対し人工橈骨頭置換術を行った5例の成績を報告し病因を考察する.

     対象と方法:2013年2月から2015年4月に手術を施行した5例/5肘,平均年齢61.8歳である.術後follow-up期間は平均12.5か月であった.肘関節外側部痛を主訴とし,3例は回内外時にも疼痛を認めた.MRI検査を施行した4/4例で短橈側手根伸筋腱の変性を認めた.Boyd変法とともに人工橈骨頭置換術を施行した.

     結果:VASによる疼痛の評価は術前73点から術後25点に改善した.MEPSは術前54点から術後82点に改善した.

     考察:腕橈関節-関節症は外側上顆炎の関節内病変が進行し,関節症性変化が高度になったために発生するとわれわれは考えている.関節症性変化が軽い初期には外側上顆炎に対する手術のみで良いが,関節症性変化が著明となり回内外時にも疼痛を訴えるものには人工橈骨頭置換術の方が良いと考える.

  • 大谷 和裕, 田中 寛樹
    2016 年23 巻2 号 p. 270-273
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     RA肘関節障害に対する人工肘関節置換術(TEA)は関節の安定性,変形の矯正,除痛さらにADLの改善が期待できる.しかし,下肢関節と同様に感染やゆるみなどの合併症に対する治療が必要となる.当院でTEA後感染に対し二期的に半拘束型人工肘関節置換術を施行した2症例について報告した.いずれの症例も一旦,人工関節を抜去し髄腔内のセメントを除去したのちに抗菌薬含有セメントスペーサーを留置した.炎症所見が鎮静化していることを確認し再置換術を施行した.TEA後感染は皮下組織が薄いため良好な軟部組織で被覆できないこと,髄腔が細く,病巣掻把後の骨欠損が大きくなるために治療に難渋することが多い.一旦,インプラントの抜去とセメントスペーサーを留置し二期的に再置換術を行うことで感染の鎮静化,軟部組織の修復,全身状態の改善がえられた.

  • 長谷川 泰隆, 池田 登, 小谷 博信, 神庭 悠介
    2016 年23 巻2 号 p. 274-277
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ患者の人工肘関節置換術(TEA)後感染2例に,Bush交換を含む関節前方まで到るデブリドマンと骨・インプラント間隙への抗菌薬含有セメント(ALAC)充填を行い,インプラント温存を試みた.

     症例1:86歳男性.TEA後1年1か月で潜行性に感染を発症し,4週後にデブリドマン・ALAC充填を行った.術後6か月で再燃したが,再手術希望はなく,術後1年6か月で抗生剤内服を継続し,鎮静化している.

     症例2:68歳女性.TEA後6年で感染を急性発症し,11日後にデブリドマン・ALAC充填を行った.術後1年で再燃はない.

     潜行性発症で介入が遅れた症例1は再燃したが,早期対応できた症例2は経過良好で,温存の成否には早期介入が重要と考えられる.

     ALAC充填は手技的に容易で,局所のdrug deliveryが期待でき,人工関節の抜去も不要なため,TEA後感染治療のoptionとして有用と考えられた.

  • 久保 伸之, 正富 隆, 行岡 正雄
    2016 年23 巻2 号 p. 278-281
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     患者は59歳女性,平成11年関節リウマチ発症,平成17年7月近医にて左人工肘関節置換術を施行.平成18年5月左上腕骨骨幹部骨折を生じ,プレートによる内固定術を施行されるも骨癒合得られず偽関節化.平成22年7月,両腓骨移植,人工肘関節再置換術施行するも,2か月後より感染,さらに移植腓骨の骨折を生じ,平成23年5月,当院紹介受診.来院時,左肘は偽関節部で動揺性あり.左肘後面に瘻孔を認め,浸出液の培養にて耐性菌を検出したため,同年6月,人工関節抜去,抗生剤含有セメントビーズ挿入術施行.術後抗生剤投与にて感染鎮静後,同年12月,腸骨移植,髄内釘を併用した人工関節再置換術施行した.現在術後4年だが,感染再発,ゆるみは認めていない.可動域は伸展-65度,屈曲125度と良好とは言えないが,本人の満足度は高い.本術式は難治性偽関節に試みて良いと考えている.

Ⅵ.鏡視下手術
  • 轉法輪 光, 富永 明子, 大浦 圭一郎, 島田 幸造
    2016 年23 巻2 号 p. 282-285
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     高度拘縮肘に対する鏡視下授動術の治療成績を検討した.対象は高度拘縮肘(屈伸可動域60度以下)の患者,11例,11肘で,男性5例,女性6例,手術時の平均年齢は49.6歳であった.原因疾患は外傷後拘縮2例,変形性関節症4例,関節リウマチ5例であった.手術では関節鏡視下に関節包の切離や癒着の解離,骨棘切除,橈骨頭部分切除を行った.また尺骨神経や内側側副靱帯後斜線維の処置が必要な場合には小切開を加えた.可動域は,術前の屈曲89度,伸展-53度が,術後平均1年6か月の最終診察時には屈曲110度,伸展-30度と改善していた.1例では手術の1年5か月後に2回目の鏡視下授動術を行い,別の1例では術後に骨棘形成が再燃,術後1年に観血的授動術を行った.神経,血管損傷の合併症は認めなかった.鏡視下授動術は高度拘縮肘に対しても良好な結果を得ることができたが,手術に際しては手技の習熟や合併症の回避が重要である.

  • 富田 一誠, 渡邊 幹彦, 池田 純, 鈴木 昌, 小原 賢司, 久保 和俊, 川崎 恵吉, 稲垣 克記
    2016 年23 巻2 号 p. 286-290
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     骨性要素が原因で症状を呈する変形性肘関節症に対して関節鏡視下形成術を施行した.平均年齢が46歳,平均観察期間が19.2か月である27例28肘(後方要素のみ:4例5肘(1肘再手術含む),混合:23肘)を検討した.初診時は,痛みを24肘,運動制限を22肘,しびれを12肘に認めた.肘関節可動域の術前/術後/最終観察時の変化は,混合型の屈曲が102.8°/133.7°/127.2°で,伸展が-24.7°/-4.6°/-8.5°で,可動域の総和は79.8°/128.9°/118.3°で,後方型の伸展が-21.0°/-3.0°/0.0°であった.合併症は,骨棘の再発,前方の異所性骨化,外側前腕皮神経障害を各1肘認めた.Mayo Elbow Performance Score(以下MEPS)は術前平均62.5が最終95.9へ有意に改善し,特に痛みと機能は大きく改善した.短期観察であるが,関節鏡視下形成術は,計画通りに骨棘切除ができれば,良好な治療成績を得られた.

  • 柏 隆史, 射場 浩介, 金谷 耕平, 山下 敏彦, 和田 卓郎
    2016 年23 巻2 号 p. 291-294
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     変形性肘関節症に対する鏡視下関節形成術の中期術後成績を検討した.術後2年以上経過観察が可能であった22例23肘を対象とした.術後観察期間は平均47か月であった.全例で鏡視前に小皮切で尺骨神経剥離を行った.術前に尺骨神経症状を有した14肘中5肘に対して鏡視後に皮下前方移動術を行った.術後合併症を認めた症例はなかった.肘関節可動範囲が術前87°から術後105°に,JOA-JESスコアの総合点は術前63点から術後84点に,疼痛点は術前13点から術後23点に,DASHスコアは術前27から術後15にいずれも有意に改善した.著者らがこれまでに報告してきた短期術後成績と比較して,JOA-JES,DASHスコアは観察期間によらず比較的良好な成績を維持しているが,肘関節可動範囲は時間経過とともに徐々に悪化していく傾向を認めた.

Ⅶ.神経
  • 安部 幸雄, 藤井 賢三
    2016 年23 巻2 号 p. 295-296
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     肘部管症候群は保存治療では改善がえられがたい場合手術治療が推奨される.当科における肘部管症候群に対する単純除圧術の適応と治療成績について検討した.2003年6月以降,当科にて肘部管症候群に対し単純除圧術を施行した60例66肘,男39例,女21例,右47肘,左19肘,年齢18歳~86歳,平均61歳を対象とした.当科での単純除圧術の適応は,1)肘屈曲にて尺骨神経が前方へ亜脱臼する,2)肘内側に骨棘を認める変形性肘関節症,3)外反肘の合併,4)再発例,を除外した症例とした.この適応に準じて行った単純除圧術の成績は術後経過観察期間平均17か月において,赤堀の評価基準にて優,良合わせて98%と良好であった.術後成績を左右する因子の検討として,年齢,発症から手術までの期間,握力,術前の赤堀分類,経過観察期間を検討したが,どの項目も術後成績に影響を及ぼしていなかった.

  • 安部 幸雄, 藤井 賢三
    2016 年23 巻2 号 p. 297-299
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     肘部管症候群に対しては様々な手術方法が推奨されているが,当科では,1)肘屈曲にて尺骨神経が前方へ亜脱臼する,2)肘内側に骨棘を認める変形性肘関節症,3)外反肘の合併,4)再発例,に対し皮下前方移動術を行ってきた.今回,その術後成績について検討した.2003年6月以降,当科にて肘部管症候群に対し皮下前方移動術を施行した68例69肘,男55例,女13例,右44肘,左25肘,平均年齢61歳を対象とした.術後平均経過観察期間13か月における術後成績は赤堀の評価にて優49%,良42%,可9%であった.発症から手術までの期間,術前握力が術後成績に影響していた.重症例,利き手罹患でリハビリテーションに理解力のある症例では一期的母指内転,示指外転再建の併用が有効であった.

  • 神山 翔, 田中 利和, 小川 健, 落合 直之
    2016 年23 巻2 号 p. 300-303
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     変形性肘関節症を背景とした肘部管症候群に対する,肘部管ならびに尺骨神経溝形成術の成績を報告する.2009年6月から2015年3月に当院で本法を行った17例を対象とした.年齢は平均63.3歳,経過観察期間は平均17か月であった.調査項目は,罹病期間,赤堀の病期分類,術前・術後しびれ,感覚,筋力,握力,可動域,DASHスコア,赤堀予後評価基準,合併症とした.罹病期間は平均16か月であった.赤堀の病期分類は,Ⅰ期2例,Ⅱ期2例,Ⅲ期5例,Ⅳ期8例であった.しびれ,感覚は全例で改善し,筋力は有意に改善した.握力も改善傾向を示した.可動域は屈曲が有意に改善した.DASHスコアも有意に改善し,赤堀の予後評価は優6例,良5例,可6例であった.1例に上腕骨内側上顆骨折を合併した.本術式は尺骨神経を本来あるべき位置に納め,可動域も改善する.重症例は改善度が低かった.長期経過を明らかにする必要がある.

  • 芹ヶ野 健司, 池田 全良, 小林 由香, 高木 岳彦, 渡辺 雅彦
    2016 年23 巻2 号 p. 304-306
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     肘関節で弾発現象を呈する尺骨神経障害には様々な病態がある.今回,著者らは,上腕三頭筋内側頭の脱臼による弾発が尺骨神経障害の要因であった症例を経験したので報告する.症例は72歳,女性.左肘尺骨神経脱臼の診断で前医にて尺骨神経皮下前方移動術を施行されたが,しびれの増悪および神経脱臼様症状が再発し,術後2年で当院を受診した.初診時尺骨神経領域のしびれ感と神経脱臼様症状を認め,神経脱臼の再発の診断にて手術を施行した.弾発の原因と考えられた筋間中隔部を切離し症状は軽快したが,術後6か月で弾発と尺骨神経の刺激症状が再発したため再手術を施行した.神経の再脱臼はなく,肘屈曲時に上腕三頭筋内側頭が内側上顆に引っかかり弾発現象を来していた.同部を切離し症状は消失した.本症は上腕三頭筋内側頭の前方への移動による尺骨神経の脱臼を来す病態として報告されている.神経脱臼あるいはその術後再発が疑われた場合には本症を念頭に置いて治療する必要がある.

  • 川野 健一, 筋野 隆, 塩谷 英司, 中川 種史, 菅原 留奈
    2016 年23 巻2 号 p. 307-310
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     神経障害は肘関節周囲骨折のよく知られた合併症の一つである.本研究では,手術を行った肘周囲骨折症例における尺骨神経障害について調査した.対象となった99症例の年齢は,10~88歳(平均54.1歳),男性43例,女性56例,経過観察期間は3~55か月(平均10.8か月)であった.骨折型は上腕骨遠位端骨折32例,肘頭骨折42例,橈骨頭骨折15例,その他10例であった.神経障害は18例に見られ,尺骨神経14例,橈骨神経3例,正中神経1例であった.尺骨神経障害の出現時期は,受傷直後2例,手術直後8例,亜急性期4例であった.神経障害の手術を要した5症例はすべて尺骨神経障害であったが,そのうちわけは,手術による医原性麻痺2例,亜急性期に麻痺が進行した3例であった.術後成績は良好であった.神経障害を早期に発見し,病態を正確に評価することが,肘関節骨折の機能予後には重要である.

  • 原 由紀則, 田尻 康人, 飯島 準一, 川野 健一
    2016 年23 巻2 号 p. 311-313
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     橈骨頭・頚部骨折の内固定術後に後骨間神経(PIN)麻痺が発症することが知れられているが,具体的な注意点について検討された報告はない.橈骨頭・頚部骨折内固定手術後にPIN麻痺が出現した5例を対象として,同時期の同骨折内固定手術後に麻痺が出現しなかった17例(対照)と比較検討した.橈骨頭ヘッドレススクリュー(HS)単独固定例では麻痺の1例のみKocher後方進入であった.橈骨頚部プレート固定例では進入経路に麻痺群と対照群で違いはなかったが,麻痺群では前方あるいはより遠位までプレートが設置されていた.橈骨頭・頚部骨折内固定術中のPIN損傷を予防するために,術前計画でHS単独固定の場合にはなるべくCadenat進入のように橈骨頭直上から進入し,プレート固定予定で設置位置が前方あるいは橈骨粗面中央より遠位とする必要がある場合には,PINを術中に展開・確保することを考慮した方が良いと考える.

Ⅷ.機能再建・手術
  • 岡本 道雄, 難波 二郎, 山本 浩司
    2016 年23 巻2 号 p. 314-317
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     はじめに:肘関節術後リハビリテーションには異所性骨化出現のリスクがあり,痛みを伴う可動域訓練には注意を要する.一方,微弱電流治療器(ノーマライザ®,日本理工医学研究所,長崎)は非侵襲的に鎮痛効果を発揮するが,術後に使用した報告はない.肘関節術後に通電後,リハビリテーションを実施したので,その除痛効果と肘関節可動域への影響について報告する.

     方法:対象は2014年以降に手術治療を行った肘関節周辺骨折18例とした.術後2週間固定後に微弱電流治療器を用いて通電,リハビリテーションを行った.肘関節角度,運動時NRS,また無痛範囲での肘関節等速度他動運動時の筋収縮を測定し通電前後で評価した.

     結果:最終時の肘関節屈曲133度,伸展-16度であり,微弱電流治療とその後のリハビリテーションは術後2週間経過時においてNRS,屈曲角度,伸展角度を有意に改善させた.不随意筋収縮は通電前後で有意に振幅が低下した.

     考察:微弱電流治療は非侵襲的に不随意筋収縮,疼痛を軽減し早期に肘関節可動域を改善した.

  • 加藤 直樹, 福本 恵三, 酒井 伸英
    2016 年23 巻2 号 p. 318-321
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     上肢の重要な機能である肘関節の屈曲機能を再建するため,bipolar transferでの有茎広背筋移行を行った3例の治療成績について報告する.症例1:20歳,男性.電車に衝突して右上腕の不全切断を受傷.受傷後7か月で肘の屈曲再建を行った.術後3年9か月で,肘屈曲120度,屈曲力はMMT4であった.症例2:50歳,男性.右上腕を換気扇に巻き込まれて肘屈筋群の挫滅損傷を受傷.受傷後5か月で手術を行った.術後1年3か月の時点で,肘屈曲130度,屈曲力はMMT4であった.症例3:23歳,男性.バイク走行中に転倒して全型の腕神経叢損傷を受傷.神経剝離により肩関節の機能は回復したが肘関節の屈曲は不能であったため,受傷後1年1か月で手術を行った.再建後6か月で肘屈曲130度,屈曲力はMMT4と回復している.全例で良好な肘関節の屈曲機能が再建できており,bipolar transferでの有茎広背筋移行は有効な手法の1つになり得ると思われた.

Ⅸ.上顆炎
  • 副島 修, 村岡 邦秀, 松永 渉
    2016 年23 巻2 号 p. 322-325
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     難治性上腕骨内側上顆炎11例に対して,小皮切での直視下手術を行ったので文献的考察を含めて報告する.

     症例の内訳は,男性4例/女性7例,手術時年齢は平均53.4歳,手術までの罹病期間は平均29.5か月であった.術前3例に肘部管症候群を合併しており,1例では同側の外側上顆炎も認めていた.全例で小皮切での回内屈筋群付着部の病巣掻爬とドリリングの後に,屈筋群筋膜の修復を行った.術後平均14.8か月の経過観察を行い,JOA-JES scoreは術前65.0点から術後92.1点へ改善した.Nirschl scoreではexcellent8例/good2例/fair1例であり,fairの1例は肘部管症候群合併例であった.

     今回の検討からも以前の報告同様に満足できる結果が得られており,難治例に対しては十分な説明の下に試みてよい手術と考える.一方,肘部管症候群合併例では成績不良の報告も散見され注意が必要である.

  • 田鹿 佑太朗, 鈴木 昌, 松久 孝行, 上原 大志, 酒井 健, 西中 直也
    2016 年23 巻2 号 p. 326-329
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     はじめに:上腕骨内側上顆炎の中には,稀に保存療法に抵抗する難治例が存在する.手術を行った2症例を経験したので報告する.

     症例1:58歳女性.5年前より右肘内側部痛が出現し,保存療法を受けるも改善なく経過した.内側上顆の圧痛とwrist flexion testが陽性であり,MRIのSTIR像で回内屈筋群起始部に高信号領域を認めた.手術は回内屈筋群起始部を腱線維方向に切開し変性組織を切除,腱付着部をドリリングした後,腱を側々縫合した.VASは術前8から1へと改善した.

     症例2:45歳女性.2年前から右肘内側部痛が出現した.内側上顆の圧痛とwrist flexion testが陽性であった.手術は症例1と同様に変性組織を切除,アンカーを腱付着部に挿入し腱縫合した.VASは8から2へと改善した.

     考察:上腕骨内側上顆炎に対する手術は手技が比較的簡便で成績も良く,難治例に対する治療法の選択肢となり得る.

  • 松浦 健司, 須川 敬, 金城 養典, 矢野 公一, 坂中 秀樹
    2016 年23 巻2 号 p. 330-334
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     単純MRIにて短橈側手根伸筋(以下ECRB)腱起始部にT2高信号領域を認めた難治性上腕骨外側上顆炎7例7肘を対象とした.関節鏡で滑膜ひだに対して切除,関節包断裂に対して関節包と隣接するECRB腱の郭清を行った.さらに外側上顆から遠位を切開し関節外からECRB腱起始部を末梢に前進させsuture anchorを用いて再縫着する手術を施行した.

     術前みられた外側の圧痛,疼痛誘発テストは術後1例を除き全例で陰性化し,全例もとの仕事やスポーツに復帰した.術前関節造影で関節包外に漏出した3例は関節鏡所見でBaker分類type II 2例,type III 1例で滑膜ひだはなく,他の4例はMullett分類type II以上の滑膜ひだを認めたが関節包断裂はなかった.JOA-JES scoreで術前平均30.6点が術後90.7点に改善した.

     難治性上腕骨外側上顆炎に対する肘関節鏡を併用したECRB腱修復術の成績は良好であった.

  • 今田 英明, 渋谷 早俊
    2016 年23 巻2 号 p. 335-339
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     難治性上腕骨外側上顆炎に対する直視下手術と鏡視下手術の治療成績を比較検討した.直視下群13例と鏡視下群8例,計21例を対象とした.これらの症例に対してVAS score,日本整形外科学会-日本肘関節学会肘機能スコア(以下JOA-JES score),肘関節可動域,握力の変化,原職復帰までの日数,痛みの改善を実感した時期,合併症,さらに手術に対する満足度を調査し比較した.その結果,最終VAS score,JOA-JES score,肘関節可動域,握力は両群間で有意差はなかった.一方,原職復帰までの日数は直視下群では23.9±21.0日,鏡視下群は72.3±73.6日と鏡視群が有意に長かった.また痛みの改善を実感した時期についても,直視下群で1.9±0.9か月,鏡視下群では3.6±1.9か月と鏡視下群の方が有意に長かった.

  • 村岡 邦秀, 副島 修
    2016 年23 巻2 号 p. 340-342
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     当院で上腕骨外側上顆炎の治療をうけた患者に対して超音波検査を行った.保存加療の9例9肘と手術加療の6例6肘の計15肘を疾患群,またボランティアの8例16肘を正常群とした.評価する項目は,短橈側手根伸筋(ECRB)腱実質部のhypo echoic lesion,石灰化,付着部での断裂,橈骨頭の可動性である.また,ECRB腱の弾性を定量する試みとして,正常群全例と疾患群の5肘に対してelastographyを行い組織の弾性を示す尺度であるstrain ratioを計測した.その結果,hypo echoic lesionは疾患群で有意に多く認められた.石灰化は疾患群の3肘に,付着部での断裂は疾患群の1肘のみに認められた.橈骨頭の可動性およびstrain ratioは,いずれも両群間での統計学的有意差は認められなかった.今回,上腕骨外側上顆炎患者における肘関節周囲の超音波検査の試みを第1報として報告する.

Ⅹ.スポーツ・野球肘
  • 鈴木 克憲
    2016 年23 巻2 号 p. 343-345
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     骨端線閉鎖後の肘頭疲労骨折:10例(投手:5,捕手:3,内野手:3)を経験した.全例男性,平均年齢は16.7(14~18)歳であった.症状発現から確定診断までの期間は,平均5.4(1~10)週であった.骨折型は,斜骨折6例,横骨折4例,関節面のみの不全骨折6例であった.保存的治療を施行した例は7例,初回に観血的骨接合術を施行した例は3例,平均観察期間は27.3(12~72)か月であった.保存的治療を施行した7例は全例で骨癒合がえられたが,2例は再骨折を生じた(骨癒合後1年,1年4か月).観血的骨接合術を施行した3例中2例は骨癒合がえられたが,1例はスクリュー周囲の骨融解像を認め,5か月後に再手術を施行した.術後4か月の症例を除いて,9例は受傷前のレベルあるいはそれ以上のレベルにて復帰した.肘頭疲労骨折の不全骨折は,保存的治療により良好な成績を示した.完全骨折に対しては,急性期においても観血的骨接合術を施行した方がよいと考えられた.

  • 名倉 直重, 見目 智紀, 小沼 賢治, 中脇 充章, 田澤 諒, 小林 明正, 高平 尚伸, 高相 晶士
    2016 年23 巻2 号 p. 346-349
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     緒言:上腕骨外側上顆炎3肘に対し局所麻酔下ドリリングおよびアンカーを用いた腱固定術を施行した.

     対象と方法:男性3例3肘.手術時平均年齢50.0歳,平均保存加療期間8.3か月,手術までのステロイド局所注射回数は平均3.3回(2回~5回)である.局所麻酔下にECRB腱起始部をドリリングし,その遠位をJugger Knotソフトアンカー2本で固定した.臨床評価はThomsenテスト,中指伸展テスト,fringe impingementテスト,MEPS,NRS,Quick-DASH scoreを用い,画像評価はMRIを用いた.

     結果:疼痛誘発テストは全例術後4週で消失.MEPS,NRS,QuickDASH scoreは術後有意に改善し,MRIの輝度変化は術後12週で3例とも改善した.

     考察:損傷部をドリリングし,遠位で関節包ごと腱固定することで損傷部の修復,滑膜ひだの安定性が得られ,良好な成績を得られた.

  • 村山 俊樹, 古島 弘三, 宮本 梓, 宇良田 大悟, 山本 譲, 古賀 龍二, 清水 雅樹, 草野 寛, 岡里 拓郎, 伊藤 恵康
    2016 年23 巻2 号 p. 350-353
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
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     本研究の目的は,上腕骨内側上顆下端裂離骨折(以下:裂離骨折)を有する少年野球選手に対し,受傷初期に外固定を用いた治療を行った症例を評価し,その有用性を検討することである.裂離骨折と診断され,初期外固定による治療を行って,3か月以上経過観察が可能であった少年野球選手151例(平均年齢:11.2±1.2歳)を対象とした.初診時より3か月後にX線撮影を行い,骨癒合状態を確認し,完全復帰を許可した.平均経過観察期間は4.5±4.2か月であり,146例(96.7%)で骨癒合が得られた.野球への競技復帰は149例(98.7%)で可能となり,平均競技復帰期間は4.0±2.1か月であった.治療開始前の母床―裂離骨片間距離は骨癒合例で1.5±0.7mm,未癒合例で4.1±1.3mmであり,有意差を認めた(P<0.01).裂離骨折に対して高い骨癒合率を得られたことから,初期外固定による治療は有用と考えられた.

  • 荻本 晋作, 峯 博子, 鶴田 敏幸
    2016 年23 巻2 号 p. 354-357
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     目的:成長期野球競技者の上腕骨内側上顆下端障害例の受傷初期における軟骨膜の形状を高分解能MRIにて評価し,X線像の経過との関連を検討した.

     対象と方法:対象は13例13肘.初診から2週間以内にマイクロスコピーコイルを用いた高分解能MRIで両肘を撮像し,3か月以上経時的にX線にて観察した(平均経過観察期間10.7か月).

     結果:X線上,仮骨はMRIで確認された偏位した軟骨膜に沿う形で形成され,最終的に内側上顆は肥大して癒合した.

     考察:組織学における軟骨膜の性質と今回の結果より,裂離した骨片と母床の間に仮骨形成が起こるのと同時に損傷された軟骨膜から軟骨再生が起こり,最終的に骨化し肥大に至ると思われた.上腕骨内側上顆下端の障害は骨・軟骨・軟骨膜・靱帯を含む複合組織損傷であり,偏位した軟骨膜に規定される内側上顆の肥大とAOLの輝度変化は,将来のAOL機能不全の要因となる可能性がある.

  • 米川 正悟, 渡邊 幹彦, 稲垣 克記
    2016 年23 巻2 号 p. 358-361
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     目的:野球選手の肘内側側副靱帯損傷の治療は,まず保存的治療を優先して行う.しかし,競技レベルの高い選手,特に投手については観血的治療を選択することが多い.2013年より尺骨側,上腕骨側ともに内固定材を使用せずに骨孔を作成する,いわゆるTommy-John原法に準じた手術を行っている.今回,観血的治療のスポーツ復帰について検討したので報告する.

     対象と方法:2013年から2015年までに肘内側側副靱帯損傷で靱帯再建術を行った野球選手12例を対象とした.手術時平均年齢は18.7歳,12例中9例が投手であった.健側の長掌筋腱を使用して靱帯再建を行った.骨孔を作成時に採取した骨柱を固定に使用した.

     結果:12例中11例(91.7%)でスポーツ復帰が可能,平均復帰期間は約9.3か月であった.

     考察:治療成績は以前に行っていたinterference screw固定を用いた術式と同様に良好であった.

  • 鶴田 敏幸, 峯 博子, 荻本 晋作
    2016 年23 巻2 号 p. 362-365
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     目的:成長期上腕骨内側上顆下端裂離損傷では,保存療法にて癒合するも,再転位や新たな裂離骨片が生じる例が少なくない.本研究では再発の危険因子について検討した.

     対象と方法:保存療法を施行し1か月以上観察した成長期野球競技者134例134肘のうち,骨癒合が認められた117例117肘を対象とした.骨癒合期間は平均2.7か月,経過観察期間は平均8.6か月であった.治療は全例外固定を行い,その間投球を禁止し全身調整を行った.X線上骨癒合確認後,投球開始を許可した.

     結果と考察:再発は23例(19.7%)で,骨癒合から再発までは平均4.5か月であった.再発群と再発なし群を比較した結果,初診時年齢が低い例,画像上裂離部が欠損型の例,裂離骨片が小さい例,外側上顆骨端核が出現前の例に再発群が多かった.これらは全て骨年齢が若いことが関連していると思われ,低年齢は再発の危険因子の一つであると考えられた.

  • 石田 康行, 帖佐 悦男, 長澤 誠, 谷口 昇, 山口 奈美, 大田 智美, 中村 志保子
    2016 年23 巻2 号 p. 366-370
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー

     野球選手の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(小頭OCD)の手術成績を検討することを目的とした.対象は31例31肘であり,年齢は11~16歳(平均13.9歳)であった.手術法は鏡視下廓清術:15肘,骨軟骨片固定術:5肘,および骨軟骨柱移植術:11肘であった.病型とICRS OCD分類別の成績を術前,術後1年時JOA-JES score,自動屈曲,伸展角度,競技復帰状況で評価した.各手術とも外側広範型OCD IV以外は術後概ね良好に回復していた.外側広範型OCD IVの鏡視下廓清術,骨軟骨柱移植術の成績は不安定であった.外側広範型OCD IVの3肘以外は完全復帰していた.外側広範型OCD IVを生じさせないために早期発見,早期治療,保存療法の徹底,手術手技の習熟,新たな手術手技の検討が必要である.

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